AE=ハンドメイドツール

After Effectsはその名から「アフターでエフェクト」のソフト、後処理ソフトみたいに思われがちです。まあ、実際、開発当初はそんな感じだったんだと思います。

 

しかしそんなAfter Effectsも最新版のバージョンは「15.1.1」。私が使い始めたのは「3.1」。‥‥随分とバージョンを重ねたものですが、そのバージョン更新の間に、アフターでエフェクトを追加する目的には収まりきらない機能を獲得しました。

 

エフェクトをゼロから作るソフト=何かのアフターではなく、作り出すソフト。‥‥もっと言えば、エフェクトに限らず、「動く何か」を作るソフトへと姿を変えてきました。

 

「アフターのエフェクトのはず」が、どんどん「エフェクトを処理する前の、素材作りまで可能になった」ソフトに変わってきたわけです。After Effectsを「After Effects」と呼ぶのは、意味不明になりつつあります。

 

私がNukeなどの後発のソフトウェアに中々興味がもてないのは、「ゼロからアニメを作れる」か否かで立ち止まってしまうからです。私が今、日々手元において使いこなしたいのは、前工程で用意された素材ありきで機能するソフトウェアではなく、ゼロからアニメを作れる「アニメーションのツールボックス」、ゼロから映像を作れる「映像作りの道具箱」なのです。

 

たとえば、下図は、After Effectsの平面レイヤーで作ったキャラクター(と空の背景)です。前工程から受け継いだ素材は全く無しで、ガチでAfter Effectsだけで作っています。他のソフトで描いたり作ったりした素材は一切使用せず、After Effectsの内部の平面レイヤーとシェイプレイヤーだけで構成しています。

 

 

*4〜5年前にテスト目的で描いた「After Effectsのベクター系ツールで描くキャラ」をもとに、キャラを全面的に描き直した2018年バージョンの「ベクターガール」です。2D描画スタイルの研究材料です。

*ちなみに、この絵の描線は基本「1ピクセル」設定です。4800pxのキャンバスに1ピクセルなので、相当細いはず‥‥ですが、アンチエイリアスで太って見えるんでしょうネ。

*上図のサイズだとわかりにくいですが、別ウィンドウで画像だけ開いて等倍で表示すると、描線が全く無機質なのがわかります。まあ、線に後付けで鉛筆風のゆらぎやムラやノイズを加味することも可能ですが、せっかくのスッとしたテイストですから、無機質なパス線が活きるキャラデザインと演出法=作る人間側の逆転の発想に重きをおきたい‥‥と思います。なんでもかんでも鉛筆時代に執着するのではなく、です。

 

 

After Effectsだけで作っているので、容量は以下のように軽いですし、外部のフッテージ(素材)なしに、このファイルだけで全てが完結します。

 

*ベクター描画のレイヤーだけで5.6MB‥‥なのは、考えようによっては重いとも言えますが。

 

 

オリジナルは4800pxの16:9で、ダウンコンして3840pxの規格サイズに合わせています。淡白な表現にしていますが、もっと濃い表現にしたければ、いくらでも。

 

「After Effectsの平面レイヤー・シェイプレイヤーだけで作るとどんな感じになるか」のテストなので、このテイストで何か映像を作ろうとは今は考えていません。わざと無機質な描線(=単なるパスの輪郭線の1本線だから)で作っていますが、私はやっぱり、描き手の筆致が表れる描線が好きなので、当面は「パスでキャラを描く」のはテスト目的です。

 

でもまあ、その気になれば、After Effectsだけでこのくらいの絵はすぐに描けるのです。After Effectsにはその能力が十分に備わっています。‥‥まあ、「その気になる方法」「その能力」が広く認知されていないだけで、After Effectsにはもう10年くらい前からこのくらいのポテンシャルは実装されています。もちろん、この絵を動かすことも可能です。全てのシェイプがキーフレームで操作可能ですし、Birth&Deathの手法(現われて消える)を使えば、Z軸回転の動きも可能になります。

 

 

ただ、ちまたで言われるように、たしかに‥‥After Effectsの設計は色々と古いです。HDRの対応なんて立ち遅れもいいとこ‥‥です。

 

