用い方

「多重組み」「複合組み」という言葉は、何か「正式な技術用語」みたいに見える‥‥というのをツイッターで見かけましたが、確かにそうですネ。なんだか、新しい技術みたいに聞こえちゃうので、「組み事故」みたいなマイナスイメージをもつ言葉に変えた方が良いというのも頷けます。

 

もう一歩、踏み込むのなら、その「組み事故」を原画のせいにしないでほしい‥‥ということも感じます。すでにキャラ表のデザインの時点で「組み事故確定なデザイン」はあります。

 

肌に髪の毛の影が落ちて、さらに髪の中に目や眉の線まで透けて描いて‥‥なんていうデザインは、「はい。髪の毛のなびき&目パチで組み事故確定」です。キャラのアップになるごとに枚数をいっぱい使ってセルを要素ごとに分けるわけにもいきませんし、マスクワークの合成なんてタイムシート指示には存在しませんしネ。

 

つまり、そのようなキャラデザインを描いて、色彩設計の色見本を塗った段階で、何らかの「組み事故対策」もしくは「デザイン変更」が必要です。‥‥なのに、デザイン時点ではスルーして、原画作業時の采配に委ねる‥‥のは、チェックミス・運用設計ミスとしか言いようがないです。

 

原画では采配しようがないのも事実です。キャラ表にあるものは描かないと基本「ダメ」なんですから。勝手にデザインを変えても良いの? もし変えても良いのなら、髪の毛の中に目が透けるのは止めるし、肌に落ちる髪カゲも止めるんだけど、「そうして良い」とはキャラ表のどこにも明記されていませんよネ。

 

ものすごい複雑な塗り分けも、原画の一存じゃ反古にできないですもんネ。

 

かといって、組みに合わせて、原画で事前に番号をふるのも、演出時にタイミングが変えられなくなって(変えにくくなる=番号振り直し)、それはそれで問題があります。

 

 

 

‥‥なので、新しい取り組みの4KHDRでは、デザイン時点から「組み事故」を防ぐデザインにしています。また、作画技術の違い〜CO/KFアニメーションと従来送り描きアニメーションとでキャラの処理を変えています。

 

従来送り描きアニメーションはとにかく枚数を大量に描くので、「略画」を意識して線を減らし(でもまあ、ど根性ガエルに比べれば多いけど)、目が透けたり、肌に影が落ちたりするのも、あっさり割り切って廃止しています。

 

キャラのアップではCO/KFアニメーションが主体となり、今までは常識ハズレと言われる表現内容もどんどん導入しています。CO/KF作業者(=まあ、いまんとこ、身近では私だけですが)だけに配布する専用のキャラデザインも作りました。ヒロインのアップでは、目はふんわりと滑らかに髪の毛から透けて見えますし(コンポジット処理)、複雑な影落ち(マスク処理)もフルアニメーションで動きます。

 

 

 

要は、

 

適切な技術の用い方

 

です。

 

CO/KFアニメーションでやっていることを、従来アニメ技術でやろうとしてもあまりにも大変です。

 

一方、従来アニメ技術のタフな生産技術には、CO/KFアニメーションはまだまだ及ばない部分も多いです。

 

ゆえに、それぞれの現時点での優位点と欠点を監督と共に吟味し、作画は彩色に直結しますから色彩設計さんにも相談しつつ、作画としてどんな技術を用いるかを決定していきます。

 

いよいよ、カットごとではなく、1カットの中に「CO/KFアニメ技術と従来アニメ技術」を内包する「ハイブリッド」カットまで出てきましたが、それは「CO/KFアニメ技術と従来アニメ技術の良い性質」を活用した結果です。

 

 

 

思うに、テレビアニメが放送開始した1960年代とは絵そのものの表現が変わってきて複雑化した現在のアニメ制作において、今までと同じ思考のまま、同じ技術スタイルのままで、対応しようとするからこそ、現場には「組み事故」も「拡大作画」も増える一方なんだと思います。私がキャリアをスタートした1980年代と比べて、絵柄や処理は複雑化する一方で、基本的な作画技術はタイムシートも含めてマイナーバージョンアップに留まります。(まあだからこそ、他社間で作業の融通も効くわけですけどネ)

 

16ミリフィルム時代のアニメ量産技術の延長線上で、4KHDRの映像品質は達成できません。若い人は16ミリなんて何のことやら‥‥と思うでしょうが、かなりガッチリと呪縛され続けています。技術意識自体が、1960〜70年代のバージョンアップ更新であり、作画技術の根本を新しい時代に合わせてゼロから考え直すことに関しては極めて消極的です。

 

 

 

そうした中、「あっちもダメ」「こっちもダメ」というのは、ニュートラルな立ち位置で的確な情報分析のように錯覚しますが、単に日和見して傍観しているにすぎません。自分ではどうすべきか、ビジョンを示せない人は、ダメ出しばかり連発するのです。

 

次世代の映像制作は、かなりのハードルの高さであり、ニュートラルな立ち位置を気取っていられません。アニメ業界は今の作り方では、やがて社会的にも内情的にも破綻するでしょうから、日和っているうちに淘汰に巻き込まれることもあり得るでしょう。

 

従来のアニメの作り方が良いと思っているのなら、その作り方で生き残る術を見出さないと。

 

‥‥待っているだけ、耐えているだけでは、状況は好転しません。日本の70年前の大戦争を思い出せば、「欲しがりません、勝つまでは」と言って、結局負けて全てを失うこともありましょう。

 

10年後、20年後に、アニメを作り続けているには、今、何を仕込んでおくべきかを、考えましょう。

 

作画ソフトのTIPSで不安を紛らわしている時ではないですし、もし「組み事故」が起こるのなら、その原因を突き止めて改善しないと、バケツリレーしているうちに敗戦することになります。

 

 

 

僕ぁ、負けたくないね。

 

なので、負けないための伏線や仕込みを、頼りになる仲間たちと実践し続けます。

 

 


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