アマとプロの境界線

2019年現在、アニメーション制作での機材面における、いわゆる「プロとアマ」の差はほとんどありません。下手をすれば、CS6を使い続けているプロの方が、CCを使っているアマより機材面では古く劣っていることすらあります。つまり、現時点では境界線はほぼ無い‥‥と言って等しいです。

 

アマチュアの人ができるだけ出費を抑えて、自主制作でアニメを作ろうとして、しかもそのクオリティがプロフェッショナルと比べて遜色がないものを作ろうとした時、何が必要になるでしょうか。

 

技量

 

 

ぎゃふん。これはもうしかたないです。頑張るしかありません。なので、機材面を列記します。

 

液タブかタブレットPC一式〜CintiqやiPad Pro:10万前後

作画用のソフト:クリスタ、Procreateなど=月額1000円、1ライセンス1000円など

WindowsPCかMac:15〜30万

外付け2〜4TBの記憶装置:1台1万円程度

画像レタッチのソフト:Affinity Photoなら6000円

コンポジットのソフト:Adobe After Effects CCなら月額2千数百円

編集のソフト:DaVinci Resolveなら0円

音楽&音声ソフトウェア:GarageBandなら0円、Main Stageの追加音源3600円

表計算や文書作成:Numbers、Pagesなら0円(Macの添付ソフト)、PDF編集も0円

プログラム開発:Xcodeなら0円

スタッフ連携手段:Googleドライブを使用(小規模なら0円)

 

 

PhotoshopやPremiereを使わずAfter Effectsに限定することで、一番金のかかるAdobe CCの出費を抑えつつ、他は無償版やライセンス買い切りを賢く利用して、ローコストかつハイクオリティのアマチュア自主制作が可能です。もちろん、プロがプライベートで自主制作する際にも活用できます。

 

私がなんだかんだとMacを推すのは、Adobe CCはWin/Mac共通でも、他のカテゴリでMacは色々と自主制作に有利だからです。線画だけ描いてもアニメーションは完成しませんから、映像トラックを見ながら音楽や音声を作れるソフトが標準添付だったり、膨大な数の音源が3600円で入手できたり、ちょっとしたGUI付きソフトをXcodeで自主開発できたり、進捗管理を添付のNumbersで管理したりと、映像や音楽の制作に有利なのです。Appleはジョブズ時代に「企業のビジネスユーザで張り合うのはやめた。個人の趣味ユーザを獲得する。」という路線に転じたので、サラリーマンがデスクワークで事務処理をするには適しませんが、音楽や映像を個人や少数で制作するには色々と揃っているのです。

 

まあ、自分のリソースとの兼ね合いがあるのでプラットフォームはお好みで良いとしても、2019年現在は20年前の1999年の状況と比べて、恐ろしく機材に恵まれています。

 

もちろん、ノウハウがなければ、技術がなければ、どんなに環境が揃っていても機材のポテンシャルを引き出すことはできません。しかし、技量の向上に努めれば、プロと同等の品質を作れるのは、現在の極めて大きなアドバンテージです。

 

2019年現在におけるアマとプロの境界線は、もはや機材面では喪失している‥‥と言っても過言ではないです。

 

 

しかし。

 

それはあくまで2010〜2019年くらいの、混沌とした時期の話だった‥‥と思い出話になる未来がすぐそこまで来ています。

 

4KHDRの「HDR」のPQ運用部分は、アマチュアが購入可能な機材=現在のアニメ現場の機材では、根本的に不可能ですし、ステレオLRの2chではなく標準で5.1chとなり、ともすればAtmosやDTS:Xなどにも対応となれば5.1.2chが最小限設備になりますから、2020年代のプロ現場の機材は相当刷新されることになります。2010年代の機材環境は古さが際立ってきます。

 

