テレ会議

テレ=遠隔地で、会議をするのは、私は随分前から経験済みです。ゲーム会社さんと仕事をした時に、アニメ会社とは違ってPCありきの環境ゆえの意識の違いか、音声とテキストの会議を早々に提案され、Skype会議を2000年代から実施していました。

 

当時の会社は国分寺にあったので、都心から御足労願うのは、なによりも移動時間の浪費でしたし(8時間労働だとして、往復に2時間かかったら、労働時間の1/4を消耗しますよね)、中央線で新宿あたりから国分寺に出向くのは体力も消費しますもんね。

 

2020年の今。

 

少なくともiPadを持っていれば、ビデオ・音声・テキストのテレ会議は可能です。iPadには、フェイスカメラもマイクもありますので、ハード的には準備OK。

 

iMacやMacBookも、もちろん準備OK。フェイスカメラ(昔はiSightと呼んだような‥‥)とマイクを内蔵しています。

 

 

 

 

アニメ制作会社のPCは、マイクもなければ、カメラなんてもっと無い‥‥なんてマシンが多いでしょう。

 

でもまあ、それは2000年代とて同じでした。それでも会議は進む。

 

思うに、数人が参加するテレ会議は、ビデオにこだわる必要はあまりないです。

 

どうしても必要なのは、

 

  • 手元のPDFや画像ファイルなどを資料として共有できるファイル送受信機能
  • 「このWebをみてください」とURLを共有できるテキスト送受信機能
  • 高音質な音声会話(聞き取りにくいと会議に支障をきたすため)

 

この3つをクリアして、次に余裕があれば、ビデオも足す‥‥で、じゅうぶん、会議は進行します。

 

なので、USBのヘッドセットを買い足せば、難なく、最低条件はクリアできます。

 

 

 

お勧めしたいのは音響メーカーのヘッドセットです。ヘッドフォンの元から音が良ければ、ネットの通信速度で音が悪いのか否かが簡単に判別できます。

 

ヘッドセットは音が回りにくい(ハウリングしにくい)ので、聞き取りやすさ・話しやすさが段違いに優れています。

 

口のすぐ近くにマイクがあるのでデッド(ライブの反対=部屋で反響した音にならない)な音声となり、相手にとって聞きやすさが向上します。(ただし、耳元で喋っているような生々しさがあるのでキモいというウワサも)

 

とはいえ、今どきは、値段を吊り上げて、予約だけ先にさせる商法もあるみたいないので、特にアマゾンで買う時には注意してくださいネ。アマゾンって、コロナウィルスで無法化した感がありますね‥‥。

 

PCに繋ぐ目的なので、必ずUSB仕様のヘッドセットを買いましょう。面倒がなくて良いです。

 

上の写真のようなタイプでしたら、耳のスポンジが劣化した場合に、ソニーの似たような500円くらいの交換パーツで代用できます。

 

 

 

必要は発明の母‥‥とも言いますが、必要は作業環境進化の母‥‥とも言えそうです。

 

iPad Proで作画している人は、そのiPadだけで会議もできます。(ネット環境は必須ですけど、そもそもテレワークの話題なので言うまでもない)

 

古い環境に依存している人は、こうした変動期、クライシスの時に、淘汰されがちです。

 

進化論を引用するまでもなく、環境の変化に柔軟に対応できるものが生き残る‥‥というのは、どんな世界でも同じですネ。

 

 

 

ちなみに、「先方の会社とビデオ会議するので、全員、会議室のWebカメラの前に集合!」なんて、コロナウィルスの今、お笑いのネタみたいなものです。

 

人々が密集して集まらないために、テレ会議をするわけですから。

 

参加する各人が、テレ会議の装備を実装しましょう。

 

 


4KとHDR

4Kのアニメ‥‥という話題では、4Kばかりが注目されがちですが、HDRも同格の重要度を有する技術要素です。

 

4Kに関しては、現在はまだ普及にバラつきはありますが、SD時代のHD(2K)の立ち位置なので、皆がテレビやモニタを買い換えるタイミングで浸透して更新されるでしょう。

 

4K解像度を特別視する人はまだ多いですが、アニメ制作の内部事情はともかく、世間においては、4KHDRテレビや4K放送、4Kストリーミング番組など、確実に「次期標準」として更新は進んでいくでしょう。

 

私は2014年からiMac 5Kを自宅で使っているので、2K(1980〜2560px)モニタはフォントの輪郭がぼやけてみえるのがハッキリと判別できます。最近のiMacを使っている人は、もうみな、4Kには慣れていることでしょう。

 

 

iMacよりも普及しているものもあります。

 

iPhoneの大きいモデルは解像度が1920pxですし、iPadも似たようなppiです。画面は小さくても、画素がぎゅっと詰まった画面は、4Kモニタと同等どころか、4Kよりも細かいです。

 

実はもう、世間の人々は「4K解像度のスタンダート感」にスマホやタブレットで慣れているんですよね。その見慣れた詳細感が、大きなモニタやテレビにも反映されるだけのことです。

 

今やスペシャルな博物館クラスの映像とは、8Kとか16Kの世界です。

 

4Kは2020年代の標準仕様となるでしょう。‥‥HDが2010年代の標準となったように。‥‥すでに皆がスマホの高密度液晶パネルに慣れて久しいように。

 

 

 

実はダークホースは、HDRなんですよ。

 

HDRは、今までSDRと呼ばれたRec.709 100nitsのダイナミックレンジから、大々的に躍進して、極めて幅広いダイナミックレンジを持ちます。

 

当座、1000nitsがターゲットではありますが、規格上は10000nitsまで存在します。10000nitsを映し出せるモニタは存在しないのであくまで規格上ですが、HDRとはSDRとは異次元のスペックを有した色彩を有します。

 

最近まで作っていた4KHDRの短尺作品は、1000nitsの輝度を有するEIZO CG-3145で各種チェックをしていました。作業用モニタは、CG-318と319で、最大輝度は300nitsではあるものの、正確な色を映し出していました。

 

SDRモニタでHDR作品を作るのは、少なくとも色を扱う工程では不可能です。HDRモニタでPQカーブに対応できるプロ作業向けのモニタが必須となります。

 

発色の特性が今までの延長線上の予想を大きく上回るので、もはや頭の中で補完・変換して色を作ることは不可能だからです。

 

あくまでわかりやすく誇張したイメージですが、2KSDRと4KSDRを比べると、以下のようなイメージになります。

 

 

 

 

注目したいのは、HDRはSDRの上位互換であることです。

 

SDRの色域をカバーしているので、何なら、左側の濁って抜けの悪い絵も、意図的に作れます。一方、SDRはどうしても表現できない色があり(緑が苦手なのでシアンも苦手になり、青空もくすみがちになる)、輝度というよりは色彩の範囲が狭くなります。

 

*Rec(BT).709は、ご覧のように、かなり三角のエリアが狭いですネ。緑は特に狭い。人の肌色は得意ですネ。

 

*現在のHDRの主流、DCI-P3は、かなり緑のエリアが広くなりました。

 

*夢のHDR、Rec.2020(BT.2100)は、緑のエリアがドカンと広いですが、この色域を表示できるモニタはまだない‥‥と聞いてます。2020年4月の今も?

