70年代マインドの終わり

最近、テレビの作監の仕事をお手伝いして、よくよく、身にしみて再認識したことは、レイアウト原動画システムがもはや過去の産業モデルの遺物であって、今後の映像産業にはどうにも適応しないということです。これは、ほとほと、鉛筆を持つ指先で痛感しました。

 

1960〜70年代に自分の基礎を確立した大御所さんや、1980年代に飛躍的な発展を遂げた時代に自分の基礎を確立した団塊ジュニア前半期(現在アラウンド50〜60)の人間は、レイアウト原動画システムの普遍性を疑って止まないフシがあります。何を発想するにも、絵コンテ&キャラ表、レイアウト、原画、作監‥‥で発想する時点で、完全に「70年代システム」の呪縛の中にあるわけですが、重要・重大なのは、旧時代の旧感覚である自覚に乏しいことです。

 

それでも、その70年代システムでうまく「事」が進んでいれば良いですが、今はもう各所が綻びだらけです。これは作業現場内部だけの要因ではなく、社会そのものが70年代とは大きくかけ離れてしまったことも要因です。社会が70年代とは別世界のごとく変容したのに、アニメの作り方はあいも変わらずの70年代システムをデジタルで補強しただけの状況です。内部も外部もうまくいくはずがないのです。

 

最近、私が子供時代にかつて住んでいた郵政の団地を、ストリートビューで見てみました。1970年代〜昭和40年代に存在した「粗雑だけれど生命感に満ち溢れていた」生気ある団地の姿は全く消え失せ、まるでゴーストタウンのような無残な亡骸を晒していました。

 

今思うと、昭和40年代50年代の頃は、そりゃあもう、子供たちがウヨウヨいて、やかましい時代だったでしょうネ。文房具屋でプラモは売ってるし、駄菓子屋は何件もあったし、夜7時台のゴールデンタイムは民法各局でアニメを放送してたし、ガチャガチャワイワイと大人も子供も生命感と躍動感を「無自覚に天然に」発揮していたのを懐かしく思い出します。

 

その時代に作られたテレビアニメーションの量産システムが、2020年代になろうともする今現在において綻びだらけなのは、よくよく考えてみれば当然のことだ‥‥と思うのです。アニメ制作に従事する人間を取り巻く環境も、アニメ作品を受け入れる人間も社会も、何もかもが変わっているのに、作り方の基本は全く変わっていないのは、「ガラパゴス産業」と呼んでも酷い言い方ではないでしょう。

 

まあ、百歩譲って、70年代前後に自分の基礎を確立した古い世代は、概念や思考のシフトができなくても仕方がない‥‥としても、これから先の2020年代以降に絵や映像で商売して未来を勝ち取っていこうとする20〜30代の人間が、「それがアニメの作り方だから」と70年代システムのままで思考停止して乗っかり続けて、本当にうまくいくと思っているのか‥‥は、気になるところです。

 

旧来のシステムに乗っかり続けてアニメーターになっても、そのシステムの「時代性のズレ」ゆえに、多くの人はお金なんて満足に稼げないまま、老けていくだけです。もし、30〜50代のアニメーターで貯蓄のない自転車操業の暮らしをしているのなら、その生活は改善されることもなく、むしろ悪化の一途を辿っていくでしょう。50代で貯金ができていないのなら、肉体的に衰える60代以降に貯金できるほどの稼ぎを叩き出せるはずがなく、まさに日本が抱える闇〜老後破産のど真ん中を体現することになります。

 

安い単価で作業するシステムは昔の時代そのままに、絵や動きなどの品質要求は決して時代が逆戻りするわけではないんですから、20代の若い層とて、今のアニメ制作システムでアニメーターになること自体が既に老後破産の予備軍のようなものです。‥‥そうした部分を「暗黙に触れてはいけない話題」として扱い続ける行為を、老いも若きも、今が破綻していないからという理由で今後延々と続けるつもりなのです。今のシステムに乗る以上は‥‥です。

 

自分の憧れていたアニメの仕事に就くのが夢。‥‥そんな夢のリソースは20代で自ら全て食い尽くして、後に残るのは絶望感と閉塞感だけです。「XXというアニメのOOというキャラを作画するのが夢です」なんて、その夢の実現した後に残るのは何?

 

ホントにマジメな話、業界を救おうだなんて大風呂敷など広げず、各所で独自に「方舟」的新システムを作って、大災害とその後の貧困に耐えうる術を今から準備しておく必要を感じます。今のシステムで未来がバラ色だと思っているのならそのままで構いませんが、現状に強い危機感をもっていながら今のシステムに依存し続けるのはどうなのよ? ‥‥ということです。

 

ある日、どこかの誰かが、思いも寄らない素晴らしい新システムで、業界の窮状を払拭し、状況を改善して業界の人々全てを救済してくれる‥‥なんて思っているのなら、それはマンガやアニメやハリウッド映画の見過ぎ‥‥です。団塊ジュニアのベビーブーム世代の末路、ゆとり・さとり世代の往く末は、70年代システムを基盤に据える限り、決して明るいものではないと思います。

 

ニッポン無責任野郎なんて言ってた頃の昭和30〜40年の頃と、今の日本じゃあ、あまりにも大きな落差があるでしょう。別世界といっても過言ではありません。

 

70年代システムは確かにタフな面がいっぱいあります。しかし、現代の技術から見たら、アホみたいに非効率な部分も多く抱えています。些細なことかも知れませんが、大判を作るのに紙を貼り合わせる時ほど、70年代システムのやるせなさ・骨董品的古さを感じる瞬間はありません。「バカやってるよなあ‥‥」と、スタンダードサイズの紙を裏側からセロテープで貼り合わせる時、無性に情けなくなるのです。日頃、iPadなどで作画したりコンピュータで映像制作していると、紙の作画のあまりの旧態依然としたスタイルに、逆・浦島太郎になった気分、過去にタイムスリップした気分になります。

 

 

マインドを変えられる人々、変えられない人々。

 

ぶっちゃけ、70年代システムで今後も行きたい派閥はそのまま取り残して、現代のリソースをふんだんに有効活用する流派は旧勢力と決別しちゃっても良いように思います。融和とか互換性とか段階的移行なんて言ってると、永久に70年代システムの呪縛から逃れられない気がします。

 

70年代システムは70年代のリソースを有効に活用して形成されたことでしょう。でも70年代は、もはや50年前です。50年前にリアルタイムで有益だったリソースが、現代に等しくリアルタイムで有益であるはずがないです。

 

やっぱり、行き着く答えはひとつ。

 

今の時代にアニメを作るのなら、今の時代のテクノロジーとマインドを活用すべし‥‥ですネ。

 

 

もう70年代マインドは終わりにしましょうよ。

 

新しい時代に進み出しましょうよ。

 

アニメを自分の墓場にもっていくつもりなら対話の余地もありませんが、アニメを今後も何十年も生かし続けたいのなら、50年前のシステムから解放してやることこそ、団塊ジュニア世代に課せられた「残り半分の人生の大仕事」だと思います。

 

 



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