均質化と自動化と共有と

数回前のこのブログで、「みんなで共有して、みんなで同じ作業ができるようにする」という考えが、作業者個々の作業価値・技術価値を均質化し、やがて安売り合戦が始まる‥‥ということを書きました。私は10年前くらいに、「であるならば、安売り云々以前に、(撮影の)スタッフ誰もが通常おこなう作業を自動化して、作業負荷を大幅に軽減すれば良い」と思うようになり、そこで作ったのが「xtools」です。

 

「作業をルーチン化すると、マシンでも処理可能になる」ということを、部分的に実践したみたのです。

 

xtoolsは‥‥

 

  • 話数・カット番号に基づいて、素材を収集する
  • タイムシートとデータベースの情報に基づいて
    • コンポジションの尺を設定する
    • 背景とセルをプロジェクトに読み込む
    • 背景とセルをコンポジションにレイヤーとして順番に重ねる
    • タイムシートのコマ打ちをセル(のレイヤー)にタイムリマップとして適用する
    • スムージングなどの基本処理を適用する
    • 最終コンポジションの名称をカット番号に合わせて変更する
  • データベース情報に基づいて
    • レンダリングした映像ファイルがの尺をチェックする
    • レンダリングした映像ファイルの画面サイズをチェックする
    • レンダリングした映像ファイルのビデオコーデックをチェックする(連番の場合はファイル形式)
    • 連番ファイルの場合、連番抜けや0KBファイルがないか、チェックする
  • 作業した作業者名をデータベースに記録する
  • 撮影作業進捗をグラフ表示して、カット個々・作品全体の作業状況を把握する(=Webサーバとの連携)

 

‥‥のような内容を自動で処理していました。まだ他にも処理項目はあったと思いますが、すぐにパッと思い出すのは上記の通り。これらの処理を、作業の節目に合わせて‥‥

 

  • 1・「FHX」(作業の開始準備の自動処理)
  • 2・タイムシートのデータ打ち込み(テキストファイル)
  • 3・「CBX」(プロジェクト・コンポジションの自動構築処理)
  • 4・カット内容を作業者が盛り込み
  • 5・レンダリング結果の目視チェック
  • 6・「RQX」(レンダリングファイルの自動チェック)

 

‥‥という流れで使っていました。これは1カットごとでなく、カット袋がINした時点(サーバに素材が揃った時点)でまとめて担当者がおこない、集中作業していました。タイムシートの入力は悩ましく、「作画時点でタイムシートが電子化されていれば」と当時は思ったものです。また、カット袋にバーコードを貼って、バーコードリーダで作業開始処理をすることも実践したのを懐かしく思い出します。

 

*バーコードリーダはCODE39が読めればOKで、PC/Mac的には「キーボード入力」として認識するので、バーコードリーダ対応のフロントエンドは簡単に作れます。CODE39のフォントをインストールして、カット番号を「*」で囲んで記述してシールにプリントして貼れば「バーコード対応カット袋」になります。‥‥‥が、私はもう「紙運用をやめた」ので根本的に無用になりました。

*ちなみに、仕事ではなくプライベートで、倉庫のダンボールを管理するのに、管理番号とバーコードで管理してます。

 

 

もし、カメラがFIXの日常芝居ですと、あっという間に作業は完了。要するに「素組み」「並撮」に近い状態を、コンピュータの自動処理でおこなうわけです。「After Effectsを使って、セルと背景を読み込んで、タイムシートを適用して‥‥」という一連の定型作業は、もはや「人間が作業すべき価値もない」とすら思えたものです。

 

これを発展させて、「座標・スケールの扱いを全工程で統一する」「カメラワークのマクロ書式を決める」「撮影処理(ディフュージョンとかブレンドとか)を定型化・ライブラリ化し型番で指定できるように制定する」など、さらなるルーチン化・標準化を進めれば、かなりの自動化が可能になる事は、10年前の時点で明白でした。

 