 

 

 

正直なところ、4KはHDRとセットでなければ、文字通り「精彩」を欠きます。

 

4K寸法でアニメを作っただけでは、トレス線がちょっとシャープになった程度かな‥‥という認識止まりになりがちです。

 

しかし、HDRをネイティブにコントロールして、線画も色彩も自由にコントロールできれば、大きな表現上の広がりを得ることが可能です。

 

ドットバイドットの4K作画。

 

色を塗る時からHDR。

 

この2つは、「せっかく4Kアニメを作るのなら」踏まえておきたい要素です。

 

 

 

4KHDRでアニメを作る表現上および技術上の達成目標はまだまだ数多いのですが、まずは4K等倍で絵を描くことと、HDRで最初から色を彩ることです。この2つのハードルを超えられないと、次のステップに進めません。

 

ハードルを超えると、「ほんとうに、今までの線の描きかたで良いのかな? もっと表現力の豊かな、効果的な描きかたがあるはずだ。さらには、4Kで映えるキャラデザインがあるはず。」と気づくでしょう。2Kを単純に拡大したのが4Kではないことを、絵を描く人間なら、やがて理解すると思います。

 

色も同じです。SDRをただ拡張しただけの色彩ではありません。ただ明るくしただけなら、やけに眩しいだけの見辛い画面になります。色を鮮やかにするだけでなく、淡く繊細なパステルカラーも、豊富なミディアムトーンで表現する無彩色も、ブリーチバイパス(銀残し)のような黒の締まった画面も、自在に作り出せることがわかるでしょう。

 

 

 

新しい技術や表現が登場するたびに、不要論や否定論が出ます。おそらく、1963年にテレビアニメが登場した際も、気に食わない人はいたでしょう。テレビマンガではなく、本のマンガで十分だ!‥‥とかネ。

 

現在皆が普通に見ているHDの2Kテレビも、「そんな大きな解像度は不要だ。オーバースペックだ。720x486で十分だ」と、何人ものプロ映像制作の人間が言ってました。今や日本のアニメ業界全社が採用している「デジタルアニメーション」〜彩色以降をコンピュータで制作する方法も、2000年前後は酷評する人がそれなりにいました。

 

一方で、技術の話題を、作品の面白さの話題と混同して語る人もいます。

 

つまりは、新しいものに対する動揺を、人それぞれが自分の感覚で表現するもの‥‥なのだと思います。

 

そしてそれは一時的な動揺であり、2020年の今、ガチでDVDやD1サイズで映像を作るプロはいませんし、フィルムじゃないとアニメはつくらない!‥‥と叫ぶアニメ制作者もいません。

 

動揺と混同を、クールダウンしましょう。自分の中のカテゴリーミステイクを防ぎましょう。

 

 

 

4KHDRは作品を作るためのキャンバスであり、道具であり、表現の手段です。

 

そして、アニメは「アニメの型」に縛られて来なかったからこそ、日本のアニメ独自の発展が培われました。

 

4KHDRを型にはめ、アニメを型にはめるのは、少なくとも映像制作のプロのすべきことではないです。今までの経緯から学べば、自ずとわかりましょう。

 

 

 

プロならば、道具を足かせにするのではなく、使いこなしたいですよネ。

 

弱点にするのではなく、武器にしたいですよネ。

 

であるならば、4KもHDRも使いこなして武器にすればよい。それだけのことです。

 

 

 


同じ地雷は踏まずに歩きたい

アニメーターの中で結構多くの人が、コンピュータのことをいつまでも覚えないのは、後で人知れず、誰かがフォローしちゃうからというのもあるでしょう。

 

実際、私は数年前に、アニメ業界がなぜか好んで使い続けるTargaフォーマットに合わせて、原画データを出力しましたが、解像度が大変なことになっていたのを、あとで気づきました。それまでは、制作進行さんが「やれやれ‥‥」と思いながら変換して対応してくれてたんでしょうネ。

 

私がその数年前当時にTargaを使用したのは、その作品サーバのフォルダで見かける静止画がTargaが多かったから‥‥という「なんてことのない」理由でした。Targaは普段使わないフォーマットだったので仕様を知らず、私自身、「紙のフローで使われ続けているフォーマットが、まさか解像度情報をもたないなんて」思いもしなかったのです。

 

私は運良く自分で気づきましたが、気がつかなければ、今でもマヌケに巨大な印刷解像度のTargaファイルを出し続けていたでしょう。

 

 

 

担当者に戻さず、受け取った側が処理して対応することで、もしかしたら、物凄いスピードで現場は構造疲労と劣化が進行しているのかも知れません。

 

「そんなこと言ったって、現実は」‥‥と言うのは、私も解ります。‥‥撮影工程で撮影監督をやってた時期もありますんで。

 

でも、実際、なぜデジタル作画をしてるのに、入力&出力時の解像度の仕組みを知らない人が、そこそこ大勢いるのか。

 

誰かが直して事なきを得て、本人にフィードバックされないからです。

 

Targaが「解像度をもたないフォーマットだった」というのはともかく、TIFF、JPEG、PSD、どれも解像度は保持できる画像フォーマットです。297x210のA4ではなく、A2くらいの巨大な印刷解像度になっていたとしたら、ペーパーレス工程に紙工程がイレギュラーに混入してしまったか、ファイルを扱った人間のミスか、どちらかです。

 

ファイルを扱った人間のミスだとしたら、そのミスした人間に戻さないと。

 

ミスした当人が、「サンキュー。じゃあ、今後もテキトーに出力して渡すわ。」‥‥ってなったら、現場は崩壊の一途です。

 

なぜ、戻さないのか。権限の問題じゃないですよ。気弱な性格で表面上のトラブルを回避したことが、内部の腐敗をどんどん進行させているのです。

 

リテークにすると時間がない場合も、当人に「頂いたファイルなんですが、DPIが72dpiになって、すごいデカい印刷寸法になってます」と伝えれば、「うそ!マジで?」と当人が気づけて次回の提出に反映されます。自分が出力したファイルは、さすがに実際に印刷して確かめるまではしないので、実は気づきにくいのです。指摘すれば、ほとんどの人が対応してくれるはずです。「そんなのわかんねーよ。DPIなんてしったこっちゃねーよ。」とか言う乱暴な人以外は。

 

ちなみに、PhotoshopでTargaを開いて、72dpiになっているのを再サンプルなしで150dpiにすると、あたかも、ちゃんとDPIが変更されたように見えます。再度、解像度を確認すると、150dpiに変更した内容のままです。しかし、いったんファイルを上書き保存して閉じて、開き直すと、72dpiに戻っています。‥‥Targaには解像度という属性がないので、DPIの情報変更は、破棄されてしまうわけですネ。

 

 

 

ちなみに、私はTargaが解像度未定義のファイルフォーマットと知ってからは、出力をTIFF等に切り替えています。

 

