省略

おそらく、世間一般のなんとない認識では、「漫画やアニメは略画だから簡単だ」というのがあるでしょう。線で省略して描いて、中をベタ塗りするので、「簡単なモノだ」と無意識に感じ取ると思います。

 

で、前回書いたAIも、恐らく、「簡単に描かれたアニメ」だったらAIで処理できる‥‥という、ある種、迂闊な認識もあるのかも知れません。

 

しかし、「何かを極端に要約して、シンプルに表現する」というのは、ことのほか、難しいものです。

 

例えば‥‥

 

 

柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺

 

 

‥‥の、誰でも知ってる正岡子規の俳句は、文字を何百も割いて表現しているわけではないのに、その場の情景や温度、風、光、そして感情や感慨などの様々な「情報」を内包しています。

 

柿が実る季節

鐘がなる夕暮れの時間帯

法隆寺の近隣

 

‥‥は、すぐにでも文字から導き出せるでしょう。これらの要素を、さらに読み解いていくと、

 

柿を食べている=夕飯ではない=ひといきついて、ふと、休息している

夕暮れの時間帯=空は徐々に赤みを増し、カラスの鳴き声も聞こえているだろうか

法隆寺の近隣=古都の面影を忍ばせる家屋の佇まい=垣根や庭の葉も徐々に枯れ始める頃だろうか

 

‥‥いうような情景のディテールがたった5+7+5=17文字の中に含まれています。

 

そして、そうした情景の中で、

 

法隆寺の存在=自分の生まれる前の、遥か昔から流れ続ける時間

柿を食う=今こうして、リアルタイムに生きて、柿をカジっている自分

 

‥‥という、

 

悠久と刹那の混じり合うニュアンス

 

‥‥までも読み取れます。その場に生じた、ふとした感情までも情報としてロードできるわけです。

 

恐ろしいのは、たった17文字の情報から、正岡子規の感情や感慨を「追体験」できる点です。

 

人間の知能って、何なんでしょうネ。

 

 

このような「自分という存在の、確かさと儚さ」を、AIが単語だけオンライン辞書から引っ張ってきて、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」から読み解ける?


単語の組み合わせから解釈を導き出せなければ「知能」とは言えないですからネ。

 

 

それに、上述の解釈は、あくまで私が読み取った解釈であって、全然違う解釈をする人もいるでしょう。

 

そこが面白いわけです。

 

ダメよ。誰かがデータベースにアップした「正岡子規ベスト俳句・解釈ライブラリ」から引用しちゃ。そんなの「人工知能」ではなく、「ライブラリ検索機能」でしかないですからネ。

 

 

極限まで切り詰められた要素の組み合わせで、大量の情報を導き出す‥‥という点において、俳句や詩のスタイルは、漫画やアニメの絵に共通します。

 

ですから、「簡略化した絵だから、そんなに手こずることもなく、コンピュータが自律的に描けるだろ」と思うのは、あまりにも思慮が浅い考えです。実写から輪郭抽出するのとはワケが違います。

 

 

ただ、「今、流行りのキャラのパターンをパーツわけしてライブラリ化」して、組み合わせのメソッドを作って、少々のランダム要素を入れて、「新しいキャラを作りました」というのは、AIに頼らずともコンピュータで実現可能でしょう。というか、既にやってますよネ。

 

ですから、生身で絵を描く側が「流行りのパーツの組み合わせルーチンワーク」で仕事してたら、生身の人間の優位性なんてあまりないですよね。

 

やっぱり、絵は、どんなに簡略化されていようと、その人間の「体の中に流れる、血」で描かないとネ。

 

 

 

‥‥あ、そうか。この「血」で絵を描く‥‥なんていう言い回しも、AIには難しいのかな。「血」とは何を暗喩しているのか、どのような複数の意味を内包しているのか。

 

人間だって、意味が伝わらない人、いますもんネ。

 

 

 

AIの発達は、私個人としては、とても楽しみにしていますし、仕事に活用できるのなら喜ばしいことでもあります。

 

ただ、使い捨てではない、ちゃんとした作品を作ろうと思うのなら、AIはもっと「表現が上手になって」からでないと「スタッフには加えられない」んですよネ。

 

 

 

 

 


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