共有の悪・2

なぜ、私が「共有」に対して、そんなに目くじらをたてるのか‥‥は、コンピュータ・ネットワーク時代の「共有」にありがちなのが、データ=コンテンツの丸ごと共有、もしくは切り貼り共有だからです。

 

例えば、紙と鉛筆で描いたキャラクターの原画があったとします。その原画はとてもかっこよく描かれていて、原画を保管する場所に誰でも見れるように保管されています。

 

ある日、とある原画マンが、とある別話数の別カットで、「あ、これ、一部だけ変えれば、そのまま使えるじゃん」‥‥と、その原画をコピー機でコピーして、カッターで使う部分だけ切り抜いて、原画用紙に貼り付け、足りない部分を少し描きたして、「自分の原画上がりです」と提出して、報酬として原画料金を得た‥‥‥としたら、どうでしょうか。

 

  • 他者の描いた原画を無断で複製し
  • 切り抜いて位置調整して新たな用紙に貼り付け
  • 足りない部分だけ少し描き足してフィニッシュ
  • 原画番号やタイムシートの記述はカットに合わせて修正

 

‥‥という行為に、正当な報酬が払われるのなら、ぶっちゃけ、一番最初のオリジナルの原画を描いた人はどう思うでしょうか。

 

このような行為は、報酬面で公平感を著しく損ない、さらには「最初に原画なんて描きたくない。誰かが描いた原画をコピーして編集した方が楽だから。」という意識まで現場に生じさせるでしょう。

 

幸い、そんな「他人の原画を切り貼りして、自分の原画としてアップする原画マン」は見たことがないので、あくまで架空の話です。

 

 

しかし、例えばAfter EffectsのコンポジットではAEPデータを流用するなど、現場では日常的におこなわれており、AEPデータは「くれと言えば、くれるものだ」とまで思い込んでいる人もいます。

 

撮影工程ではこうした「カジュアルコピー」が横行しており、私はそうした流れにあくまで対抗・反抗しているので、‥‥‥まあ、良くは思われていないわな、現場からは。

*なので、今はめっきり、アニメの撮影の仕事は減りました。でもそれは、新しい方向に目を向ける大きなきっかけともなったので、良かったと思います。今でもアニメの撮影しかやってなかったら、了見も技術も幅が狭いままで、新しく広い方向に自分の能力を応用できていなかった‥‥と思います。アニメの撮影って、ほんとに、コンポジット技術のごく一部でしかないもんネ‥‥。

 

でもさ、After EffectsのAEPファイルは、コンポジットの設計図だからネ。設計図を簡単に他にバラまく馬鹿が、どこにいるんだよ‥‥‥‥‥って、ああ、アニメ業界は少なくともそうか。

 

みんなで共有すれば、みんな同じ作業ができる‥‥って、作業者個々の作業価値を貶める行為を率先して推進するような気風が、コンポジット周りの作業にはあるようで、それじゃあ、新しい技術はおろか、新人個々の映像表現力だって育っていかないです。前にも書きましたが、みんな同じ技量なら、安く提供するところにどんどん作業は流れて、ハイハイ、安売り合戦の始まりです。

 

それにさ、どんなに新しい技術を開発しても、1回だけ作業依頼されて、その成果物から中間ファイルに至るまでどんどんファイルコピーされて、二度と仕事が依頼されない‥‥なんて話になるのだったら、新しい技術や表現なんて「アホらしくて」「くたびれ儲け」で誰もやらなくなります。もう新しい技術や表現なんて外部に提供せずに、自分たちにちゃんと利益が還元される方法を模索するようになります。‥‥当たり前だよね、そんなの。

 

 

人間だけだけなく、会社組織もさ、「技術の価値」っていうものを、ちゃんと考えて行動しなさいよ。技術は価値であり、武器なんですヨ。その技術価値は、自分たちの生活を支えるお金を生み出すものなんですヨ。

 

プロジェクトファイルを安易に流出させるのは、技術価値の流出・放棄だからネ。

 

仕事のやり取りは、結果物の映像ファイルだけで十分でしょ。

 

逆にさ‥‥‥結果物たるQTなりの映像を公開した時点で、解る人には解っちゃうんですよ。レベルの高い人々に対しては、完成形を見せただけで、手の内を見せたのと同じなのです。

