シンナーの匂ひ

シンナーが臭い。

 

ラッカー系、つまりシンナー臭の強い塗料を用いて、しかもエアブラシ使用という条件は、一般家庭の居室において、本当に現実的と言えるのか? ‥‥私は半世紀生きた今、ハッキリと「非現実的」と思えるようになりました。

 

土地の値段が安い地域に住み、本業でたくさんお金を稼いでいる人は、我が家の土地を買い増して「離れの工房」を500〜1500万円(建物の価格のみ・諸経費別ネ)くらいで建てて、どんなにシンナー臭を漂わせようと一切問題が生じない環境を獲得できるでしょう。

 

ホンカの小さなログハウスで、平面&立体造形制作に没頭できたら、どんなに幸せでしょう。夢‥‥ですネ。

 

 

 

でも、そんな恵まれた境遇の人が、全てのプラモデル愛好者とイコールではありませんよネ。多くは、狭い自分の部屋をさらに切り詰めて作業空間を捻出していることでしょう。

 

そんな部屋の中で、エアブラシでシンナー系塗料を吹くことは可能でしょうか。‥‥後先を考えなければ可能かも知れませんが、相当なマイナスの諸問題が発生します。シンナー系塗料を扱う人間は、皆が、一人暮らし=同居人が存在しない人なのでしょうか。‥‥もしくは同居人に「文句があっても黙らせる」ような「昔の家長」のような威圧的な存在なのでしょうか。


一生変わらずに、プラモデルを楽しみながら生きていくには、上述したように事業に成功して金持ちになって別棟の工房でも建てるか、一生独身で一人暮らしか‥‥の2択になると思います。

 

「この匂いとは一緒に暮らせない」‥‥と、交際中の彼女に言われたらどうします?

 

「パパ。この匂い、嫌い。」‥‥と、育ち盛りの愛娘に言われたらどうします?

 

では、

 

今が潮時か。‥‥プラモはもう諦めるか‥‥。

 

‥‥ということにしますか? 今までずっと好きでいた趣味を、捨ててしまいますか。

 

もし、水彩画だったら、諦めなくても済むかも知れません。木工細工に水性塗料を塗って仕上げるのでも、諦めなくても良いかも知れません。

 

 

シンナーの強烈な匂いさえなければ。

 

 

シンナーの匂いは、どんなに塗装ブースを設置しようが、全て除去できるものではありません。部屋の中はシンナー臭で充満し、部屋を出入りしただけで、他の部屋に匂いが漏れて移ります。

 

同居人がいた場合、口に出さなくても、我慢しているだけかも知れません。「昔から好きでやっている趣味を取り上げるわけにはいかない」と思いやってくれているだけ‥‥という可能性は相当高いです。そうした思いやりや気遣いに「あぐらをかく」ことを続けて良いのか、‥‥まあ、人それぞれの考え方ですし、状況・環境にもよるでしょう。

 

 

 

解決法はあります。シンナー系の塗料や溶剤を使う回数を、できるだけ減らすことです。

 

ラッカー系塗料ではなく、匂いが格段に穏やかな水性アクリル系塗料をメインにすれば、部屋に充満するシンナー臭を大幅に抑制し、別の部屋に漏れることもなくなります。

 

シンナー臭を完全に封じることは不可能だとは思います。筆に固着したアクリル塗料を溶かして洗浄するには、やはりシンナー系のクリーナーが有効です。水やアクリル溶剤では洗浄には限界があります。

 

逆に言えば、そうした「どうしてもシンナー系が必要な場合のみ」に限定すれば、シンナーの悪臭を総合的に抑制できます。

 

 

 

技法上で言えば、シンナー系〜ラッカー系の塗料の有利な点は山ほどあります。ゆえに、ラッカー系から離れられない現実はありましょう。

 

しかし、本当にラッカー系塗料でないと、自分自身で「よく出来た!」と思えるプラモは完成しないでしょうか。アクリル系だけでは無理なのでしょか。

 

アクリル塗料はアクリル絵具の親戚みたいなものですが、アクリル絵具でいくらでも素晴らしい絵画は描けます。

 

ラッカー系塗料に縛られているのは、実は技法の中身というよりも、「そうじゃないとダメだ」と思い込んでいる自分の性質も大きいように思います。

 

模型雑誌に掲載される作品は、まさに模型のために多くのリソースを割いて作られた数々ですが、それと同じことをしようとして、一般のアマチュアがやり遂げられるのでしょうか。模型雑誌を読んで、「こうしなければこっかよくならない」と思い込んで、やろうとすることがどんどん肥大化・深刻化した挙句に、いつまでたっても完成しないプラモや、同居人にシンナー臭を吸わせる状況が出来上がります。

 

 

 

アマチュアには、アマチュアなりの「着地点」があるように思います。

 