不毛ですもん。‥‥オリジナルのファイルがちゃんと正常なdpiで実寸ピッタリなのに、Targaにした途端に属性自体を喪失し、macの場合はみな72dpi扱いになるなんて、誰が悪いの‥‥って話です。

 

まあ、よく調べもしないでTargaを選ぶ自分がまず悪いですが、その次には、「Targaにしとけばアニメ現場OK」みたいな風潮も悪いですネ。

 

あとは、出力するファイルフォーマットを誰も取り仕切らない現場もマズいすネ。まるで停電して信号の消えた幹線道路です。

 

20年以上、アニメの現場でコンピュータ絡みの作業している人は、解像度の相違のトラブルと聞くと、「また同じ地雷踏んでら」と思うのですが、とは言え、同じ地点に埋めてある地雷を定期的に踏み続ける構造は、そろそろ変えないとアカンですネ。

 

 

 

私は自分で解像度の相違を直すスクリプトを作ってチェックしていますが、そのスクリプトはあくまで個人内部で使うもので、それをバラ撒くことはしません。

 

作業ミスの尻拭いを、他人に押し付けるツールになりかねないからです。

 

もし自分の中で解決しなければならないのなら、Photoshopのアクションも覚えて使いこなすようになるし、どこの何を注意してチェックして作業アップしなければならないかも自分で覚えます。

 

解像度に限らず、例えば「パソコンの色がおかしい」なんて言ってちゃ、ダメなんすヨ。「このモニタの色域って、何合わせ? とりあえず、グレーチャート見せてくれませんか?」と管理者に聞けるような知識を持つべきです。

 

自分で仕組みと理屈を覚える。‥‥これ、大事。

 

仕組みと理屈を覚えれば、同じ地点の同じ地雷を、2度も3度も踏み続けて吹っ飛ぶことはなくなります。

 

 

 

 


MacBook Proの存在感

iPad Proの登場で、存在感を押しのけられがちなMacBook Pro。

 

しかし、MacBook=macOSで動作するモバイルは、特に映像制作者にとってはiPadでは代替できない存在感があります。

 

前回に引き続き、モニタの話ですが、MacBookは色校正が、何とか可能(自由自在とは言えないですが)で、ラボの色調と相当似せることが可能です。

 

色彩計で調整なんて、iPadでは無理です。そもそも、そういう役割(プロ映像仕様)ではないですしネ。

 

 

 

アニメ制作会社は、たまに自社のリファレンスモニタ・マスターモニタをラボに持ち込んで比較して検証することがあります。

 

しかし、海外のラボだと、それは不可能ですよネ。実質。

 

なので、色域を示し合わせて、色域の規格に準拠した調整を行なって、「論理的」に一致させることになります。

 

でもまあ、そこそこズレるっしょ。

 

‥‥とタカを括っていると、これがまた、不気味なくらい似ることがあります。

 

 

 

最終段階の色彩に集中して気を配って研ぎ澄ます‥‥のは、コンポジット絡みのセクション監督職をしていると、ありがちな光景です。ラボでの立ち合いの際に持ち込めるのは、個人が持ち運ぶので、モニタ本体ではなく、MacBook Proなどのモバイルになります。

 

そのMacBookを、システムスタッフに出来る限り調整してもらって(調整できる幅が狭いですが)、ラボに持ち込んで比較すると‥‥

 

MacBookの(ショボいはずの)液晶なのに、似ている

 

‥‥と、なんだかAppleに失礼な驚きがあります。実際に私の体験として、ありました。

 

AppleはEIZOとは違って、規格を無視してでも独自路線を突っ走っている感がありますので、モニタの色付けも結構強めです。

 

しかし、システムスタッフに調整してもらったMacBookは、首を傾げるくらい、スクリーン(発光体ではない映写)に似てたりします。「当て外れ」ですが、「嬉しい当て外れ」です。

 

私が使っていたMacBook Pro 15インチがたまたまだったのかは知りませんが、わずかな誤差の範囲でラボのスクリーンと似ていたことは、

 

色域に準拠することの有効さ・大切さ

システムスタッフの調整技術の重要性・大切さ

 

‥‥を痛感しました。制作会社にシステムスタッフが常駐する利点、ありがたさを、ラボの上映を見ながら噛み締めました。

 

そして、MacBook Proの存在感も実感しました。

 

 

 

私はiPad Proを毎日使って、正真正銘のメインの道具です。2020年の今は、MacBook Proはたまにしか開きません。

 

しかし、何でもiPad Proでできるわけじゃないです。コンポジット周りの仕事は、iPadでは全くしてませんし、iPadでは軽い編集くらいしかできないと思います。

 

macOSの様々な機能、様々な映像系のApp。それを使いつつ外で持ち歩くには、MacBookしかないですよネ。

 

入出力の豊富さも、iPadには真似できません。実写のかたが、ブルー(グリーン?)バック撮影のスタジオで、リアルタイムでMacBook Proでブルーバック合成しているのを見ると、iPadでは到底無理な芸当だなとも思います。

 

道具は適材適所。

 

最近、新しいMacBookシリーズが発売されましたが、必要な人には今でもメイン・トップクラスで必要でしょうネ。

 

 


プロファイル、再び。

チェックモニタの調整の重要性は前回書いた通りですが、フリーランスの個人宅でマスモニを導入するのは、コスト的=導入費・維持費的に、明らかに非現実です。

 

ゆえに、制作会社の存在意義もあります。仕事を受発注するだけが制作会社の存在感ではありません。「制作会社のチェックルームのモニタは信用できる」とスタッフ全員が信頼する環境を用意するのも、制作会社の大きな存在理由です。

 

 

 

信頼できるモニタ環境を確立して、ようやく、今後の「カラープロファイル運用」の必要性が見えてきます。

 

すぐ先の未来は、もはやsRGBだけを基準にしていた時代ではなくなります。DCI-P3、PQやリニア(HLG)、もしかしたら1000nitsのテレビや、真にBT.2100が表示可能なモニタやテレビも登場するかも知れません。

 

一方で、アニメーターは、白地に黒い描線で絵を描きますから、100nitsどころから50nitsくらいで充分です。用紙(ドローAppのキャンバス)の白地を500nitsで見続けるお馬鹿さんはいまい。かと言って、PQ合わせで、白地を目に優しく50%のグレーにするわけにもいきません。線画を描くアニメーターは、依然としてsRGBのままで良いです。

 

アニメの工程の内部でも、色彩や輝度の必要な基準が変わります。「全員がsRGB一択」の時代が終わります。

 

 

 

カラープロファイルをなぜ日本は運用しないのか。‥‥ガラパゴスだから。‥‥としか言いようがないですが、そのガラパゴス島にも、4KHDRテレビがどんどん普及して、当座、100〜1000nitsの可変の状況に対処しなければなりません。ガラパゴスにも変化が訪れます。

 

しかし、プロファイル運用は気が正直気が重いです。すべての工程の足並みが揃うのは、かなり難しいです。

 

全員がプロファイルの理屈を理解し、全員がソフトウェアを適切に設定し、各制作集団ごとにマスモニとまではいかなくてもリファレンスモニタ格のモニタを適切に調整して設置する‥‥なんていう「大事業」が、本当にうまくいくのか‥‥と考え込んでしまいます。

