夢のあとに

アニメーターになるのが夢。そのために、アマチュア時代にいっぱい絵を描いて、アニメ制作会社や下請け作画スタジオに入社して、動画を描いた、原画を描いた、作監も引き受けた。

 

はい。夢、終了。

 

‥‥あれ? 自分って、夢を実現した後は、何をすれば良いんだっけ?

 

大してお金が稼げるわけでもないし、むしろ稼げないし、自分はこの先、何を目標にすれば良いんだろう。

 

 

 

‥‥とまあ、こうした期間が大体10年くらいですよネ。なので、ある程度の自浄能力がある人は、8〜10年くらいでアニメの仕事をやめるか否かで悩み始めます。キャラデザインや作監を決まったペースで引き受けるほどの能力を発揮すれば多少は紛れますが、「自分の未来」を冷静に考えられる人ほど不安になるものです。電卓を弾けば、作画だけで生きていく自分の未来の危うさが簡単に算出できますもんネ。

 

アニメーターの「役職と報酬」の頂点は、総作監とキャラデザインの兼任ですが、それを安定したペースで引き受ける人間はかなり少ないですし、絵には流行り廃りがあって一斉を風靡した人が何十年も安泰でいられるほど、アニメ業界のアニメーター事情は優しくないです。

 

アニメーターは作家性を打ち出しづらい宿命的な性質があります。漫画家、イラストレーター、画家とは根本的に違います。

 

まあ、逆に言えば、アニメーターは発注されたカットの絵を描くがゆえに、作家性の流行り廃りに左右されずに、絵を描き続けることができますが、1カットの報酬は決して十分とはいえず、低収入の危険と恐怖がつきまといます。

 

アニメーターになるのが夢だった。そして実現した。‥‥‥映画やアニメやコミックのストーリーなら、そこでストーリーは終わるのかも知れませんが、現実はその後も延々と続きます。アニメーターになってしまった後はどうするのか?‥‥という現実を叩きつけられます。

 

アニメ業界のアニメーター‥‥に限らず、様々なクリエイティブな役職の仕事は、スタッフ個々のライフプランまで提示して保証してはくれません。「仕事は出すけど、人生まで面倒はみれない」‥‥です。でもまあ、そんなのは、アニメ業界に限ったことではないですが、アニメ業界は動画が1枚200円前後(現在)だったりするので、「仕事は出すけど、人生まで面倒はみれない」感が強烈なのです。

 

アニメ制作工程で、完全出来高を体験した人ほど、「生きる」ことを痛烈に実感せずにはいられません。生まれてこのかた、一度も完全出来高を経験したことがない人にはわからぬ、「自分の存在のリアルな値段」をひしひしと実感するのです。

 

そんな鬱々とした状態を10年も続ければ、自分の存在の行き先を考えずにはいられないでしょう。10年でひとまず自分の未来を考え直すのは当然です。しかも今は大学卒が昔の高卒と同じ感覚ですから、キャリアのスタートは22歳からでやや遅いので、30歳前まで8年しか猶予がありません。

 

どんなに社会の気風や基準が変わろうと、年齢における吸収力はそんなに変わるものではないでしょうから、歳を食えば食うほど、柔軟性と吸収力は落ちていきます。会社や仕事の発注元は、当人の吸収力や成長を考慮して仕事をいれてくれるわけではないです。自分の成長は自分でプロデュースする他ないです。

 

 

 

導き出せる結論は自ずと、

 

自分の人生は他人に預けられない。自分の運命は自分で決める。

 

‥‥ということになりましょう。そうした心情を根底にハッキリクッキリと焼き付けておかないと、絵を描いて生きていくことは、どんなジャンルでも難しいでしょう。

 

結局、自分は何がやりたいのか

 

自分は何を成そうとしているのか

 

10代までは「プロのアニメーターになりたい」が「何を成そうとしているのか」の中身でも構いませんが、プロになった暁のあとは、もっと深く掘り下げる必要があります。「プロのアニメーターになりたいと思ったのは、何故だったのか」‥‥です。

 

もっと言えば、

 

なぜ、アニメに惹かれたのか

 

なぜ、アニメなのか

 

‥‥まで考える必要があります。「夢」とか「憧れ」とか、耳障りの良い言葉で自分を酔わすのではなく、夢や憧れを自分の現実の高さまで引きずりおろして直視して、それは何だったのかを考えねば、先には進めない時期がいずれはきましょう。

 

「でもさ、そんなことをせずとも、アニメーターを続けている人もいるんじゃない?」‥‥と思う人もいましょう。たしかにそうですよネ。つまり、自分の夢や憧れの正体を解明せずに、その時点で停止したまま生きて続けている人もそれなりに多いのでしょう。そして40〜60代まで到達してようやく「夢」から目覚めはじめて青ざめる‥‥なんてことがあるのかも知れません。怖い話‥‥なんですが。

 

ですから、できれば20代前半に夢なんてとっとと覚めちゃった方が良いと、少なくとも私は思います。

 

アニメを辞めて他の業種に転向するのもよし。アニメを作り続けるために、明確で実効的な方法を実践するもよし。

 

 

 

一番危ういな‥‥と思うのは、「なんとなくこの役職を続けていれば、生きていけるだろう」的な感覚ですかネ。今度は違う夢をみはじめちゃったよ‥‥という感じです。例えば「アニメの撮影監督」で死ぬまで生きていけると思うのか、ちょっと考えれば危ういことだとわかりますから、次のフェイズを自分で準備する必要があるでしょう。

 

親方日の丸の国家公務じゃあるまいし、アニメ業界の役職にどれだけの未来の身の保証があるというのか。

 

思うに、アニメ業界は、10年で辞めていく人間のサイクルも込みで、運用の目処を暗黙のうちに計算しているのでしょう。旧来のアニメ制作は何千何万と絵を描いて塗るので、どんなに綺麗事を並べても、使い捨ての人手を欲しているのだと思います。私も、自分はボロ雑巾だとやさぐれたフリーアニメーター20代の頃を思い出します。

 

業界がそんな薄情なものだとは思わなかった‥‥だなんて、あまりにも悲しい独りよがりの思い込みです。業界をなぜ信用したのか、当人の甘さもマズいのです。業界はそもそも薄情なものだと、デフォルトに設定するのが良いと思いますヨ。

 

 

 

「夢のあと」が大切だと思います。

 

夢とともに去るのか。

 

夢のあとに、新たなきっかけを掴んで、何かを成そうと思うのか。

 

実は、「何をすべきか」を見出すのも才能の1つだったりします。ですから、「未来に、自分は何をすべきか、教えてくれ」なんて他人に聞くのは、「絵の才能を与えてくれ」と言うくらい無茶なことなのです。人から言葉をもらって才能が得られるのなら、そんな楽なことはないですし、世の中は天才で溢れかえるでしょうしネ。

 

人それぞれ‥‥ですネ。自分はこの先、何をすべきか‥‥は、自分で決めるしかないです。

 

 


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