今年後半に向けて

自然現象のエフェクトは、スケールが大きくなればなるほど、手間がかかるようになります。特に水の類いは、スケールによってフォルムやディテールや振る舞いが大きく変わってきます。

 

まずイメージボード、ショットボードを描いて、エフェクトアニメーションのプランを立てて‥‥のような丁寧な段取りを踏まないと、津波級のエフェクトはまず無理です。もちろん、コンポジットのプランは必須です。作画だけ頑張ってなんとかなる話ではないです。

 

数日で作るにはやはり無理があり、日数=技術やお金を含めたコストがそのまま絵に出てしまう辛辣なジャンルです。特に作業時間の大小は深刻で、作業時間=絵の出来‥‥になりやすいです。やれることはわかっていても、やる時間がなければ、やれないのです。即物的に「具の量」「おかずの量」が変わります。紙と鉛筆で動かそうが、iPadとMacで動かそうが、細かいディテールと動きは、物理的な時間が必要です。

 

まあ、現在のテレビ枠・2K枠ではやりきれなかったことは、4Kの取り組みで雪辱を果たす‥‥という目標にしましょう。

 

 

ちなみに、HEVCの4Kは、ビットレートの大小で細かいディテールが大きく変化する(=溶ける、溶けない)のを、テストで確認しています。現在のインフラの状況を顧みず、画質だけで言えば、4K60pで200Mbps欲しいです。‥‥まあ、今は無理ですネ。時代が来るのを待ちます。でも、200Mbpsあれば、かなりオリジナルの画質に近くなるので、HEVCって凄いですよネ。オリジナルはProResで3000Mbpsですもん。

 

思うに、未来の現場は、ただ単に、絵を描いていれば良い、色を塗っていれば良い‥‥という認識では、技術基盤が大きく進化する未来においては、机上の空論、絵に描いた餅になってしまいます。

 

4K8Kの詳細度・細密画とはどういう特性・ルックなのか、60pになるとどのように絵の動きが変わるのか、転送速度の制限によって絵がどのように劣化していくのか、色々と新しい知識が2020年代中頃から必要になりましょう。特にPQカーブは曲者です。モニタ自体の取り扱いが、今までとは大きく変わってきます。

 

でも、何より4Kの絵が描けること。そこからスタートしなければなりません。2Kのままで良いのなら、2Kのアップコンですべて片付ければ良いのですから。

 

絵描きが4Kの旨味をたっぷりと味わうことで、4K8Kの門は開かれ、先へと進むことができます。それはキャラもメカもエフェクトも同じです。

 

‥‥で、仕事の依頼が来るのを待ってたら、まあ、何も始まらないですよネ。私らだって、何のオーダーもなく、自己開発で2013年に4Kの取り組みをスタートしたから、今に繋がっています。新しい技術に関して言えば、もう10年以上前から「自腹」で取り組んでいます。

 

新しい技術においては、まあ、鶏が先‥‥ですよネ。「新しい技術の卵」を産むのは、今を生きる鶏しかできないもんネ。

 

 

 

今年もあと半年か。‥‥半年しかないのか。

 

やることは山ほどあるわ。

 

 

 


テイスト、ニュアンス。

新しいアニメーション技術においては、必ずしも昔の「線画+ベタ塗り」という作業方式を継承しなくても制作が可能なので、色々な絵のテイスト・ニュアンスが実現できます。

 

私は子供の頃から、いわさきちひろさんの絵に惹かれ続けているので、自然な成り行きで新技術の開発においても「淡彩風」のアニメーション技術をテストしています。以下は数年前に紙で線画を描いてスキャンして(まだiPad Proが発売されてない頃でした)、直にAfter Effectsだけでペイントしてみた「淡彩スタイルのテスト」です。キャラのペイントだけでなく、滲みで表現した背景もゼロからAfter Effectsで作っています。

 

*私だってこーゆー絵も描くんですよ。メカや爆発だけじゃなくてネ。ただまあ、依頼がないだけで。

 