ビジュアルエフェクト観点で言えば、たしかに、After Effectsは古さを感じるでしょうし、もっと新しいソフトも使ってみたいと思うでしょう。私もビジュアルエフェクトやアニメ旧来の撮影で言えば、After Effectsの限界をありありと感じます。いつまで古い仕様のままなんだ‥‥と。

 

でも、私らの技術グループは、After Effectsを本番のコンポジットだけで使う‥‥なんて狭い使い方はしません。After EffectsはそれこそVコンテからカラースクリプト、キャラクターアニメーション、エフェクトアニメーション、ビジュアルエフェクトなど、様々な制作工程の要所で活用できるソフトウェアです。私らのフローでは監督・演出や作画においては随分前からAfter Effectsによる作業を組み込んで活用していますし、もしかしたら未来的には色彩設計も美術も、After Effectsを(補助的にでも)使うこともありえます。

 

逆に、後発のソフトウェアがどんなにいまどきのUIだろうと、HDRに対応していようと、ハンドメイドで自分の思うようにゼロから映像素材を作れなければ、少なくとも私にとっては魅力の少ないソフトウェアです。

 

After EffectsがRec.709しか書き出せない旧態依然とした仕様でも、ゼロから色々な映像を作れる底力は魅力なんですよネ。HDRへの対応は、他のソフトウェアとの組み合わせでなんとかなりそうですし。

 

 

After Effectsはツールボックスとしか言い表しようがないです。決して、「After Effects」ではないス。

 

でもさあ‥‥、開発のアドビさんには、もうちょっと未来の映像フォーマットや映像技術を意識してもらって、After Effectsに「今日的」な機能を実装して欲しいんですよネ。

 

HDR観点で見ただけでも、旧式化は否めないですもんネ。最近、また、ProRes4444 XQが呼び出せなくなったし。

 

After Effectsはツールボックスとして非常に柔軟性の高いソフトウェアですが、すぐそこの未来の4KHDR、そして60pなどへの対応能力は残念ながら低いと言わざる得ません。

 

 

一方、Blackmagic社のDaVinci Resolveは、今後、期待大です。バージョン15の機能追加はワクワクしますネ。After Effectsの代わりにはなりませんが、アニメーション(=絵を動かす)工程とは別のエリアで、色々なジャンルにまたがって活用できる予感がヒシヒシと伝わってきます。

 

ぶっちゃけた話、Blackmagicは弱者の味方です。だって、他の放送プロ機器・映像プロ機器に比べて格安でしょ。

 

もっと言えば、アニメ制作会社は、せめてBlackmagic社の製品くらいの価格帯に慣れる意識は、今後必要です。なんだかんだ言いながらも最終的には「デジタル」で飯を喰うのが2010〜2020年代のアニメ会社なのですから、安マシンと安PCモニタで「安くアニメが作れるようになった」なんてアマチュアみたいなことを言い続ける意識は2020年代には淘汰されるべき‥‥とも思います。

 

「デジタルデータ」の納品でお金を稼いでいるのに、「デジタル機器」にできるだけお金を使いたくない‥‥って、ある種、背信行為とすら思えます。工業の世界では「性能の偽装」って社会問題にまで発展する行為ですが、アニメ業界の「HD」って‥‥、まあ、いいか、ソレは。

 

まあ、とにかく、ちゃんと、必要最低限のスペックの機材は揃えたい‥‥ですよネ。

 

 

話を戻して、After Effects。

 

After Effectsの今後の要望は、とにかく、4KやHDRのすぐ先の未来をもっと意識して欲しい‥‥ということです。今すぐに実装すべきは、Rec.2020やP3などの色域を扱える機能拡張です。After Effectsの古い仕様に合わせて、周りのソフトウェアや機器がフォローしまくっている‥‥というのは、明らかに「お荷物状態」なんですよね。

 

実は、After Effectsの有用性と未来性を一番わかっていないのは、開発元‥‥だったりしてね‥‥。‥‥そうじゃないことを祈るばかりです。

 

 

 

 


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