自分の作業がコンピュータに取って代わられる可能性は、「共通化しルーチン化した作業」ほど、高い‥‥と言えます。コンピュータで、AIの進化と普及を待たずとも、単なるIF, ELSEとLOOP、ファンクションの組み合わせで自動化できます。

 

 

もし、現在のアニメ制作現場の「無言の意思」が、「技術を均質化して共有」して「時間もお金も人員規模もローコスト化」したいのなら、もっと推しすすめることは可能です。‥‥それを望むか否かは、現在の現場の人間が、未来を見据えて選択することです。

 

仮にほんとうに自動化が実現し導入され、「自動化により、人員コストを1/3まで減らします」なんて言われたら、どうしますか?

 

その時、初めて、「自分は、自分だけが持つ武器、自分だけの得意分野を育てておくべきだった‥‥」と悔いても、もう手遅れなのです。長い映像制作人生、みんなと同じスキルを持つことだけをゴールにしてしまうと、歳を重ねれば重ねるほど、厳しい現実に直面すると思います。

 

 

私は、どんどん悪化する撮影作業の現状に対し、自動化を導入して対抗しようと思った時期もありましたが、引いた視点で考えれば、それはわざわざ「安さと速さで、血で血を洗う」真っ赤な海=レッド・オーシャンに呑み込まれる運命を自ら選択することだと悟りました。

 

‥‥‥で、10年前の私は、一方で新しいアニメーション技法の自主開発に着手していたので、旧体制の旧来技術に対して、これ以上の時間を割くのを止め、アニメの撮影からも(色々あって‥‥)遠ざかっていったのです。

 

「撮影の自動処理を高度化しても、自分の欲しい映像作品へは到達できない」と思いました。コンピュータに自動でコンポを組ませて自動でレンダリングして、検品だけを人間がおこなう? ‥‥そんな自動化主導の作業で、人々を魅了する映像が作れるとは思えなかったのです。

 

自動化に限らず、人手でさえも、効率化を工程の主目的にすると、自らの仕事を「魅力の乏しい均質化した作業工程へと変えてしまう」ことも解っていました。まあ、ジレンマ‥‥ですよネ。

 

皆で技術を共有して均質化して、作業者個々の個性を無にして、自動化も積極的に導入して、作業の効率化を実践する‥‥というのは、本当にアニメーション作品制作の理想像なのか

 

ある人はYESと言うでしょう。私はNOです。

 

アニメ制作集団は、「原作をアニメ化する変換処理工場」なんでしょうかね。だとすれば、上記の問いはYESでしょう。

 

私はそうは思いません。なので、NOなのです。

 

 

 

 

今、20代の人は、たっぷり40年。30代の人でも、たっぷり30年は未来があります。現在50代でも、あと数年で引退というわけにはいかないでしょう。少なくとも私は、あと20年は関わり続けることになるでしょう。

 

みんなで共有して均質化して、自分の個性や特性を放棄してしまって、それで自分の欲する未来は見えるのか、そして、現在の技術意識のまま、未来も通用するのか、時には思索すべきと思います。

 

 

 

 


共有の悪・2

なぜ、私が「共有」に対して、そんなに目くじらをたてるのか‥‥は、コンピュータ・ネットワーク時代の「共有」にありがちなのが、データ=コンテンツの丸ごと共有、もしくは切り貼り共有だからです。

 

例えば、紙と鉛筆で描いたキャラクターの原画があったとします。その原画はとてもかっこよく描かれていて、原画を保管する場所に誰でも見れるように保管されています。

 

ある日、とある原画マンが、とある別話数の別カットで、「あ、これ、一部だけ変えれば、そのまま使えるじゃん」‥‥と、その原画をコピー機でコピーして、カッターで使う部分だけ切り抜いて、原画用紙に貼り付け、足りない部分を少し描きたして、「自分の原画上がりです」と提出して、報酬として原画料金を得た‥‥‥としたら、どうでしょうか。

