フルモーション

アニメの新技術の中には、いろいろなカテゴリがありますが、コンピュータで描き絵を動かす技術を、何でもかんでも「カットアウトアニメーション」ということにしてしまうのは、なんともキモチが悪いです。ラーメンやスパゲティやニョッキを「うどん」というくらい、しっくり来ません。「小麦粉をコネて茹でれば、それはみんな、うどんだ」というのは雑すぎますもんネ。

 

本日放映されたクロックワークプラネットのED(エンディング)は、ビジュアルコンセプトから絵コンテ・演出・ビジュアルエフェクト・編集・グレーディング(‥‥あと、鬼のような歯車の背景)を齋藤瑛さんがひとりで担当し、キャラの色彩とペイント(階調トレス)を田中美穂さんがやはりひとりだけで担当、私はキャラの線画をiPadでひたすら描き、After Effectsで動かす作業に徹しました。作業者のメインは三人、総作監さんやプロデューサーさんをいれても、ガチで五人だけの現場です。

 

私の作業した内容で言えば、レイアウトや原画作業だけでなく、コンピュータで動画作業と同等のことをするので、動画枚数は無制限‥‥というか、動画枚数という概念自体が消滅し、「動きそのもの」だけに集中できたのが特徴です。動きを「もっとああしたい、こうしたい」というのはありますが、それは言いっこなし、今回の許容では妥当だと思っております。

 

「カットアウト系」。‥‥でもまあ、呼び名は、ぶっちゃけ、今現在はどうでも良いです。まずは、フルモーションの動きを少しでも人目に晒すことが重要です。

 

 

まあね‥‥。2コマ抜いて、3コマ打ち=8fpsにすれば「アニメっぽい動き」になるのは重々承知しておるのですよ。

 

同じ映像内で他が3コマで動いていて、馴染ませるために3コマにする‥‥というのは、私もよくわかるし、そうすべきと思います。

 

しかし90秒の短編といえども、1つの独立した映像作品内でフルモーションで完結するなら、わざわざ、3コマに動きをカクカクさせて、クオリティを下げる必要はないです。技術の持つ特性を、クリアにストレートに発揮すべきです。

 

日本のアニメの「3コマ動き」の多くは、「リミテッド=表現」ではなく「エコノミー=費用」が理由です。私の敬愛するアニメーターさんは、まさに「3コマの使い手」だったりしますが、多くの現場においては、「3コマ独特の動きを駆使して」ではなく、「3コマだとコストオーバーを防げるから」が理由です。

 

そして、その「エコノミーなルック」が、アニメのデフォルトになっています。

 

要は、作る側・見る側が3コマを「アニメっぽい」としていて、今までのアニメの慣習に無意識に落ち着いちゃっているだけです。アニメは必ず3コマで作らなければならない自然界の掟があるわけではないです。映像のフォーマットも映像系家電もどんどん進化してきて、アニメもその進化に新技術で追随できるのに、古い習慣・感覚が邪魔して先に進めないのは、何とも歯がゆいです。

 

ちなみに、試しに4K60pバージョンで1カットを出力して見てみたら‥‥、まあ、なんとも「表面を覆っていた膜がとれたような」クリアで滑らかなでデリケートなニュアンスが映像全体に発散されてました。実は、新技術のアニメーション技術の真骨頂は、4K60pの「みたことのない境地」=手描きの中割り動画ではできないアニメーション表現なんですよネ。

 

 

でもまあ、カットアウト系をはじめとしたアニメーションの数々の新技術は、まだまだヨチヨチ歩き。

 

これから、どのように幼い新技術を育て上げていくか、先行きが大変ですけれど、技術内容的にも、そしてお金的(作業者のギャラの改善ネ)にも、未来が楽しみが技術ジャンルでもあります。

 

クロプラEDのキャラのモーションは、iPad ProのProcreate、macOSのPhotoshopと、After Effectsの3つだけで作っていますが、中でも難しかったのは、リューズさん(ヒロイン)の横顔からの振り向きです。しかしそれでも、普通に原画動画ペイントするよりは格段にコストパフォーマンスは高いです。もし普通に作画で、フルモーションで5秒間、複雑な装飾と処理で動かすとなったら、どれだけの工数と人員が必要になるか‥‥を考えれば、「ぐえ。そんなエグい内容をAfter Effectsをやってんの?」と言われようが全然苦ではないです。

*試しに試算すると、(5+0)=5秒のカットで、24x5=120フレーム、これをフルモーションだと120枚の動画ですが、キャラの後ろの半透明の羽衣、キャラ、キャラの半透明のパーツ、手前の半透明の羽衣で、合計は120枚の4倍で480枚。5秒のカットでほぼ500枚‥‥なんて、まあ、やる前から他の手段を考えますよネ。そもそも、手書きの動画作業で5秒間丸々フルアニメーションの24コマでシートなんか書かないし。‥‥つまりは、最初からそんなカット内容を考えないわけですが、新しい技術の基盤があれば、NGがOKに変わってくるのです。これがもし60pフルモーションだったら‥‥ですが、新技術はそれにも対応できるのです。

 

少人数で映像を作り上げて、ちゃんとお金も貰う。‥‥今のアニメ制作実情の真逆を目指すわけです。

 

 

 

課題は、技術の体系化。そのことに尽きます。

 

現場のワンセクションの中にいると取り立てて感じることはありませんが、日本の現在のアニメ制作は、極めて高度に体系化されています。‥‥でなければ、1話あたり数千枚も絵を描いては塗る作業を完了して、放映にのせることなんてできません。冷静に考えてみれば、ものスゴくタフで高レベルな技術体系がアニメ制作現場には根付いているのです。

 

それをしみじみ実感しているからこそ、新しい技術体系の幼さは身に沁みます。

 

 

 

とにかく、1つ1つ、今までできなかったことをできることに変えていって、地道に、地道に、レンガを積んでいくしかないです。技術は、コンピュータが絡んでいようと、結局は手作りですもんネ。

 

 

 

ちなみに‥‥。

 

絵をフルモーションと動かすと「3D」と言われるのは、もう10年くらい前からなので慣れました。3Dの絵は、モデリングという逃れられないメカニズムがあり、2Dの描き絵は「人間が手で描く」という逃れられないメカニズムがありますが、その特徴を直感で見分けられる人は専門知識などなくても「3Dとはなにか違う」ことがわかってもらえることもこの10年で知っているので、2017年の今では全く気にしません。‥‥まあ、参考にはしますけどね、「もうちょっと絵っぽいニュアンスを残した方が良いかな」とかネ。

 

描いた絵は、現実など問答無用で、「その絵の快感」で描けちゃいますから、どんなにディテールが細かくてもフルモーションでも、描き絵の特性が出るんですよネ。

 

フルモーション=3Dという誤った判断基準を過去のものにするためにも、3コマ打ちの8fpsなんかで新技術を展開してはいけないのだ‥‥とは常々思います。

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM