孤独死、Apple Watch

数ヶ月悩んでいましたが、Apple Watchを、結局買いました。

 

時計としてではなく、健康管理のツールとして。つまり、腕時計ではなく、ヘルスメーターです。

 

久々にテレビ作品に関わると、その制作状況の厳しさ・過酷さと制作意識の違いゆえに、身も心も痛烈な打撃を喰らいます。ココロ的には、色々な考え方があるでしょうから、ここでテレビアニメーション論をぶちまけるつもりはありませんが、カラダ的には「どうすれば健康を維持できるか」は切実な課題となります。

 

自分の健康の「標準ツール」として、何らかのスマートウォッチを探していましたが、なんだかんだ迷いつつも、結果はいつものAppleチョイス。色々と物色してみて判ったのですが、iPhoneを含めた総合的なソリューションも含めると、Apple Watchに比肩する存在はないと判断し、ここ2週間の激務も後押しとなり、いつものAppleローンで買いました。‥‥ちょうど、iPad ProとMacBook Proのローンも終わるので、購入が容易だったこともあります。

 

 

制作状況を改善できれば、健康問題も改善できる‥‥というのはあるでしょう。しかし、「制作状況の解決策」なんていう都合の良い「特効薬」は存在しないのです。様々な要因が絡みつき、現状を作り出しているので、その様々な要因1つ1つを解決していくしかありません‥‥が、「言うは易く行うは難し」です。

 

クライアントの要求を無視してキャラデザインは描けないでしょうし、制作期間がどれだけ圧縮されるかを事前に予測して絵コンテの内容を止め口パクに限定することもできないでしょう。明らかに破綻している作画の内容を見ないふりしてサイン欄にサインだけして流すことは演出も作監もできませんし、かと言って、1カットごとキッチリと修正を入れられるほどの時間的余裕はありません。野原と土管と青空を描けば済む背景美術なんてほとんどないでしょうし、どんどん圧縮されるスケジュールの余波をもろに喰らうのは最後段の仕上げ・撮影スタッフでしょう。

 

品質要求が時代とともにエスカレートして、描く内容に手間がかかって技量を要求されるようになれば、対応できる作業者の数は減り、簡単にホイホイとカットを撒くことはできないでしょうし、そもそも作画の人材不足は深刻です。デザインが複雑になって1枚絵に多くの作業時間を消費するようになっても、作業費で作業者を拘束できる時間は以前と変わらないので、速書きにより絵がどんどん溶ける傾向が強くなりますが、溶けた絵を作監が修正するにも放映までに残された時間には限度があります。かと言って、のらくろやロボット三等兵みたいな簡素にまとめた絵柄だけのアニメだけにすれば良いのか‥‥と言えば、それがまかり通る現代社会ではないです。

 

ここ最近のテレビアニメ制作事情は過酷です。複数の話数が絡み合った数週間の作業でつくずく思い知りましたが、その過酷さを抑制する術は、少なくとも私には見つかりません。

 

私の作業範囲は作画もコンポジットも含むので、作画監督も撮影監督も経験しておりますが、撮影監督をしている時には「なぜ、最近の作画は中々上がらないんだ。なぜ、ここまで後ろにズレてくるんだ」と思うようなことがあっても、実際に作画監督をしてみれば「そりゃ、上がらないって」と理由が解ります。理由は簡単で、まず、作業依頼のタイミングがすでに放映間近に迫っていますし、さらには、描く絵の内容が大変すぎるのです。

 

線の多い作品の場合(影線も含む)、マルチョンでなく、1体ごと「後の工程がちゃんと拾えるように」描こうとすると15〜20分近く時間がかかるキャラが、1画面に3〜4人いたら、1枚描くのに1時間かかるということです。そりゃあ、昔みたいにサクサク上がらないですよネ。実際にストップウォッチで描く時間を計測してみて愕然としました。

 

