フロントとバック

アニメーターの仕事が100%だった頃、すなわち、自宅の作業スペースか制作会社の作画部屋が行動エリアのほとんどだった頃は、何がバックヤードで何がフロントヤードかを知る由もありませんでした。‥‥だって、0号試写でもない限り、他のジャンルの映像制作関連会社に出向くことはなく、日常のほぼ全てがアニメ制作会社しか知らなかったのですから、バックヤードの流儀しか知らなくてもしょうがなかったのです。

 

しかし、様々な映像ジャンルの、ポスプロに近い工程の仕事をするようになると、頻繁にラボや配給会社の試写室などに行く機会が増え、「アニメ会社と違って、随分と綺麗なんだなぁ‥‥」と、何よりも「見た目」のギャップを感じるようになりました。玄関から入って待合室〜ロビーのテーブルに着座するまで、いかにも「お客さんをお出迎え」感を醸し出しており、アニメ制作会社の玄関出入り口とはあまりにも差があって、何だか「ビンボーな家の子が、裕福な家の子のお誕生会に呼ばれたような気まずさ」を感じたものです。

 

そんな時、悪ぶって、「よっぽど物が少ないんかな」と思ったりもしましたが、通常はお客さんを入れないバックヤードに映像のモニタチェック目的で入れさせてもらった時、「いつもの感じ」の雑然とした光景で、妙にほっとした思い出もあります。他にも、かの「夢の国」のバックヤードに入った時も、フロントヤードとはあまりにも大きな差があり、いろいろな物品が廊下の壁面に並び、スタッフが行き交い、作業場感満載でした。

 

つまり、フロントヤードとバックヤードの「切り分け」がしっかりしているのです。

 

いきなり玄関にダンボールが山積みになっていることもなく、お客さんが通る導線には所帯染みた物品は意識的に置くのを(おそらく)禁止しており、フロントヤード〜お客さんが立ち入る部分の「マイナスイメージ」を抑制しています。その代わり、バックヤードは見た目など関係なく、作業者の使いやすいように臨機応変に自在に空間を使っているわけです。

 

制作進行さんや作画・美術・仕上げ・撮影スタッフが常駐するスペースはまさにバックヤードなので、もしお客さん〜クライアントが立ち入ったとしても、お客さん側に「今、バックヤードに居るんだ」という意識も生じましょう。ゆえに、過度にスタイリッシュに物品を排除する必要はなく、作業場然としていて良いと思います。

 

しかし、お客さんを「どうぞ、会議室はこちらです」と招き入れる空間に関しては、バックヤード感はできる限り排除したほうがいいな‥‥と、思うようになりました。

 

だってさ‥‥。ん千万円の仕事の話をする際にさ‥‥、変なマイナスイメージやハンデや足枷はできる限り少なくした方が良いじゃん?

 

 

とは言え、過去の私がそうであったように、アニメ会社のスタッフの多くは、フロントヤードとバックヤードの切り分け意識は希薄です。

 

玄関にダンボールが山積みされていることもあるし、会議室に続く廊下にはダンボールが常設して倉庫代わりになっていることも、往々にしてあります。

 

「それって、いけないこと???」

 

‥‥と思う人もアニメ業界にはいるでしょうが、別に罪にはなりませんが、貧相です。ミジメです。そして、不利です。

 

 

でもね‥‥。これはクチで言っても、中々解らないことも事実。私がそうだったから。

 

なので、少なくとも私は、打ち合わせや試写や立会いの際に、若いスタッフを色々なフロントヤードに連れて行って、見識を深めてもらおうと思っています。

 

やっぱりさ‥‥、見て、来て、座って、「場」を実感しないと、気づかないのですヨ。「うわ‥‥。自分らのお客さんスペースとは、段違いだ‥‥」と。

 

 

アニメ会社の全スペースをショールームみたいにするのは、それはそれでアホです。見た目偏重で内容が伴ってないと思います。

 

しかし、フロントヤードとバックヤードを明確に切り分け、お客さんが立ち入るであろう会議室に繋がる導線に関してはしっかりと「フロントヤード」に徹するのは、国内のラボに学ぶべき有意義な意識だと思います。

 

アニメ業界って、ブラック業界とか言われますが、貧乏な家の子だからって、ココロまで貧乏になる必要はないのです。玄関や廊下までブラックにする必要はなし。‥‥むしろ、ビンボーであるばあるほど、シャキッと毅然としていたいものです。ココロまでビンボーになったら、戦う前から負けですもん。

 

ヘッドの人間、目上の人間が、フロントヤードとバックヤードを意識せず、漫然とだらだらと空間を野放図に物品の山にしていては、若い人たちの意識も芽生えません。「ここはフロントヤード」「ここはバックヤード」という意識を、まずは、年長者が実践すべき‥‥だと思いますヨ。

 

 


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