120コマに思う

前日、ソニーの民生テレビブラビア「9000E」を作業場に設置したのは、前回に書いた通りです。あくまで「比較対象=民生で映すとこうなる」的なモニタ=チェックモニタではないので、部屋の面積の都合もあり、支柱を組んで高い位置(バーのパブリックビューイングみたいな)に設置しました。4Kの機材はとにかく今はお金がかかるので、テレビは安く調達したかった‥‥ということもあり、2017年の「E型の49インチ」を導入しました。

 

*9000番以上は、「直下型LED」なので、そこは踏まえて機種選定しました。

 

 

2017年型のブラビアと言えども、120フレーム補完の滑らかさは凄まじく、2Kのブルーレイはもちろん、iMac Proから出力するThunderbolt3 to HDMIのYouTubeやQuickTime Player映像まで、どんどん120フレームに補完する機能は、もしかしたら近い未来の「お茶の間のテレビ」の標準的な姿かも知れません。

 

いかにもフレームレートの低いYouTubeの低品質モード(15fpsらしき)の映像も、滑らかに再生してチープさが軽減されます。以前作った24コマフル、60pフルモーションのアニメーション映像も、120fpsに補完され、非常に滑らかに上映されます。

 

60fpsと120fpsは、ほとんど差がわからなくないほどの僅差ですが、見慣れてくると動きの違いが解るようになります。1秒間で60枚の絵を作り出す60fpsのアニメーションならば、「怪しい補完画像」も生じにくいので、円滑に補完機能が動作するようです。

 

ぶっちゃけ、「当分の間、120fpsはテレビに任せられる」と思うようになりました。わざわざオリジナルで120pを作らなくても、「オリジナルがフルモーション」ならば、相当イケます。

 

 

一方、旧来のアニメ作品は「不利」になります。「あくまで、フレームレートに対してフルモーションが必要」なので、3コマ作画=「8fps ON 24fps」とか、2コマ作画=「12fps ON 24fps」では、フレーム補完機能は「気持ち良い感じに処理してくれない」のです。カメラワークはフルモーションゆえに120fpsに補完されますが、その中で動くキャラのセルは8fpsのままで動く‥‥と言った具合に、それはもう「ちぐはぐ感」が凄いです。

 

さらにもっと不利なのは、60〜120fps映像と24コマベースのアニメとの大きな落差です。私らの作業部屋ではブラビアとEIZOのモニタが併設されているので、24fpsのアニメ映像を両方のモニタにミラーリングで映しだすと、ブラビアでは120fps補完される一方、EIZOではオリジナルの24fps映像がそのまま映し出されるので、落差が誰の目にもハッキリと識別できます。

 

24コマって、こんなにカクカクしてたっけ‥‥と、皆、唖然となります。

 

実写の映画も24コマベースなのですが、アニメとの大きな違いは、「天然のモーションブラー」です。速く動く被写体は、像が流れてボケるので、24コマでもフリッカー感を抑えてマイルドになるのです。

 

しかし、アニメには天然ではモーションブラーは入りません。意図的にモーションブラー風のエフェクトを追加しない限りは、全てのエッジがシャープなまま動きます。24コマ程度の秒分解能では目に残像が残るので、フリッカーのようなモーションになるのです。

 

特に、縦の線が横方向に動くのは、昔からアニメの苦手なシチュエーションでした。映像の中で像を書き換える速度=リフレッシュレートが低いと目に「残像の輪郭が残った」ように見えて、カクカクカクカク、、、、と不快な映像になるのです。

 

 

1本であるはずの棒が、モーションブラーのない状態だと二重像に見えます。これは1秒間に24枚しか画像をもてない24コマ・24fpsの宿命です。24コマの実写映画でも、故意にシャッタースピードをハイスピードにしてブラーの幅をできるだけ少なくして撮影すれば、似たような「フリッカー感」が生じますが、それを逆手にとって映像表現スタイルへと昇華したのが「プライベート・ライアン」の冒頭のオマハビーチの上陸戦闘シーンですネ。

 

 

24fps、12fpsは、ブルブルカクカクパタパタと、残像が不快に目に残ります。一方、モーションブラーで動く方向にボケていると、輪郭がソフトになって「フリッカー感」が抑えられていますネ。

 

そして、むしろ、3コマシートまで動きがカクカクすると、フリッカーというよりは何だか可愛い動きに見えてきます。‥‥まさにそれが、現在の日本のアニメを支えている「制作技術上の命綱」です。3コマのファニーな動きに助けられて、商業アニメは成立していると言っても言い過ぎではないです。‥‥制作者当人がハッキリ自覚しているか否かは別としても、です。