‥‥で、その時間を消耗する現状をクリアするために、手数を間引けば絵の完成度にモロに影響が出ますし、睡眠時間はどんどん削られていきます。つまり、品質と健康に悪い影響が出る‥‥ということです。しかし、そこまでしても予定通りに上がらない作品もあります‥‥よネ。

 

 

そうした過酷さに流されるまま流されて、健康はないがしろ‥‥というのは、数日ほったらかしでも肌がツヤツヤしている20代の頃ならともかく、40代くらいになると、確実に「死」が垣間見えます。加えて、最近は20代・30代の孤独死も増えている‥‥ともネットで報じられていますよネ。「今、何か手を打ち始めないと、確実に孤独死するな‥‥」と自覚する人は多いと思います。

 

‥‥特にさ、自分の「好き」を職業に変えてきた映像制作の人間は、歳を喰ってから孤独死する可能性はとても高いと思うんだよネ。

 

 

私がテレビ作品のお手伝いで作監を担当して得た感慨は「自分の健康」と「作品の品質」をどう保持するか‥‥です。それに尽きます。

 

ゆえに、「もう迷っている余地はない。買う。」とApple Watch Series 2 を購入した次第です。

 

 

 

「自分の健康」と「作品の品質」の2大要素は、要は「生と死」と「お金」とも言い換えられます。自分の健康に気を使う生活を実現できれば死のリスクを遠ざけることができますし、作品の品質を向上できる技量と状況を作り出せる人材となればより良い条件でお金を稼ぐことができます。‥‥とはいうものの、私は、テレビの作画に関与した場合、この2つを全うできる確固たる自信は持てません。逆に、持てる人っているのかな‥‥。必ず何かが犠牲になると思いますけどね‥‥。

 

「作品の品質」は別の機会に書くとして、「自分の健康」はどうすべきか。

 

 

まあ、とても雑な言い方ですが、「死なないこと」‥‥でしょうネ。

 

こんなことや、こんなことにならないように。

 

とは言え、人間はいつかは死にます。

 

なので、「死なないこと」とは、もう少し丁寧に言えば、「死にやすい状況に自分をハメこまないこと」でしょう。

 

でもまあ、実は、どんなに健康に気を使っていようが、結婚していようが子供がいようが、孤独死のリスクは「核家族化」が進んだ戦後の日本においては、兆しが見えていたとも思えます。

 

結婚していても、パートナーに先立たれて独り暮らしになれば孤独死の条件は揃います。子供がいても、同居していなければ、やはり突然死が発見されずに結果的に孤独死になり得ます。

 

 

ふと思ったのが、Apple Watchって、Appleのアラサー・アラフォー社員の「内なる声」も要素の1つとして、開発がスタートしたのかもな‥‥ということです。あくまで、想像ですが。

 

デスクワークが多いと座りっぱなしになります。‥‥で、デスクワークにおける病状の正式な名称はわかりませんが、「エコノミー症候群」的な体調悪化は、Apple社員でも例外ではないと思われます。くどいですが、あくまで想像です。

 

「健康管理をサポートするガジェット」としてコンピュータ開発製造を主たる業種とする会社が、社員目線で開発を考えたとすれば、合点がいくのです。Apple Watchを「時計」としてみると、バッテリーのもたない「できそこないの時計」ですが、「健康管理端末」として考えると、デスクワークの多い会社が「必要は発明の母」としてApple Watchのアイデアを想起したとして、何の不思議もありません。

 

デスクワークの多い人間が考える「あるといいな」が、Apple Watchには込められているように思うのです。

 

実際、作画机に縛られっぱなしの過酷なスケジュールのテレビ作品の作画作業において、私がApple Watchのヘルス関連の機能に注目したのは、偶然ではなく必然でした。

 

「何時間も座り続けて、緊張感と倦怠感と躁状態を繰り返していたら、いつかは、ポックリ逝くな」とひしひしと体が訴えかけてくるのですが、「じゃあ、どんなタイミングで、どんなことをすれば、身体への負荷蓄積を散らせるのか」はわからないのです。‥‥いや、多少は調べてみて「何をすべきかが何となく解って」いても、忘れがちになるのです。