 

  • 他者の描いた原画を無断で複製し
  • 切り抜いて位置調整して新たな用紙に貼り付け
  • 足りない部分だけ少し描き足してフィニッシュ
  • 原画番号やタイムシートの記述はカットに合わせて修正

 

‥‥という行為に、正当な報酬が払われるのなら、ぶっちゃけ、一番最初のオリジナルの原画を描いた人はどう思うでしょうか。

 

このような行為は、報酬面で公平感を著しく損ない、さらには「最初に原画なんて描きたくない。誰かが描いた原画をコピーして編集した方が楽だから。」という意識まで現場に生じさせるでしょう。

 

幸い、そんな「他人の原画を切り貼りして、自分の原画としてアップする原画マン」は見たことがないので、あくまで架空の話です。

 

 

しかし、例えばAfter EffectsのコンポジットではAEPデータを流用するなど、現場では日常的におこなわれており、AEPデータは「くれと言えば、くれるものだ」とまで思い込んでいる人もいます。

 

撮影工程ではこうした「カジュアルコピー」が横行しており、私はそうした流れにあくまで対抗・反抗しているので、‥‥‥まあ、良くは思われていないわな、現場からは。

*なので、今はめっきり、アニメの撮影の仕事は減りました。でもそれは、新しい方向に目を向ける大きなきっかけともなったので、良かったと思います。今でもアニメの撮影しかやってなかったら、了見も技術も幅が狭いままで、新しく広い方向に自分の能力を応用できていなかった‥‥と思います。アニメの撮影って、ほんとに、コンポジット技術のごく一部でしかないもんネ‥‥。

 

でもさ、After EffectsのAEPファイルは、コンポジットの設計図だからネ。設計図を簡単に他にバラまく馬鹿が、どこにいるんだよ‥‥‥‥‥って、ああ、アニメ業界は少なくともそうか。

 

みんなで共有すれば、みんな同じ作業ができる‥‥って、作業者個々の作業価値を貶める行為を率先して推進するような気風が、コンポジット周りの作業にはあるようで、それじゃあ、新しい技術はおろか、新人個々の映像表現力だって育っていかないです。前にも書きましたが、みんな同じ技量なら、安く提供するところにどんどん作業は流れて、ハイハイ、安売り合戦の始まりです。

 

それにさ、どんなに新しい技術を開発しても、1回だけ作業依頼されて、その成果物から中間ファイルに至るまでどんどんファイルコピーされて、二度と仕事が依頼されない‥‥なんて話になるのだったら、新しい技術や表現なんて「アホらしくて」「くたびれ儲け」で誰もやらなくなります。もう新しい技術や表現なんて外部に提供せずに、自分たちにちゃんと利益が還元される方法を模索するようになります。‥‥当たり前だよね、そんなの。

 

 

人間だけだけなく、会社組織もさ、「技術の価値」っていうものを、ちゃんと考えて行動しなさいよ。技術は価値であり、武器なんですヨ。その技術価値は、自分たちの生活を支えるお金を生み出すものなんですヨ。

 

プロジェクトファイルを安易に流出させるのは、技術価値の流出・放棄だからネ。

 

仕事のやり取りは、結果物の映像ファイルだけで十分でしょ。

 

逆にさ‥‥‥結果物たるQTなりの映像を公開した時点で、解る人には解っちゃうんですよ。レベルの高い人々に対しては、完成形を見せただけで、手の内を見せたのと同じなのです。

 

完成映像を見ただけではわからないような未熟な人たちが、どんなプラグインを使っているんだ?‥‥とか、レイヤーは何個重ねているんだ?‥‥とか、これをやるのに何時間かかったのか?‥‥とか、的外れで素っ頓狂な分析をして、あわよくばプロジェクトファイルを欲しがるのです。‥‥ちょっと、キツい言い方ですが、事実だからしょうがない。

 

