アクリルで田中式塗装術

仕事目的とは別に、普通に塗装して作るプラモも、ごく少数作っていますが、ラッカー系(シンナー系)の塗料は率直に悪臭がしんどいので、できるだけアクリル系の水性にシフトしようと数年前から考えています。

 

 

*左が水性アクリルのタミヤカラー、右はラッカー系のMr.COLOR

 

断熱効率を重視した密閉性の高い現代の家屋ですと、ラッカーの「シンナー臭」は数分の換気程度では部屋から抜けてくれません。ラッカー系の得意な金属系の塗装ならやむを得ないですが、通常のつや消し系・ミリタリー系の塗装ならアクリルで可能なものは、全てアクリルに移行したいです。

 

私の自宅の部屋は、コンポジット、作画、プチ音楽制作、立体造形制作‥‥と、欲張り仕様なので、部屋中がシンナー臭で充満するのは、とても不都合なのです。

 

ですが、たとえアクリル系でも、エアブラシで噴霧すると、臭気が部屋に多めに拡散するので、エアブラシの使用は極力抑えて、筆でほぼ全てを済ませるのが「部屋の環境として」理想です。

 

となると、水性アクリル系による筆塗り塗装をメインに‥‥ということになります。

 

 

筆塗りといえば、田中式塗装術。

 

田中克自流飛行機模型筆塗り塗装術」は、ラッカー系の塗料をメインとして、極細面相筆で翼面などの大面積も塗り上げ、マーキングも全て手描きという恐るべき技法で、エアブラシでは得られない緻密な筆跡の塗装面(描画面というべきか)とニュアンスが最大の魅力です。「ハイレベルな塗装法はエアブラシ」というプラモの一般論を根底から覆す、素晴らしい塗装技術です。

 

田中式塗装術は、プラモという立体にボックスアートを描画するような趣きの、とても独特なプラモ塗装術なのですが、小さい頃からプラモのボックスアート(箱の絵)が大好きで水彩画にも馴染み、中学から油彩を始めた私にとって、とても「合点のいく」塗装術だったのです。

 

私は前々から、この塗装法を水性アクリルに転用できないかイメージしていました。ただ同時に、田中式塗装術は、浸透性が高く筆の伸びも良いラッカー系塗料と溶剤が基本であり、水性塗料の厚塗りになりがちで段差ができやすい特性には向いていないように思っておりました。

 

水性アクリルだと、「ゴッホ」のようなうねる筆致になってしまうように思えたからです。

 

しかし、「まあ、やってみて判断してもよかろう」ということで、作りかけでほったらかしにしていた1/144のF-15で試してみることにしました。‥‥1/72や1/48のキットだとうまくいかなかった時のダメージが大きいので、作る気も失せていたキットで試したのです。

 

1/144は実はちゃんと作ろうとすると、超絶な技術が必要なスケールなんですが、去年暮れに溜まっていた1/144の食玩をいくつも組み立てて、「妥協のレベルが下がっていた」こともあり、妙な自尊心は捨てて「塗装法のテスト」として作ってみることにしました。「人に自慢できるくらい、うまく作ってやろう」とすると、いきなりハードルが上がって、結局「積んどくモデラー」(制作のプラン作りに終始して、実際には制作しない)になっちゃうんですよネ。

 

ラッカー系を用いる田中式塗装術は、水彩絵具のような「乾いた絵の具も、水(溶剤)で復活する」特徴を活用しております。乾燥した水彩絵具を水で戻しながら描くように、ラッカー系のMr.Colorを使う、これまた、独特な方法です。

 

しかし、水性アクリルだと、その方法は全く通じません。絵画用のアクリル絵具と同じように、その都度に調色して使い、乾いた後の再利用はできません。

 

ですので、色数はある程度、あらかじめ揃えておく必要があります。

 

*タミヤカラー。中には、瓶がミニサイズになる前の、20年前くらいに買った塗料も、現役で存在します。塗料の寿命って、長いですよねェ。

 