 

Apple Watchは、腕に装着することは多少は煩わしいですが、「スタンド」や「深呼吸」のアプリが、「そろそろ立って、1分くらい体を動かしてみたら?」とか、「深呼吸してみない?」と、音と振動できっかけを教えてくれます。

 

私が欲しかったのは、まさにコレ。

 

 

* * *

 

仕事と生活と健康は密接に絡みついていますよネ。もし「現場を誰かが改善してくれるまで健康管理は考えない」とするならば、それは「死へのチケット」なのでしょう。

 

テレビアニメの現場制作費が3000〜5000万円になるまで健康管理はおあずけ? 人件費を圧縮することによって成り立っているとも言える昨今の制作事情を改善するには、まずはお金でしょうが、そんな簡単にお金なんて数倍に跳ねあげられるわけもなし‥‥です。

 

自分はこれからどのようなアニメーション制作を志すべきか、どのような現場を作っていくべきか‥‥という命題と、日々の健康管理は、分離して考えるのが現実的です。

 

 

私は「もし明日死ぬ」と判っていれば、あらかじめ準備していた段取りを実行するか(財産の整理や自分の死体の焼却段取りの委託)、準備がままならないのなら野山に座して死んで、肉はウジとハエとたぬきにでも喰われて体液は草木の肥やしになれば良いとも思いますが、そうはいくまい。そんなうまく逝くわけがない。

 

だとすれば、どのように死ぬか。どのように周りに面倒を見てもらうか‥‥ですよネ。

 

もっと言えば、どのようにして、自分も含めた「仲間」「戦友」の死を、死後24時間以内に発見するか・していただくか‥‥です。

 

独り暮らしの人間に限らず、誰にとっても、死は「もちつ、もたれつ」なのでしょう。結局はね。

 

かっこいい死、綺麗な死、面倒をかけない死‥‥なんて、独り暮らしでは「死んだ後の自分の始末は、自分ではできない」からこそ、何か「死ぬためのシステムネットワーク」を作らねばならんとも思います。

 

毎日触るパソコンや携帯電話・スマートフォンを24〜48時間以上操作しなかったら、仲間たちのメールアドレスにメールが発信される‥‥とか、人間を含めたネットワークとハード&ソフトウェアがこれから先に必要になってくると思うのですが、それは考えすぎでしょうか。私の危機管理の感覚で言えば、考えすぎだとは思わないんですよネ‥‥。

 

 

確かに、アニメーターやコンポジターなどの映像制作に関わるスタッフは、映像制作現場に飛び込んで、自分が好きで選択した仕事を毎日してお金を稼いで、ある意味、自由に生きてきたかもしれません。しかし、普通の公務員や会社員が想像もしないほどの辛い作業や現実も同時に味わってきたのです。

 

そして、最後は孤独死で腐乱して、「迷惑な人だ」でフィニッシュですか。‥‥私は、そんな結末を許容できません。少なくとも、自分と苦楽を共にした仲間を腐乱させたくはないです。

 

 

良い作品を作ってお金を稼いで、快適で生産的な制作現場を作る‥‥と闘志に燃えても、それは全て「生きていること」が前提です。死んだら何もできません。

 

私は制作現場で共に一喜一憂し辛酸も美酒も嘗めた同僚を過去に3人亡くしていますが、その人らが「アンタはまだ命があるんだからさ。それをうまく使いこなさないとネ。」と冗談交じりに話しかけてくるように思うことがあります。

 

テレビシリーズは過酷だけれど、自分にとって「何が大切なのか」を乱暴なまでに表に引きずり出して、「よく見ろ!」と再認識させてくれもします。

 

 

‥‥うん。よく判りましたヨ。これからの自分たちの方針が‥‥です。



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