タブレット作画・2020

ぶっちゃけ、1.5〜2Kの解像度は、直にタブレットで絵を描くにはドットが粗すぎますネ。「ちょっと引きのサイズになるだけで、顔の中身とか、ドット絵の世界になる」と、実際に液タブやiPadで描いてる人が言うのをよく耳にします。

 

アニメ業界の制作仕様のほとんどは、まだ1.5K前後で作業しています。なぜ、1.5Kになるのかというと、

 

A4の作画用紙

A4の中にカメラフレーム+ペイントの余白を入れると、100Fは26cmくらい

150dpiでスキャン(=スキャンゴミ抑制の都合上)

26cmの150dpiは1500〜1600ピクセルくらいで、つまり1.5K

 

‥‥という、実物の紙とスキャンの都合です。

 

とはいえ、150dpiだと紙で描いても「解像度不足」になるので、現在は頻繁に「拡大作画」が用いられています。

 

紙で描くフローは、様々な理由で「解像感」を向上するのが難しいです。まさか、A3用紙をスタンダードサイズの用紙にするわけにはいくまい? ‥‥アニメは実写と違って、カメラを振れば(=上下左右に動かせば)その分、大きいサイズで描かなければならないので、スタンダードサイズを「現実の紙」であまり大きくすると、紙がどんどん巨大になって厄介なのです。

 

ゆえに、紙運用のフローは、2Kが終着駅となりましょう。

 

A4〜B4用紙を単純に300dpiでスキャンしても絵が細かくなるわけではないです。紙の繊維とカーボンの粒を克明にスキャンするだけで、ゴミ消しの無駄な手間を増やすだけです。

 

用紙を拡大し、描線を細く高詳細に描き、スキャン解像度を上げる、三つ巴の対策が必要ですが、そうなると今の作業コストでは不可能でしょう。

 

未来の高品質フォーマットに対応するための、紙現場の頼みの綱は、アップコン技術になりますが、タブレット上にて生粋の4Kで描かれた線と比べれば相当見劣りします。

 

 

 

では、「デジタル作画」はどうでしょうか。

 

驚いたことに、受け渡しのグローバルな仕様は未だ草案すら出来ておらず、例えば、誰が二値化するかも各社各所でバラバラなようです。

 

動画作業で二値化はしない(dgaファイルのまま仕上げさんへ)

二値化は動画さんがする

二値化は動検さんがする

そもそも二値化のペンで直に二値化で描く

 

‥‥と、何パターンも耳にしました。数年かけて、まだ二値化に対するガイドラインすら固まっていない状況は、色々な事情があるにせよ、歩みの遅さは否定できないでしょう。

 

たとえ普及は小規模でも、基本的なガイドラインを数年経過した今でも明記できないのは、なぜなのでしょう。

 

 

 

例えば、5年の期間。

 

私が1996年に本格的にコンピュータでアニメの作業をし始めてから、1997, 98, 99, 2000, 01までの5年間は、速いペースで物事がかたち作られていきました。

 

96年にプレステの攻殻、99年いっぱいまで劇場版Bloodやテールズやサクラ大戦、2000年になってサクラ大戦の3や劇場版、2001年にはイノセンスの作業本格化‥‥と、目まぐるしく、仕様もどんどん決まって、さらに変更と改良を加えて‥‥と、5年間の濃さと重さは相当なものがありました。

 

当時の現場は、新しい「デジタルアニメーション」の取り組みゆえ、成果を毎回確実に出していかねばならない緊張感がありました。「それみたことか」「どうせできないと思ってたんだ」と旧体制の人間たちに、揚げ足を取られるスキを見せてはならなかったからです。

 

私らが進めている4KのCO/KFアニメーションの技術も、直近5年間の重さは相当に重かったです。どんなに2Kでの経験が豊富にあろうと、4Kにふさわしい表現内容のアニメーションは簡単に実現できる内容ではなかったので、地道に足場を築く必要がありました。去年から今年にかけては、さらに1000nitsのHDRという新世代技術も導入しましたが、事前に4K60pで自分らを慣らしてベースが出来ていたゆえに、新たな表現の武器として取り入れることが可能でした。同時に4KもHDRも‥‥という事だったら大変過ぎたと思います。

 

5年間の重さは、置かれた立場によって、空気のよう軽くも、ずっしり重くも、いかようにでもなります。

 

 

 

なぜ、作画界隈は、直近の5年間を緩く過ごしてしまったのか。

 

私も作画出身者なので雰囲気というか空気がわかるのですが、「作画は聖域」として扱われてきたから‥‥という理由は大きいでしょう。従来の作画技術は普遍だと思っている人が、実はかなりの数、存在します。

