デジとアナ

デジタルという言葉は、Wikipediaによれば「離散量」、‥‥何だか難しげな言い回しですが、つまりは「連続していない」「非連続」を表現する言葉です。中間値を持たない「0」と「1」の組み合わせだけで全てのデータを形成するのが、現在のコンピュータの基盤です。

 

なので、「コンピュータの別名がデジタルというわけではない」です。「YESか、NOか、白黒ハッキリしろ!」という考えの人は、デジタルな思考の人間とも言えますし、「YESかNOか、簡単に割り切れることなんて、この世にほとんど存在しないよ」という考えの人は、アナログな思考の人間とも言えます。アナログは「古い」という意味と同義語じゃないですヨ。

 

デジタル・アナログの意味もわきまえず安易に用いると、本当にデジタル・アナログの意味で語句を用いたい時に、結構、面倒なことになります。

 

 

戦国時代劇や忍者モノとかでたまに見る「のろし」は、昔のデジタルデータ伝達と言えます。のろしが上がれば「GOサイン」。のろしの煙の微妙なさじ加減は問わず、のろしがあるかないかだけでYESかNOかを遠くの人間に伝達するのですから、「のろし1本が1ビット」と言えます。

 

しかし、複雑な状況をのろしで表現しようとして、のろし100本をあげたら、のろしの煙が混ざり合って判別できなくなります。無風でまっすぐに煙が上がる時、そしてのろしの間隔を正確に保たないと、伝えたい内容が伝わらないことになります。つまり、のろしだけでなく、のろしを上げる空間の状態も問われるわけです。

 

現在のデジタルデータも似た状況に陥っています。デジタルデータは本来、アナログの品質を問わないのが、売りの1つでした。微妙な中間値を伝送する繊細な品質保持ではなく、ON/OFFの極端な値を組み合わせてデータを形成するので、伝達の欠損を防ぐことができるのです。

 

しかし、伝達するデータの量が格段に増大すると、アナログの電気信号伝送品質も問われるようになります。

 

現在、私らは4K HDR、そして60p以上の基本仕様による、アニメーション制作技術を進めていますが、ケーブルの品質に度々悩まされます。

 

ケーブルを流れる電気信号そのものはアナログです。アナログ伝送線の中を、デジタルデータが超々高速で駆け巡るのですが、10Gbpsのネットワークケーブル、そして40GbpsのThunderbolt3ともなると、アナログの伝送特性における品質が極めてシビアになります。特に、Thunderbolt3はネ。

 

従来とは比べものにならない伝送速度を実現するため、たとえ伝搬するデータの基盤がシンプル明快なデジタルデータであっても、電気信号を伝達する材質やノイズ干渉対策が必要になります。同僚と「また、アナログの品質を問うフェイズに戻っちゃったね」と話すことも最近は多いです。

 

こうした状況に限らず、様々な映像制作の現場において、真の意味でのデジタル・アナログの違いを理解できていなければ、「デジタル」の語句で表現している意味の根本が理解できません。「デジタル=コンピュータ」で「アナログ=古い時代の何か」と言う誤った認識のままでは、アニメ業界のスタッフはいつまでたっても、新時代技術のテーブルの前には座れません。

 

 

未来はデジタルデータの洪水の中に‥‥、いや、今でもすでに洪水の中ですが、より一層、洪水の中で生きることになります。そんな時に、「デジタル何々」とか言っているレベルでは、様々な問題にブチ当たった時に、まさに「頓珍漢」な問答を繰り返すばかりになるでしょう。

 

コンピュータ関連の知識、デジタルデータの基礎知識は、もはや「映像制作における公用語」なのです。

 

どんなに昭和生まれのベテランが、「俺は紙と鉛筆のアナログな人間だから」と言っても、描いた絵はデジタルデータに変換され、映像デジタルデータとなって社会に公開・販売されるのです。誰かが操作するコンピュータとデジタルデータによって助けられ、成立しているのを忘れてはいけません。

 

「公用語って言ったって、誰も教えてくれないし」‥‥とベテランのアニメーターが言うのなら、「技術は教えて貰うものではなく、自分で学び取るものだ」とは決して言えなくなるでしょう。作画の新人の指導に用いる言葉は、こと、コンピュータやデジタルデータの知識や技術の習得において、自分自身に跳ね返ってきますヨ。

 

「勉強会」を開くのなら、PhotoshopやAfter Effectsの使い方のレクチャーも有意義とは思いますが、同時に「ビット」とか「データ構造」「ネットワーク」のレクチャーも有意義かつ必要不可欠です。

 

なまじ、PhotoshopやAfter Effectsの使い方「しか」覚えないから、「デジタルTU」とかタイムシートに書き込んじゃうんじゃないですかネ。デジタルの意味、デジタルデータの組成、コンピュータの仕組みを覚えれば、「デジタルTU」なんて珍妙な用語は恥ずかしくて使えなくなると思いますヨ。

 

 

コンピュータって、電気を一切使わず、木材だけでも作れるんですよ。紙製のフライトコンピュータというのもありますよネ。そろばんって、駒を「上と下」に移動する「1ビット」動作の繰り返しですしネ。西洋音楽の楽譜は、1オクターブを12分割する時点でデジタルと言えます。Cシャープのさらに半々音上のシャープって、記譜できないですもんネ。フレットのないバイオリンはアナログな無段階調、フレットで区切られたギターはデジタルな有段階調とも言えましょう。

 

アナログとデジタルの本当の意味を知れば、「トーンジャンプに何度ブラーをかけても消えない」なんて素人みたいなことは言わなくなるでしょう。コンピュータを毎日使って仕事をしてお金を稼いでいるのに、「ビットの組み合わせ」の仕組みすら知らないままでは、いざ、10bitだ12bitだという会話が生じた際に、ついていけなくなります。高度な専門知識は、まさに専門分野の人間の独壇場でしょうが、コンピュータの基礎知識は前述した通り、「映像作りの公用語」というべき「映像制作のいろは」です。

 

 

アナログの上のデジタル、デジタルの上のアナログ。アナログだと思っていたデータが実はデジタルだった‥‥とか、デジタルデータの伝達手段がアナログに大きく依存していた‥‥なんてことは、やまほど、そこらじゅうにあります。

 

つまり、両方の特性を理解して、片方だけに妙に偏重・偏向せずに、バランスを考えて上手に活用するのがよろしいのだと思います。

 

 

 

 



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