雛形のAEPファイル、すなわち標準技術に準じたAEPファイルなら、流布しても良いでしょう。ちょうど、レイアウト用紙やタイムシート用紙が供給されるように。

 

でもさ、完成形のプロジェクトをまるごとよこせ‥‥なんて、技術者・技術グループ同士のマナー違反・営業妨害も甚だしいです。

 

 

とある、凄腕の原画マンは、監督に「俺の原画は、絶対に人目のつかない場所においてくれ。すぐにコピーが出回るから」と詰め寄っていました。たしかに、原画だけでなく、タイムシートまでコピーされて、業界に出回ったりと、酷いもんだなと思いました。まあ、凄く上手い人ですから、情報を知りたがる人も多かったのでしょう。

 

もしさ‥‥、ほんとにその人の技術が知りたかったら、その人に直接会って、教えてもらえばいいんだよ。ただ、それだけだって。

 

‥‥知らない間にコピーを取る‥‥なんて、姑息な方法を使うんじゃなくてネ。

 

でさ、その人に会いたければ、会えるように上手くなってのし上がっていけば良いのです。下手くそなまま、上手い人の技術を垣間見たって、理解できないって。

 

それに‥‥です。あの人と一緒に仕事がしてみたい‥‥という情熱が、本人の技量を猛烈に向上させるのです。

 

 

「でも、データ共有ができなければ、新人は上達できないのでは?」

 

‥‥と考える人もおりましょう。でもそれは‥‥

 

データ共有すれば新人は上達できるのか

→他人のデータからの切り貼りの手順は覚えられるでしょうが、映像表現の能力は一向に上達しません。

 

データを共有しない場合はどうするのか

→目で見て模写・模倣を繰り返して、時には経験者のアドバイスを受け、他者の技法から学び、やがて独自の技法を形成していきます。

 

データを共有しないで、効率化は果たせるのか

→もし、特定の表現手法や効果があるのなら、「バンク」化して、あくまで技術集団内でライブラリ化すればよいです。もちろん、その「バンク」は、外部流出などがおこらないように、集団内で管理されます。

 

 

‥‥ということです。

 

データ共有すれば、新人が上達する‥‥なんて、どう考えればそう思うのか、教えて欲しいくらいです。

 

逆に、コンピュータのデジタルデータを複製して入手できなかった頃は、新人が育成できなかったのか?‥‥全然そんなことはないですよネ。

 

先述の、他人の上手い原画をコピーして切り貼りするのが、「上達」することなのでしょうか? 明らかに違いますよネ。

 

それに、新人の周りには、中堅もベテランもいるでしょ。その人たちが、時にはエフェクトのパラメータの意味も数値を踏まえてレクチャーして、映像表現のあれこれをコンピュータを用いて具現化する方法を指南すれば良いのです。

 

 

 

そろそろ、アニメ業界にコンピュータが浸透し始めて、20年くらいの年月が経とうとしています。

 

「デジタルを使えば、誰でも上手くなれる」とか、「デジタルは技術習得の手間をスキップできる」とか、甘っちょろい「クソデジタル思考」は終わらせても良い時期だと思います。

 

 

2018年現在のコンピュータは、それこそ、1人だけでも商業レベル同等の映像作品が作れるほど、恐ろしいポテンシャルを秘めています。

 

しかし、それはあくまで技術を当人が有していれば‥‥という大前提があってこそです。

 

でも、技術さえあれば‥‥という考えは、とても痛快じゃないですか。

 

技術さえどんどん高めれば、乱造のテレビアニメよりも、遥かに高品質なアニメ作品を、プロアマ関係なく、個人や少人数でできる時代‥‥なのですから。

 

 

 


開発について

手描きの絵なのに、生っぽい現実感。60pで素材出力をし直し、4K60pでファイナルまで仕上げた映像は、関わった当事者さえも当惑するような、何とも言い表しがたいニュアンスをもっています。もはや、今までのコンテの切り方も、尺の感覚も、レイアウトも、動きも、全てゼロから仕切り直さないと、4K60pフルモーションのアニメ技術は扱いきれないことだけは、よく判ります。