 

少なくとも、最初は大混乱で事故多発でしょうね。

 

正直、私自身で考えても、手探りの部分が多くて、運用テクニックを修得しながら、着地点=デファクトスタンダードを見出すことになると思います。

 

現場の運用というのは、頭の中の理屈だけで動くものではなく、実際にやってみせて証明して、徐々に固まっていくものだからです。

 

 

 

机上の空論は物事を動かせない。会議ばかり熱心に開いても、結局実を結ばなかったプロジェクトはいくつもあります。

 

むやみに行動しても空回りする。行動に意義ありとは言え、計画性がなく論理も合理も伴わなければ、結局実を結びません。

 

カラープロファイルはどうなるでしょうね。机上で論理的に計画し、実際に現場で実践することが求められましょう。「机上」と「行動」の両方が必要です。

 

 

 

後付けのHDRではなく、現場がネイティブにHDRを扱うようになった時、さすがにHDR映像をまともにチェックできないのは困りますよネ。

 

ネイティブHDRのアニメは、カラープロファイルなしでも作れないことはないです。しかし、OSがHDRに対応していないのでPQの場合は白飛びしちゃって、オペレーションはしにくいです。

 

それに、HDRとひとくちに言っても、HDR10、HLG、DolbyVisionがあって、さらにPQとリニアもありますし、iPadなどのDisplay P3などもあって、現時点で既に、何をどのように組み合わせるかが、多岐に渡ります。

 

AppleのXDRのように、同じ画面に様々な色域が混在できる仕組みが普及した時、プロファイルなしで運用する方法は不適合になります。

 

 

 

 

でも‥‥。

 

アニメ業界は、HDRだ、DCI-P3だ、PQだなんて言ってられないほど、もっと根本的な部分=どうやって人々が働くか‥‥の部分でどんどん追い詰められています。

 

HDRや4K、カラープロファイルに手が回らない制作集団が存在しても、それを無碍に批判できるほど、業界の状況は良好ではなく、1280pxでも危うい現実があります。

 

業界の成り行きを鑑みつつも、独自路線で独自の生き残りも同時に仕掛けていく必要がありましょう。

 

2030年代はIT分野で50万人の人手不足‥‥とか、ネット記事見出しをどこかで見かけましたが、アニメはもっと不足するでしょうネ。アニメ業界は日本の縮図だ‥‥とも言われますが、縮図以上に、悪条件の毒性を濃厚に煮詰めた状態です。

 

ベビーブーム頼みの構造破綻が、一足先に表面化していく2020年代のアニメ業界‥‥になると思います。2029年には現場のみんなは、どんな状態でアニメを作っているでしょうかネ。

 

日本で第3次ベビーブームが起きない限り、ガラパゴス島の内需頼みの構造は痩せ細っていくだけです。

 

‥‥というのが、実はまわりまわって、カラープロファイルの運用是非に影響しています。ローカリズムとグローバリズムの対峙ですネ。プロファイルなしの運用って、こてこてのローカリズムだよネ。

 

此の期に及んで、ローカリズムとグローバリズムが対峙している場合ではないでしょう。

 

両方の利点を賢く活用できる、新しいドクトリンが必要です。

 

 


モニタの運用

カラープロファイルの話を前回書きましたが、モニタの色の話は、制作現場によって、相当「荒れる」話題でもあります。

 

自分たちのチェック環境は、どの制作集団の誰しも「自分のところは正しい!」と自信を持ちがちです。自分たちが映像チェックをしているモニタが、まさかズレているなんて思いたくもないからです。

 

しかし、実はいくらでも色がズレる落とし穴は、そこらへんに転がっていて、賢明な作業集団は、必ず作業開始前に「自分たちの環境の再チェック」をします。つまり、

 

自分たちは正しい

 

ではなくて、

 

自分たちは間違っているかも知れない

 

‥‥と、自己チェックを行う習慣があります。特に色彩関連は、複数の要素で成立しているので、新しいプロジェクトのスタート時には、環境チェックをおこないます。

 

 

 

現場に本当にありがちなのは、以下のような話。

BGや色彩設計、撮影上がりのラッシュチェックなどに用いている、制作会社の「マスター」となるモニタです。

 

マスターなわけですから、可能な限り正確な色を映し出している必要があります。

 

‥‥が、これがまた、そうなってない場合が多いです。

 

ラボで自分たちの映像をみて、上図のように感じたなら、ラボと制作会社の「上映状態」が何かしらの原因でズレていることになります。

 

そんな時に一番見苦しいのは、「ラボのモニタがおかしい」とか言い出す輩。自分たちの映像チェック環境が正しいと信じて疑わない人です。

 

ラボのチェック環境は、様々な映像プロダクションと仕事をしていますから、ラボ側が異常で不良ならば、各社から苦情がくるはずです。

 

何らかのラボ側のトラブルも可能性はゼロではないでしょうが、多くの場合、ラボに持ち込む前段階で何かが障害となって、正しく表示されないのです。

 

*図は極端に表現してます。さすがに、テレビやモニタの「鮮やか」設定でチェックしている制作会社は見たことがないです(昔は見たことがあります)。

*しかし、いかにも調整がずれてそうなモニタ、いかにもチェックミスしそうな部屋の明るすぎる(=暗すぎる)環境は、今でもたまに見かけます。まっきんきんに明るい部屋、洞窟のように真っ暗な部屋は、どちらもNGです。アニメの監督さんやプロデューサーさんはポスプロのBD/DVDのチェックルームにもいくわけですから、会社のチェックルームにアドバイスしてあげるのが良いです。

 

 

Rec.709の厳密な基準よりも、鮮やかでメリハリのある「色付けされた」モニタで、いつもチェックしていたので、もとのデータの「本当の姿」は自分たちが考えていたよりも明暗が鈍く彩度も低い内容だった‥‥という、本当によくある状況です。モニタ環境を甘く見ている人々の‥‥です。

 

  • 規格の基準は100
  • 130の派手なモニタでチェックしていた
  • ゆえに実際に作っていたデータの中身は77だった

 

‥‥というオチです。この逆もあります。

 

正確な色を映し出すマスターモニタ製品。加えて、テレビだとどのくらい変化するのかを「みせしめ」的に確認するための民生テレビ。‥‥この2つの性質をしっかりと認識した上で日々の映像チェックをおこないます。基準はあくまでマスモニであって、民生テレビではないです。

 

もともと、Rec.709・sRGBは、ものすごく地味で冴えない色域です。テレビ製品を売り出す家電各社は、その地味な規格を、いかに鮮やかにアピールできるかを競ってきたフシがあります。その家電各社の色付けに惑わされて、映像を作る人間たちが民生テレビ製品基準でチェックしてたら、「本当の基準」を見失います。

 

ゆえに、マスターモニタがあり、Rec.709やDCI-P3などの規格が制定されているのです。

 

映像制作のプロなら、マスモニと色域の規格をしっかりと見据えてチェックしましょう。

手っ取り早く、まずはRGB、輝度だけでも、チェックしましょう。

 

ラボはsRGB/Rec.709ターゲットなら、その色域を正確に映し出しています。色彩計で実際の輝度を計測して、モニタの経年変化がないか、何らかの異常がないか、日頃から品質チェックしています。

 

「会社のみんなのチェックモニタ」はどうでしょう。どのくらい、メンテの頻度で正常状態を保っているでしょうか。

 

そもそも、ちゃんとした計測と調整の技術をもったスタッフと機材は常駐していますか?

