Targaが終わる日

最近、Retas Studioを作業フロアのマシンにインストールしました。開発元によって開発終了がアナウンスされたmacOS版のRetas Studioは導入するつもりはなかったのですが、いろいろ事情がありまして、内容確認用と色彩設計さん用に2ライセンス期間限定で導入したのです。

 

Retasを改めて使ってみて思ったのは、「使い方によっては次世代にも使えるほど完成度が高い」ことです。Retasを1.5Kの、しかも、いかにもアニメっぽい絵柄で使うと、いつもの感じのままで目新しさはないですが、使い方次第では4K時代にも通用するポテンシャルを秘めているように思いました。最初からタブレット作画で4K寸法ならば、二値化でも線はかなり綺麗になります。

 

旧来アニメに特化した設計や機能は、たとえ次世代技術視点でも、線画とペイントの基礎作業をするのに作業性が充実していて、「1.5Kで使うから画質に古さを感じるのであって、4Kでリフレッシュすればまだまだイケそうなのに」と思いました。

 

‥‥ただ、macOS版の開発が終了したのでは、もう使い続けられないので、クリスタの方に目を向けようと思います。

 

そう言えば、先週、私的にもう1つ追加でクリスタライセンスを使い始めました。クリスタを4Kで使うために、どのように使えば良いか、KF/COアニメーション技術ではどのような使い方が有効か、新しい制作技術において色彩設計さんや仕上げさんとの連携を図るためににはどのようなフローや決め事が良いのかを、複数のマシンにインストールしてどこでも使えるようにして、まずは大まかな基本方針を探ろうと思います。‥‥ライセンス追加と言っても月500円ですから、全然無理なコストじゃないですネ。

 

 

 

Retasと言えば、タルガ。

 

アニメ業界で使ってきたタルガ:Targa:TGAのファイルフォーマットは、そろそろ終わりの時期を迎えると思います。

 

Targaは1984年に登場した、相当古い画像フォーマットです。

 

アニメ業界以外で「タルガ」とかいうと、ビックリされたりします。古すぎて、知らない人すらいます。

 

であるがゆえに、内容がシンプルで、プログラム初心者でも入門に適しているファイルフォーマットです。なぜRetasがTargaをメインにしたのか、内部事情は知りませんが、仕様がシンプルで扱いやすかったからかも知れません。ちなみに、ほぼ20年前に「イノセンス」を作った時に、ラボに入れるフォーマットはSGIで、それも相当シンプルな内容だったがゆえに、当時の私でもツールを作れた(SGIバイナリデータ書き出しのモジュールや変換ソフトを作りました)次第です。

 

Targaは基本仕様から大きなバージョンアップすることなく、

 

  • 各色8bit止まり
  • プロファイルを内包できない
  • 解像度(dpi、ppi)がない

 

‥‥という欠点をひきずったままです。おそらく、Targaが今後バージョンアップする可能性は低いでしょう。

 

開発元以外の会社が独自に拡張しても、その拡張内容が公開され認知されなければ、ちまたの画像映像ソフトウェアで扱えるようにはなりませんしネ。

 

 

 

Targaが未来に消えゆく理由。

 

まず、各色が8bit限定なのは致命的です。8bitの階調では、HDR時代の各種色域に対応できません。8bitでは、PQカーブなんてとても対応できるものではないです。トーンジャンプの嵐になりましょう。

 

未来の現場でプロファイルを運用する機運が生じた時も、LUTは持てるけどカラープロファイルは持てない仕様が、同じく致命的になるかも知れません。未来のHDR時代は、しばらく「モニタのnit数」がバラバラで混在することが予想されますが、カラープロファイルで運用することが求められた際にTargaでは対応できません。‥‥まあ、日本のアニメ制作現場は今までずっとカラープロファイルを拒絶してきた経緯があるので、なんとも言えないところはありますけどネ。

 

解像度は、ペーパーレス時代では不要になる(=ピクセル寸法だけ)ように思えますが、解像度という考え方をうまく使えば、異なる解像度の素材を混在させつつも、キャンバスでは一致させるテクニック*脚注)が使えますから、解像度がそもそも規定されていないTargaは不利になることも考えられます。最初から解像度自体がないことは、弱みの1つです。

*100dpiの1000pxと、200dpiの2000pxは、同じ寸法の見た目として表示される機能です。Animoにはありましたが、After Effectsにはありません。After Effectsの開発者の人に「解像度の概念を入れて欲しい。せめてカメラの寸法の表記だけでも。」と要望しましたが、「なぜ、それが必要なのか」と理解してもらえませんでした。

