動きは著作や発明足り得るか

「実演家」云々で数回前にブログを書きましたが、実演の「技法」まで話が及ぶと、著作権というよりは特許のカテゴリも含みはじめて、果てしない気分になってきます。着地点がより一層、見えにくくなります。

 

まずは、アニメーターの生み出す動きの技術は「著作」か?

 

ほんの数カット〜数十カットの原画作業で描いた動きの表現を「著作」と言い表すのは、中々無理があるように思います。

 

著作の定義を以下に。Wikipediaからの引用です。

 

日本の著作物著作権法の定義によれば、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸学術美術又は音楽の範囲に属するもの」2条1項1号)である。要件を分解すれば、次の通りである。

 

「思想又は感情」

「創作的」

「表現したもの」

「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」

 

そのため、表現ではない事実や事件やデータや思想(アイディア)そのものや感情そのもの、創作の加わっていない模倣品、範囲外の工業製品などは著作物とはならない(江差追分事件)ほか、短い表現・ありふれた表現・選択の幅が狭い表現などは創作性が認められない傾向にある。

 

 

たしかに上記では「表現したもの」が著作物の要件とされていますから、動きに限らず、セリフでも、一発芸でも、表現したものと言えましょう。しかし、1つの動きも、1つのセリフも、著作の全体に内包されますから、著作の入れ子構造が果たして認められるかは、私は専門家ではないので詳しくは知りませんが、無理っぽい‥‥ですよネ。「ここはこんな動きがいいんじゃない?」とか「こんなセリフを喋らせよう」とかの提案がどんどん著作として認められる‥‥というのは、普通に考えてダメそうな感じがします。

 

一方で、動きは絵そのものと切り離せない側面をもちますから、動きだけを取り出して「著作物」として成立させるのは、かなり難しいことだと思います。商業アニメの場合、絵のデザインはキャラ表など他者・他所に依存しますから、動きの要素だけを独立した著作とするのは現実的に「証明するのが困難」だと思います‥‥が、気になるなら、著作権に詳しい弁護士に対価を支払って相談するしかなさそうです。‥‥私の個人的な考えだと、やっぱり「無理じゃん?」と思います。

 

では、技術の特許や意匠の部類か?‥‥というと、「動きそのものを独立して取り出し、1つの発明として合理的に説明して申請できるレベルまで確立できるか」が相当難しいと思います。

 

まずは以下のWebへ。

 

特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

 

 

「おれが考えた!」「私がアイデアを出した」‥‥それだけで特許たり得るか、可能かどうか、上の検索で試してみましょう。


もしそんなことが可能‥‥だとすれば、それこそツイッターの文言1つ、作画での服のシワの描き方1つが、著作や特許としてそこら中に溢れかえるでしょう。そして、絵のパーツを1つ描くにも、いちいち特許申請の有無を検索して描かなければならないハメになります。

 

なので、そんなことがおこらないように、「確かに、独自かつ新規の技術だ」と証明できる内容でなければ、特許は取得できないのでしょう。「思いつき」でなく、「独自に発案され確立された技術」として、です。

 

以下に「実体審査」の要目を列記します。私も文面だけでは深く理解できませんが、とりあえず参照。

 

ア.自然法則を利用した技術思想か
イ.産業上利用できるか
ウ.出願前にその技術思想はなかったか

エ.いわゆる当業者(その技術分野のことを理解している人)が容易に発明をすることができたものでないか

オ.他人よりも早く出願したか

カ.公序良俗に違反していないか

キ.明細書の記載は規定どおりか

 

 

いわゆる「新規性」「進歩性」などが考慮されるようですが、詳しくは調べてみてください。

 

エフェクター(エレキギターの音に効果をかけるプロセッサ)の電気回路は、特許を持たないものが多いと聞きます。なぜかというと、エフェクターの電気回路は電気技術者なら既知の汎用的な構成によるものなので、特許にまで発展することがないそうです。

 