私の本業の映像制作で考えてみれば、プロとアマの環境の差はあって然るべきです。プロの現場には、60万のリファレンスモニタも、400万のマスモニも、「必要であるがゆえ」に、設置されます。アマチュアが同人・個人でアニメを自主制作する時には、別の技術的かつ運用上のアプローチが必要で、400万円のマスモニを買うなんて非現実的です。

 

映像の場合は、機材の金額がでかいので、誰でもすぐに「出来る出来ない」を気取りますが、プラモの場合は「プロと同じことができるかも」と考えてしまいがちです。

 

アクリル系塗料で色々な技法を編み出して展開すれば、アマチュアなりの「ハイ・アマチュア・テクニック」が形成できると思うのです。

 

 

 

私も長らくラッカー系塗料、そしてエアブラシ技法にこだわっていましたが、以下の2冊を読んで、考えを改めるに至りました。

 

●田中克自流飛行機模型筆塗り塗装術

 

●リビングで塗れるプラモ 水溶きアクリル筆塗りテクニック

 

 

数年前、「田中式塗装術」を読んで、筆塗りで全てをやり遂げる方法に「呆然」としました。昔自分が水彩や油絵を描いていた記憶と、プラモの塗装術が重なりあって、「なぜ、自分はプラモを一生懸命エアブラシで仕上げようと思っていたのか」とあまりの己の無自覚さに呆れたからです。

 

そしてラッカーではなくアクリルで「田中式塗装術」を実践したのですが、どうも塗料がぼってりして想像したようにはいきません。

 

そんなこんなしているうちに、「水溶きアクリル」の本が発売されました。最初は「アクリル塗料で塗る指南書がでたのか」と傍観するだけだったのですが、‥‥水溶き‥‥‥水溶き?‥‥‥み・ず・と・き‥‥‥‥‥‥。それだーーー!!!

 

最初のうちは水溶きの意味がわからなかったのですが、自分の過去の「アクリル絵具」の経験とやがて重なって、意味の重大さに気づきました。そして早速購入。

 

書かれていることは、実践に富み、用具や塗料の特性についての読み物としても、非常に有益な内容でした。

 

 

 

「田中式塗装術」、「水溶きアクリル」の刺激的な2書を経て、さらに過去の自分の絵画技法の知識、加えて、本業でのアニメと実写映像制作両方のビジュアルエフェクト・コンポジット技法を応用することで、「ラッカーやエアブラシ環境では大げさになりがちだった模型制作」を、かなりコンパクトに収める技法が、私の中で出来上がりつつあります。

 

筆塗りオンリーなら1〜2畳くらいのスペースがあれば可能。もしすでにエアブラシを所有している場合は活用しますが、塗料はあくまでアクリルかエナメルで、シンナーの霧を部屋中に散布することなく、同居人にも優しい「日曜モデラー」の環境を作ることが可能です。

 

模型雑誌の作例は、ため息が出るほど、すごいもの、素晴らしいもののオンパレードですよネ。

 

でもそれはそれ。自分は自分。

 

模型雑誌の作例に憧れすぎて、キットを買ったものの、積んでおきっぱなしで制作はとんと進まず、いつか中古で売りに出したり、自分の死後に処分されるのでは、悲しすぎます。

*中古のプラモを通販で買って実物を眺めながら、「もしかしたら、本人が手放しただけでなく、遺族の人が処分した(=売りに出した)ものも、中にはあったりするのかな」と思うことがあります。妙に古いキットとかネ。

*私のストックの中には、私が中学生の頃の年代と思われる「レベル・1/32・Bf110G(夜戦)」のキットがありますが、プラモって相当長く保存できますよネ。デカールはボロボロにはなりますが、キットそのものは健在です。

 

まず何よりも、自分で満足できる完成品のレベルを達成するには、どうすれば良いか、‥‥半世紀を生きてようやく私は見えてきた気がします。

 

‥‥ので、このブログで実際に作りながら、自分なりの着地点を紹介していこうと思います。

 

昨今のプラモ離れって、実は、制作技術をあまりにも引き上げすぎて、手軽に作れなくなったから‥‥とも思う今日この頃です。皆、エッチングパーツを買い足したり、スジボリし直したり、実物考証や時代考証を徹底しなければ、作る意味がない!‥‥だなんて思い過ぎているんじゃないでしょうか。

 

ゆえに、部屋の装備はどんどん大袈裟に増えていくし、強烈な溶剤の匂いで部屋が充満していきます。

 

シンナーの匂いから脱出して、好きな時に好きなように、自分の好きなプラモを作る。‥‥大切なことですよネ。

 

 

 

‥‥で、私はそれを画業や映像制作にも活かすのです。写真や3DCGのビュワーでは得られない「実物の立体の実感」は、新たな映像作品のアイデアを与えてくれます。

 

ということで、新しい記事ジャンル「脱シンナー模型制作」を作りました。随時更新予定ス。

 

 


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