ループの速度

私が本格的にコンピュータによるアニメ制作に関わり始めたのは、1996年の頃です。その当時、コンピュータの何が一番衝撃的だったかと言うと、フィードバックの速度です。いわゆる、PDCAサイクルやOODAループの回転の速さです。

 

1・エフェクトや画面効果をこんな風に描いて動かせば良いんじゃないかな?

2・そのアイデア通りに実際にPhotoshopやAfter Effectsで作った

3・パーセプション(当時の動画再生システム)でモニタに映して見た

4・良い部分もあったし、悪い部分もあったので、すぐに作業に反映しよう

 

→1に戻ってループ

 

こうしたループが、速い時には1日に2回可能でした。そんな「型破り」な映像経験のフィードバック速度は、フィルム時代は絶対にあり得ないことでした。フィルムでは不可能でも、After EffectsやPhotoshopで直にエフェクトを描いたり動かしたりすれば、数十分のレンダリングを経て、パーセプションに読み込んで、その場で「ラッシュフィルム」が見れたのです。‥‥恐るべきことで、「これなら、どんどん作業内容にフィードバックして技術を発達できる」と武者震いしたものです。「これで上手くいかないはずがない」と成功を沸々と確信していました。

 

表面上のAfter Effectsの機能よりも、そのフィードバック速度の速さこそが、コンピュータ活用の最大の武器だと思いました。

 

 

そして2018年の今。

 

同じことが4K HDRで再演されています。DaVinci Resolve Studioによって映し出されたPQ1000nitsのテスト画像&映像は、「毎日発見がある」と言っても言い過ぎではなく、乗り越えるハードルが飛び越えてはすぐに出現して目まぐるしいですが、猛烈にノウハウを蓄積している実感があります。

 

4Kでは何を描けば良いのか、HDRにはどのような色彩や映像効果が映えるのか、120fpsまで映像が補完された場合に、どんな動きが美しくかっこよいのか。スペックを読んで頭だけで考えるのはなく、過去のアニメの価値観で自分を束縛するのでもなく、実際に自分の目で見て、どんどんサイクルして更新できるのです。

 

20年前、アニメのフィルム撮影技術が素晴らしいのは解っていても、「もうそれではない」という実感に満たされていました。今、2K24pSDRを見て感じるのは、同じキモチです。

 

ほんとに、時代は繰り返すもんだ‥‥と思います。

 

 

今も昔も、黎明期や草分けの頃に必要なのは、「工房スタイル」です。「工場」ではなく。

 

現在「主流になってしまった」工場スタイルでは、セクショナリズムが強烈過ぎて、フィードバック速度なんて鈍足も甚だしいです。‥‥いや、鈍足ならまだ良いほうで、一向にフィードバックなんて反映されない現場も多いでしょう。

 

しかし、新しい技術に関しては、フィードバックなし、PDCA/OODAなしでは成立しません。問題を解決しつつ、新たな可能性を次々に実践して、表現内容に盛り込んでいくには、工場のような「生産ラインだけで繋がった」現場ではなく、各スタッフのノウハウが対流して融合し合う現場=工房的なスタイルが必須です。

 

アイデアがまた次のアイデアを呼び、初めての経験が新たな知識として蓄積され、最新の知識がさらなる新たな経験を呼び寄せる。‥‥1996〜2004年の頃はそんな時代でした。

 

あと1年半で2020年代ですネ。

 

4K 60p HDR 10bit‥‥という新たな時代のフォーマットが、否が応でも、新たな知識と経験の高速ループをアニメーション制作に与えてくれます。

 

 


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