 

完成映像を見ただけではわからないような未熟な人たちが、どんなプラグインを使っているんだ?‥‥とか、レイヤーは何個重ねているんだ?‥‥とか、これをやるのに何時間かかったのか?‥‥とか、的外れで素っ頓狂な分析をして、あわよくばプロジェクトファイルを欲しがるのです。‥‥ちょっと、キツい言い方ですが、事実だからしょうがない。

 

雛形のAEPファイル、すなわち標準技術に準じたAEPファイルなら、流布しても良いでしょう。ちょうど、レイアウト用紙やタイムシート用紙が供給されるように。

 

でもさ、完成形のプロジェクトをまるごとよこせ‥‥なんて、技術者・技術グループ同士のマナー違反・営業妨害も甚だしいです。

 

 

とある、凄腕の原画マンは、監督に「俺の原画は、絶対に人目のつかない場所においてくれ。すぐにコピーが出回るから」と詰め寄っていました。たしかに、原画だけでなく、タイムシートまでコピーされて、業界に出回ったりと、酷いもんだなと思いました。まあ、凄く上手い人ですから、情報を知りたがる人も多かったのでしょう。

 

もしさ‥‥、ほんとにその人の技術が知りたかったら、その人に直接会って、教えてもらえばいいんだよ。ただ、それだけだって。

 

‥‥知らない間にコピーを取る‥‥なんて、姑息な方法を使うんじゃなくてネ。

 

でさ、その人に会いたければ、会えるように上手くなってのし上がっていけば良いのです。下手くそなまま、上手い人の技術を垣間見たって、理解できないって。

 

それに‥‥です。あの人と一緒に仕事がしてみたい‥‥という情熱が、本人の技量を猛烈に向上させるのです。

 

 

「でも、データ共有ができなければ、新人は上達できないのでは?」

 

‥‥と考える人もおりましょう。でもそれは‥‥

 

データ共有すれば新人は上達できるのか

→他人のデータからの切り貼りの手順は覚えられるでしょうが、映像表現の能力は一向に上達しません。

 

データを共有しない場合はどうするのか

→目で見て模写・模倣を繰り返して、時には経験者のアドバイスを受け、他者の技法から学び、やがて独自の技法を形成していきます。

 

データを共有しないで、効率化は果たせるのか

→もし、特定の表現手法や効果があるのなら、「バンク」化して、あくまで技術集団内でライブラリ化すればよいです。もちろん、その「バンク」は、外部流出などがおこらないように、集団内で管理されます。

 

 

‥‥ということです。

 

データ共有すれば、新人が上達する‥‥なんて、どう考えればそう思うのか、教えて欲しいくらいです。

 

逆に、コンピュータのデジタルデータを複製して入手できなかった頃は、新人が育成できなかったのか?‥‥全然そんなことはないですよネ。

 

先述の、他人の上手い原画をコピーして切り貼りするのが、「上達」することなのでしょうか? 明らかに違いますよネ。

 

それに、新人の周りには、中堅もベテランもいるでしょ。その人たちが、時にはエフェクトのパラメータの意味も数値を踏まえてレクチャーして、映像表現のあれこれをコンピュータを用いて具現化する方法を指南すれば良いのです。

 

 

 

そろそろ、アニメ業界にコンピュータが浸透し始めて、20年くらいの年月が経とうとしています。

 

「デジタルを使えば、誰でも上手くなれる」とか、「デジタルは技術習得の手間をスキップできる」とか、甘っちょろい「クソデジタル思考」は終わらせても良い時期だと思います。

 

 

2018年現在のコンピュータは、それこそ、1人だけでも商業レベル同等の映像作品が作れるほど、恐ろしいポテンシャルを秘めています。

 

しかし、それはあくまで技術を当人が有していれば‥‥という大前提があってこそです。

 

でも、技術さえあれば‥‥という考えは、とても痛快じゃないですか。

 

技術さえどんどん高めれば、乱造のテレビアニメよりも、遥かに高品質なアニメ作品を、プロアマ関係なく、個人や少人数でできる時代‥‥なのですから。

 

 

 


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