 

 

近い未来、120fpsの動きに何の拒否理由も抵抗感もなく、普通に馴染んでいく世間の人々は、「現状の日本のアニメ技術の成果物」をどのように捉えるようになるでしょうか。

 

他の番組と比べて、なんだかパタパタと動いているけど、それはそれでアニメっぽい味だ

 

アニメだけがパタパタカクカク動いていて、チープで古めかしい

 

‥‥どっちなんでしょうね。

 

私の現時点での考え‥‥ですが、どちらか?ではなく、両方の印象で曖昧に受け取られつつ、旧来のアニメは許容されつつ、映像技術世界においては確実に古くなっていくと思います。

 

 

どんなにチャップリンがサイレント映画で愉快なパントマイムを披露しようと、メトロポリスがその後のSFに多大な影響を与えていようと、白黒、サイレント映画、画質の粗さの時点で、「今、古いものを見ている」という感覚的な実感はぬぐえません。作品性が不動の輝きを失わなくても、映像品質における技術性はどんどん「過去のもの」「昔のもの」に変わっていきます。

 

120fpsが何が何でも素晴らしい‥‥と「新しもの好きの馬鹿」になろうというのではないのです。世間が新しい技術に「徐々に段階的に、そして確実に」塗り替えられていく事実に対し、映像制作者の一員であるアニメ制作者はどのように対峙していくのか‥‥ということです。

 

チャップリンは「トーキー」=音付きの映画(今ではあたりまえのことですが)に、反発していたようです。「映画は音がないから素晴らしい」のであって、音が付くと「演者の演技の動き」が音によって邪魔されて制限される=音やセリフがないから演技で表現していた「芸術性」が台無しになる‥‥と考えていたようです。

 

2018年の今になって思うのは、「技術に対する強い自信から、プロフェッショナルな人間ほど、固執して先見性を欠く」ということです。

 

トーキーにおいても、サイレントの技術は応用できることに全く気づけず、サイレント最高!トーキー最悪‥‥と、サイレント時代の大御所のプロほど、柔軟に対応できなかったのかも知れません。むしろ、観客たちのほうが感覚的に受け入れていったのでしょう。何だか、これからのアニメ制作の顛末を暗示しているように思えます。

 

日めくりカレンダーにあった‥‥

 

正しいと思うことでも

固執すべきではない

 

‥‥という一節は、その通りだな‥‥と思います。

 

 

自分の技術に強い自信をもつのは良いことだと思いますが、その技術に固執し始めたら、柔軟性が失われて「硬直」が始まることも絶えず自覚すべきでしょう。

 

アニメ技術を死なせて薬漬けにしてミイラ化したいのなら話は別ですが、時代とともに歩もうと思うのなら、120fpsに対しても柔軟で多角的な視野をもつことが必要でしょう。

 

まあ、アニメの技術を、ロザリア・ロンバルドちゃんみたいに綺麗にミイラ化したい‥‥と思う人もおりましょう。

 

私は、春夏秋冬、命のサイクルから学んで、「現・肉体」は滅んでも「遺伝子」は生き続けていく道を選びます。日本が培った、日本ならではアニメ制作の技術は、タイムシートやタップ穴ではないでしょ?

 

どんな絵を、どんな風に動かして、どんな作品を作るか。それこそがアニメ制作の「知の遺伝子」だと思います。

 

「SD・HDで24コマでSDR」の肉体は滅んでも、「4K8Kで60〜120pでHDR」の新たな肉体でアニメ制作の遺伝子が受け継がれれば良いのです。少なくとも私はそう考えます。

 

まあ、私自身のリアルな話で、どうやら私は自分の「血の遺伝子」は残せそうもないので、余計に「知の遺伝子」を残そうと行動するのかも知れません。そのあたり〜「自分の逝く末に対する感慨」は人それぞれでしょうが、そんな私だからこそ、「血」ではなく「知」を残そうと明確に意識できるのだ‥‥とも思っています。

 

 

あれ? 120fpsの話がズレましたネ。

 

でもまあ、新しい技術と対峙した時に、当人の反射的な反応は、結構リアルに象徴的に、当人の状態を表すのは確かです。

 

アニメをミイラにしたいのか、アニメを時代とともに生かし続けたいのか。

 

あなたはどっち?

 

 

 


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