柔軟路線

新しい技術を扱う、新しい人材は、作画技術や映像ソフトウェアの使用経験はもちろん、コンピュータ全般に対する広範な知識が必要です。

 

‥‥と、こうやって書くと、技術の習得課題の話題に発展しがちですが、実は一番重要な根本が必要です。

 

絵と動きがとことん好きか

 

アニメや実写などの映像作品が好きで好きでたまらないか

 

コンピュータにワクワクできるか

 

この根源的で揺るぎない「核」が自分の中にないと、新しい技術の習得は難しいです。「作画+映像文法+コンピュータ」という山盛り3倍・大食い選手権のような技術習得が必要なので、骨太の中心核が自分の中にないとギブアップしてしまうのです。

 

雇用の問題、報酬の問題、色々ありますし、「好きだけでお金になるのなら世話はない」わけですが、どんな理由があろうと、根本の部分で「絵と映像そのもの」に人並みならない執着がなければ、お金の段階に発展すらできません。報酬に対する作業の性質、例えば、伝票を100枚処理するのと、100枚の絵を描くのとでは、そもそも根本的な性質が異なります。

 

そして、たとえ「絵が好きでアニメが好き」であっても、単に作画や映像の表層のスタイルに憧れているだけでは、「その次のステップ」で失速することになります。

 

「萌えキャラが描きたい」

>他のスタイルのキャラは描いてみたいと思う?思わない?

 

「アニメの作画がしたい」

>空気遠近や色彩学などの絵画技法に興味を持てる?

 

「アニメのコンポジットをやってみたい」

>レイアウトの技法や、パースや物理法則の習得はできそう?

 

「アニメが作りたい」

>実写なども含めた映像の文法はどれだけ研究してる?

>TCP/IPやプログラムなどのコンピュータの仕組みに興味は持てる?

 

 

流行のキャラの立ち姿やバストショットを線画で何千枚と描いても、「作画全般+映像文法+コンピュータ」の強固なハードルは越えることができません。

 

例えば、作画をプロとして10年続けて現在に至って、クリスタやPhotoshopやAfter Effectsを使えるようになっても、

 

  • ファイルのデータ構造はどのような内容を持つか
  • コンピュータがネットワークで繋がる仕組みを理解しているか
  • スクリプトを「自分の言語」として使いこなせているか

 

‥‥かは、ぶっちゃけ、非常に危ういでしょう。

 

「そんなの知らなくても、ソフトの使い方だけ知ってれば大丈夫だろ」というのは、これもまた、表層的です。ちょっとネットワークが繋がらなくなった程度で何もできなくなったり、スクリプトを知っていれば数行のプログラム文で解決できることが「不可能扱い」になったりします。「作画技術の習得と同じくらいの情熱で、コンピュータを習得」していないからこそ、あっけなく「できない」「難しい」判定を安易に下すのです。

 

新しい技術の体現者となるには、作画技術にコンピュータ知識をトッピングした程度では、未来を切り開くのは難しい‥‥と、私は考えていました。

 

しかし。

 

自分の過去を振り返ると、最初から作画経験が豊富だったわけではなく、映像のカット割りとマンガのコマ割りの差もわからず、コンピュータの電源の入れ方すらわからなかった自分がいます。

 

最初から高い技術習得条件を課していたら、とても「完食」できる内容ではなく、ギブアップしていたと、自分でも思います。ですから、新しい技術の新しいスタッフは「最初はトッピング」程度でも、徐々に、徐々に、技術と知識を習得していく「現場の恰幅の広さ」が必要だと最近強く考えるようになりました。

 

では、その「現場の恰幅の広さ」はどのように実現していけば良いか。‥‥それは来年からの課題です。場合によっては、制作会社の垣根を越えることも必要だと感じています。

 

 

とはいえ、現場が用意できるのは、あくまで「環境」です。「当人の根本」「絵や映像に対する深い執着」は他者が用意できるものではないです。

 

アニメの仕事は段取りの習得に陥りやすい側面を持ちます。歩きは中3枚、振り向いた後に髪の毛のリアクション、ディフュージョンやフォギーの撮処理、影中グラデ処理、etc。‥‥これらをいくら数をこなしても、実は「作画全般+映像文法+コンピュータ」の技術経験も知識も向上しないです。覚えられるのは「慣習」のみ。

 

アニメの「作業の型」ではなく、本当に絵や映像「そのもの」が好きならば‥‥

 

皆が惰性で描いてるような決まり切った表現は嫌だ。歩きや振り向きだって、軟調効果やグラデにだって、まだまだ色々な表現が可能なはずだ。

 

アニメの作り方って、本当にこのままで良いのか? 他にもっと方法があるんじゃないのか?

 

‥‥と考えると思います。アニメの表層が好きなのではなく、アニメを構成する根本=絵や映像をとことん好きであるのなら‥‥です。

 

 

 

今のアニメに満足する人もいましょう。今のアニメに満足しているのなら、今の現場で作業を続ければ良いです。

 

しかし一方で、今のアニメでは満足できない人もいましょう。新しいアニメ映像表現を作画とコンピュータで切り開きたいと思っている人は、結局、どこへ行けば良いのか

 

そうした「作画も好き。コンピュータもどんどん使いたい。今まで作れなかったアニメを作りたい。」と強い欲求を持つ人と、新しいアニメーション技術を志向する現場とが、もっと柔軟に交わる「柔軟路線」を来年からは模索しようと思います。

 

私はPhotoshopの起動のしかたも知らないほどコンピュータに無知でしたが、一度Photoshopが立ち上がりさえすれば、トーンカーブとマスク(アルファチャンネル)だけで色々な「自分の作ってみたいイメージ」を取り憑かれたように作っていました。コンピュータには音痴でしたが、欲求はものすごくありました。

 

それに、その当時(1990年代中頃)は、私は社員ではなくフリーランスでしたから、会社の垣根を超えたところからスタートしたのです。ガッチガチの社員限定や組織構造だったら、ダメだったと思います。

 

当時の私を受け入れてくれたような恰幅の広い現場を、2019年から明確に意識して作るべきだと考えます。

 

なので、ある程度業界でやってきて、自分の能力にもある程度自信ができて、何か表現や技術の閉塞感を感じている人は、まずはお声がけください。さすがに素人さんですと基礎技術が足りなくて難しいとは思いますが、プロの現場で研鑽を積んだ人なら、当人の意志次第で次のステップには進めるはず‥‥です。

 

 

 


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