残念だが金はかかる

数年前、「デジタル作画を盛り上げよう」と業界の一部の人が動き出した時、私は強い違和感を覚えました。過去のブログでもその違和感を何度も書き綴ってきました。

 

違和感とはズバリ、「金に困っている業界が、なぜ、金のかかる事に手を出すのか」‥‥です。

 

コンピュータは金がかかるんですよ。マジで。全くシャレにならないレベルで。

 

金がかかることに手をだすのなら、かかった部分のお金を取り戻して相殺する増収が必要ですよネ? 本当は相殺ではなく、上回りたいところですけど。

 

でも、作画のスタイルや技術はそのままで、どこでどうやって増収のメカニズムが発生するのか、数年前も今もわかりません。とあるアソシエーションの資料には「増収の仕組み」については全く書かれておらず、「デジタルを導入しないと時代遅れだから」のような論調に終始していました。

 

「時代遅れ」とは、甚だ曖昧。‥‥時代遅れだから何なのよ?

 

あのさあ‥‥。コンピュータを導入しても、時代遅れなことなんていくらでもできるわけですヨ。実際、どんなにコンピュータでペーパーレスにしようが、2K SDRしか作れないのでは、すぐ先の未来には時代遅れになりますしネ。

 

逆に、紙の性質と性能を根本的に理解し直して、技術基盤と運用をゼロから組み直すのであれば、紙だって、4K HDRに対応できます。

 

私は1996年から本格的にコンピュータをアニメ制作に使い始めて、機材やソフトウェアをゼロから組むようなレベルからスタートしたので、環境にどれだけコストがかかるのか、ものすごく実感があります。アニメ会社にシステムスタッフが存在しないような状況から始まって、システムスタッフがアニメ会社のスタッフとして雇用されるようになって久しい現在は、4K HDRの制作環境をまさに共同で試行錯誤を繰り返しながら模索しています。

 

コンピュータは金食い虫の悪魔なんですヨ。悪魔と契約した以上は、悪魔が戸惑うくらいの新たな利益・利潤を獲得しなければなりません。‥‥でなければ、悪魔に食われて自滅します。

 

昔、「コンピュータで絵を描けば、鉛筆も紙も消費しないから、出費が抑えられる」みたいな論調が流行りました。今はまさか、そんなことを思う人はごく少数だと思いたいですが、実は心の奥底では「ペーパーレスは金がかからない」と思い込んでいるようにも見えます。

 

では、まず紙時代の「作画」の環境の出費から。

 

●初期投資さえ済めば、後は鉛筆や用紙などの低価格な消耗品だけで運用できた「紙環境」

 

 

赤い部分が、お金がかかる部分です。電気代などの光熱費は入っていません。細かい物品も割愛しています。

 

フリーランスのアニメーターの場合、紙は制作会社が用意してくれますが、「紙で作画する」コストの図ゆえに用紙類も含めています。

 

で、作画にコンピュータを導入した場合、どのように変化するか。‥‥有り体に言えば、どれだけコストカットできるか、コンピュータをものすごく甘く見ると、以下のような図になります。

 

●初期投資さえ済めば、鉛筆や用紙すら節約できると考えていた「架空のコンピュータ環境」

 

 

 

「最初に出費はするけど、あとはどんなに絵を描いても、お金がほとんどかからないんだ〜!」とヌカ喜びをするわけです。

 

つまり、「紙時代の一生物の機材」と、「コンピュータのペーパーレスな性質」の、「都合の良いトコ取り」で考えると上図のような有り得ない試算がはじき出されます。

 

しかし、実際は以下のようになります。コンピュータを導入したら最後、環境を維持する出費に延々とつきまとわれる事になります。

 

●初期投資の後も、延々と環境コストを支払い続ける「現実のコンピュータ環境」

 

 

 

以上は作画オンリーの話。ここに仕上げ・美術・撮影など色々なセクションが絡んでいくと、高コスト構造はさらなる高コスト構造を作り出していきます。

 

 

 

こういう話をすると、ものすごい反動的な感情が巻き起こって、「じゃあ、デジタルなんて使わずに昔のようにアナログの作り方に戻って、昔みたいに作ろう!」と言い出す人も出てきます。「デジタル」「アナログ」という言葉で対比させるあたり、技術に盲目で、感情的だと言わざる得ませんが、コンピュータ関連のコストを目の前にすれば、そう言いたくなるキモチもわからないではありません。

 

では、セル用紙とセル絵具と仕上げ机とトレスマシンと乾燥時間、フィルムと撮影台と現像費用などを、再び蘇らせて、アニメを作りますか? 10年くらい前、昔の作り方を支えてきた機材がどんどん廃棄されていた時、作画の現場はほぼ無視・他人事でしたよネ。今さら、廃棄した機材を寄せ集めようとしても、あとの祭りです。

 

加えて、今の作画は、「デジタルT.U」だの「コピペ」だの「テクスチャ貼りこみ」など、自分たち作画のテリトリー以外の部分でコンピュータの性能をたっぷり享受しています。作画の手間を軽減して肩代わりする方便として、「デジタル」を、キャラ表やレイアウト指示やシート指示という手段で間接的に使っています。自分で直に手を下してないだけで、ふんだんに「デジタル」を利用しています。フィルム時代のテレビアニメ制作に技術が逆戻りしたら、あまりにも面倒でできない事だらけで呆然とするでしょう。

 

もはや、フィルム時代のアニメ制作に戻るのは無理です。思い出話は、思い出だけにとどめておくのが良いです。

 

 

 

ンピュータは金がかかる

 

そう覚悟して直視すれば良いだけです。それ以外にない。です。そこをごまかそうとするから、ウソが出るし、煮え切らずにどっちつかずのスタンスに終始します。「俺はアナログだ」と言いながら滅茶苦茶「デジタル」のお世話になるようなみっともない姿になるのです。

 

普及させようとする側もさあ‥‥、金のことを隠すなよ!‥‥と言いたいです。ふたを開けてみたら「出費につぐ出費」では詐欺に等しいよ。怪しい商法じゃないんだからさ‥‥、金に関しては正直になりましょう。

 

そして、コンピュータを導入したのなら、移りゆく時代の技術と足並みをそろえて「新たな領土を獲得」するくらいの意気が良いです。延々とアップデートをしないでやり過ごす路線はもうそろそろ破綻しますヨ。

 

 

 

個人のアニメーターレベルで言えば、作画環境をコンピュータベースにしたのなら、はっきり言って、線画だけではオーバースペックです。

 

つまり、線画〜原画・動画以外の仕事、アニメ以外の仕事に、自分の行動範囲を広げる必要が出てきます。でなければ、コンピュータ環境の維持コストに負けます。

 

絵が描けるんでしょ? だったら、線画ではなく、絵のジャンル全体で稼ぎましょうよ。

 

 

 

コンピュータは誰が何を誤魔化そうとしても無駄。

 

残念ですが、お金はかかります。

 

金食い虫で悪魔のコンピュータと「契約」したのなら、「悪魔の力」を手に入れて、どんどん暴れまくりましょうよ。

 

デビルマンやヴェノムみたいにネ。

 


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