ですから、アニメーターの動きの技術を、実演として結果物に対する隣接権をかろうじて交渉することはできそうでも(それも実質として今はかなり難しいですが〜作監が十数人もいるようでは)、著作や特許として主張するのは、極めて困難といえます。動きの「特許権」をどう説明すれば良いか、思い浮かびますか?‥‥私はできそうもありません。動き部分を取り出して、特許技術として説明する方法が思いつきません。

 

まずなによりも、「自分の描いた動きが、著作や特許であることの、合理的な証明を、他者に対しておこなう」ことができるのかが、最大の難問です。

 

 

こうした著作や特許の話題にたいして、なぜアニメーターが「自分がゼロから書き起こした絵だから自分の絵」とか「動きだって著作にならないか」という論調に傾くのか。

 

それはとても簡単なことで、「自分の現在関わっている事柄に対して、権利のありようを見つけ出そうとする」からです。

 

しかし、残念ながら、工場で自動車を組み立て生産している労働者が、どんなに自動車の製造に直接関わって、「私は自動車の売り上げに対して権利をもっても良いはずだ。自分が自動車を作ったんだから。」といくら叫んでも、受け入れられないのと同じで、原作があってシナリオがあって絵コンテがあって、その上で絵を描くアニメーターには少なくとも著作権は発生しないでしょう。どう頑張っても、実演(=隣接権)の一部までです。特許も難しいと思います。

 

 

ならば。

 

せっかく絵が描けるんだから、原画動画だけでなく、自分の絵で、自分の商売も始めたら良いのです。

 

最初から著作権を獲得できる行動をおこせば手っ取り早いです。著作を主張したいのなら、いつ実現できるかもわからない隣接権の適用を夢見るよりは、確実に獲得できる方法を選択すれば良いです。標準的な道筋を通って、です。

 

アニメの原画動画という作業受発注スタイルにキンタマ(失敬)を握られ続けているから、自分の弱みから抜け出せないのです。その弱みの中で、成立の難しい著作権や特許をツイッターでつぶやくにとどまるのです。

 

原画以外の仕事もしたらどうでしょうか。

 

著作に繋がる仕事をしたいなら、通例で著作が認められていない作業を続けて、その仕事に著作を後付けで主張するよりも、すでに著作が認められている取り組みに着手するほうがシンプルかつ円滑です。他人が作ったストーリー、他人が作ったキャラ、他人が作ったカット割りで、絵だけ描く‥‥ということではなく、誰から見ても「確かにあなたが作った、まさに著作だ」と条件を満たすものを作るのが、なんだかんだと手取り早いと思います。

 

著作や特許なんていう考え方は、所詮、人間の社会が生み出した決め事であって、自然界の摂理ではないです。しかし、日本で活動する人間は、日本の社会〜欧米の社会の決め事のなかで生きていくことになります。もちろん、決め事は時代に合わせて徐々に変わっていきますが、アニメ業界スタッフにとって都合が良い社会にパッと切り替わるわけではないです。

 

であるなら、社会の仕組みと自分の能力を照らし合わせて、下手糞に使うのではなく、上手に使っていく工夫を考えましょうヨ。

 

勘違いせずにおきたいのは、絵を描くのをそっちのけで金転がしに夢中になる‥‥とか、搾取する側に回る‥‥ということではなく、自分の成し遂げたいアニメや絵を作り続けるために、充分なお金を得る方法論を累積的・順次的に実践する‥‥ということです。

 

けんもほろろに打ち負かされる中途半端な戦いを仕掛けるなど、かえって「こちらの手の内を読まれ、今後の撃退法を相手に提供する」ようなものだと心得ましょう。面白半分に指で突くような中途半端な戦いを仕掛けて、返り討ちにあって指を切り落とされたら、かなりの痛手ですよ。

 

獲得したいのは何か。まずそこをフワフワせずに、ちゃんとしっかり見定めるのです。そこが揺れてたら、立ち上がって歩き出すこともままなりません。

 

まずは座りっぱなしの受け身から抜け出して、自分の身の丈でできる活動を開始して、何らかの手応えを得るのが「始まりの始まり」です。

 

 


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