2010年代にプロとアマが均質化していた時期は終わりを迎え、新しい2020年代以降は、4Kをザクザク処理できる高性能なPC、1000nitsでPQカーブ対応のHDRモニタ、チェックでの視聴環境は5.1.2のサラウンド‥‥ともなれば、その環境導入価格だけでもプロとアマの差は歴然となります。

 

まあ、これはもちろん、プロのアニメ制作現場が、ちゃんと未来技術と足並みを揃えれば‥‥ですが。

 

思うに、中小のアニメ会社が2010年代に乱立し、その中小制作会社をあてこんでアニメの「製作」会社も増えたのは、2010年代の「制作環境ローコスト化」が無縁ではなく、むしろ直接的に影響していると私は考えています。「アニメは安く作れる」と作る人間も作らせる人間も慢心したのです。コンピュータではなく、人間の問題です。

 

一方、そうした「2010年代のクオリティ」は、徐々に現れてくる新しい品質基準を前にして、徐々にディゾルブして旧式化していきます。リプレースが進む各家庭の4Kテレビの中で、2010年代を引きずったテレビアニメのクオリティは明らかに「前時代的」な品質として比較されるようになるでしょう。

 

SDサイズのブラウン管テレビに、今、戻れます? 世間がブラウン管時代の品質に戻ると思います? 戻れないし、戻らないですよネ。

 

考え方を変えれば、機材面で同質化していたプロとアマの間に境界線が甦り、プロは技術と経験だけでなく、機材面でもプロの面目を果たせる時代が復活すると思います。‥‥まあ、イタチごっこだとは思いますが、2020〜2030年の10年間くらいは。

 

ですから、2020年代基準の機材への更新ができない制作集団は、2010年代の1.5K程度の制作を続けながらポスプロに高依存するか、古くて何が悪いとHDSDRの営業のまま開き直るか、引退するか店を畳むかの、いずれかになるでしょう。

 

アニメ制作現場の機材環境が、アマチュアと一線を画して、モダン(現用)な映像技術を体現する環境へと更新することで、色々な過去からの因縁を断ち切るきっかけの1つともなりましょう。CS6で1280pxでコンポジットしているままでは、「まだそんなことやってんの?」と不用意に見くびられ続けます。自分たちの機材が自分たちの作り出す品質の足場となるがゆえに、機材環境の新旧は、まさに自分たちの未来を暗示します。

 

 

2020年代、アマチュアは2KSDRの自主制作アニメを限られたコストの中で作り、YouTubeなどの配信手段でプロに並び得る映像をアピールできるでしょう。製作委員会の縛りがないのが自主制作のアドバンテージですから、自己の「企画原作」「切り口」で勝負しつつ、クオリティでも遜色のないものを目指すべきです。素人芸で開きなおる方法もあるでしょうが、機材に恵まれた現在ならプロを脅かす作品で勝負しても良いと思います。

 

一方プロは、プロであるがゆえの、最新の4KシネマやUHD映像コンテンツ、HDR1000nits PQのDolby Vision、AtmosやDTS:Xなどを駆使して、アマチュアでは真似のできない一歩進んだ映像技術品質で「商売」することをスタンダードにすべきです。

 

もちろん、どんなに技術が進化しようと、絵の生み出す根本的な魅力はプロアマの境界はないです。だからこそ、「絵が生まれた後」の表現品質・技術品質の豊かさを、プロは追求していかねばなりません。

 

もし表現品質の豊かさなど不要というのであれば、原撮のGIFでもツイッターに貼り付けて自己アピールに終始すれば良いです。‥‥でもそれじゃあ、光と陰の織りなす物語は作り出せません。

 

プロがさ‥‥、「アマチュアと同じ品質方法論で構わない。機材が同じなんだから。」とあぐらをかいて開き直っちゃったらさ‥‥、やっぱりプロとしての存在意義はどんどん薄くなりますよネ。

 

プロの「ありよう」、プロの存在価値は、機材面においてプロアマの境界線が曖昧になった10年間の経緯があったからこそ、逆に浮き彫りになっている‥‥と、しみじみ実感します。

 

 

 


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