オールドタイプ

私が最初に購入したペンタブレットは、Wacom製ではなく、今はもう名前も聞かないメーカーの、256階調の筆圧をもつ製品でした。1997年頃の事です。その後、Wacomのペンタブも購入し、歴代のWacom製品を買い続け、Cintiqという名前になる前の液タブも使い、Cintiqも使いました。

 

しかし、どうしても自分の感覚と一致することはなく、「絵をラジコン操作で描くような」違和感を感じ続けたままでした。ですから、私の中ではあくまで「ラジコン操作を上達して絵を描く」という意識でペンタブ技術が発展してきました。

 

液タブは相当いい感じに感覚が近寄りましたが、ガラスの厚さや本体の熱と厚み、据え置きモデルの場合はスタンド(脚)と極太ケーブル(私の使ってたのはDVIだったので酷かった‥‥)、座標精度の低さ、そして解像度(ppi)の低さゆえに、やっぱり「画具」には感じられませんで、心のどこかで「コンピュータ機器」として線引きしていたように思います。

 

そして、iPad ProとApple Pencilの登場。その使い心地の「感覚の近さ」は、このブログで書いてきた通りです。

 

しかし、なぜ、20年近く違和感を感じ続けたペンタブの「私の中の壁」を、iPad Proによって突破できたのか、実は私自身、よくわかっていないのです。

 

自己分析してみると、おそらく、スケッチブックくらいの厚さと重さ、ケーブルに邪魔されることのない軽快さ、Retinaの高詳細画面、ペン先と描画の一致感など、今までのペンタブが超えられなかった「コンピュータ機器」然としていた境界を、はじめて超えてきたから‥‥だとは、思っています。

 

要は、自分をペンタブの都合に合わせなくて良い‥‥ということでしょう。

 

結局、私はオールドタイプなのだと思います。この20年近く「コンピュータ汗まみれ」で毎日仕事をしようが、感覚は20代前半までに定着した「現実の指先の感覚」のままなのでしょう。

 

紙と鉛筆、画用紙と画筆、キャンバスと油彩筆、ケント紙とペン、リキテックス、水彩、インク、コピック、日本画水彩、etc...。小さい頃から体に染み付いた、これらの感覚を、私の体は忘れることができず、コンピュータ機器の領分を超えて「こちら側」にやってくる、新しいペンタブを無意識に欲していたのでしょう。

 

もちろん、今までの20年間で、板タブで稼いだ仕事は数知れないですし、金額にすると結構なものです。しかし、心のどこかで「板タブでも仕事はできる」と強がっていたような節があります。‥‥その証拠に、確実に線画をビシッと決めたい時には、必ず鉛筆かシャープペンを用いて紙に描いていました。

 

要は、どんなにコンピュータに馴れた気でいても、いざ絵を描く時に、一番頼りにしていたのは、紙と鉛筆だったのです。

 

 

なのに、iPad ProとApple Pencilは、紙と鉛筆で築いた「牙城」を突き崩し、今や、私の机には筆記具は厳選した数本のみ、作画用紙は皆無です。

 

iPad ProとApple Pencilは、ちょっと速いストロークをかませばレイテンシーは目に見えるし、ペン先と描画面の距離は空いておりゼロではありません。やっぱり、紙と鉛筆の一体感には未だ到底及びません。

*ちなみに、Mobile Studio Pro 16の最上位機種でも、ちょっとストロークを速くしただけでレイテンシーは発生してました。現在のコンシューマ製品の能力の限界なんでしょうネ。

 

しかし、紙と鉛筆の感覚からどんなに意識しても逃れられない「オールドタイプ」である私が、なぜ、iPad ProとApple Pencilを許容できたのか‥‥は、前述した通り、「境界の最低ラインを超えてきた」からだと思います。自分の体の感覚が、iPad Proを「コンピュータ機器」ではなく、「画具」として認知したのでしょう。‥‥何か、他人事みたいな口ぶりですが、「体に馴染む感覚」は頭で思い込めるほど容易なものではありません。体の感覚が受け入れないとダメなのです。‥‥少なくとも私は、です。

 

 

20代前後の若い世代の人間には、板タブを苦とも思わない「ニュータイプ」がいます。おそらく、そうした人たちは、そうした人たちでしか築けない、新しいフィールドを形成していくのでしょう。

 

しかし私は、死ぬまで、自分のオールドタイプな感覚から離れられません。とはいえ、もはや、iPad ProとApple Pencilが存在する以上は、なろうとしてもなれないニュータイプを目指さずとも、いくらでも創作活動を続行できます。

 

考えたことがすぐに描けて、鉛筆にもペンにも油彩にも水彩にも、アクリルにも水墨にも、何にでもなる画材。しかも、描いた絵は、ネットワークを自在に飛び回ることができる。

 

私自身は、団塊ジュニアの先鋒として生まれ、コテコテのオールドタイプなのはしょうがないとしても、よくぞ、技術進化が今に間に合ってくれた‥‥と、時代性に感謝する日々‥‥でございます。

 

あと5年、iPad ProとApple Pencilの登場が遅かったら‥‥と思うと、冷や汗ものです。まあ、逆に、5年早く登場していてくれたら‥‥とは思いますが、それは有りえない「歴史のIF」ですネ。

 

 

とまあ、1月は新年スタートで、思うところもたくさんあり、気の向くまま、こうしていつもの月よりも多く、文章を書き綴ってきましたが、自分の考えを書くことで、自分自身の思考の整理もしているのでしょう。結局は、自分に言い聞かせているようなもの‥‥ですもんネ。

 

来月(いや、今も既に)からは中々に忙しいiPad作画の日々。iMacの新型が楽しみではありますが、粛々とコツコツと仕事をこなしていかんとネ。

 

2017年か。‥‥まったりと布石を打っていくには、ええ感じの年‥‥ですネ。

 

 

 

追記:

iPad Proのことばかり書いてますが、Cintiq Proの16インチは、中々期待度の高い製品です。Cintiqを接続するマシンの性能が影響するので、Cintiq Pro 16(4Kモニタ相当)だけを購入してもダメですが、高いスペック(CPU、GPUとも)のマシンを持っているのならCintiq Pro 16は期待しても良いように思います。

 

写真は、既に発売中の13インチ、2Kモデルです。

 

本命は何と言っても、もうすぐ発売予定(2017年1月現在)の4Kの16インチモデルですが、マシンのビデオ性能が低いとNGですので、購入前には自分のマシンの性能をよく確認してから‥‥です。


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