 

しかしなあ‥‥。作画論、演出論もそうですが、絵を作るだけでも、相当なカロリーが必要です。

 

4Kに対応するため、素材サイズは5〜8Kあたりまえのところに来て、秒間60コマのレンダリングをするわけですから、そりゃあもう、マシンは悲鳴を上げ続けます。マシンの「馬力」が根本的に足りません。

 

ゆえに、USB-C経由やThunderbolt3経由で、外付けのGPU(100万くらいするのもありますよネ。GPUとか言いながら薬の計算に使ったりとか)にグラフィックの計算を投げるような仕組みでも作らない限り、運用は難しいでしょう。1998年前後に「デジタル」で劇場アニメーションを作ろうとしていたBloodの頃を思い出しますが、その頃の私はマシン4台(Mac1台、Win3台)を輪番的に使って、マシンの性能の低さを台数でカバーしていました。

 

加えて、4K60pのフルモーションは、そもそも動画で一枚一枚動かすことは実質として不可能です。お金の問題(=時間もスタッフ個々の技術もお金として換算)をクリアできません。仮に、お金を膨大に注ぎ込んだとしても、品質的にみて、手描きでで一枚一枚動かすことを「常用」するのは具合が悪いです。ゆえに4K60pの時代になっても、動画で一枚ずつ動かす技術の実質は12fpsが限度でしょう。

 

現在でも24コマフルモーションで動かすのは特別なカットに限定され、その動きは「24コマで動かしてまっせー!」というある種の「一生懸命感」が出てしまい、滑らかさよりも気迫が全面に押し出されてしまいます。芝居のシーンでさりげなくフルモーションを使う技術は、エコノミーアニメーションで発展した日本では全くと言って良いほどノウハウがありません

 

4K60pの「60p」は、「動きの枚数が増えた」なんていう視点では、ただただ、持て余すばかりです。「24コマ」感覚に凝り固まったままでは「60p」の意味も意義も理解できません。

 

私は10年くらいかけて、「24コマ脳」から現在の「60pでもOKな脳」に変えていったので、しみじみ実感できるのです。2005〜6年の頃の私の頭は、新しい技術のきっかけを感じながらも、まだまだアニメ現場の慣習や慣例に思考が固着しており、柔軟な技術の捉え方ができなかったのを思い出します。

 

実際にキャラクターの芝居を60pで動かしてみて、そのニュアンスをどのように演出技法に、もっと言えば、企画時点でどのように活かすか、根本的な意識の変化が求められます。

 

* * *

 

2年くらい制作期間がかかる作品は、当然のことながら、完成するのは2年後です。今からだと、だいたい、2019〜2020年ですよネ。

 

2020年代に、現在の技術の標準で作って、どれだけ映像技術的な関心を呼ぶでしょうか。特筆すべきものはないでしょう。周りに似たような仕様の作品はいくらでもあります。

 

技術には「時差」があり、その「時差」を計算して開発しなければなりません。

 

つまり、技術は開発が始まった時には「荒唐無稽」「非現実的」と言われるくらいの斬新さが必要なのです。‥‥でなければ、数年後に完成した際には、技術的な特徴はほとんど何もアピールできずに終わります。

 

周りが容易に理解できるものは、その時点で既にありふれた性質を持ち、技術の新しさはありません。

 

でも‥‥です。何とも難しいことがありまして、「荒唐無稽」「非現実的」「理解困難」なものにお金を出してくれるところはありません。周囲から見て、理解し難い中にも、「未来の現実」が垣間見えなければ、プロジェクトは発動しないのです。

 

周りにとって「今は必要性を感じない」物事を、言葉だけ説明しても、「それならやってみよう」と同意してはくれません。言葉だけで説明したり、簡単なテスト的な絵柄で動かしても、周囲は「これ、いけそうだね」とは思わないのです。