 

基本的な技術体系が昭和・平成と変わることなく、今まで続いているので、「大きな変化に疎い」のです。

 

20〜30年前と比べれば作画内容は格段に大変になっていますが、基礎技術が廃止され入れ替わることはないですし、原画動画のフローが根本から全く変わるなんてこともなかったです。

 

つまり、作画の人間は、システムの根本をゼロから作ったことがなく、旧来のフローを徐々に変えながら現在に至るので、新たなシステム作りやゼロからの技術体系作りを体験したことがないのです。戦前生まれで戦後の復興と共にアニメ制作を立ち上げた長老の方々でもない限りは‥‥です。

 

踏襲や改良には長けているが、フォーマット策定や発明には不慣れです。

 

おそらく「デジタル作画」の直近の数年間は、そうした作画界隈の性質を受け継いでいるのかも知れません。

 

 

 

1996年の頃にはさ‥‥。アニメ業界に「コンポジット」なんて言葉はなかったし、「ビジュアルエフェクト」という言葉も欧米の映画のクレジットから探してくるような状態でしたヨ。

 

そんな中、コンポジットをする上で、何を決めて、どのように取り回して、どのようにラボに納入するか、何もお膳立てのないところから、当事者たちで決めていったのです。

 

だってさ‥‥そうしなきゃ、映像が完成しなかったもんね。

 

「どうせだれかがお膳立てしてくれるだろ。待ってりゃイイや。」みたいな他力に甘えてたら、映像が一向に完成しなくて、主力陣営から「ほら、ダメだ。やっぱり、今までの作りかたのほうがいい」と言われ、存在意義を問われたでしょう。‥‥幸い、存在が消えるには至りませんでしたが、気はいつも張っていましたヨ。‥‥今でもネ。

 

 

 

「デジタル作画」。‥‥毎年開かれるシンポジウムも、製品の宣伝を主とした懇親会みたいになっているようで、毎年行っても状況がほとんど変わってないことに落胆して、今年は行くのを止めた‥‥なんていうことも聞きました。米国ギルドの技術シンポジウムとは大違いです。

 

本当に、この調子で、また1年2年3年とズルズルと「多数派同調バイアス」を続けて、本当に「デジタル作画」の人々は良いと思っているのかな。危機感を感じていないのかな。

 

時間が経てば、なんとなく曖昧に事態が進展すると思っているのかな。

 

あと、何年待つつもりなのかな。

 

 

 

いっそ、「デジタル作画」という言い方を止めて、単に道具に由来して、「紙作画」「タブレット作画」という区分けにして、タブレット作画を大きなパワーにしていくことを考えるべきだと思うんですよ。

 

紙の代用品じゃない。タブレットで絵を描くんだ!‥‥ということを、まず当人が改めて自覚すべきです。

 

「作画作業をデジタル化した」というイメージを想起させる「デジタル作画」という呼称自体が、既に紙作画の呪縛の中のいるとさえ思います。紙作画由来の打算の産物になりかけています。

 

邪推する‥‥なら、もしかしたら、タブレットの作画作業を、あくまでも紙作画の延長線上に留めて、コントロール可能にしておきたい人々もいる‥‥のかも知れませんネ。予想もつかないパワーを発揮されるのが困る人‥‥とも言いましょうか。

 

まあ、邪推はともかく。

 

今までの紙と鉛筆をタブレットに移し替える「代用品」の意識ではなく、タブレットでできることに意識を向けて、ダブレットのパワーを大事に育てましょうよ。大事に、大事に、そして確実に。

 

タブレット作画ということなら、紙のイメージから離れて、自由に何でも出来ますよ。今までの作画技術をタブレットで描くのも、CO/KFアニメーションの線画を描くのも、階調トレスで描くのも、有利な技術をどんどん取り込んでいけば良いです。紙時代の慣習に縛られないのが、タブレット作画の強みでしょう。

 

タブレットで絵を描いて、アニメーションの未来を本当に切り拓きたいと思っている人間が、まずは少人数集まって酒でも酌み交わしつつ、「しがらみ」の垣根を超えて話し合うところから始めましょう。もちろん、スタート地点は4Kからです。今さら2K基準で未来の話をしても意味ないもんネ。

 

タブレット作画は、紙では難しいこと=紙の弱点を、さらりとやってのけてこそ、存在意義も高まるでしょう。ごく普通の理屈です。

 

iPadでもCintiqでも使いやすいのを使えば良いです。2020年代を見据えて、タブレットで切り拓くアニメーションの未来を、タブレットを使う本人たちが考えていきましょう。

 

 


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