固執する危うさ

私は新しい作画技術〜アニメーション技術に軸足を据える一方で、旧来の現場の仕事もそれなりに並行しています。加えて、メカやエフェクトだけでなく、キャラの作画も引き受けていますが、それは「何かに偏り過ぎる」危うさを経験上知っているから‥‥と言えます。理屈よりも感覚で、「あ、夢中になり過ぎてる。偏り過ぎてる。」と自己防衛本能が作用するのでしょう。

 

シリアスな作風ばかりやっていると、やはり「偏ってるな」とリミッターが働き、エロコメみたいなのも依頼があれば引き受けたりします。仕事を選ばない人だなー‥‥と思われがちですが、偏りを和らげるバランス感覚は必要だと思っています。

 

できる限り、新しい技術の体系作りに関係する作業に従事しようとする一方で、旧来技術の「独壇場」「真骨頂」もわきまえ、1つのポリシーやドクトリンに固執しないよう、柔軟さを心がけています。

 

 

 

1枚岩って、頑丈で力強い反面、岩の側面や後ろに回りこまれたら、一気に総崩れになるのです。みんなで結束して一枚岩だ!‥‥ということは、皆が同じ弱点を有することでもあります。もし新しい時代の波が、その1枚岩の急所を突いた時、なまじ同じ性質で団結していたがゆえに、砂糖の山に水をかけるかのごとく、全てが溶けて消えてしまうでしょう。

 

全ての物事にはぞれぞれ独自の性質があり、1つの物事に過信して固執することは、絶滅や大量死を意味します。

 

ゆえに、自然界は「交配と遺伝子」という仕組みを作り上げたのでしょう。雑種の方が純血種より免疫力が高い‥‥なんていう話も聞きます。

 

「これが本命だ。未来はこれなくしてあり得ない!」と確信していても、それは確信するだけに留めて、色々な可能性を同時に進行させるのが肝要と心得ます。

 

 

 

一方、旧来の現場、特に作画はどうか‥‥というと、今までの作画技術に固執している向きは否めません。新技術に邁進する私よりも遥かに、現在の現場で作画に携わる人のほうが、技術に固執しているように思えます。

 

今の作画方式を続けるしか可能性がない。だから固執する。‥‥非常に危ういことです。

 

実は私は、新しい技術でアニメーションの基礎から構築し直す取り組みとは別に、もう5〜6年前から旧来作画ベースで4Kに対応する取り組みも着手しており、大まかなガイドラインはもう出来上がっています。ペンタブ系の作画、通称「デジタル作画」で4Kで‥‥という話になれば、その方式になるだろうと考えています。

*たしか‥‥このブログでその話題を以前に書いた記憶があるのですが、記憶が曖昧で‥‥。

 

しかし、旧来作画ベースの映像制作の限界が低いのは否めません。4Kを意識したキャラデザインを手描きで何千枚と描く方式には、やはり限度があります。プロペラ機が最高速度を競うようなものです。「800Km/時」が限界です。

 

800Km/時の最高速を、900Km/時に上げるために、恐ろしく莫大なコストをかけたとしても、「音速領域」には到達することができません。

 

 

*F8F「ベアキャット」。私の大好きな戦闘機です(写真はレース用のレアベア)。コイツが日本の空に来襲する前に、戦争が終わってホントに良かったよ‥‥。

 

とは言え、いくら速度限界が800Km/時でも、プロペラ機が世界から完全に消えたわけではありません。

 

旧来の作画技術も、技術をさらに拡張した「描き送り作画の最終形」として、未来の可能性は留保されるべきでしょう。

 

 

一方、新しいアニメーション作画技術は、「人が操縦する」ことには変わりないですが、同じく飛行機で例えるならば、エンジンはプロペラ=レシプロではなくジェットエンジンです。現在の空港、現在の空軍を見れば、そのほとんどの飛行機がジェット化されているのと同じく、作画技術においても、新しい時代の映像技術・娯楽のインフラを使いこなして活躍するためには、肝となるエンジンの入れ替えは必須でしょう。

 

ジェットエンジンは、機体の設計もあいまって、容易く音速を超えます。レシプロでどんなに苦労しても不可能だった音速を‥‥です。

 

*F-16。見飽きるくらいどこでも見かける、世界的ベストセラー機ですが、やっぱりかっこいい。性能の高さは美しさとして表にあらわれますネ。

 

だから、これからのエンジンは全てジェットだ、ジェットは素晴らしい!‥‥となると、それはそれで容易に足をすくわれます。新技術に固執し過ぎて柔軟さを欠いて、コテンとひっくりかえって勝機を逃す原因にもなります。

 

ジェットにはジェットの特性ゆえの利点と欠点があることを、絶えず意識し、旧来のレシプロの利点と欠点も考慮し、総合的に運用する「度量の深さ」が求められます。

 

 

何か1つに、固執するのは危ういです。

 

それは旧時代視点でも、新時代視点でも、です。

 

 

今、私が作業している旧来技術ベースの原画の仕事は、コンポジット含めシーンまるごとの引き受けで、わたし的には「この仕事をもって、私の旧来作画技術の締めにしよう」と思っていましたし、以前のブログでもそう書いたのですが‥‥‥‥う〜ん、何だか、そうなりそうもない予感がしてきました。

 

レシプロとジェットの2つは、どちらも「飛行機のエンジン」であるがゆえに、そう簡単に「どっちか1つ!」‥‥にはならないのでしょうネ。

 

 

 


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