 

 

ラボで見た時は、素直なグレースケールだったのに、会社でみたら、中間トーンが緑や赤にネジれています。

 

調整がズレてて、表示が異常な状態のモニタでチェックして、「OK」だの「透過光の色味を若干赤く、リテーク」だの言っても、不毛な話ですよネ。

 

ではどうすれば良いのか。

 

地道にあらゆる要素を正しく運用する以外に、道はありません。正確な発色のチェック環境を手に入れるには、基礎技術を積んで積んで築き上げるのです。

 

色を正常に映し出すには、モニタの製品スペック、モニタの経年変化、モニタケーブル(HDMIはくせもの)、OSのカラー設定、ソフトウェアの作業スペースの設定、ビュワーがプロファイルの影響を受けているか否か、ムービーコーデックや画像フォーマットの特性、ちょっと思いつくだけでこれだけの項目があります。

 

モニタの正常状態の維持管理は、まさに制作会社のレベルそのものです。それだけ「難しい」ことなのです。

 

 

 

お高いかも知れませんが色彩計を常備して、チェックモニタを定期的にメンテできるスタッフ編成が必要でしょう。

 

ラボとの定期的なコミュニケーションも必要です。

 

また、モニターディスプレイを製造販売している会社のスタッフとも知り合いになったほうが良いです。

 

さらには、ソフトウェアの代理店で技術的な知識が豊富なスタッフも頼りになります。

 

 

 

これだけ書いといて、なんですが、私は、制作会社とラボがぴっちり隙なく色が合うとは思っておりません。

 

思ってないけど、可能な限り同じ色にしたいとは考えています。

 

なので、カットボールドには必ずカラースケールを組み込みます。色々な場面で、ある程度は状況が汲み取れるからです。

 

*このカットボールドのRGBやグレーのスケールを見て、滑らかに明暗が経緯してれば、良好な状態です。暗部は0から48、明部は159から255になっています。sRGB/Rec.709のSDRだけでなく、HDRのPQで1000nits合わせでも、このスケールは日頃から役に立ちました。

 

 

 

こうして、「モニタの色は難しい。心して取り組まなければ!」と謙虚に注意深く運用すれば、作品のコンポジットが終了して、ラボのカラーグレーディングに立ち会う際には、これがまた、会社とラボの色がクリソツ。‥‥ある意味、不思議なくらい、ラボとの差がなくて、驚きます。

 

日頃のメンテナンススタッフの仕事の賜物、モニター製造会社さんやラボとの良好な関係など、様々な地道な取り組みの成果です。

 

色合わせのことを、軽々しく考える人もいますが、私は20年余のコンポジター生活、ラボとのやりとりの経緯ゆえ、今でも「知った口を利く」ことはできません。どんなに経験を積もうと、慎重さを心がけています。‥‥それほど、色は難しいです。

 

 

+ + + + + +

 

 

ちなみに、話はソレますが、この記事の絵は、iPad ProとProcreateでちゃちゃっと描きました。「ゲシンスキーインク」のプリセットを複製して、ストリームラインを強めに、ジッターを少々足して、綺麗な軌跡が描けると同時に曖昧なアウトラインの揺らぎが表現できるプリセットに仕立てました。

 

絵の雰囲気も大きく左右するので、プリセット作りは難しくも楽しいです。

 

こういう絵ならあっという間に描けるんだけどねえ‥‥‥‥。原画作業は大変だよねえ‥‥‥。

 

 

 


モニタの色、プロファイル運用

アニメ制作現場で、結構危ういのが、モニタの色、です。パソコンに繋がったモニタがRec.709なら、ちゃんとRec.709の色域を表示しているか?‥‥です。

 

インポート、エクスポートの方法にミスれば、容易に色は転びます。そもそも、ちゃんと色彩計で計測して正しい発色をしているモニタなのか、リファレンスモニタとしてふさわしい製品を現場に設置しているか、日々のアップデートによってカラープロファイルが外れてないか‥‥など、チェックポイントは結構沢山あり、その1つ1つがこれまた結構専門的でもあります。

 

マスターモニタを各部屋に置くのは、正直難しいでしょう。単純に金額の問題で。‥‥何十万、いや、何百万もするマスモニを買うことが、アニメ業界の各現場にとって荷が重いことは、誰でも承知するところでしょう。

 

しかし、マスモニではなく、リファレンスモニタなら、なんとか1台は各部屋に設置したいです。だって、色を見てチェックするのに、色を正確に映し出していなければ、チェックにならんですよネ。

 

sRGB、Rec.709に関しては、それこそ数万円のEIZO製のモニタを買えば、ラボとほぼ一致します。例えば、あまり大きな声では言えませんが、「ビジネスモデル」(=カラーエッジじゃない)でも、Imagicaの北斎ルームと驚くほど一致していたことがあります。‥‥ビジネスモデルなのに。

 

もちろん、日頃のメンテが為されているからこその、sRGB/Rec.709です。買ってそのままとか、1番最初に調整したもらったままとか、目視の自己流の調整では、どんなに高いマスモニだろうが、色は合致しません。

 

Rec.709のモニタをちゃんと運用できて、ラボともズレのない環境を構築できているか否か‥‥は、まさに制作集団のインフラの腕の見せ所と言えましょう。

 

 

 

アニメ業界は、2000年代前半に、カラープロファイル運用に挫折した経験があり、2020年の今の今まで、カラープロファイルなしで運用する会社がほとんどです。御社も弊社も。

 

言葉は悪いですが、「バカ入れ、バカ出し」です。時間軸で例えれば、タイムコードなしで編集するようなものです。目視に頼る方法。

 

HDRが普及する今後、アニメ業界のプロファイルなし運用は、決定的にダメだしを食らう可能性があります。

 

ちゃんと、プロファイルを埋め込めよ。‥‥と。

 

Appleの格安の1000nitsクラスHDRモニタ(1600nitsだとか)「Pro Display XDR」は、なんと、Appのウィンドウごとにプロファイルが適用されるのだとか。‥‥私は見ていないので、実際に見た人からの人聞きですが、各アプリケーションの各ファイルのプロファイルを別個に解釈して、表示するウィンドウごとに色域を変えて表示するらしいです。

 

 

そうか‥‥。そういうことが、もう可能なんですね。

 

でも、アニメ業界標準の「プロファイルなし」ファイルでは、マルチ色域表示がそもそも適用されません。ファイルのメタデータの中にカラープロファイルがないのですから、当然ですネ。

 

