「デジタル」の基礎/解像度

「デジタル」の基礎知識など、必要がなければ、一向に覚えません。あたりまえのことです。

 

また、基礎知識と言いながら、実際は「暗記する約束事」にしてしまいがちな場面を多く目にします。

 

例えば、解像度の話題で、約束事として暗記だけしている人と話していても、イマイチ話が噛み合わないことがありますが、それは当人が「暗記だけして、原理を理解していない」からです。

 

解像度は、映像制作の場合、大きく分けて2種類あります。「ビデオ解像度」と「スキャン&印刷解像度」です。しかし、どちらも解像度には変わりありません。

 

「解像度」と何気なく口にするものの、実のところ、「解像度」ってどう言う意味か、考えたことはあるでしょうか。まずソコの時点から理解してなければ、解像度の話題なんてしたところで、打ち寄せる波にさらわれる砂の城のごときです。暗記モノの単語としての「解像度」を覚えている程度では、基礎を習得したとは言えません。

 

「解像度」は、漢字がまさに意味を表していますよネ。

 

「像を分解する度合い」です。

 

画像ならば、その画像をどのように分解するのか。1インチあたり150ドット(ドット=画素=ピクセル)で分解すれば、150ドットパーインチ=150dpiです。

*扱われるケースによって、ピクセルパーインチ=ppiで表すこともあります。

 

画面全体ならば、その画面をどのように分解するのか。SD/DVDは横幅を720個の画素に分解していますし、HD/BDは1920個の画素に分解しています。

 

この「分解してデータに収める仕組み」は、画像だけでなく、音や動きにもそのまま適用できます。ただ、音や動きの場合は「解像度」という言葉を使用せずに、サンプルレートとかフレームレートなどの専用の用語を用いているだけです。

 

 

こうしたことを仕組みや原理で覚えるのではなく、知識を暗記モノで構成してしまうと、すごく頑固で応用も融通もきかない人間になります。‥‥ぶっちゃけ、です。

 

それは、「暗記したものが正しい」と思い混んで、思い込んだ要素が増えれば増えるほど、自己洗脳に拍車がかかるからです。

 

暗記ではなく、約束事でもなく、知識を仕組みや原理で覚えれば、違う仕組みや原理と遭遇した際に、「なるほど」と柔軟に受け入れられます。

 

 

例えば、アニメ制作で解像度を「仕事の流儀や慣習」「機材の性質」だけで覚え込んでしまうと、「解像度の使い方」も通り一遍になってしまい、応用が利かなくなります。

 

解像度は、縦横必ず同じ数値とは限りません。アニメ現場のスキャン解像度は縦横等倍のいわゆる「正方形ピクセル」が慣習ですが、世の中には縦と横の解像度が異なる場面も少なくありません。ゆえに「ピクセル縦横比」なんていう用語もあるのです。

 

実際、JPEGのEXIFのタグ(当該画像の情報を記録するデータ)の中には、縦と横の解像度を記録するタグがあります。

 

XResolution =横幅の解像度 ;0x011A ;Rational型
YResolution =縦幅の解像度 ;0x011B ;Rational型

 

 

なので、「1000px x 1000px」の縦横同じピクセル数の画像でも、

 

X解像度:100dpi, Y解像度:200dpi

=横254ミリ 縦127ミリの横長の画像

 

‥‥というような使い方もできます。

 

その昔、SDで16:9を扱っていた頃は、720x480(486)で16:9の画面を収めていました。現在の地デジも1440x1080で16:9ですよネ。352x480なんていう規格もありましたかネ。計算してみれば判りますが、720x480や1440x1080はそのままでは決して16:9ではないですが、解像度を縦横別々に扱うことによって、ちゃんと16:9に映し出せるわけです。

 

ビデオの場合、こうした縦横の幅を変えた=縦横比を変えた映像記録方式を、「アナモフィック(アナモルフィック)」「スクイーズ」と呼び表します。フィルム時代であっても、アナモルフィックレンズを用いて、スクイーズ状態でフィルムに記録していたのは、今となっては驚きですよネ。

 

 

最近、「デジタル作画」の影響か、「作画さんもデジタルの知識を覚えるべき」というのを目や耳にしますが、一方で、アニメ業界の「デジタルの知識」って結構丸暗記物です。

 

暗記物スタイルで「デジタル」の知識を増やしたって、応用や機転なんて利かないですよ。

 

ファイル形式とコーデックのそもそもの違いもわからないのに、ファイル形式はMXFで‥‥だの、コーデックはAvidのDNxHDの‥‥だの、名称を暗記しただけで知識が増えたと勘違いする人も映像業界全般に多いものです。そしてそういう人の多くはインハウスの定型フローだけで純粋培養された箱入り息子&娘だったりもします。

 

かく言う私もかつては、アニメ業界しか知らない箱入り息子だったし、現場の慣習をまるで万物の法のように信じ込んでいた「痴れ者」だったがゆえに、しみじみ解るのです。

 

