何度もルッサー

私は、映像制作の現場のものすご〜〜〜〜く強い実感として、作品の出来栄えは「各作業者の技術の掛け合わせで決まる」と考えております。

 

何度も書いてきた「ルッサーの法則」はその実感を代弁してくれるような理論で、知人・友人とも「それって、凄くよくわかる」と話し合うこともしばしばです。

 

仮に、5つのセクションが90点の「合格点」意識で作業し、それらの作業が組み合わさって出来た結果物は‥‥

 

 

0.9 x 0.9 x 0.9 x 0.9 x 0.9 = 0.59 :59点

 

 

‥‥という「まさかの不合格点」となります。

 

もちろん、作品の各カットは上記のように簡易に素点できる性質ではないですが、「ものの例え」としては状況をよく表しています。

 

 

「みんなで90点の仕事をすれば、作品も90点」なんて甘すぎる考えです。作品の出来映えは「平均点ではなく、掛け合わせによって決まる」のです。

 

もし、90点の作品を目指すのなら、スタッフ皆は、

 

 

0.98 x 0.98 x 0.98 x 0.98 x 0.98 = 0.90 : 90点

 

 

‥‥と、各作業工程がほぼ満点の98点の仕事をする必要があります。

 

 

これって、経験ありませんか?

 

皆が、ほぼ満点と言える仕事をして、ようやくイメージに近い仕上がりになる‥‥という経験。

 

皆が、「これなら平均点だろう」と軽く手を抜いた作品は、冴えないダメダメな出来になる‥‥という経験。

 

 

‥‥で、撮影をやっていると、必ずあるのが、「なんとかしてくれ」とか言われるカット。撮影はプロダクションの最後の最後なので、もう撮影=コンポジットでしか挽回できない‥‥とばかりに、「なんとかして」と頼み倒されるわけです。

 

私は作画も撮影も兼任しておりますので、両者の視点で「辛いこと」だと思います。しかし、監督と演出に「このままではどうにもならない」と言われ、最後の工程ゆえに逃げ場もない‥‥となれば、あの手この手で「失った点数を挽回」するほかありません。

 

例えば、前工程で90点の作業をしてしまった作品(カット)を、59点ではなく、せめて90点に挽回したいのなら、

 

 

0.9 x 0.9 x 0.9 x 0.9 x 1.38 = 0.91 : 91点

 

 

‥‥と、最終工程で色々と盛り込んで138点の仕事をしなければ、90点台まで挽回できません。

 

この逆も然り‥‥で、作画のパワーだけで作品を維持したいのなら、

 

 

1.38 x 0.9 x 0.9 x 0.9 x 0.9 = 0.91 : 91点

 

 

‥‥というように、「後の工程があてにならないのなら、一番最初の作画段階で気張るしかない」と138点の作画を、骨に鞭を打って描くわけです。‥‥しかしなあ‥‥‥2原動仕では、それもままならない現在‥‥ではありますがネ‥‥‥。

 

 

どちらも、「あるある」ネタだと思いません?

 

 

でもね‥‥こういうのは、もうヤメにしたのです。

 

いつまでたっても、アニメ現場スタッフは、内輪揉めの連続で、報酬も低く‥‥の繰り返しですもん。

 

作画は作画のことしか見えずに「なぜ撮影がそういう処理に至ったか」をまるで考慮せずに恨むし、撮影はゼロから絵を作る苦しみを根本的に理解できないし‥‥‥なんて、「啀み合うために現場はあるのか?」と辟易します。

 

 

つまりは、簡単なことです。

 

作画スタッフも撮影(コンポジット)をやれば良いし、撮影スタッフも作画すれば良いんですよ。

*追記:ちゃんとジョブとしては独立して、作業者が兼任する‥‥という意味ですヨ。不安になったので書き添えておきます。

 

 

「んな、アホな」と思う人が大多数でしょうが、そもそもアニメを作る時に今のようなセクショナリズムが形成されたのは、単一的なワークフローに各社各人が付き従っているからです。まるで「万物の法」のように踏襲し続けてるよね‥‥。少しは「今までの作り方」に疑問を感じたりしないですか。