AppleのXDR登場よりも前に、4KHDRでDCI-P3でDolby Vision PQを扱うことになった際、プロファイルの運用を試行した経緯がありました。しかし、私を含め、アニメ制作現場では20年以上、プロファイル無しの運用に慣れていたため、各作業工程でのプロファイルの扱いが危うく、結局はプロファイルには頼らず、モニタを一律にターゲットの色域へと的確に調整する方法=今までと同じ方法で乗り切りました。

 

しかし、今後も同じ方法でうまくいく‥‥とは思えなくなりました。XDRの話を聞けばなおさら、画像や映像データが「プロファイルを持つ」ことは必須になるのかも知れません。

 

そうなれば、After Effectsの設定も変えることになるでしょう。いつまでも「なし」を選択し続けることはできなくなるやも知れません。

 

 

 

 

20年以上、プロファイル運用に挫折している場合じゃないのかも。

 

HDRを自分たちの新しい武器とするならば、プロファイル運用に再チャレンジすることになる‥‥のかも知れません。

 

だとすれば、おおごとですネ。美術、色彩設計、コンポジット(撮影)、編集、3DCG、特効、2Dグラフィック‥‥と、色が存在する工程は、全員参加となります。

 

アニメ業界にとって、カラープロファイルは言わば「眠れる獅子」でした。

 

獅子が目覚めて、‥‥‥さて、どんな大暴れをするのやら。

 

正直、その獅子=猛獣を、各工程スタッフ皆で手懐ける自信が、まだ今はありません。猛獣だから、檻に閉じ込めておいたのですから。

 

しかし、懐いてみれば、案外、腹を出して甘えてくるのかも? 「ささ、来やれ。腹、撫でてみそ」と。

 

 


混在から見える未来のビジョン

この2年ほど、ペーパーレスの作品がメインだったのですが、最近、久々に紙メインの作品を手伝って、「ペンタブ to 紙」の段取りに対処しています。

 

が、これがまた、ものすごいストレスです。改めて、実感しました。

 

ペンタブ側も紙側も、混在するとお互いにストレスに見舞われましょう。それが判っていたから、メインで関わる作品は「紙一切使用不可」にしていたのです。

 

しかし、自分がメインではない場合、作品の状況に合わせる必要があります。まあ、大体、なし崩し的に、紙とペンタブは混在して、誰も運用上のリーダーシップはとりませんよね。個人が個別の対応でやり過ごします。

 

ペンタブ作画から紙へと受け継ぐ場合、

 

  • 印刷解像度をメタデータに必ず含める
  • ゆえにTARGAは不可で、TIFFかJPEGかPSD
  • 印刷用の原画1枚ずつのバラファイル(TIFFとか)と、レイヤー持ちのPSDファイル
  • バラファイルは容量節約のため、TIFFならばLZW必須
  • m4vなどのプレビュームービーは同梱するのが良好(movはコーデックなどのトラブルが多いので避けるのが無難)

 

‥‥と様々に用意しなければならず、これだけでも結構な負荷がかかります。

 

ゆえに、自分の作業時間の中で渋滞しがちです。私も現在、出力処理で滞って溜まりがちです。

 

もし、これがクリスタでペーパーレスなら、

 

clipファイル

 

‥‥を上がりとして出すだけです。

 

 

 

PSDファイルからTIFFのバラファイルを出すのは、スクリプトで対処しています。もし、バラファイル出力を手作業なんかでやろうものなら、もどかしくて不毛で死ぬ。

 

ほぼ2年ぶりに使った自作スクリプト。使い方を我ながら忘れていて、コードを読み直して仕様を理解しました。マニュアルでもまとめとけば良いのですが、自分しか使わないし‥‥で、作ってなかったのです。が、こういう時に2度手間になりますな。

 

TIFFの出力は、以下を踏まえれば問題なさそうです。

 

_opt=new TiffSaveOptions;

_opt.alphaChannels=false;

_opt.byteOrder=ByteOrder.IBM;

_opt.imageCompression=TIFFEncoding.TIFFLZW;

_opt.layers=false;

 

アルファチャンネルはなし(印刷用だから)、IBM並び順で、LZW圧縮、レイヤーは不要(バラファイルだから)。

 

 

 

スキャンとプリント時に、何よりも重要なDPIは、ファイルフォーマット選びが先決。

 

アニメの場合、Targaが良さそうに思われますが、実はRetas互換の仕上げ工程ペイントファイルだけの話で、Targaはファイルフォーマットの設計上、解像度の情報をもたないので、Targaを選択すると厄介なことになります。

 

過去から現在までTargaでトラブルが起きなかったのは、ペイント>撮影という工程の流れにおいて、たまたま、After Effectsも解像度の概念をもたないソフトだったので、怪我の巧妙的にTargaで結果オーライだったのです。様々なドローソフトが用いられる現在、Targaは作画用の画像フォーマットとしては不適です。

*解像度をちゃんと読んで「実寸で擦り合わせる」ANIMOのようなコンポジットソフトだったら、Retas上がりのTargaは大混乱だったと思います。

 

作画の出発点となるPSDファイルが適切に設定されていれば、Photoshop、Procreateと経由しても、DPIの値は保持されます。

 

もし解像度情報を失っていても、変なことをしてなければ(リサンプルで寸法を変えたとか)、DPIのみの解像度変更(リサンプルしない)で当該DPIに戻せます。

 

作画時にAfter Effectsを経由して挟むとNG。上述の通り、After EffectsはDPIの概念がないので、Macで書き出すとピクセル寸法は同じでも解像度は72dpiになって、巨大な印刷サイズになります。

*正確にはカメラ設定上は72dpi(=macOSの場合)固定でDPIらしきは存在します。かなり昔、Adobeの米国の開発者さんに、カメラ設定だけでもDPIを変更可能にして寸法の表記を変えられないか‥‥と直に要望しましたが、今の今まで、結局スルーですな。まあ、2020年の今となっては、どっちでもいいんですけどネ。

 

 

 

しかしまあ、この紙とペンタブの混在ストレスは、今後延々と抱え続けるべきではないですね。

 

紙もペンタブも、どっち側も得しないです。

 

ペンタブならば、ペーパーレスは必須のように感じます。2年間ペーパーレスの日々を送って、レイアウト>演出>作監>原画>演出>作監>動画>動検の流れを、clip形式だけで流通する方法が劇的に快適だということを、しみじみ実感しています。

 

クリスタはシートが‥‥とかいいがちですが、タイムラインに慣れれば大したストレスではないです。おそらく、アニメーターの多くは、クリスタ云々よりタイムラインに慣れてなさ過ぎなんですよネ。タイムシートだけに慣れ過ぎちゃって。

 

混在のストレスを再認識すると、やっぱり、「紙組」と「ペンタブ組」を、監督演出作監の枠組みから分けるべきと、痛感します。

 

紙は紙で、ペンタブはペンタブで、監督の時点からバッサリ分けてそれぞれのチームで作業したほうが良いかと思います。

 

で、それぞれのマテリアルやツールの特徴を活かして、有利に作業を進めれば良いです。

 

であるならば、歴史の浅いペンタブ組は、今までとは異なる発想が必要です。

 

