マイナス要素を体系立てる

マイナス面を列挙して各々の問題点について考察・分析した後は、プラス面に転じるための解決策や打開策、改革案が必要になりましょう。‥‥でなければ、マイナス面を指摘して何かを暴いた気になってお終いです。ちょうど、中島みゆきさんの歌の「包帯のような嘘を見破ることで、学者は世間を見たような気になる」という一節が思い起こされます。

 

あの部分が問題だ、この部分がおかしい、この部分が諸悪の根源だ‥‥という指摘から始めるのは、至極自然な流れです。しかし、その後に続くのが、「誰か何とかしてくれ」ではどうにもならんです。

 

思うに、マイナス要素を列挙し、分析した後は、そのマイナス要素を体系化して俯瞰で「劣勢の全体像」を把握する必要がありましょう。漠然とマイナス要素だけがそこら中に転がっているだけでは、「整理のしようもない」のです。

 

「整理」とは「理にかなった整え方」です。「片付け」ではないのです。

 

散らかっている部屋を綺麗にして、快適な部屋にしたい。‥‥だったら、片付けちゃ、ダメですよネ。あくまで、整理しないと。

 

部屋中に散らかっている物品を、周囲の棚にどんどん物品を詰め込んでいけば、床部分はクリアになりますが、棚の中はそりゃあもう、悲惨極まりない状態になるでしょう。醤油の横に本があり、ノートパソコンの上に植木鉢があるような、「床を綺麗にしたいがために、何でも棚に詰め込めば良いってもんじゃないだろ」と誰もが思うはず。

 

じゃあ、どうすれば、片付けではなく、整理ができるのか。

 

部屋に散らかっている物品1つ1つを把握し、どんなジャンルの物品を、どの棚に定置するか‥‥という方針を設計して、その通りに実践すれば良いです。

 

私は昔から整理が苦手な人間で、なぜ自分は整理ができないんだろうと深く考えてみたことがありました。

 

答えは簡単でした。物品を置く際に、場所を決めていなかったので、毎回毎回置き場が流動し、散らかっていたのです。要するに、物品が収まる場所を決めていなかったのです。空いてる場所に、その時の都合で置くだけ。‥‥そりゃあ、どんどん物事が「ひっくり返って」いきますよネ。

 

 

マイナス要素をどんどん挙げていって、問題提起のフィールドに散らかすことは、ぶっちゃけ、ある程度の知識があれば誰でもできることです。

 

難しいのは、そのマイナス要素1つ1つを分析しカテゴライズして、整理ができるように体系化することです。しかし難しいからといって、体系化せずして、マイナス要素を整理して綺麗な現場に変えていくことは不可能でしょう。

 

空いている棚に、マイナス要素を拾い上げてただ突っ込むだけ‥‥、例えば「原画料金を2倍にしろ」みたいなことを仮に実現しても、技術に応じた料金制度ができるわけではないし、大変な内容のカットが単価変動制になるわけでもないですから、「今度は棚の中身が散らかるだけ」の話で、全く「整理はできていない」のです。マイナス要素・問題点を、床から棚に移動しただけでは、「問題解決」とは言えないでしょう。

 

マイナス要素を体系化して把握する‥‥ということは、すなわち、悪循環ネットワークの全体像を冷静に見据えること‥‥とも言えます。

 

たとえその時点での見識の中であっても、マイナス要素の体系、悪循環ネットワークの全体像を、明確に捉えていなければ、どんな好条件の機会に恵まれても、同じマイナス&悪循環の制作事情を繰り返すだけです。

 

制作費が低いから業界はブラック体質と言われるんだ‥‥ということで「片付ける」のなら、問題は全く「整理できず」に解決できないでしょう。原画料金を2倍にしても、簡単なカットで金を稼ぐ人と難しいカットばかり頼まれる人の報酬の格差はより悲惨に広がっていくばかりです。容易に想像できますよネ。‥‥その格差をして、原画料金のどこの何が改善されるわけ?? 手を適当に抜いて楽なところばかり担当する人間がどんどん稼げる構造に拍車をかけるだけじゃん。

 

マイナス要素の体系、悪循環のネットワークを、認識できているからこそ、その逆像としてのプラス要素の体系・ネットワークを計画できるのだと確信します。

 

私は、私の30年以上のアニメ制作人生をもって、旧来制作構造の問題点を「自分なりに体系立てた持論」として思索し続けてきました。業界の制作システムに関して、アウトサイダーではなくインサイダーとして、相当に痛い目を見てきましたもんネ。

 

ゆえに、そのマイナスの体系を「反面教師としてのお手本」として、未来にどのような新たな制作構造と体系を作るべきかが、未来の大きな事業です。‥‥もちろん、今も考えは進み続けていますし、考えを修正・変更することもありましょう。

 

ここではあまり詳しいことは書けませんが、ハッキリと公に言えることは「今までの作り方はやめる。新しい作り方に完全シフトする。」ということです。マイナス体系や悪循環ネットワークを断ち切ることが、何よりも明快な指針です。

 

人材はフラットに扱い、技術も道具もフラットから再構築します。原画マンは消滅しますし、タップ穴も廃止します。一方で、作画をする人間は最重要に必要としますし、レイアウトのフレーミングももちろん存在します。

 

新しく制作システムを構築する時に、意識的でも無意識的でも、以前のマイナス体系や悪循環ネットワークを踏襲した形では意味がありません。同じ轍は踏まないためにも、然るべき逆像を得るためにも、旧来のマイナス要素を体系化した上で把握する必要があります。

 

アニメ業界の現状は、何も業界の人々全てが愚かすぎてこのようになったわけではないです。むしろ、草の根では昔から問題を認識していました。しかし、状況は裏腹に、どんどん劣化の一途を辿っています。太平洋戦争だってバブル崩壊だって、同じだったじゃないですか。頭の良い大人たちが揃いも揃って、戦争に大負けしたし、経済を破綻させたんでしょ。当事者だけでなく、浮かれて同調していた人間も同じです。

 

昔の人々は愚かだった? ‥‥今の人々も等しく愚かでしょ。私もあなたも皆も、老若男女問わず。

 

ですから、「あんな目には2度とあいたくない。思い出すのも嫌。」というのではなく、「あんな目にあったのは、なぜなのか、よく思い出して、正視して考察して、分析して体系立てて全体像を把握し、未来の糧とする」のが、愚かさと賢さの中で揺れ動く私らの「やるべきこと」「できること」です。‥‥だって、それしか、ないじゃないスか。私らは全知全能の神様じゃないのだから。

 

 

私は、そもそも子供の頃からアニメが好きで、アニメ業界に入ったのです。最初はアニメ業界のシステムを肯定していましたが、30年余の経験を積むうちに、アニメ業界が標準とする制作構造・システムは、決して「合理的」「実利的」「現実的」ではないと思うようになりました。真面目に動画を作業する人間の「時給換算」が200〜400円‥‥だなんて、どこが「合理的」「実利的」「現実的」なのか、誰も答えられないですよネ。

 

じゃあ、どうするの?

 

じゃあ、こうしよう。こうして未来を勝ち得ていこう。

 

‥‥と、思う当人が、日々、プラスへと状況を進めるのみです。

 

 

問題提起は決して井戸端の愚痴ではないはず。マイナスを見切った後は、その先のプラスに繋げてこそ‥‥と、誰だって思います‥‥よネ。

 

 

 


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