こうした絵本のような絵柄も、新しい技術では4K60pそしてHDRで制作可能です。ちゃんとこのテイストのまま、必要とあらば1秒間60枚(60p)でも120枚(120p)でも動かせます。しかも、極めて少人数で、です。Z軸の動き(振り向き)とかも、もちろん、イケます。

*実のところ、少人数で完結できるからこそ、色々なアニメーション映像スタイルを実践できるのです。延べ作業人数を何十人、何百人と必要とする現在のアニメ制作技術では、ニュアンスの微妙なデザインやスタイルは不可能です。

 

2018年を目前にした今は、上図をテストしていた頃より、「4Kでの絵の作り方」がわかってきたと言いますか、線の扱いや、詳細感の表現も進化しています。より、生っぽい、「描き絵テイスト」を「デジタル」で表現できます。

 

‥‥でもまあ、萌えキャラの勢いが続く現在では、こうした素朴な絵柄、おめめの小さいキャラなど、需要がないだろうな‥‥と思いますし、私も他に積み上げていかねばならない技術が山積みなので、しばらく「淡彩スタイル」は放置しておりました。

 

しかし、久々に「いわさきちひろ美術館」のWebをみたところ、なんと来年2018年はいわさきちひろさんの生誕100年じゃないですか。

 

 

うおー。

 

俄然、火が点きました。

 

 

とはいえ、来年になっても、どうせ、こうした絵柄を動かして見たいなんてオーダーなど、来ようはずもないでしょう。

 

しかし、待ってたって、どうにもなるもんでもないです。私の中で重要な要素となるいわさきちひろさんの100年記念となれば、たとえ自主制作でも、たとえ1分でも、「淡彩風の今どきではない絵柄」で作ってみようかな‥‥とムラムラしております。

 

 

簡単でないのは、承知しております。

 

止め絵として描かれた絵は、当然のことながら、止まった状態で完成されています。動かした途端に雰囲気が壊れてしまいます。

 

ゆえに、動かした時に、ちゃんと「最初からそうだったように」感じられるスタイルの絵であることが必要です。とってつけたような動きじゃダメです。

 

それに、いくら「いわさきちひろさんLOVE」でも、まさか、無断で絵を模写して動かすわけにはいきません。

 

ちゃんと、「憧れ」を「自分のスタイル」へと昇華しなければ、自分の作品の作風とは呼べません。自主制作のオリジナルになるのですから、他人の絵を使うわけにはいかないでしょう。

 

でもまあ、実は、どうやって淡彩をスタイル化すれば良いかは、もうアイデアはあるので、ツールを使って具現化するだけです。今はiMac 5KもiPad Proもあるので、道具に不足はないです。

 

After Effectsは、使い方のアイデア1つで、いくらでも「淡彩風」の表現は可能です。髪の毛1本、指1本ごとに動かすことも可能です。

 

安い省略法ばかり考えずに、After Effectsを真摯に正面から画具として扱えば、これほど、絵を動かすのに万能なツールは他にありません。撮影だけのソフトじゃないのです。

 

 

ちなみに、私は東京のちひろ美術館にも安曇野の美術館にも、両方行ったことがあります。東京に至っては、年間会員になってフリーパスで足繁く通っていた頃もありました。

 

コンピュータのモニタしか見ない毎日を続けると、どんどん視野が狭くなり、感動も薄れ、予定調和の仕事ばかりで打算的な自分になっていきます。

 

たまには、自分のルーツを肉眼で見つめることも必要になりましょう。長い人生だもの。

 

 

とは言うものの、いわさきちひろさんの描く子供たちの絵を真似たところで、今の私には邪心が多くて、描いた自分で「うそっぽい」と引いてしまいます。

 

なので、今の自分が描くに値する題材とテイストで、淡彩風にもチャレンジしてみようと考え中です。

 

 