ペンタブを使用するメリットゆえに、4Kにも対応する能力を手に入れ、カットアウトも常用して、ペンタブのアドバンテージを賢く導入&実践するのがよろしいです。紙に比べて道具のお金(導入と維持のコスト)が高いのですから、紙と同じことをしてたら、不利になるばかりです。

 

ペンタブを使うのなら、ペンタブでしかできないアニメの作画をしましょうよ。紙と同じことばかりしてるから、5年経ってもほとんど「デジタル作画」は発展してないのです。

 

紙組は、今までの運用経験を武器にする。今までのアニメの作りかたで作り続ける。

 

ペンタブ組は、4Kやカットアウトも手中に収めて、未来の発展性を武器にする。紙では対応できない、高いお金の仕事をどんどんこなす。

 

 

2020年代の目標は大体見えたんじゃないですかね。

 

分離派。クリムトみたいでかっこいいネ。

 

 

 

紙とペンタブが混在する今、単にストレスに消耗するんじゃなくて、そのマイナス状態からプラスを見出したいですネ。

 

 

 


相互にオフライン

つまるところ、あくまで紙を主体として運用したい派にとって、コンピュータ関連のリソース(「デジタル」の俗称でしばしば呼ばれる)が「オフライン」であって、逆に、ペーパーレスを目指す派にとっては、紙が「オフライン」となり、両者の溝は埋まる気配を見せない‥‥のが、実際のところでしょう。

 

私は、映像技術、そして世界全体の技術転換の傾向から、やがてペーパーレスへと移行するのは必然と思っていましたが、日本のアニメ業界はどうもそうはならない‥‥のを数年のスパンで実感し始めています。

 

 

 

2010年代のアニメ業界の実勢を見続けるうちに、特に私と同世代の「アニメブーム世代」のアラウンド50、世代的には40代〜60代、1960〜1979年の20年間の世代は、ペンタブに移行しないだろうと、悲観視するようになりました。

 

おそらく、「道具に馴染む」余裕・余白・余地がもうない=「今さら新しい道具に変えるのは無理」だと、体がついていかないと諦める人が多いのでしょう。

 

加えて、収入の問題。私の試算では、ペンタブ作画の環境をゼロから整えるには、基本環境で45万円前後必要ですし、Adobe CCなどのサブスクリプションの月額負担も加算されます。「ただでさえ、カツカツなのに、これ以上はもう無理」と諦める意識に拍車がかかります。

*2〜3年後に使い物にならなくなる安いPC一式(10〜20万円)を買っても無意味ですよネ。

 

どんなに目の前に大地が広がっていても、開墾して畑にするまでの気力が40〜60代にはキビしいのです。大きなリスクを犯すくらいなら、今以上の稼ぎができなくても、今稼げている状況を手放さずに持続していこう‥‥と思うのを、誰が止められましょうか。

 

 

 

ただ、現実は現実。

 

アニメ業界の人々のキモチとは全く関係なく、世界的な技術転換、技術進化は、歩みを止めません。

 

現在、フィルムでアニメを作ろうと思うアニメ業界人は、どれだけいる? ‥‥なぜ、フィルムで作ろうと思わない? フィルムでなくても、では「D1サイズ」で作らないのはなぜ? D1だと720x486でものすごく軽くて取り回しも楽ですよ?

 

理由は明白ですよね。‥‥2019年現在の映像産業には、16ミリフィルムでアニメを作ることも、地上アナログ派時代のD1サイズでアニメを作ることも、映像技術の基盤として適合しないからです。

 

時代の経緯を見れば、2020年代に世界規模(世界のネットワーク)で4KHDRへと移行するのは、誰もが容易に想像できます。いきなり、2KSDRで全世界がストップすると予測するほうが難しいです。

 

アニメ制作工程の中で、作画だけが紙のまま残されてきました。作画が紙のままなので、都合、制作進行も紙をどう取り回すかを考え、カット袋運用は続いています。制作終了作品の大量の紙は、制作会社の空間を徐々に、そして確実に、占有していきます。紙の管理コスト(保管場所やスタッフの人件費含め)はかなり高いです。

 

今までのままの意識では、紙運用が時代の進化と逆行し、現場の改善を間接的に阻むのは必至‥‥というか、宿命と言えましょう。

 

 

 

ここで「紙を悪者」とする短絡思考に陥るのではなく、むしろ、紙を使う必然性を考えてみましょう。

 

まずは現在、紙はどのように扱われているか。

 

二値化トレス線を作り出すための、「低解像度インプット」に過ぎません。どんなに紙に絵を描く人間が、描線にこだわりぬいても、そのこだわりのほとんどは処理の過程で喪失します。

 

つまり、紙の「品質面」「表現として」の良さは、ほぼ全て破棄されます。

 

紙だからこそ、この表現ができる

 

‥‥という必然性が全くと言ってよいほど「希薄」なのです。

 

紙を使うことが、技術的・品質的必然ではなく、単に慣習においてのみ必要とされるからこそ、紙を使う説得力が失われるのです。「紙以外では、俺は描きたくない」>「あなたの慣れの問題なのね」‥‥と、簡単に会話が終了するだけです。

 

自分は紙以外は使いたくない‥‥という主張ではなく、紙だからこそこの表現とクオリティが可能だという主張

 

‥‥のような他者を同意させる根拠が、紙の現場には2020年代は必要になってくるでしょう。

 

‥‥だってさ、世間はどんどん先に進んでいくんだから、「自分は昔の方法に慣れているから」という理由では限界はありましょう。

 

確かにこれは紙じゃないとできないことですね。

 

‥‥と周りを納得させる決定的な根拠が、「未来社会の紙」には必要です。

 

 

 

このことは、「デジタル作画」にも全く同じことが言えます。

 

現在、テレビ作品において、ペンタブ作画と紙作画が混在することも多々あるでしょうが、さて、どのカットがペンタブ作画でどのカットが紙作画か、見分けがつきますか?

 

つまり、

 

どっちでもいいじゃん

 

‥‥と言われるような状況に、ペンタブ作画は甘んじているわけです。せっかく、金をかけて環境を用意したのにネ。

 

だったら、紙のままでもいいよね。

 

ペンタブ作画が「紙作画の代用品」である限り、ペンタブ作画は停滞したまま先に進めないでしょう。

 

 

 

紙作画は紙でしかできない次元を実現し、2020年代にふさわしい品質を確立する

 

ペンタブ作画はペンタブでしかできない次元を実現し、2020年代にふさわしい品質を確立する

 

私は、両者ともこれに尽きると思います。

 

どっちかが、どっちかを「オフライン」と認識しているような状況では「共食いして、お互いを殺しあう」だけです。共食いを自覚なしに、2020年代も継続するのでしょうか。‥‥そんなの誰だって避けたいですよネ。

 

自分のメインウェポンのポテンシャルを発揮して、2020年代の映像新基準に立ち向かっていく気概が求められます。

 

 

 

私はiMac 5Kが発売された2014年秋以前は、どのように紙で4K品質を実現するかに取り組んでいました。なので、実は、紙が4K時代に生き残る「基本コンセプト」は私の中では出来ています。

 

私は今、ペンタブ〜iPad Pro 12.9インチへとメインの道具を持ち替え、どのようにペンタブで4K時代を切り開くかを考えています。紙に戻ることは、少なくとも仕事上ではありません。紙を4Kに活かす方法は封印しました。

 

紙を使い続けたい人が、4KHDR時代の紙運用を、自分で考える。

 

紙をどうしても使いたい人が、どうやったら2020年代、4K時代に、紙を使い続けられるか、紙のポテンシャルを4Kにふさわしく活用する方法論を、「自分ごと」として考えるしかないです。他人任せではどうにもならんスよ。

 

「デジタル」のことは誰か面倒見て。‥‥なんてやってるから、紙はどんどん劣勢に追い込まれるんじゃないですかね。

 

 

 

セル時代のアナログの絵はいいよなあ‥‥なんて、何を見て言ってるのか。

 

今、目にする画像・映像は、よほど特殊な環境でもない限り、全てデジタル標本化された「デジタルデータ」ですよ。

 

つまり、人目に晒される時は、すべてデジタルデータになっていることを、改めて認識し、どうすれば昔の方法の良さを最終的にデジタル画像映像データに定着できるかを、冷静に突き放して思考することが必要です。

 

昔のアニメ〜セルとフィルム時代の映像の風合いが良い‥‥と思うのなら、プロジェクトとして立ち上げて再現方法を確立すれば良いのですが、そこまでしようと思う人はいませんよネ。ツイッターで昔話に花を咲かせて終了です。

 

おじいちゃん・おばあちゃんのノスタルジーに終始するから、進展しないのです。井戸端の外には、実が本人たちが出たがらないのです。

 

 

 

業界がなんとかしてくれる。でなければ、政府がなんとかしてくれる。‥‥もうそういうトコロに頼って依存するのはヤメましょう。

 

貧困から脱し、未来も紙を使い続けるのなら、自分たちのアイデアと実行力で、紙運用派は、紙を2020年代の4K時代に魅力あるものへと変えていけば良いです。

 

ペンタブも同じです。紙の代用品どまりで、明るい未来など想像できないでしょ? 今は代用品扱いでも、水面下では着々と準備と強化を進めて、ペーパーレス派は、近い未来にはペンタブでしかできないアニメを作りましょう。

 

双方が双方をオフライン認定して食い合うよりも、自分らのポテンシャルを活かして競い合ったほうが、作品作り、ひいては産業としても活気付くと思います。

 

考えを変えていく勇ましいココロを、2020年代は皆が持てると良いですネ。

 

 

 

 


無益なプリント

ペンタブ作画において、プリントアウトを挟まないと運用できないようなら、いっそのこと、ペンタブ作画での仕事は引き受けないほうが良いと思うようになりました。だって、混在運用は、鉛筆派もペンタブ派もお互いに不幸をばらまいているようなもんでしょ。

 

紙を使っている作監や演出がいる限り、その作品の仕事ではペンタブを使った作業はできないと、割り切ったほうが良いと思います。

 

どうやったって無理が生じますもんネ。

 

どんなにタップ穴あけ器にバックライトが装備されても、ズレて穴を開ければ意味がないです。タップ穴が半分ズレているのなんて、結構見かけますしネ。穴を開けた人も、穴を開けさせた人も、穴を開けなければならない状況も、みんな不幸です。

 

「穴ずれ」はプリントアウトでも起こるし、穴あけ時にも起こるのです。紙が印刷ユニットにロードされる時、いかにもズレそうなのは動作を見てればわかりますよネ。必ず定位置に穴が印刷されるわけではないし、穴あけ時にちょっとルーズにしただけでもズレます。

 

プリントアウト&タップ穴開け、つまり、紙とペンタブの混在作業は、無益な殺生そのもの‥‥と最近は痛烈に思います。時間と人間の両方を殺します。

 

 

 

まさかタップ穴にピッタリ合わせて作画用紙にプリントするプリンターの開発をする?

 

それとも、タップ穴を認識して0.05mmの誤差で自動で穴あけする機械でも作る?

 

‥‥まあ、どれも、アニメ業界の財力では開発自体が無理とは思いますけど、もし開発したとて、最近話題になって失笑を買った「印鑑を自動で捺印するロボット」です。まるで。

 

タブレットの作画によって、せっかく紙がなくなって、データ流通の高速な「オンライン運用」が可能なのに、作監や演出のチェックのために、紙にプリントアウトしたり、紙をスキャンしたりなんて、他業種のハンコ自動捺しロボットを笑ってられないです。

 

印鑑ロボットを「IT」と表現していた国営放送も失笑ものですが、ペンタブ作画をプリントアウト&チェック修正後にスキャンするのも「IT」の一環なら、「IT」が何の略字だったかも忘れます。

 

 

 

プリントアウトの穴あけではないですが、タイムシート絡みでこんなのを空想で考えてみました。

 

 

◆自動シート記入ロボ「TS-01 "アイティー君"」

 

 

シートは鉛筆書きじゃないと「消しゴムで消せねぇじゃねぇか」とお嘆きの貴兄に。

 

当社「TS-01」はお悩みを解消します。

 

クリスタやAfter Effectsのタイムラインからデータを吸い出して、ロボットが自動で鉛筆でタイムシートに記入します。

 

タイムラインに変更があった場合は、消しゴムで修正箇所を消して、再度鉛筆で記入する優れもの。

 

2,980,000円にてご提供します。

 

*月額200,000円から保守点検サービス付きのレンタル契約も可能です。

*姉妹機の消しゴム機能を省いた「TS-02」もご検討ください。1,480,000円のお値打ち価格です。

*Alexa対応

 

>特別サイト:開発秘話「意外に難航した、消しゴムの角を使って消す動作の制御」

 

 

 

過渡期ですネ。

 

もしかすると、紙の問題は、2020年代も相当引きずった上で、団塊ジュニア世代の引退をもって、紙終了‥‥のようなシナリオになるかも知れません。

 

紙を使うアニメーターは、数々の経験を積んだ、かなり技量の高い人たちですから、その人たちが「もう辞める。引退する。」というまで、紙運用は延々と続く予感です。ベテラン勢の動向を傍観していて、「これは中々移行できないぞ‥‥」と考えを改めました。

 

別の言い方をすれば、2Kの作品を1.5K程度で作っているうちは紙からは絶対に逃れられないのかも‥‥知れませんネ。

 

 

 

レシプロ(プロペラ)旅客機がほぼ消えて、ジェット旅客機へと塗り変わったのと同じく、紙からペンタブ=ペーパーレスのデータ運用への移行は、なんらかの「時代の必然」が必要でしょう。「紙だと絶対に無理で、ペンタブでしか対応できない」など、抗いがたい強力な必然性がね。

 

2030年代に思いを馳せて、今は状況に柔軟に対応(=つまり、無益な作業は未然に防ぐ)しましょう。

 

業界が10年でどう変わっていくか、生き証人になれますネ。

 

 



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