金のかかる芝居、金のかかるアングル

テレビの標準的なギャラの仕事って、コストをいつも念頭におく必要があります。好きなものを好きなように動かせば良いという話ではないでしょう。

 

例えば、日常芝居でも、ちゃんとやろうとすると、相応に原画枚数と動画枚数が必要になります。ちょっとした小芝居とか、A点からB点に歩いて移動するだけでも、いまどきの線の多いキャラは昔のロボットもののように作業労力が必要となります。

 

また、カット割りやアングルをちょっとした迂闊さが、ものすごい労力を無意味に発生させたりもします。

 

そういった意味では、テレビアニメは制限だらけです。制作費の低さはあからさまな制限ですから、絵コンテを描く人間や演出をする人間は工夫を重ねて、低コストでベター・ベストな効果を実践してきました。

 

「でもさあ‥‥、そんな作り手のコストばかり考えて画面を作るとチープになるじゃん」という人がいたら、その発言にはいくつもツッコミどころがあります。

 

まず、テレビの制作費は、チープですよネ。実写に比べれば高いとか言われますが、何百カットにも及ぶ原画と美術と撮影、何千枚にも及ぶ動画と仕上げで、制作費を細切れにするのですから、作業者単位でいえば決して順当なギャラとはいえないのがテレビの「昔からの常」です。もともとチープなお金しか用意できないのに、チープなのは嫌だ‥‥というのは、発想の出発点に無理があります。

 

しかし、その「普通なら無理な構造」をできるだけ「見せ方で相殺」するのが、テレビシリーズの面白い部分だと思います。「面白い」というのは、「絵コンテと演出の腕の見せ所」ということです。ちょっとカメラの位置をかえてBOOKで切ったりするだけで、恐ろしいほどの作業負担の雲泥の差が生じます。カメラの位置が迂闊なばかりに述べ48時間の作業を要すカットが、絵コンテや演出の工夫により述べ6時間の作業コストで、しかも映像での印象も決してチープではないものが作れるのです。

 

 

テレビアニメであれこれ細かい小芝居をさせたり、消失点を安易に人間の目線にもってくるのは、テレビアニメのコストをあまり‥‥というか、全然考えていない人だよネ。

 

例えば、街の商店街を、人間が立ったときの目線のカメラ位置で、商店街通りを一点透視で狙ったら、ありとあらゆる商店街の雑多な物品が入り込んじゃって、大変な情報量を描かなければならなくなります。

 

「え? 人間の目線で描くのって、普通じゃん」とか思う人もおりましょうが、人間の目線がありふれた情景だからと言って、ありふれたコストで実現できると思っているのなら、本当に素人さんとしか言えないレベルです。そういう人には、テレビシリーズの絵コンテや演出をしてほしくないし、1原2000円程度のやっすいレイアウト料金で巻き込まれたくないです。

 

テレビシリーズで、レイアウト&1原2000円程度の単価で作業依頼するのなら、絵コンテマンは高度な知恵と経験値をもって、低コストかつ高い効果を狙わなければなりません。もしそれができないのであれば、テレビの絵コンテを引き受けるべきではないでしょう。そもそも能力と経験値が足りないんだから。

 

2000円で「松」のレイアウトが買えると思っているところに、現在のテレビシリーズ事情の破滅的な「齟齬」があると思います。

 

2000円でどんどんこなせるレイアウトの内容を、まず絵コンテで示すべきでしょう。テレビシリーズの絵コンテで劇場アニメを志向してはならないのです。絵コンテマンの資質が問われます。

 

「でも今まで無理だったことを実現することで、テレビアニメの技術も上がってきたんじゃない?」と言うのなら、ギャラも上げなきゃマズいでしょ。テレビ作品の絵コンテで無謀な内容を描きました、原動仕や美術の単価は知ったこっちゃない‥‥なんて、酷いと思いません??? そして出てくる言葉は「テレビでも出来た!」です。

 

 

どんな業界でも、ロープライス・ハイクオリティ‥‥は、まさに腕の見せ所です。でも、原価割れしてまでハイクオリティにはしないでしょ。

 

しかしアニメは平気でそれをやるのよネ。原価割れの常習です。

 

スペシャルな作品の、スペシャルな報酬の仕事なら、スペシャルな内容の絵コンテや演出で良いでしょう。

 

作業者にクオリティを要求するのなら、お金を用意する。‥‥当然のことです。

 

しかし、お世辞にも標準的とは言えない報酬額のテレビシリーズでは、工夫に工夫を重ねた絵コンテと演出が何よりも重要な鍵です。特に絵コンテは重大な責任を負います。

 

要求するクオリティはそんなに高くないけど、カット配列やカメラアングルや尺(間、ですネ)の妙味で、面白い本編を作れた時こそ、テレビにおける絵コンテと演出の勝利なのです。その実質的な事実に、昔も今も変わりはないです。

 

 

でもまあ、実は作業者側にも、「報酬に合わせてクオリティをコントロールできない」人々がいるのも、中々辛いところではあります。昔、1カット2万円以上の原画単価を設定したのに、3000〜4000円のテレビと同じ内容で上げてきた原画マンのカットを見て、監督が落胆していたのを思い出します。その原画マンにしてみれば「ラッキー。普通に比べて1万数千円も儲かった。」とでも思っているのでしょうが、それでは「ギャラの金額を無視して、何でも安く描かれるんだったら、安いギャラのままで良い」と判断されちゃうんですよネ。

 

少なくとも私はテレビはテレビなりの単価内容になるように、内容を薄くして描きますヨ。それで「何だ。たいしたことないな」と言われてもOK。レイアウトの構成もかなり割り切った内容にしますが、それでやっぱり「たいしたことない。凝ってない。」と思われてもOK。私はそれで正常だと思っています。

 

その代わり、高いクオリティが求められる作業=高い金額の作業では、相当、念を入れた内容になります。あえて高いお金を設定してくれると言うことは、監督やプロデューサーから何を期待されているかを、ひしひしと感じるからです。

 

金のかかる芝居、金のかかるアングルは、相応に作業報酬に反映されるべきことを、絵を実際に描く当人だけでなく、絵コンテや演出も強く意識することが必要だと思っています。

 

 

 



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