ランニングコストとしてのパソコン

個人でアニメ制作に関わるフリーランスの場合、MacやWindowsのパソコンは自費での購入となり、そこそこ高額な「買い物」になります。

 

しかし、考えてみれば、仕事でパソコンを使う場合、それは「物」であっても、実は「作業を具現化する溶媒」であって、固定資産ではなく流動資産とみるべきです。あくまでパソコンは一時的に当人の作業を支える、「消耗しない消耗品」なのです。

 

「買い物」と考えてしまうと、アカンのです。電気水道ガス通信を「買い物」とは言わないように、パソコンも「仕事で使うのなら」、「物」ではなく、「仕事のインフラ」を支える「溶媒」と捉えるのがよろしいです。

 

1年で「もとを取れるか」はなんとも言えないので、流動資産というべきかは、専門家の方にお任せしますが、パソコンは3〜5年で必ず買い換える時期がきて第一線を退く、短命のハードウェアです。退いたマシンは、自宅サーバやサブマシンとして第2の活躍場所を与えることにはなりますが、SD、HD、UHD‥‥と確実に進化する映像フォーマットに対応していくには、マシンは一層の性能向上型が必要となります。

 

「デジタル作画」ではなく、パソコンで何らかを作画する状況においても、印刷に耐える解像度でドットバイドットで快適に作画したいのなら、数年前のパソコンのビデオカードでは能力が足りず、やはり買い換えが必要になるでしょう。例えば、4Kの液タブを使うには、4K60pで出力できるビデオ性能が必須です。(30pだと目が辛い)

 

 

 

私の作業環境のうちの1つ、28GBのメモリのiMac 2.5Kでは(なぜ、そんなハンパなメモリ容量なのかは話が長くなるので割愛)、メモリが足りないことが多くなってきています。ふと、FreeManをみれば、「真っ黒」になっており、開いてみるとキャッシュなどで一時的に食われた後に解放された「非使用中」が含まれるものの、メモリの残りは49MBだったります。

 

 

一番左が、FreeManのグラフ。まっくろになることが多くなりました。3〜6Kの素材を頻繁に用いるようになったのも、原因の1つかと思います。

 

28GBの使用状況。固定中と使用中で17GBですから、8GBや16GBのメモリでは足りないことが多いです。他のマシンでは32GBが標準ですが、同じく、メモリは足りないことが多くなりました。

 

28GB、32GBで「メモリが足りない」なんて、10年前には思いもしなかったことでしょうが、映像の進化を想像できれば、至極当然のことだったとも言えます。

 

 

私は今でも、学校を卒業した時に親に買ってもらった机(ビクター製の、天板が傾斜できる中々な逸品)が現役ですが、パソコンはそうはいきません。5年持てば上々です。

 

つまり、50万円かけて「えいや!」と「清水の舞台から飛び降りる」思いで購入したハード一式でも、「50万円の品」ではなく、1年10万円の「機材環境維持費」とみるべきです。

 

要は、1ヶ月1万円の「機材使用費」です。そのほかに「ソフトウェア使用費」も上乗せしなければなりません。

 

コンピュータで仕事をするのなら、コンピュータがいくら、ペンタブがいくら、ソフトがいくら、‥‥という計算ではなく、月割りでいくら‥‥という計算を習慣として身につける必要があります。

 

そして、その月割り額は、コンピュータで仕事する以上、支払い続けることになります。‥‥この辺が、今のアニメ業界の「お金」の事情と、「どうしても折り合いがつかない」部分なのだとは思います。

 

 

 

こうして書いてると、「今のアニメ制作現場の原画動画の料金では、非現実的だな」と暗い気分になってきます。電卓で計算して、試算だけで早々に破綻しますもんネ。

 

シンポジウムで「デジタル作画」を先導(いや、扇動かな?)したところで、一番気になる「お金」=仕事の土台の部分の問題に触れずじまいでは、「どうやってコンピュータでの作画をスタートしたら良いか」はナゾのままです。

 

あくまで私の意見ですが、今の業界の作画料金体系では、デジタル作画を波に乗せることは無理だと思います。高価な運送費の高速ジェット貨物機に、単価の安い商品をいっぱい積み込んでも、利益は得られないと思うからです。

 

ジェット燃料にコストがかかりメンテにもお金がかかる高速ジェット貨物機には、相応に、単価の高い商品をいっぱい積む必要があります。

 

 

 

自社制作の作画がらみを、内部的に単価を高く設定できる作品なら、まだ見込みはあるかもしれませんが、今まで通りのフリーランスの単価料金体系では、パソコンの運用はかなり厳しいと思います。ぶっちゃけ、率直に、私の感触で言うと、です。

 

コストのはるかに安い紙と鉛筆ですら、破綻しかかっているような50年にも及ぼうとするアニメ制作システムです。

 

どこにどうやって、コンピュータを新規導入して、定期的に買い換える余地があるのか。

 

 

 

私の知る限り、コンピュータを自分の仕事の道具として使う人々は、すでに「作画」「撮影」という狭義で作業を捉えていません。コンピュータで自分ができる仕事はどんどん引き受ける‥‥という、皆、作業セクションのセクショナリズムを自ら取り払った人たちです。

 

一方、「作画だけをやります」という人でコンピュータを「メインで使う人」は‥‥思い当たらないなぁ‥‥。つまみ食いしている人は多いとは思いますが‥‥。

 

 

 

色々な作業を受注して、ようやく経済的に成立できるかもしれない、道具としてのパソコン。

 

それに加えて、パソコンを仕事のメインウェポンとして導入することは、「サムライが刀と剣術を捨て、チョンマゲを切り落とし、近代的な武器でCQC/CQBの技術を得る」という、ある種、技術上の移り変わりの「極論」にも到達する話題でもあるのです。

 

まあ‥‥ですから、ゆえに、江戸から明治の時と同じように、かなりの抵抗感、違和感が現場にも潜在するのでしょう。

 

 

 

お金、人、キモチ‥‥の色々が、パソコンのまわりを取り囲んでぐるぐると数匹の虎のように歩き回っているのが、今の状況。ぐるぐる回って回り続けて、溶けてバターになるのは、いつごろのことかな。

 

 


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