試しで塗ったF-15は、瓶から直接塗る方法で進めましたが、その後で塗り足した際に、パレットや塗料皿に絵具をとってアクリル溶剤で濃度を調節して塗った方が、田中式塗装術に近い結果が得られることがわかりました。塗料は瓶に入っている状態では、往々にしてネットリしており、平筆でムラなく塗る用途ならそれでも良いのですが、田中式塗装術を応用する目的なら、濃度はサラサラにしておいたほうが扱いやすいです。

 

*瓶から直接塗ると、こんな感じにボッテリします。しかも、面積の広い細筆で塗っているので、田中式とは大きくかけ離れたスタート‥‥。しかし、こうした光沢やボッテリ感は、溶媒の揮発と共に、随分とフラット化していきます。

 

*これで大丈夫か?‥‥という不安にもメゲずに、翼の迷彩も筆でボカしつつ塗装、スミ入れもしてみます。昔のキットには珍しいスジ彫り仕様の1/144ですが、アクリルの筆塗りにより、毛細管現象が効き難くなっていますので、強制的に淡墨エナメル塗料をスジにブッ込んでいきます。

 

*とりあえず、このくらいにはなりました。見ての通り、キットは操縦席部分がのっぺらぼうのおおらかなキットです。私はこのキットを小学生の時に作った覚え(当時の販売価格は100円)がありますから、相当に古い金型です。こういう類いの古いキットを超絶技法でディテールアップする腕前など私は到底持っていないので、このまま作り続けます。

 

また、私は田中式塗装術の「マーキングまで手描き」という領域には踏み込まず、おとなしく添付のデカールを利用する方針なので、マークの厚みは見ないことにしても(スケールモデルではマークの厚みもシビアになります)、シルバリング(テカり)だけは防ぎたいので、フラットクリアを最後に処理する必要があります。

 

‥‥で、それさえもスプレーではなく筆塗りでやってみましたが、まあ、さすがにクリアくらいはスプレーでも良いかな‥‥という印象です。全体にサッと吹けば良いだけですし。

 

 

田中式塗装術のマーキングまで筆塗りする方法は、そもそもマークの厚みによる段差など物理的に生じないですし、同じ塗料で描画しますからシルバリングも発生せずで、やっぱり本来の指南通り、マークも筆塗りすべきなのでしょうネ。

 

この古いキットにこれ以上時間を費やしてもアレなので、早々に打ち止めにします。塗装テストの収穫は十分得ました。汚し過ぎた感はありますが、実機は結構汚れているので、これでもういいです(=早く終わらせたい感、満載)。

 

*脚を接着する穴もそのまま。まあ、塗装のテストですし、そもそも飛行状態との兼用キットで脚収納部が無きことになっているので、不都合部分はサラッとスルーして終わらせます。

*今回はアクリルと筆塗りオンリーにこだわり、金属部分の塗装もアクリルです。本番の際は、金属部分くらいは無理せずに、ラッカーで塗るのが良さそうですネ。

*もともと、指先の不器用な私は、1/144なんて鬼門中の鬼門。塗装までおこなうのなら、私は1/48までが限度です。1/72も辛い‥‥。

 

でもまあ、そんなこんな、ダメもとでアクリルで試しに塗ってみて、気を配る部分さえ踏まえれば、それなりにイケそうなことがわかりました。要は、アクリル絵具を「薄塗り」する時の要領で進めれば良いのです。

 

今回のテストは塗料がネットリしてたので、こんな感じの油彩の表面みたいになっていますが、メディウムで溶いてサラサラ状態で塗れば、もう少し平坦な塗装面になると思われます。

 

「絵を描く感覚」でプラモを塗る要領は、田中式塗装術の流れのままですので、指南書の内容をアクリルの特性に読み替えて実践すれば、アクリルなりに「なんとかなりそう」です。

 

出来上がったF-15は、他の食玩さんと同じく、集積場所で「宙吊り」になるまで待機してもらいます。

 

 

 

ちなみに、1/144のプラモや食玩は、扱われ方こそ雑ですが、机のそばに置かれて(ぶら下がって)、一番身近な立体造形となります。

 

メカなんてものは、気を張って構えるより、こうして無造作に身近において、普段から感覚を慣らすのがよろしいですネ。アニメや実写のフィクション作品に関わっている人間としては。

 

 

 

 



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