近くて遠い

導入予定のEIZOの4Kモニタ「CG318-4K」のデモ機で、現在進行中のプロジェクトや過去の4K制作アニメを表示する機会があったのですが、アニメこそ、実は4Kに一番近い(か、2番目)制作技術であると再確認しました。

 

線画のキレ、意図通りの発色、その気になればとことん高詳細に作り込める絵作り。

 

4K8Kはまさに「描いた絵のためにある」のではないかと錯覚するほど、CG318-4Kはあくまで精緻に、作った絵をそのまま表示してくれます。描線の細部まで克明に表示されるさまは、苦労した甲斐があろうというものです。

 

2K制作のままなら今までの2〜2.5Kモニタで十分ですけど、4K以降の映像世界をどんどん開拓していこうと思うのなら、今のところ、CG318-4Kしか選択肢がないのが現状です。他のモニタも色々と探してみたのですが、生粋の4Kを制作するのなら、2017年11月現在は少なくとも、CG318-4Kしか適材が見当たらないんですよね‥‥。

 

でもまあ、4Kモニタにしても4Kテレビにしても、映像データそのもの、絵作りそのものは、何よりも重要です。過去のフィルム作品にしても、2Kスキャンではなく、4Kに応じた再スキャンは必要でしょう。

 

4Kネイティブのアニメ映像は、EIZOのリファレンスモニタ(300万のやつ)でも映し出したことがありますし、レグザの普及機でも映したことがありますが、どれも4Kの高詳細と60pの滑らかなモーションの元データでこそ、ハードウェアの威力を発揮できます。

 

Macと4Kモニタを接続するケーブルによっては、4K24pでしか映らないこともありますが、もはや60pでなく24pであるだけで、「ひと昔前」の映像のように見えるので、すぐに接続異常が解ります。人間の視覚というのは総合的に形成されるらしく、動きが24pに落ちるだけで、絵全体の解像感も低くなったように見えるのです。絵がいきなり「もさっ」とするので、接続のヘルツ数を確認するまでもなく、視認だけで判別できます。

 

今後、映像のプロスタッフだけでなく、一般の人も、徐々に24p/30pと60pの差を「体で覚えて」いくことと思います。現在、家庭のテレビが2Kでも、10年後には普通に4Kでしょうから、応じて、人々のテレビを見る感覚も4K60pに慣らされていくことでしょう。

 

 

 

新しい技術ベースでアニメを作れば、格段に4K60pが現実的になります。iPad Proで4K以上で描けば、いきなり、ドットバイドットで4Kが実現できます。AfterEffectsで動かせば、フレームレートは自由自在で、60pは身近な存在となります。

 

一方、3DCGの関係者の方々からは、今でも2Kフルサイズ(2Kのドットバイドット)がキツイ‥‥なんて話を聞きます。3DCG制作は、そもそもマシンのスペック要求からしてハードです。2DCGの比ではありません。加えて、映像作品として3DCGを用いる場合、より一層の細かい仕込みと作り込みが必要になるようです。ゆえに、3DCGを4K60pでドットバイドットなんて、相当困難だと思われます。

 

同じ手描きベースのアニメとは言え、旧来の現場の維持、旧来のスキームを継承しよう‥‥だなんて話になると、全く逆となって、4K60pに対して一番遠くなります。旧来の技術ベース=A4〜B4程度の用紙と低いスキャン解像度、二値化で太くなりがちな描線、8fpsベースで動くモーション‥‥と、現アニメ業界の現場と4K60pは、まさに水と油、どんなに一生懸命馴染ませようとしても、「分子レベル」で決して結合できません。

 

 

 

アニメは、新技術を用いれば、4K60pなどの未来の映像技術とどんどん距離が近くなっていきますが、旧来技術ですと離れて遠ざかる一方です。同じアニメであっても、全く状況が異なります。真逆と言っても良いです。

 

アニメ制作はその結果物が「絵」なので、モニタにアニメの絵を映し出してみれば、制作技術や制作現場の状況が「絵を介して」映し出されます。

 

