オールデジタルの頓挫

私が、自分の経歴の中で幸運だったと思うのは、前世紀末の「デジタルアニメーション」立ち上げの時期に深く関与できたことです。コンピュータを導入した制作システムなど存在しないところからスタートし、色々なことを解決しながら、徐々に長尺が作れるように発展していった経緯を、極めてリアルに体感できました。当時、20代後半でしたが、物事を柔軟に吸収できる年頃に「システムを構築する」方法を自然とマスターできたのは、大きな収穫であり、現在まで続く得難い財産です。

 

2016年から今にかけて、「オールデジタル」を標榜して、結局成し遂げられなかったプロジェクトを、いくつも耳にします。作画部門にPCとソフトウェアを供給すれば「デジタル」を具現化できるわけではないのを、今の時期、色々な人が痛感していることでしょう。

 

ペンタブで作画すれば「デジタル化」できるわけじゃないもんネ。実は、作業の動作を「デジタル」化するのと同じくらい、いや、それ以上に、作業行程周辺の整備が必要なんですよネ。

 

何に注力すればシステムが出来上がっていくのか。‥‥一番重要な知識が、システムありきでキャリアをスタートした人間にはよくわからないのです。かくいう私も、「デジタルアニメーション」の取り組みを1996年に開始するまで、絵に描いたような「業界システムの箱入り息子」で、単に「作業をコンピュータに置き換えれば、デジタルでアニメを作れる」と勘違いしてましたもん。

 

時は経ち、2017年。同じ勘違いが、そこかしこで繰り返されているんだと思います。‥‥普通、そうなるわな。システムの作り方なんて、社会システムの中でぬぼーっと生きてれば、学ぶ機会なんてないもんネ。

 

「ノウハウさえ溜まってくれば」‥‥なんて思う人もいますが、それも大いなる勘違いです。「ノウハウ」が溜まることは、決してシステムの構築には結びつきません。むしろ、「ノウハウ」で現状をやり過ごすことだけを覚えて、システムの設計をゼロから見直そうとする気運を妨げる、「障害の原因」にすらなり得ます。

 

2017年の「オールデジタル」の経緯って‥‥

 

  • 新しい土地を購入しました
  • ワラを敷いてとりあえず座ってみました
  • 壁があったほうが良いと思って板で四方を囲ってみました
  • 雨が降ってきたら濡れてしまうので、屋根もつけてみました
  • 住みにくいけど、工夫でなんとかなると、自分を勇気づけてみました
  • ふと、トイレがないことに気づきました
  • なので、部屋の中に便器を置いてみました
  • 急場は凌げましたが、部屋の中に便器を置くことは異常だと思いました
  • 加えて、下水道がないので、色々とヤバいことになってきました
  • 夜になると電気がないのでまっくらにもなりました
  • ライフラインが開通していないので、旧市街から物資を調達しました
  • いくら土地があっても、ちゃんとした家とインフラがないと暮らしていけないと、改めて解りました
  • 新しい土地を離れ、昔住んでいた家に戻りました

 

‥‥みたいな状況も多いんじゃないですかね。

 

今まで、普通に暮らして来れたのは、様々に環境の行き届いた「家」があったからで、「土地」を漠然と購入しても、そのままでは暮らしていけないことを、昔の家を飛び出してみて改めて気がついた‥‥という、めちゃくちゃ「ありがち」なオチです。

 

家の建て方も知らないのに、土地だけ買っても、そこでは生きていけません。‥‥普通に考えればわかることですが、なぜか、自分たちの身になると、気がつかないものです。

 

 

解決法はシンプルです。

 

家を建てることをちゃんと意識して、建築する方法を実践すれば良いのです。ただそれだけ。

 

 

その際、最初から鉄筋のマンションを建てようと、素人が誇大な夢を見ないことです。小さなコテージから始めます。

 

数十秒のアニメ映像を、まずは「オールデジタル」のプチシステムで作ってみることからスタートします。その際に、決して「個人の器用さ」に頼って作るのではなく、その場その場の取り回しで作るのではなく、どんなにミニサイズでも「システムで運用して」作るのです。‥‥実はこれが「極めて重要」です。

 

数十秒の短尺だから、命名規則もフォルダ構成も、レイヤーの名前も、テキトーでいいじゃん。===ダメなのです。そういうことをしてるから、いつまでたってもシステムが作れないのです。

 

「小さい作品だから、個人の手際や器用さで、作っちゃえば良い」だなんて、チャンスを無駄にする典型です。「小さい作品だからこそ、システムのプロトタイプや雛形の運用テストができる」のです。小さい作品こそ、「手弁当ではダメ」なのです。

 

おそらく、「オールデジタル」で頓挫するのって、現場を構成する作業者各個人がコンピュータを扱える状況を、システムができたと誤認したがゆえ‥‥でしょう。各作業者がコンピュータの扱いに慣れて、器用に個人プレーで立ち回って場当たり的にこなせるようになったことを、ワークフローができたとか制作システムができたなどと勘違いするのは、ほんとに‥‥‥‥‥‥よくあること、、、なのですよ。

 

 

実のところ、ファイル名やフォルダ構成、レイヤー名だけをパッと見ただけで、当事者のシステム運用のスキルやレベルがわかります。システムが構築された現場で扱われるファイル名は、とても「整然として美しい」ものですが、システムが出来てない現場のファイル名は「無残に汚い」です。各作業者が個人プレーで状況を切り抜けていくような現場だと、それはもう、ファイル名もフォルダ構成も支離滅裂になります。

 

こんな風に書くと「そうか。決め事をどんどん決めていけば、システムが作れるんだ!」と思いがちですが、それも大いなる勘違いです。

 

ワークフローの設計、ネットワークの設計など、様々なシステム要素を鑑みた上で、「設計上から決め事が浮かび上がってくる」ようにするのが「正解」です。

 

何の根拠ももたない一時的な決め事で、作品制作が成立するのは、個人制作の短尺の自主作品だけです。その場のノリで決め事を乱発しても、うまく統制できるわけがない‥‥ですよネ。

 

あくまで、決め事はシステム設計全体から滲み出していくものなのです。

 

 

 

システムを軽んじる人、システムの重要性は知りつつも困難にブチあたる人、手堅くシステムのステップアップを進める人。2017年から数年は、色々な思惑と状況が錯綜する数年となりましょう。

 

 


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