*以下の図は、2つとも「実寸」が254mmになっています。ピクセル寸法と解像度は違いますが、実寸は同じです。‥‥こういうことは、実写だけしかやってないと、あまり解らないことなのかも知れません。まあ実写かアニメか以前に、そもそもアドビ自体、アニメの現場の人たちには冷たいよネ。理由はなんとなく解らないでもないが‥‥。

*ちなみに、macOSのPhotoshopでTargaを開くと、みんな72dpiになっていますが、Targaが72dpiの情報を有しているのではなく、「未定義」=undefinedなんすネ。

 

 

Targaはアニメ業界の制作事情をよく支えてくれたフォーマットです。

 

しかし、あまりにも、仕様が時代とズレ過ぎています。

 

未来に対応できないことだらけなのがTargaです。

 

「なぜアニメ業界は、そんなに古いフォーマットを、今でも使っているのか」と他の映像分野の方々に不思議がられますが、答えは簡単で「RetasがたまたまTargaだったので、その習慣が今でも続いているのです」というだけです。そう言えば、Mac版は昔、「PICT」だったような記憶もあります。

 

古いから悪いのではなく、仕様の不足が目立つのです。もし、仕様が現代にも通用するのなら、Targaを使っても何を気後れする必要もないですが、通用しないのでは「余命」をカウントするばかりです。

 

古さでは負けていないTIFF(=1986年に1.0)は、ファイルの仕様が現代にも通用するので、実は現在作業中の4KHDRでも現役だったりします。妙にDPXを使うよりタフだったりもします。8bitはもちろん16bitや32bitが普通に使える、カラープロファイルを持てる、解像度はもちろん持てる‥‥と、Targaとの設計の違い(Tagged Image File Format=タグで拡張可能) が、2019年の今、際立っています。

 

TIFFは強いなあ。

 

 

 

でもまあ、ぶっちゃけ、線画時点では、8bitでSDRで解像度がなくても、ペーパーレス(=プリントレス)運用なら、大丈夫といえば大丈夫です。PQカーブは線画のニュアンスも丁寧に扱うデリケートさが求められますが、ニュアンスを調整するのは作画作業後でも可能です。つまり、Targaの設計の古さが顕著に露呈するのは、ペイント作業以降です。

 

アニメ業界は、Retasに占領されたと言っても過言ではないですが、その影響で、ペイント作業ほどTargaへの依存‥‥というか作業慣習が色濃いので、今後の課題は、ペイントに関わる作業で、どうやってTargaから抜け出すか‥‥でしょう。

 

3DCGの出力でもTargaで出力する事例を見かけますが、「アニメ業界はTarga」という認識を変えてもらっても構わないです。久々に、アニメ制作現場で3DCGの上がりを受け取って作業を引き継ぐと、Targaのあまり圧縮の効かないファイルが素材別に書き出されていて、サーバストレージにもローカルストレージにも人にも厳しい「Targa合わせ」は、そろそろやめるべきと思います。

 

4K時代に3DCGの各レイヤーを個別にTargaで出力したら、サーバはあっという間に容量を食いつぶしますヨ。

 

 

 

直近の課題は、色彩設計さんを始めとしたペイントに関わるスタッフと、どのように新時代の「作画>ペイント>コンポジット」工程の作業流通性・作業規約を、使用するファイルフォーマットも含めて落とし所を探るか‥‥です。

 

昔のやり方から学ぶのも重要です。しかし一方で、

 

今まで無かった事から、今から在る事へと、変えていく

 

‥‥という意識も重要です。

 

今までタルガを使ってきたから、今までこうだったから‥‥だけではなく、「ないこと」「なかったこと」をあえてしないと、新しい何かなんて、何も始まりませんよネ。

 

みうらじゅんさんの本にも、そういうのがありましたよネ。

 

*90年代中頃、みうらじゅんさんの「VOWでやんす」は枕の脇に置いて愛読してました。その後に世間で話題となる活動の数々が、既に「VOWでやんす」に収められています。

 

 

 

 

答えはいくつもありましょう。

 

「何か1つだけの正解」などという幻を抱くと、ドツボにハマるように思います。

 

頼りになるスタッフとともに、いくつもある答えを探して集めて、やがて洗練させていくのが良いです。

 

細部をいきなり精密に描き始めるのではなく、全体が徐々に浮かびあがるようにすれば良いと思っています。デッサンの授業で習ったことは、他にも活きますネ。

 

 

 

Targaが時代についていけなくなった。

 

それならそれで、いいじゃない。

 

無理に使い続ける必要はないです。

 

 

 


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