描線の利点としての二値化

前回、諧調トレスと二値化トレスの話題を書きましたが、二値化の描線としての利点を補足しておかないと、二値化を悪の対象として思い込む人も出てきそうなので、追記しておきます。

 

二値化は確かに作業効率化に大きな役割を果たしています。二値化でペイントされたTargaファイルの「それはそれは恐ろしく軽量」なことと言ったら、「撮影工程」上でも取り回しの軽快さに繋がっています。いまどき無いですよ、ファイルサイズが100KB未満の「本番」画像ファイルなんて。

 

私は最近は「撮影工程」の作業をほとんどやらなくなりましたが、たまに特殊カットでセル素材を受け取って作業すると、その画像処理の軽さ・速さに、改めて驚きます。二値化のTGAファイルの恩恵は、シンプルにAfter Effectsの挙動に直結します。

 

しかしそれだけではありません。二値化には明確な、描線としての利点もあります。

 

線画のニュアンスが、ペン入れしたコミックの主線のようになるのです。鉛筆の諧調を一旦二値化することによって、鉛筆の強弱の揺れを押さえ込み、均質な濃度の線=インクペンの線のように変えて統一することができます。これはインク線で描かれたコミック原作のアニメ化の際に、非常に有効なプロセスです。

 

実際、何でもかんでも、諧調トレスが優れて適しているわけではありません。作風によっては、二値化トレスのほうがハマっていることも相応にあります。

 

諧調トレスのほうが「パッとしない」作例や作風も多いです。二値化のトレスのほうが絵全体の印象が優れている事も多いのです。

 

ですから、諧調トレス至上主義のように思い込むのは愚かです。双方の特徴をわきまえれば良いだけです。

 

 

では何が、問題だったのか。

 

二値化トレス線だけしかできなくなった、極端な状況を選択してしまったことです。二値化トレスだけしか選択の余地がない、今の状況へと進み続けてしまったことです。

 

版権のポスターでは、様々なニュアンスの諧調トレスで描かれています。じゃあ、なぜ、版権では二値化しないんでしょうネ。本編が二値化なら、版権だって二値化すればいいじゃん。

 

やはり、程度の差こそあれ、線画のニュアンスが魅力的で尊ぶべきものであるのを、多くの人(=制作側の人間)が認識しているのです。

 

ゆえに、止め絵で、作業の選択の幅が許されている版権の多くは、諧調トレスを選ぶ事例が多いのでしょう。

 

しかしそれ=諧調トレスの表現の世界は、まさに止め絵だけの世界に閉じ込められてしまいました。

 

 

私の作ってみたい絵は、諧調トレスのほうが適していることが多いので、諧調トレスを捨てずに今まで来ました。そして、新しいアニメーション技術によって、諧調トレスは自由にその表現力を解放できるようになり、作品の魅力へと繋ぐことができます。

 

だからと言って、何でもかんでも、無理に諧調トレスにする必要もないです。諧調トレスは二値化トレスの上位互換でもなんでもなく、「描線の表現の選択肢」です。

 

二値化トレス&スムージングのインクのような描線が必要となれば、二値化トレスを選択すれば良いし、描線のニュアンスを活かした作風ならば、諧調トレスを選択すれば良いです。

 

でもまあ、今の標準的な現場は、諧調トレスが選択できるのは「版権だけ」ですよネ。まだ10年前はなんとか、諧調トレスで動く作品も作れましたが、今はもう実質的に無理ですよネ。

 

 

なので、道は未来へ。

 

未来まで、1択である必要はありませんよネ。

 

 

 

 



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