透ける処理

髪の毛が透ける処理において、多重組み・複合組みを引き起こしやすいのは、特に仕上げ・撮影スタッフなら、痛いほど認識しています。私も多重組みの「独特のセル番号」のファイルを見ると、憂鬱になります。

 

しかし、原画を実際に作業してみれば解ることでもあるのですが、いくら多重組みを意識できていても、原画作業アップ後に演出チェックやラッシュチェックでシートのタイミングが修正されれば、原画マンの記述した多重組み対応のシートはあっという間に崩壊です。

 

現場運用の前提として、多重組みに対して、原画作業時に何をどう対応すべきか、明確になっているでしょうか?

 

要するに、一番問題なのは、「多重組み処理に対するガイドライン」が「存在しない」ことです。

 

ツイッターでは、「画の勉強をしろ」だの「シートをちゃんと書け」だの、色々とヒステリックな言葉を見かけますが、絵を勉強しようがシートをちゃんと書こうが、多重組みへの対応が各現場でバラバラですし、そもそも誰がどの段階でタイミングとセルワークをフィックスして多重組み対応のシートを記述できるのかもケースバイケース(原画?演出?作監?動画?動検?)ですから、様々な状況を想定して冷静に分析すべきでしょう。

*ちなみに、現状で私の知るところでは、多重組みをシートに反映させるのは撮影セクションで、仕上げさんの申し送りのメモ用紙を見ながら、間違わないように慎重に取り扱います。(対応の仕方は、色々あるようです)

 

「作画スタッフは撮影のことをもっと勉強してくれ」と言うのであれば、それを言った人はその逆、「作画にまつわる色々なことを勉強すべき」です。キャラ表を見て、絵コンテを見て、原画を描く作業を実際に経験してみれば、なぜ「多重組みが発生するのか」「多重組みであることを見落としやすいのか」が実感できると思います。

 

多重組みは髪の毛が透ける時だけでなく、髪の毛の影が肌に落ちる時にも発生します。ですから、「髪の毛は透けない」キャラデザインにしようと、多重組みの落とし穴は大きく口を開けて待ち構えています。

 

私は原画も作画監督も経験しましたし、撮影も撮影監督も経験しましたから、一方からの視点だけで多重組みをジャッジすることはないです。と言うか、したくないです。一方からだけの視点で判断するのはフェアじゃないからね。

 

ただ、一部の作画スタッフや演出さんが「多重組み」に対して全く野放図で他人事なのは、確かにムカつきますよね。もうちょっと気を使ってくれても良いでしょうよ‥‥と。

 

まあ、あと、キャラ表に「髪が透けるので、多重組みが頻発します。シートワークにご注意ください」とか一筆書いておけばよいのにな‥‥とも思います。

 

例えば、髪の毛が透けるキャラで、Aセルが顔本体、Bセルが目と眉と口、Cセルが髪の毛のなびきリピートだとして、以下のシートは配慮がなさすぎます。

 

 

あー、頭が痛い。異様に面倒な事になっとる。CセルがBセルを跨いでいるタイミングが頻発しているし。

 

髪の毛は透けないし、目や眉にかぶる影もなければ、上記シートでも通用します。しかし、髪の毛が透けるキャラで、影付け設定ではしっかりと髪の影が目と眉に被っている場合は、そりゃあもう、面倒なことになります。

 

腕試しに、上記のシートをもとに、多重組み対応後のシートをつけてみてはいかがでしょう。もの凄く複雑なシートになることが判ります。

 

表情変化のBセルの動きに合わせて、髪の毛のリピートの中で組みを切ることを事前に考えれば、こんなシートは打てないです。

 

だからと言って、まさかキャラ表を無視し、影付け設定も無視し、原画マンや雇われ作監の一存で、「髪透けない」「肌の影無し」にできるわけもなし‥‥です。

 

なので、せめて、こうしたいです。

 

 

こうすれば、少なくとも、「タイミングまたぎ」の複雑な多重組みは発生しません。

 

髪の毛はリピートだから、少しでも滑らかに動かしてリッチにしたい‥‥というキモチは判りますが、一方で、多重組みで「タイミングまたぎ」があると異様に面倒になりますから、セル構成を鑑みて、ここは3コマ打ちでグリッドに沿わせるシートにすべきです。

 

でも、そんな工夫をしても、ラッシュチェック後にタイミング修正があれば、多重組み対応の作業全てはやり直しです。

 

 

多重組みに苦心したスタッフからすれば、「ぐはっ‥‥」ですけど、これはもう、演出上で明確な理由がある場合はどうしようもないです。

 

まあ、多重組みであるにも関わらず、ちょっとした軽い気持ちや浮ついた雰囲気でタイミング変更をしようとするのなら、撮影監督の状況判断&監督権限をもって阻止しますけどね(切羽詰まったスケジュールの場合)。何のための「撮影工程」の責任職たる「撮影監督」か‥‥です。撮影監督は、監督や演出の「子分」でも「イエスマン」でもないですからね。監督・演出と撮影監督が信頼関係を築くと言うことは、「厳しいものは厳しい」こともちゃんと伝えられる関係性だと思います。

 

でもだからと言って、まさか、演出さんに「多重組みのカットは一切タイミングをいじってくれるな」なんて要求できるわけがないですよね。ラッシュチェックを見てからでないと判断できない‥‥なんていう素人みたいなことを言う人は「何のためのプロフェッショナルか」ですけど、やむにやまれずラッシュチェック後にタイミングを変更しなければならないこともありますから、これはもう、「髪の毛を透けさせることにした時点で、背負うことが決定した十字架」みたいなものです。

 

多重組み対応は大変だから‥‥ということを演出さんが認識していれば、機転をちょっと効かして、以下のようなシートにするはずです。

 

 

こうすれば、多重組みの作業で作った番外のセルは無駄にならないですし、After Effects上でも対応が簡単です。まあ、演出さんが気づかなくても、気の利く仕上げさんや撮影さんが、「Cセルの髪の毛も一緒にタイミングをズラせば、組み切りの再作業を節約できます」と進言すれば良いです。ぶっちゃけ、リピートのループ点が3コマ後ろにずれても、決定的な欠陥にはならないですし、「C1」ではなく「C6」からスタートしていることに気づく人はほぼ皆無‥‥でしょう。

 

多重組みは、タイミングを変えるとそのバランスが崩れる‥‥ということを知っていれば、やむをえずタイミングを変更する際に、演出さんは色々と知恵を絞ってくれるはずです。

 

 

 

でもなあ‥‥‥、多重組みに代表される現場の混乱って、結局、旧来現場の技術的限界そのものなんですよね。

 

もし、多重組み問題を本当に改善したい・払拭したいと思うのなら、新しい技術開発にも目を向けるべきです。旧来の技術に依存し続けているからこそ、旧来の限界を引きずり続けるし、新しい時代のニーズにも対応できないし、お金に関する様々な問題も解決の糸口すら見えてこないのです。

 

誰が犯人か‥‥なんて言ったら、多重組みに関して言えば、原作のキャラがそもそも透けさせて描いているから‥‥なんていう話に行き着きますよ。

 

内部抗争・内ゲバに費やす時間とエネルギーを、もっと他のこと〜未来の可能性と資質に注ぎたいと私は思います。

 

延々と内輪もめしてたって、何も未来には繋がっていかんからな。

 

 

 

 



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