‥‥と同時に、自分たちが進むであろうアニメ制作の未来も映し出されます。

 

 

 

平成は2019年で終了‥‥だとか。

 

平成時代にアニメは随分と進化しましたよね。その平成があと二年で終わり、団塊ジュニアのピーク世代(1973年生まれ前後)はアラウンド50になります。

 

平成が終わった後の、新時代のアニメ作りは如何なるものか。

 

あと10年くらいで引退しようと思っている人は、新時代など意識せずとも「今までのやりかたで逃げ切る」ことを考えれば良いのでしょうが、この先、20年、30年、40年とアニメを作っていこうと思う人は、今までのやりかたがどれだけ未来に有効なのかを、目を背けず直視して見据えなければならないでしょう。今までのやりかたが通用しない未来も、しっかりと想定しておくことが寛容です。

 

4Kモニタに自分らの作った映像を映し出して、何も感動することがないのなら、未来の有様もそうである‥‥のでしょう。「4Kテレビに映しても、何も変わらねーじゃん」とがっかりするのなら、がっかりする未来、失望する未来が待ち受けているということです。

 

私は、自分たちで作った4Kネイティブの映像を4Kモニタで映し出すたびに嬉しくなります。例え今は小さなプロジェクトでも、出来栄えに歓喜して、未来に対する自信と確信が1歩ずつ深まるような、新時代のアニメ制作を進めていきたいと思います。

 

 


最近の10万円以下の4Kテレビ

最近の4Kテレビで、以前に制作した4K60pのアニメ映像をMacProから出力して見たんですけど、ちゃんとご家庭のテレビでも4K60pの威力は十分伝わることが確認できました。

 

アップコンではない、正真正銘の4K60pの映像はやっぱり密度もキレも違います。そしてその高品質の映像を、各家庭の10万円以下の4Kテレビで普通に再生できることを、素直に嬉しく思いました。

 

自分で描いたiPad Proの筆致が全部克明に見えます。ちょうど、女優さんの肌の毛穴すら見えてしまうように。

 

私が考えている「描線」は、様々な表情があって然るべき‥‥なので、線のニュアンスの細部まで見える40インチ以上の4Kテレビは、理想がそのままカタチになったようなものです。

 

以前だったら、溶けてしまった極小のディテールも、その気になれば数を数えられるほどに、精緻に映し出します。

 

色彩のニュアンスも良いです。妙に暗部がもさっと潰れることがありません。どんな角度から見ても、色が崩れることもないです。

 

これが実売9万円のテレビなのか‥‥。

 

 

時代はどんどん近づいてきます。望んでいた姿となって。

 

 

思うに、今、4K60pHDR映像制作に一番有利なのは、「2Dアニメーション」と「実写(3DCGの絡まない)」ですね。

 

2Dアニメーションと言っても、現在のアニメ業界のアニメではないです。あくまで、新しい技術で作るアニメです。現在のマシンパワーを持ってすれば、4K60pの作業は重いは重いですが、不可能なことではなく、十分「射程圏内」です。

 

一方、3DCGは、4K60pなんてとても無理‥‥という話を関係者からよく聞きます。恐らく、表現上の技術的な問題よりも、4K対応の精度の問題、そしてマシンパワーの問題が深刻なのだと思います。

 

アニメ業界現状のアニメは、制作技術と制作費の都合上、2K24pが事実上の限界なので、同じアニメと言えど、実は一番、4K60pなどの未来の映像技術に遠い存在です。どんなに「デジタル制作」に切り替えても、映像技術が致命的な遅れを喫しては、未来で相当な苦戦を強いられるでしょう。まさか、2Kアップコンの4Kを「4Kアニメ」として売るわけにはいくまい。まあ、その辺は、「デジタル制作」をやりたい人たちが解決していくしかない問題ですから、私はノータッチ。

 

 

4Kテレビで4K60pのアニメがブロードキャストされるようになれば、それはまさしく「ガラテア」を、お茶の間(ていう言い方も古いですけど)や個人のモニター上に具現化できることになります。

