砂城

人は誰しも、「生まれ変わり」とか「死後の世界」とか、大小の差はあれ、どことなく考えているようなフシを感じます。もっと現実的な話で言えば、「自分の遺伝子」とか「相続」とか「家系」とか、自分の生まれる前と死んだ後を、誰しも少なからず考えると思います。私も、自分がどこから来たのか、そしてどこへいくのか、「血」の継承だけでなく、「知」=情報の継承も含めて、自分の遺伝子の行く末に思いを馳せることがあります。

 

でもねえ。‥‥生まれる前のことなんて全く記憶にないし、死んだら手も足も出ないし。

 

思索すると、余計、空虚な心持ちになります。

 

自分の祖先は、どの星屑だったんでしょうかね。1万年後に自分の墓石はどうなってるんでしょうね。

 

遺伝子を遡って遡り切ると、どこまで過去に戻れるんだろう‥‥とか、一生懸命家系や血筋を維持しようと努めても、果たしてどこまで継続するんだろう‥‥とか、冷静に白けて考えると、「そんな果てしないことに思いを巡らせたって、永遠(=自分の人生の期間)に理解できそうもないわ」と観念します。

 

特にね‥‥歴史の浅い商業アニメ制作に関わっていると、「現在と未来をどう切り開くか、それだけだ」と思えてくるのです。アニメ産業は200年300年前には存在しなかった、とても新しい産業ですから、移ろいやすい存在の代表格みたいなもんです。

 

移ろいやすい存在だと自覚せずに、たかだか数十年の期間の出来事を「伝統」「定番」「あるべき姿」とか思い込んじゃうから、話が面倒になるのです。アニメはまだまだこれから先変わっていくでしょうし、下手をすれば死滅もしましょう。

 

自分の存在だって、どんなに長くても100年ちょいでしょう。自分も、自分の遺伝子や家系も、アニメ産業も、そもそも文明や世界全体が、結局は「砂の城」なのかなと思うことはあります。

 

でも‥‥、砂浜に作った砂の城が、たとえ打ち寄せる波にさらわれて崩れゆくものだと解っていても、その砂の城を作るのが楽しいんですよネ。

 

人は、「これで安泰だ」とか「これが決定版」とか言いがちですが、いや〜‥‥‥そんなもん、ないでしょ。全ては変わっていくのだと感じます。‥‥というか、全てが変わってきたからこそ、自分はここに存在するし、アニメも生まれたし、アニメを生業にもできたのです。江戸時代に生まれたら、アニメなんて作れないもんネ。

 

素直に、変わること、移ろいゆくことを受け入れ、今と未来をどう生きるか、です。

 

 

過去のアニメ業界の「カンブリア爆発」をいくら懐かしんで永遠のものにしようとしても、虚しく望みのない悪あがきです。現在のアニメの作り方、例えば、After Effectsで撮影してQucikTimeで出力するのだって、20年にすら満たない「一時期的な仕様」です。全然「普遍」でも「定石」でもないです。ほんの10年ちょいの作業仕様です。

 

アニメ制作にも大きな「変動」の周期があって、日本の事情で言えば、まず「アニメを作り始めた頃」〜戦前でしょうかね。次にテレビアニメを作り始めた1960年代中頃、そして、フィルムを必要としなくなったコンピュータのデジタル映像データ時代〜1990年代後半。

 

で、今度は、そのデジタル映像データの大変革の時期です。四半世紀周期の大波です。どんなに大きな堤防を作ったつもりでも、易々と大波は乗り越えてくるでしょう。その「堤防」の概念自体が過去の基準で古いのですから、防いで防ぎきれるもんじゃないです。前の大変革の時だって、あれだけ長いこと使い続けたフィルムとセル絵具が、あれよあれよという間に実質上消滅しましたもんネ。

 

2020年代に、今までの砂の城は、一旦、波にさらわれます。普遍と思い込んで疑わなかった要素が、あれよあれよという間に実質上消滅する様子を、前回と同じように、リアルに自分たちの目で見ることになりましょう。

 

1990年代には、自分の感慨を容易に書き留めて公開するブログなんて存在しませんでしたから、ごく内輪での認識に留まっていました。でも今は、こうして「ある程度は」自分の考えを公開できます。2020年代を目前にして、四半世紀前と同じ大変動の兆しをひしひしと実感すること‥‥くらいは、このブログでも書けます。

 

でもねえ‥‥、いつでも、多くの人はのんびりしてるんですよねえ。‥‥波が見えても、おもちゃセットを砂の城から取り上げないままで、砂の城が崩れるばかりでなく、色々なおもちゃを波にさらわれて失うんですよネ。砂が波にさらわれるのは仕方ないとしても、自分のおもちゃセットは救い出して、また新しく砂の城を作るときに使いましょうヨ。

 

おもちゃセットとは、すなわち自分の技術です。そしてその技術は生きているうちに活用してこそ‥‥ですよネ。

 

 

 

 

 


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