アニメ業界の「デジタルの知識」とは、いかなるものか、その辺が慣習上のなんとない暗記物で、定義も出自も曖昧ならば、ちゃんと覚えるきっかけは掴めません。

 

 

ではなぜ、私が基礎知識を原理から習得するに至ったかは‥‥、まさに「必要」だったからです。

 

玄関を入ると綺麗なロビーと受付があって、大きな試写室で映像を見た後に、綺麗な会議室で専門分野の方々に専門分野ガチの話題をされて、それにちゃんと映像制作プロダクション側の人間として疎通するためには、どうしても「共通の映像技術の原理の理解」が不可欠だったのです。

 

つい去年までアニメの作画机しか知らなかった人間が、現像所の専門スタッフとフィルムレコーディングの云々を話すためには、「餅は餅屋」の知識には及ばないまでも、最低限の基礎知識は仕組みから理解している必要があったのです。1990年代後半のころ‥‥です。

 

なので、この記事の一番最初に、

 

「デジタル」の基礎知識など、必要がなければ、一向に覚えません。

 

‥‥と書いたのです。

 

廃品を廊下に放置するようなルーズな現場で、ルーズな知識レベルでルーズな話をしている範疇ならば、知識なんて原理から覚える必要もないでしょう。何の責任も生じないルーズな場での雑談なのですから。

 

しかし、言った言葉に責任が生じ、その言葉で現場が動いてしまうような性質をもつのなら、言葉の中に含まれる単語の1つ1つは、「できうる限り」原理や仕組みを理解しておくべきでしょう。‥‥でなければ、無理に専門用語など使う必要なし!‥‥です。

 

実際、私が基礎的なアレコレを覚えられたのは、五反田の有名なラボとやり取りするためでした。そう言った意味で言えば、私は五反田のラボのスタッフさんに「間接的に」育てて頂いたようなものです。

 

 

「デジタルの基礎知識」‥‥‥か。

 

ただでさえ作画の知識でも広範なのに、ビデオの知識、光学レンズの知識、コンピュータ本体の知識、ソフトウェアプログラムの知識、データの知識、ネットワークの知識、ワークフローの知識‥‥と、ありあまる知識をブッコむのは相当キツいですが、でもまあ、それはしょうがないス。中堅になり始めたら、自分の将来のためにも作画以外の他ジャンルの覚えていかんとダメでしょう。

 

未来の行き先が心細いのはイヤですもんネ。痛いのはイヤですもんネ。

 

義務感ではなく、モラルでもなく、今の自分のため、そして未来の自分のために、です。

 

 

「デジタル作画」のアニメーターに対して、どんなに義務感やモラルを強調しても、アニメーターたちが必然的に「デジタルの知識を身につけなければ、自分が痛い目にあう」と、文字どおり「痛感」しなければ、善き人でも「暗記物」に終始するでしょう。

 

解像度を間違えたまま描いて、全描き直しになる‥‥とか、自分の知識の低さゆえに完成した映像で大恥をかく‥‥とか、痛い目にあってはじめて人と状況は動いていくものです。

 

作画以外のすでに「デジタル化」が浸透したセクション、例えば撮影のスタッフが、映像の基礎知識を自分の経験値の中に取り込んでいくのだって、ある種、自分の身を守るためですからネ。何か、高潔な理想のもとに、「デジタルの基礎知識」を覚えているわけではないです。

 

 

加えて、実質として、アニメの作画の現場に、作画の知識も豊富な上で、作画観点から「デジタルの知識」を教えられる先輩って、どれだけいるでしょうか。まあ、少ないですよね、ぶっちゃけ。

 

なので、「デジタルの知識」が足りてないがゆえに、作画現場の先輩からNGを出されて描き直しを食らう‥‥なんてこともないのです。

 

また、膨大なNOやfalseの中から、バブルソートのように、YESやtrueが浮かび上がってくるほど、デジタル作画案件は多くないですから、「知識向上」「経験値向上」が構造的に難しいのが現状と言えましょう。

 

 

私の意見としては、業界全体を改善するような途方もない大風呂敷を広げるよりも、自分の周辺を改善し進化させていくことが何よりも重要な取り組みだと思います。ツイッターやブログで呼びかけるのも「一円貯金」的な累積戦略として全く無駄とは思いませんが、それよりも今、自分が関わったカットで、直接、修正を依頼する方が実効的でしょう。今の自分の仕事の中で、改善案や未来の展望を地道に実践するのが、結局は手堅い方法だと思ってます。

*実際、このブログは私の中では「累積戦略」の位置付けです。即効性や実効力はありませんよネ。

 

皆が自分の現場を改善し進化させていけば、業界も成り行き的に動いていきます。業界は主体性という自らの姿を持たない、業界の人々のシルエットが重なり合って形成される、大きなシルエット=影なのです。

 

ダメな人やグループや会社は消え、未来に順応するものだけが生き残って、全体の姿を変えいくのです。

 

 


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