インスタンス。

なぜ、アニメ業界に突如「インスタンス」という言葉があちこちで聞かれるようになったのか。

 

前に書いた記事で「もしかしたら、ソフトウェアサイドで「インスタンス」なんていうメニューがある‥‥でしょうかネ。」と書きましたが、TVPで「インスタンス」という用語を使っていると聞き、‥‥まあ、それじゃあ、TVPを使う以上、「インスタンス」という言葉が飛び交うのは、状況としてしょうがないのかな‥‥と思います。

 

しょうがないとはいえ、やっぱり、「インスタンス」は範囲が広すぎて紛らわしい。「デジタル」とおなじくらいに紛らわしい。

 

 

Googleさんで調べて見ればわかる通り、インスタンスはそのほとんどが「プログラム関連の用語」としてヒットします。プラグラム用語ではなく英単語としては「事実」「事例」「場合」などの意味があるようです。

 

で、ごく普通の場合、インスタンスを生成したクラスの呼称を引き継ぎますから、「何のインスタンスか」がわかるのです。

 

例えば、「ドキュメント」クラスのインスタンスは「ドキュメント」、「レイヤー」クラスのインスタンスは「レイヤー」という感じに。

 

TVPにおいて、まさか、「インスタンス」クラスのインスタンスが「インスタンス」なんて、笑い話みたいなことはあるまい。TVP内部に、かならず、「インスタンス」のもとになるオブジェクトなりクラスなりプロトタイプがあるはずで、そのインスタンスが「インスタンス」なのでしょう‥‥って、ほら、こんなに紛らわしくわかりにくいじゃないか! ‥‥結局、TVPの「インスタンス」は何のインスタンスなんでしょうねぇ‥‥‥‥。

 

 

このブログを表示しているウィンドウも、呼称はWebブラウザのソフトウェアそれぞれですが、なんらか(たぶん、ドキュメントかウィンドウかタブか)のインスタンスです。

 

macOSの「Safari」で、「ドキュメント」のインスタンスを生成して新たにウィンドウを表示させて、そこに「タブ」のインスタンスを生成するApple Script文は以下のような感じです。「make new」でインスタンスを生成しています。

 

tell application "Safari"

    set myDoc to make new document

    set myTab to make new tab at front window

end tell

 

 

ESTKでAfter Effectsに対し、新規コンポジション、つまりコンプアイテムのインスタンスを生成する場合は、以下のような感じです。

 

var myComp = app.project.items.addComp("HD24p", 1920, 1080, 1, 6, 24);
if (myComp instanceof CompItem) {alert(myComp.name+"はコンプアイテムのインスタンスです.");}

 

 

‥‥というような感じで、インスタンスという言葉はかなり一般的なわけですが、TVPの「インスタンス」は‥‥‥、開発者サイドで何かぴったりあてはまる言葉が、どうしても思いつかなかったんですかね(苦笑)。

 

おそらく日本語訳の問題ではなくて、英文の元から「Instance」で、それを単純にカタカナにしたのが日本語版なんでしょうね。日本語訳する時に、わざわざインスタンスなんていうカタカナを何処かから持ってくるとは思えないので、原文の英語のカタカナ化なのでしょう。

 

普通は、「インスタンス」「オブジェクト」だとあまりにも漠然としているので、例えば「フレームピクチャ」とか想像しやすい用語を考えるんですけど、ぴったりくる言葉が思い浮かばなくて、時間切れになったんかなぁ‥‥。「インスタンス」にしとけばフワッと誤魔化せる感じがしたんでしょうかね。

 

 

でもまあ、最近アニメ業界でにわかに「インスタンス」という用語が出始めた「出どころ」はわかりました。「インスタンス」という言葉をアニメーターが使ったら、「ああ、TVPのアレの事だな」と頭を切り替えれば良いのです。今のところ、アニメ制作で「インスタンス」という言葉を頻繁に用いるのは、TVPだけでしょうし。

 

ちなみに、Mayaでも「インスタンス」という言葉が出てくるようです。なぜ、あえてインスタンスという言葉を選んでいるのかは、3DCGの門外漢なのでよくわかりません。

 

 

呼び名が思い浮かばなくて、苦し紛れ、時間切れ‥‥というのは、確かによくあることで、実は「呼称の命名」は知恵熱のでる重要なものではあります。一般的過ぎると逆にイメージが伝わらないし、あまりにも突拍子もない造語だと言葉だけでは全く意味が伝わらなくなるし‥‥で。

 

新しいアニメーション制作技術の体系立てをおこなっていると、「この工程って、何ていう名称にすれば良いのか」という問題にぶち当たります。

 

たかが用語‥‥と思う人もいるかもしれませんが、技術というのは「ぴったりくる名称を与えた時に覚醒する」ようなところがあって、名称をもたない工程・段取り・作業は、いつまでたっても周囲に認知されない‥‥という興味深い傾向があります。名前を与えて、かつ、名前負けしない活躍ぶりを見せれば、工程や仕事、役職としてフィックスするのですが、それは結構、大変な道のりでもあります。

 

でもだからと言って、「インスタンス」だと大雑把過ぎて、何を指しているのか、やっぱりわかりにくいです。「デジタル」と同じで、「デジタルで」「デジタルが」と言われても具体的に何を指しているのか‥‥わからないですもんネ‥‥。

 

 

After Effectsのスクリプティングガイドからの抜粋。オブジェクトの存在と階層構造がわかります。ちなみに、「テキストドキュメント」オブジェクトと「シェイプ」オブジェクトはこの図には含まれておらず、「itemのサブクラスではない、compItem内のみで存在するオブジェクト」なのかな‥‥と思います。After Effectsにはアイテムではないオブジェクトもあって、たしかに、実際のプロジェクトウィンドウのアイテム一覧には、「平面」は存在しますが、「テキスト」も「シェイプ」も見当たらないですもんネ。

 

TVPの「インスタンス」も、こうした概念図があれば、その正体がわかる‥‥かも知れませんネ。

 

ちなみにTVPaintって、私だと以前(2000年前後)の「Aura」の呼び名のほうが印象深くて、TVPaintと言われるとイマイチ、ピンときません。「AuraやMirageの現在の呼び名がTVPaintだよ」と言われると、具体的に想像できます。以前、AuraやMirageが「TVPaint Animation」って名前に変わったのを聞いた際は、「昔の名前の方がかっこよかったのに」と思ったものでした。

 

今後は、TVPaintで名前が定着するの‥‥かな?  2003年まではAura、2005年までがMirage、それ以降がTVPaint Animation‥‥という状況のようです。

 

TVPaintの前身の「AURA」の解説本。1998年刊。

お借りしたまま、返せずにいますが、例の作品に絡む際に、もしかしたらお返しできる予感。


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