 

むしろ、準備が不完全でビジョンの不明瞭なプレゼンは、かえって「不必要なもの」として認識される危険すらあり、開発プロジェクトの未来を失速させることすらあります。

 

「デジタルアニメーション」と呼ばれた2000年前後の技術更新の際、ほんの数社が実現した成功例があったからこそ、業界全体がフィルムを捨てセル絵具を捨ててでも「デジタル」に移行したのです。そして、その先行した数社も、内部的にはほんの少数派=マイノリティが、小さな成功例を積み上げたからこそ、本腰を入れるようになったのです。さらには、その小さな成功例は、「こんな感じのを作ってみたんですけど」と本番同様の絵や映像でプレゼンして、「面白そうですね。じゃあ、試しにこのカットをその方法でやってみましょうか。」と「最初のGOサイン」が出たのが「始まりの始まり」だったのです。

 

* * *

 

技術には、前倒しの時間感覚が必要です。そして、その技術が浮上するための順次戦略と累積戦略の両戦略が必要です。

 

絵を作りもしないのに、ロジックだけで先走っても、周りは納得しません。逆に、絵だけ作っても、ロジックが伴わなければ「まぐれあたり」にしか思われません。

 

でも、そうした周囲の反応は当然のことであって、周囲が持続して興味を持たざる得ないような要素を発散できていない時点で、開発プロジェクトには何か不足点や欠陥があると考えるべきでしょう。「理解してくれない」なんて周りを恨む暇があるのなら、技術開発プロジェクト内の自己同期・自己更新(OODA, PDCA)を推し進めればよいのです。

 

10回50回100回の周囲の無理解に心折れるようなら、最初から開発なんて手を出すべきではないのです。おとなしく、旧来技術の枠内で生きていけば良いです。

 

開発プロジェクトにおいてダメダメな典型は、中心人物がフワフワしている時です。確信がないので、目標地点もロードマップも示せず、問題提起だけに終始し(←コレ、本当によくある光景です)、危機感だけを募らせて、具現化のあてなきマニフェストを連発するのです。批判されただけで簡単に弱気になって、方針を何度も変更しがちです。足場がユラユラしてたら、技術要素を積み上げることはできないのに、やみくもに焦れば焦るほど技術は一向に形にならず、地道な基礎開発をすっとばして秘密兵器や特効薬を夢見るようになる‥‥という、まさに「開発でやってはいけない何カ条」を全て踏襲する路線を展開します。

 

風当たりなどにたじろがず、この技術はイケると確信できる人間が、映像開発をやれば良いのです。

 

今の目の前にある映像表現のきっかけを、どうしても1つの技術として確立したい「具体的なビジョン」がある人々が中心になって開発を進めない限り、開発はうまくいきません。私は制作現場30年のキャリアの中で、うまくいったプロジェクトも頓挫したプロジェクトも目にしてきたので、強い実感があります。一番マズいのは、「時代の流れについていけない」という漠然とした、実体が曖昧な焦燥感だけで開発プロジェクトを立ち上げることです。

 

情熱なきプロジェクトはエンジンを持たない車に等しく、どんなにエクステリアもインテリアも充実していようが、エンジンがなければ走り出せません。でも結構、定期的に、特定の人間たちはそういう形骸化した開発に夢をみるのですよネ。外見ばかり、世間を気にした仕様ばかりに、気をとられがちです。

 

世間の流れは利用すべきもので、決して囚われるべきではないと、特に開発に関しては思います。

 

焦燥感でも危機感でもなく、ましてや打算などでは決してなく、「これぜったいイイじゃん」「コレ、もっと見てみたい」「これが実現すれば凄いよな」とまずは本人たちが夢中になれる根本=情熱が開発プロジェクトには必要です。

 

でもまあ、そういう情熱の熱量も含めて、各社各グループ各人の腕の見せ所ではあります。

 

今、目指すは2020年代。‥‥です。

 

 


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