 

「絵が動いて、アニメになりゃ、良いんでしょ?」と、原点を思い起こして、新たなバトルドクトリンを作り上げれば済む話です。

 

いつまで、先人が作ったフローにしがみ続けるのか。

 

新しい作り方を、考えればいいじゃん。

 

 

 

ルッサーの法則的考え方は、作業工程のポテンシャルが技術の進化によって向上した場合、以下のような「逆」の結果すら生み出します。

 

 

1.1 x 1.1 x 1.1 x 1.1 x 1.1 = 1.61 :161点

 

 

各作業者の技術ポテンシャルが、110点をマークすると、作品全体では61%も向上して161点になる‥‥というのは、やはり経験が何度もあります。各スタッフのスゴい仕事がかけ合わさると、全体的にはモノ凄い出来になる‥‥という。

 

しかし、未来の方法は旧来のソレとは違います。何も「今までよりも10%多く働く」とか「血管を浮き立たせてハイテンションの仕事をしよう」と言うのではなく、「現代の技術の特性を活かして、品質的にも効率的にも、旧来より格段に進化した現場を作る」ことで「従来100%を超えた能力を人間から導き出す」のです。

 

この100点をオーバーした61点分のリソースは、「4K時代に適合」させたり「人員の小規模化=報酬の高額化」に用いたり、色々と活用できます。もちろん、最新機材の運用にも盛り込めるでしょう。

 

まあ、ここでは控えめに「1.1」としていますが、実際はもっと大きな数値を叩き出します。通常20〜50人かかって2K24pしか作れないところを、数人〜十数人で4K60pで作りきってしまう‥‥わけですもん。

 

 

 

ひしひしと現場で感じていること‥‥だと思いますが、「自分の能力を、本当にこんなことに酷使してスリ減らしてよいのか?」と考える人は多いんじゃないでしょうか。

 

よく考えてみてください。

 

今よりも、どんどん映像の品質が向上していくブロードキャストやネットワークや何らかのデータ収録メディアの中で、「今までの作り方のまま」で対応していけると思います?

 

私はダメだと思います。

 

「昔ながらの作画を継承する、極上の老舗」にでもならない限り、旧来の技術はやがて時代の波にのみこまれて沈みます。‥‥でさ、今、「極上の作画アニメ」を作れると自負できるところって、どれだけある? 時代の波に打ち勝てる老舗になれる?

 

現在、数多く存在しているアニメ制作会社のうち、数社は「伝統を守る老舗」として生き残るでしょうが、残りは時代によって淘汰されると予測します。‥‥まあ、普通に考えて、誰もが予測可能なことなのに、「そんなの信じたくない」と思う強いバイアスがアニメ業界人には作用してしまうのでしょうネ。

 

例えば、「デジタル作画の将来性」‥‥とか、そんなのちょっと真剣に考えればわかるじゃん?

 

旧来作画技術を「デジタル化」したところで、未来がどんだけ開けるか‥‥は、まさに「デジタル作画」をリアルに作業中の人間が、自身の作業効率から試算してみれば解りますよね。「デジタル作画」に転向したところで、自分の能力は「0.9」のままか、「0.95」くらいなんじゃないですか。

 

2Kでソレでしょ? 4Kは?

 

 

 

前回の続きみたいになりますが、私は「未来を切り拓く」ことには、どんどん首を突っ込む‥‥どころか、全身でダイブする所存です。

 

皆さんも、自分の能力を「0.9」止まりにする現場ではなく、「1.1」にも「1.5」にも拡張できる現場を形成して、そこで働いてどんどん稼いで、持ち家の1軒でも持てる身分になりたい‥‥と思うんじゃないですか。それとも不幸なままが、アニメ制作者にはお似合いだと?

 

ブラック業界と言われる状況からの脱出と、旧来技術の終了と、新技術の台頭は、全て同じ器の話‥‥です。

 

まあ、あくまで私の考えなので、各人がどのように行動するかは、自由に任されている‥‥んですけどネ。

 

 

 

 

 


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