Z。

私らの作業グループでは数年前から、After Effectsの3Dレイヤー&カメラ機能は、コンポジット作業の標準になっています。コンポジションの中身のレイヤー個々をXYだけでなくZ軸も使って配置します。舞台セットのようなコンポジションを最初から組むのですが、それはすでにレイアウト作業時点からZ軸ありきのプランとして組み込まれています。

 

当然、旧来のアニメ作画や撮影の仕事ではNGです。そもそも従来のタイムシートにはZ軸の欄も、数値の基準もないので、旧来基準のアニメの作画と撮影には本格的に導入できないのです。まあ、従来枠の作品でも、「このカット内容はZ軸向きだ」と判断し、自分で原画を描き自分でコンポジットするカットは、自己完結できるのでZ軸を内部使用することはあります。

 

Z軸を持つコンポジションの縦横寸法はすなわち視界で、カメラでいうところのレンズを通過した撮像面となるので、大判を組んだ時の画角と、スタンダードフレームで切り取った画角が変わります。平面にペタッと素材を置いてコンポする旧来撮影技術では、大判だろうが画角が変わることはないですが、Z軸を使って大判を組む時には寸法の差異を吸収する微調整が必要になります。

 

また、位置だけなく、「方向」も制御しなければ、予期せぬ素材バレを生じます。Z軸コンポの縦PAN時に水平線がバレるのはよくあることです。一方で、大判の舞台に生ずる台形歪みをうまく利用するテクニックは、今までにない表現を可能としますが、ほどほどのさじ加減が必要です。つまり、今までのアニメ撮影とは異なる、新しい技術基準が必要になります。

 

コンポジションサイズを変えると、遠近感や画角の広さの見栄えが変わる‥‥のが、Z軸導入後のアニメのコンポジットです。

 

*今までの「作画サイズ」という考え方のままでは通用しない、「画角」「焦点距離」「レンズ口径」「フィルム面積」というフィルムカメラ時代の知識が必要になります。ドローン・クレーン・GoPro風な表現が可能になる一方で、素材サイズの計算はかなり難しくなります。

*平面の世界から抜け出て、奥行き=Z軸を手に入れるということは、平面では意識せずにスルーしていた色々な要素を制御する必要性が生じるということでもあります。平面のレイアウト用紙で「密着引き」を指示していたのとは別次元の、周到な計算・計画が必要です。

 

 

Z軸の距離感をそのままに、プリコンポーズして重箱にして、コラップストランスフォームで重箱ごとカメラワークを組むのは、新しいアニメ技術の定番です。レイヤーをグループ化した重箱を複数組んで、内部のZ軸の関係性をそのままに重箱単位で制御することが可能です。10〜20も重なる背景・前景を個別にXYZ軸を制御してカメラワークを推敲してたら日が暮れてしまいますから、Z軸を含めたレイヤーのグループ化は欠かせません。

 

‥‥とまあ、Z軸とコラップストランスフォームをちょっと使うだけでも、相当、色んなことができます。After Effectsは、設計が古いとは言われますが、After Effectsと同じことが完全にできるようでなければ、他のコンポジットソフトウェアには移行する気にはなれない‥‥のは、そういうわけなのです。

 

しかし一方で、After Effectsのこうした機能は、旧来の現場では、過去から現在まで封印し続け、未来も封印したままでしょう。タブレット作画が普及してタイムシートが電子化しても、撮影指示上でZ軸を扱えないので、実質手も足もでません。使い方に慣れてきた私も、原画だけ担当する場合は、Z軸なんてとてもではないですが使う気にはなれませんし、実際不可能です。

 

Z軸のカメラの動きは全て「TUとTB」に頼ることになりますが、TUとTBはズームと同じですから、クレーンやドローンやGoProのようなカメラワークにはなりません。

 

私は以前、導入の可否を考えてみたことがありますが、どうも無理っぽいです。「タイムシートと撮影指示」という旧来のスタイルが続く以上、Z軸の扱いは困難です。

 

どのような機能追加を今までのタイムシートと撮影指示に追加すれば良いか‥‥という思考のスタンスは限界に達しており、「分業の考え方」をゼロから仕切り直す大掛かりな取り組みが必要になります。

 

また、4Kのテレビは、今までの2Kテレビの解像度では隠れて誤魔化していた素材個々のクオリティがかなりダイレクトに映し出されてしまうので、作画サイズ云々だけでなく、アニメ撮影・コンポジットでの素材の組み方が問われます。

 

 

 

「デジタル作画」だけが未来ではありません。1000nits時代のHDRやPQカーブにはどう対応しますか? 各家庭の4K HDRテレビでの見栄えに対してどのような表現のアイデアがありますか?

 

未来は今までと違う映像品質基準へと移り変わっていきますから、当事者がどのように未来を生き抜こうと思っているのか、まずソコが問われましょう。

 

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< April 2019 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM