高詳細の痛撃

私は、新しいアニメーション技術を用いる際は、基本的には清書を自分でおこないます。つまり、動画工程の清書まで自分で作業するわけですが、これは事「イラスト」的に考えれば、ごく自然な流れです。私はProcreateを常用しますが、Clip Studio(既にバリュー版が満期になってライセンスを1つ持っております。クリッピーは溜まる一方‥‥。)でも同じことがごく普通に可能です。

 

もし新しい技術スタイルで、清書作業を現在の動画作業者に依頼する際は、そもそも今までとは違う高詳細な絵を、丹念に清書するわけですから、作業費目は動画ではなく他の費目にします。もちろん、作業単価も「数百円」なんてことはないです。‥‥ありえんでしょ、普通に考えて。

 

4Kを常用している私自身が日頃感じていることですが、絵はなんだかんだいっても、キャンバスが大きくなれば細かくなっていきます。なので、作業する作品が2Kの場合は、故意に絵の密度を下げるようにして描きます。

 

しかし、そもそも、4Kがフォーマットとして存在する意義はまさに「4K=2Kより高詳細であること」ですから、4K作品の制作が開始された際は、実写だけでなく、アニメでも、高詳細な絵を作るのが必然的になります。ミッフィを描くのでもなければ‥‥です。

 

 

一方、現在のアニメ業界の標準的な作画工程。

 

世間の流れに抗いきれず、もしアニメ業界で4K作品を旧来のワークフローで生産した場合、おそらく4K24pで作業することになると思いますが、それは何よりも動画作業とその作業者に痛烈なダメージをあたえることになるでしょう。

 

現在ですら、新人で平均10万円以下だとも言われる収入が、より一層、かなり落ち込みむのではないでしょうか。仮に今の数百円の動画料金が2倍になっても、2倍以上の作業時間がかかったら、収入減になります。つまり、新人の脱落の度合いが一層高まって、「新人が育たない」‥‥というか、育ちたくても生きていけない状況に猛烈な拍車がかかる‥‥のではないでしょうか。

 

今の萌絵の流行がまだ続いたとして、その萌絵の内容は止め絵のイラストを見れば、止め絵とばかりにかなり描き込んだものも多く、その緻密な描き込みに「同じとは言わないまでも」かなり迫った作業を4Kで「やらされる」ことになるのは必至です。そんな絵を8〜12fpsのままだとはいえ、何千枚も描くことになるのは、何よりも動画作業者に痛撃を与えることになるのは、アニメ業界関係者なら誰でも容易に想像できますよネ。

 

 

私が現在の、どこかの誰かたちが牽引しようとする「デジタル作画」の風潮に、どうしても同調も賛同もできないのは、そういう都合の悪い未来には全く言及しないからです。タブレットで作画するようになって、2Kでも4Kでも8Kでもキャンバスサイズが設定可能になって、拡大作画も簡単にできるようになって、その次に来るのは‥‥‥を、全く言わないじゃないですか。

 

「大丈夫ですよ。アニメで4Kなんて、作るようにはならないですから」‥‥と言う人がいれば、ぜひ、その言動をiPhoneか何かで撮影して映像証拠として残しておいて欲しいです。

 

私は、アニメであっても、映像コンテンツ産業の一角として存在する以上は、高詳細だけでなくあらゆる高品質化の波に呑まれていくと思います。

 

16ミリで撮影した昔のアニメですら、HDのリマスタリングで「高品質化の波を利用」して商売してるのです。現代の趣向を色濃く反映して作っている作品が、「高品質化の波」を脇目に、独自の価値観だけで生きていけるわけがない‥‥と、少なくとも私は思います。アニメキャラのデイザインを、しんちゃんやタラちゃんやカツオやミッフィに限定してそれ以外は禁止!‥‥には、到底できないでしょう。

 

 

なんかさあ‥‥、「デジタル作画推進」の流れって、とにかく皆にコンピュータの作画環境を所有させてしまって、その後で「後出し」で高詳細なキツい作業を「なし崩し的」に標準化してしまおうという、「悪どい流れ」すら感じてしまうのですよ。

 

「そんなつもりはない」と言ってても、実際に未来の顛末がそうなれば、同じことです。

 

そんなつもりはなくても、「どうなっていくか」は想像できているはず。物理的制限のあるA4用紙と違って、ソフトウェアの許す限り、キャンバスサイズを大きくできることを、まさか「デジタル作画」に関与している人で、「そんなの知らなかった」なんて言う人はいまい。

 

ゆえに、作業費の問題とデジタル作画推進は、「同じまな板の上」だと思いますけどネ。

 

 

私は、新しい技術においては、旧来の料金体系は一切白紙に戻して、「然るべき技術をもった作業者が、然るべき作業時間を要した際に、技術者の報酬として然るべき金額」を全て検証して、それが制作費の中に収まるべく、制作に関わる人間すべてで「再定義」していきたいと考えています。新しい技術には、新しい作業費の制定が不可欠です。

 

「そんなの無駄。だって、作業の手間も人員も変わらないんだから」と言う人もいましょうが、たしかに、それは正しいです。結局、同じ工数と人員で作業してたら、再定義しても実質は変わりませんよネ。どんなに座る席を変えても、L寸のピザを20人で分け続けていたら、いつまでたってもビンボーですもん。

 

だから、新しい技術においては、作業のフローも所要人員も大きく様変わりするのです。「作業の手間も人員も変わる」から、「無駄」ではないのです。今やっている短尺の仕事は、映像を作る実質のスタッフ数が3〜4人で完結してしまいます。しかも、工期は変わりません。品質は技術の性質が良い方向に作用するので、通常より高くなります。もちろん、4KにもスタンバイOK‥‥です。

 

私は、このブログでも日常の会話でも、コンピュータの良い部分と悪い部分を包み隠さず言うようにしています。そして、次世代の高品質映像フォーマットをターゲットにするということは、かなりのリスクを伴うことも、ゆえに、競合も少なく有利に‥‥は、まあ、何度もしつこく繰り返し書いてることだから、いいか。

 

 

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というは、もしかしたらアニメ業界の嫌な流れかも知れません。「赤信号だとわかってて渡って、トラックに轢き殺されても、皆一緒だから、痛み分け」みたいな‥‥ネ。それじゃまるで、「ネズミの集団自殺」じゃないですか。

 

でも、ネズミの集団自殺は、実は追い詰められたそれぞれのネズミが、自発的に「海の向こうを目指して泳ぎに飛び出す」行為だとも聞いたことがあります。

 

ネズミは、ある時には猫をも噛み、ある時には大山を鳴動させることもありましょう。ネズミは群れに依存しているときは弱い存在かも知れませんが、一匹となってブチギレた時には恐ろしい攻撃力を発揮する‥‥のかも知れませんよ。


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