人々の目は肥える

4K HDRのディスプレイモニタ、そして4K HDRの大画面テレビを毎日普通に見るようになると、目が高品質映像に自然と慣れてきます。特別な能力など必要ありません。日頃から高画質テレビを見続ければ、高品質な映像とそうでない映像とが見分けられるようになってきます。

 

最近は、ブラビアのおかげで、60fpsと120fpsまで見分けられるようになってきました。60fpsになると、それだけで緻密で滑らかな動きになるのですが、動きの微妙な僅差で120fpsの滑らかさも判るようになってきます。

 

まあ、60fps以上の判別はともかく、4K HDR 60pの映像は、誰でも自然と慣れて、それが普通になるでしょう。

 

つまり、人々の目は時代とともに肥えていく‥‥ということです。

 

アニメ業界の成果物たるアニメ映像も、未来の人々の「肥えた目」に晒されます。‥‥いや、未来と言わずとも、既に現時点で、50インチくらいの大きさがあれば、4K HDRのテレビで、アニメの制作技術における様々な品質が画面に晒け出されます。

 

どんなにセレクトブラーでグラデーションを処理しまくっても、影をマスクにしてグラデを追加しても、面倒な貼り込みを死ぬ思いでやり遂げても、線にノイズを混ぜ込んでも、作画用紙の小ささ、解像度の低さ、描線のニュンアスの欠如、そしてエコノミー作画枚数のパタパタ感は、すべて4Kテレビに映し出されます。

 

HDテレビの頃はまだ全然マシだったのです。随分とゴマケていました。しかし、去年の型落ちで13万円の49インチブラビア「9000E」でも、150〜200dpiで二値化のアニメの舞台裏があけっぴろげに透けて見えます。

 

*おいおい。この図(上の図)は、いらぬ誤解を呼ぶだろ。寸法の数値を見れば一目瞭然ですが、人物のシルエットは対比図ではないですヨ。

*ちなみに、私らの作業部屋に設置する際に、事前に「設置案」を考えたのが下の図です。だいたい、対比はこんな感じです。ProcreateとiPadがあれば、思いついたメモをそのまま画像データとしてスタッフと共有できるので、楽チンですネ。

 

 

一方、ちゃんと4K相当の画質を有した絵なら、そのまま、綺麗に繊細にニュアンス豊かに、4K HDRテレビは映し出してくれます。映像制作の苦労が報われたい人々にとっては、頼もしい味方になってくれます。

 

要は、素材の状態を結構そのまま映し出して、隅々まで克明に描写しちゃうのが、2020年代の4K HDRテレビです。

 

 

「地デジ化」の頃に買い変えた各世帯のテレビは、そろそろ寿命をむかえます。つまり、再度、買い替えの時期がやってきます。実家のアクオスは今年元旦早々壊れましたし。

 

ホントに人間の感覚は贅沢で、4K HDRテレビで4K HDR映像を見た後では。2Kはぼんやりと輪郭が甘くボケてRec.709の映像はくすんで暗く濁って見えます。

 

ドルビービジョンは、100nitsでRec.709色域〜つまり現行放送の色域を「ワーストケース」として最下位に捉え、規格上では10,000nitsを上限としたHDRの映像技術規格を規定しています。まあ、現実的は1000〜2000nitあたりを最大値とし、最低値を709の100nitsと定め、上位下位のメタデータ値によって「可変」で対応する技術のようです。

 

HDR(2020、2100)とSDR(709)のモニタを並べて見比べると、それはもう、無残。

 

いかに709時代がナローだったか、思い知らされます。

 

その「思い知り」は、映像技術職とは無縁の人々でも、実感できるでしょう。買い替えによって家庭に設置されて、見れば見るほど、今までとの違いに慣れ、もう昔には戻れなくなります。

 

ちなみに、ブラビアの9000Eは、500nits前後のようです。同僚の技術スタッフが色彩計で計測した実測値です。

 

 

 

何度も繰り返しますが、旧来アニメ制作技術のネガティブキャンペーンを張ろうというわけではないのです。今までのアニメの作り方では「時代についていけなく」なってヤバいのを、誇張なく、率直に書き記しているに過ぎません。進み続ける時代から見れば、技術が停滞した現場はたとえ現状維持に努めても、どんどん過去に遠ざかっていくように見えるのです。

 

近代化・現代化って言っても、何から手をつけたら良いか判らない‥‥というのなら、妙にスケベ心など出さず、「手のつけられるものから」が良い‥‥んだと思いますヨ。

 

できないことを無理してやっても収穫を得られずブザマなだけです。大風呂敷を広げて威勢を張っても、おちゃらけて巫山戯て見せても、動揺しているのが逆に際立つだけです。

 

私は、今から10年以上前のことですが、Mac G5が登場していたにも関わらず、自己資金の限界ゆえにMac G4で新技術の開発をスタートしました。高い機材を無理して自腹で買ったところで、相応の技術を持たなければ目標は達成しえないことを知っていましたし、当時の私のメインはPowerMac8600を無理矢理G4に改造したものだったので、生粋のG4に買い替えただけでもかなりの高速化を実現できました。そして、そのG4で随分とノウハウを得ることもできました。

*当時買ったMac G4は「ミラード・ドライブ・ドア」とか呼ばれるモデルで、16万円台で買えた最後の最後の底値のモデルでした。そして買い取り時はDTP御用達とかで10万円で売れて、一番コストパフォーマンスの優れたMacでした。

 

2018年の現在なら、Mac miniクラスのPC、Apple Pencilを使える何らかのiPad、安価な4Kモニタ、Adobe CC。それだけでも4Kの開発は十分スタートできます。できないというのなら、それは単に当人の「開発の才能」の有無だけです。

 

何もできない人間やグループに、周囲が興味を示してチャンスをくれるはずもないのです。「いつまでたっても、チャンスをくれない」っていうのは、そもそも‥‥まあ、いいか、これは。

 

ともかく、本気こそが大事ですよネ。4Kに本気を出さなきゃ、4Kのチャンスなんて巡ってくるわけもないのです。

 

 

未来の目が肥えた人々に対して、「綺麗」「美しい」「かっこいい」と言わせるアニメを、私らは作りたいです。ノスタルジーだけに望みを託すのではなく‥‥です。

 

 



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