 

60pフルモーションのあまりにも生々しい動き‥‥なのに、それはあくまで作り手の美意識の産物である‥‥という、「描き絵が60pで動く魅力」が、10万円のテレビを通して伝達することができるようになるなんて、「絵に命をふき込みたい人間」からすれば、奇跡の技術進化です。

 

素直に、映像技術&機器メーカーの開発者の人たちに感謝せねば。

 

‥‥まあ、作り手たる私らとしては、浮き足立たずに、地道に線1本、1レイヤー、1フレームにて、具現化していくだけです。

 

 

‥‥で、これだけ書いといて、ナニですが、今回話題に取り上げた9万円のテレビは、東芝の43インチ(だったと思う)の4Kレグザだ‥‥ということ以外は、型番を聞いてなかったです。なんだか、中途半端な紹介ですんまそん。

 

 


プラス要素、付加価値、エコシステム

ごく普通に考えて、同じクオリティの製品なら、昔と同じ値段で買いたいですよネ。自分の身になって考えればわかることです。

 

例えば、ここ10年ほどのアニメ業界は、A4〜B4を150dpi前後で、1秒24コマ2〜3コマ打ちの動き、つまり内部的に1.5〜2Kの8〜12fpsで映像を作っています。

*撮影時には24fpsに丸められます。

 

納品時には2K24pになりますが、その2K24pの作品・商品の価格がいきなり数倍に跳ね上がったら、その商品の受け取られかたや競争力って、どうなるでしょうか。買い手側は、数倍の価格になった価値をどこに見出せば良いのでしょうか。

 

もし2K24pのままで、以前より高い価値を買う側に訴えかけるには、何かしらの付加価値が必要不可欠です。

 

それは制作する会社のブランドイメージであったり、2K24pでもフルモーション&高詳細でとても丁寧に作られていたりとか、とにかく、何かしらの付加価値が必要です。

 

そうでなければ、「なぜ、価格がこんなに高くなったんだ?」と怪訝に思うでしょう。

 

「いや。制作現場の苦境を救うために、今までの異常な価格は訂正したい。」と言ったところで、業界を救うために、業界外の人々が無批判・無条件にお金を多く支払うことなんて、普通に考えて、あり得るわけがないです。品質は以前と変わらないのに、無謀な価格引き上げをおこなおうものなら、単に「顧客」離れを引き起こすだけです。

 

ちゃんと、作品・商品に、「これなら、数倍のお金を支払っても然るべき」と思わせるプラス要素がなければ、お金なんて簡単に増額されるわけがないのです。お金を出す側が、どんなに資金力をもっていても、旧来と同じクオリティのプロダクトに、無条件にお金を増やして支払うわけがありません。

 

要するに、1.5K8fpsの2K24pアップコンの技術価格相場は、もう完全にフィックスしてしまった‥‥と考えておいた方が良いでしょう。1.5Kなり2Kなりで、2コマ3コマ作画を続ける限り、技術の相場が大きく向上することはないのです。

 

 

旧来制作現場については、このへんで。

 

これからは新しい技術関連について、文字数を割きたく思います。

 

 

私はアニメーションの技術屋なので、明確に「アニメの技術=お金=ビジネス」という切っても切り離せない相関関係を常に意識しています。

 

「技術の価格」を意識せずして、ビジネスは成り立ちません。

 

「自分はこんな絵が描ける」というのも技術ではありますが、ここで書きたいのは個人ごとの能力ではなく、制作集団の有する技術の全体像です。

 

計画進行を着々と進めている新しいアニメーション技術においては、いよいよ、4K60fpsが標準仕様となりました。よほどのことがない限り、2K24fpsでは制作しません。4K60p、もしくは4K48pが標準です。

 

なぜかというと、どうせ苦労して作るのなら、2Kや24pでマスターを作るのは「もったいないこと、この上ない」からです。UHDの品質が実現できる技術を有するのに、わざわざ2Kで24pの寝ぼけた解像感にして、何の得があるの?‥‥という話です。

