UHDの前後

4KのウルトラHD&HDR有機ELテレビによるデモを仕事で見てきたのですが、業務用モニタと同等と言っても良い画質(特に色彩面で)に驚き、4KとHDRが組み合わさった凄まじさを体感しました。

 

最新の民生機器による、UHD BD(4K, HDR)によるデモは、ストリーミング映像品質が冗談と思えるほどの高品質を誇り、YouTubeなどの低い画質のコンテンツに押され気味だった昨今の状況に、何か変化が起こることを期待せずにはいられません。

*せっかく作った映像が、YouTubeなどのストリーミング公開だけ‥‥というのは、少なくとも私は「超絶ガッカリ」なのです。オリジナルのマスター映像から大幅に格段に超残念に劣化しますからネ。品質だけが映像の魅力の全てではないですが、苦労を重ねてできる限り綺麗に作った映像が流通の事情で汚くなるよりは、可能な限り綺麗さを保った状態で観る人々に届けたいのが、作った側としての(少なくとも私の)キモチです。

 

デモ映像は過去のアニメ作品で2K以下の24コマモーションでしたが、もしオリジナルが4K60pの映像だったら、さらに別次元の映像を実現できていたでしょう。現在、アニメで4K60pを作る取り組みをしていますが、ラボによるHDRグレーディングと組み合わせれば、全く新しいアニメーション映像フィールドに到達でき、そのクオリティをUHD BDと有機EL 4K-HDRテレビのの再生環境によって「マスター画質をご家庭に」届けることすら可能になることを実感しました。

 

‥‥と同時に、現在の民生テレビが全て過去の遺物に思えて、より一層、アニメ制作の往く末に思いを馳せた次第です。

 

現在「新作」として世の中に出てくるアニメは枚挙暇がありませんが、スクリーンショットを見ただけでも、「技術の更新が滞っている」のを感じずにはいられません。動いているPVなどを見ると、さらに「立ち遅れている」感慨が深まります。

 

現在、「デジタル作画」の機運はあちこちで盛り上がり始めていますが、ぶっちゃけ、「デジタルで作画」しただけに終始してしまい、4Kにも60pにもHDRにも、どれにも対応できていない作品がほとんど‥‥ですよネ。つまり、アニメ業界の内輪で「ペンタブやFlash(系)で作画だ」と盛り上がっているだけで、世界規模の映像技術進化の流れにはまるでのれていない‥‥という寂しい状況です。

 

私は実写にも関わりますし、国内外のラボとのやりとりも経験してきましたが、アニメ業界標準(=フィルム時代のタイムシートを使う作品)の映像技術は、正直、ガラパゴス状態。竜宮城と言っても言い過ぎではありません。

 

最近「クロ現」でやってた「ブラック問題」も深刻ですが、アニメ制作技術の「技術進化が行き詰まって闇(=違う意味でブラック)」な状況も相当深刻なんですよネ。1秒間を1960年代の頃から変わらずに8〜12分割してる場合じゃないってば。

 

1.5〜2K、二値化、レタス線、24コマシートで3コマ打ち(=8fps)のモーション、8bitの色彩感覚とSDR。どんな作品のスクリーンショットやPVを見ても、古さだけが目に映ってしまいます。

 

なぜ、古い映像技術とフォーマットで作り続けるのか。‥‥いろいろ理由はあるでしょうが、機材やワークフローの問題は表向きの理由であって、「新しい技術に疎いので、想像もできん」というのが実際のところでしょう。しかし、「いつまでも疎くてどうする」と思います。アニメだって、映像技術を駆使して作る作品・商品なんですヨ。

 

「デジタル作画」がアニメ業界の技術進化の本命だとするならば、それは大きな誤りです。「デジタル竜宮城」に住み続ける未来が待っているだけです。60〜80年代に築き上げられた「竜宮城」そのものから脱出することが本命だと私は思います。

 

海の底の竜宮城は、外界の喧騒も聞こえず、ゆったりとした「独自の時間」が流れて、「制作当事者」にとっては居心地が良いかも知れません‥‥が、同時に「地上の世界」の光は差し込まず、外界とのコミュニケーションも絶たれ、時間も技術も価値観も大きくズレていくことでしょう。

 

 

 

ちなみに、アニメ業界の人々は「4K」だけに反応しがちですが、4Kだけでは映像技術の進化なんて打ち出せません。4K60pHDRの3拍子が揃ってこそ、誰の目から見ても「一目瞭然」な違いが判るのです。苦労して4K相当の作画をするだけでは、「何が変わった? 線がちょっと細い? それが4Kのアニメの特徴なの?」程度の認識止まりで、労力が格段にキツくなったわりに効果が微小で、「無駄な苦労」で終わります。

 

線の繊細さ、デリケートなニュアンス、滑らかなモーション、あらゆる技術を駆使したコンポジット、HDRを見越した色彩。そうした要素を、悪魔の囁きと判断して遠ざけるか、福音として受け入れ自分たちの進む道を照らすか‥‥は、当事者次第といったところでしょう。

 

 



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