 

多くの枚数=数千数万の絵を描くために、絵をできるだけ簡略化したり、動かす枚数を制限するのは、もはや過去のことです。絵を簡略化して動きを節約したら、4K60pは隙間だらけで持て余しがハンパないです。

 

4K60pは、新しい絵作り、映像作りにこそ、活きてきます。

 

「旧来では非常識とさえ言われるほどの細密な絵」「滑らかな60pフルモーション」「4Kの情報量を活かした密度感のある作品空間表現」「今まで実現不可能と思われていた作風の絵を整然と動かす」「アップコンではなく、正真正銘4K60pの精緻な映像」などの、新しいプラス要素を何層にも用意しています。

 

今までのアニメ技術の作風を模倣・継承しても、付加価値やプラス要素はほとんどアピールできません。今までできなかったことを実現するから、「品質の違い=価格の違い」を感じ取ってもらえるのです。

 

 

絵を動かしてアニメーション映像として完成させるには、とにもかくにも、技術を有した人間たちが必要です。そこは全く誤魔化さずに主張すべき基本原理です。

 

ですから、技術を持った人間たちの働き方が、制作技術の価格算出の出発点となります。私は1分あたりのコストに対し、数十万から数百万までのスケーリングを考えていますが、それは旧来の人海戦術スタイルではなく少人数工房スタイルで、ワークグループネットワークありきで算出されます。

 

お金のことはあまりここでは書けませんが、新しい技術に関わる人間たちには、然るべき新しい生活基盤が必要です。過去のアニメ業界の因習はシャットアウトしなければなりません。「20時間、作業貫徹すれば何とか間に合う」なんていう生活ありきで、どうして、新時代の基盤が形成できましょうか。

 

要は「エコシステム」、新しい「生態系」です。

 

旧来アニメ現場の労働の軸上に、決して新しいエコシステムは作られるべきではないと、強く決心しています。

 

新しいアニメーション技術は、新しいエコシステムで育まれるのです。

 

4K60pのアニメーション技術がある日ポコっと生まれ出て成長するわけではなく、「制作の生態系」を新たに形作ることによって、結果物として付加価値・プラス要素の豊富な完成物を作り出すことができるのです。

 

ただ、言葉をもう少し慎重に選ぶとすると、4K60pや8K120pなどの高品質映像技術をネイティブに活用する新しいアニメーション技術は、「付加」「プラス」なんていう後付け的なニュアンスの要素ではありません。決して大袈裟な表現ではなく、本質的に、「アニメーション産業革命」と呼ぶにふさわしいものだと、私は確信しています。

 

新しい価値基準を、新しい技術で形作っていく。

 

‥‥まあ、我ながら、技術屋風情の私が発想しそうなことではありますが、そこはかとない強い確信があるのは、正直なキモチなのです。

 

 


パワーユニットと排ガス規制

前回、実際の労働状況を「排ガス規制」に当てはめて例えましたが、もう少し丁寧に言いますと、「制作現場」というパワーユニットのフリクションロスや燃焼不全の負の産物が「排ガス」であり、その「排ガス=有毒ガス」に対する社会的な抑制として「排ガス規制」がある‥‥というような例えです。

 

アニメ制作上の「排ガス規制」をクリアするには、私はおおまかに2つの方法があると思っています。

 

まずは、発生したガスをフィルタによって除去して外に撒き散らさないこと。‥‥つまり、マフラーの触媒であり、要は「労働基準」です。

 

アニメ業界は今まで、「大気汚染を防ぐ排ガス規制」=「人間社会における労働基準」に対して、あまりにも甘い基準で走り続けた感があります。この事実は誰しも認識していることでしょう。

 

よって、マフラー部分、つまりガスを排出する部分に、強力なフィルターを配置して、クリーンな排気を「結果的に」作り出すことが求められている状況です。世間の「ブラック批判」に対する対応は、マフラーの触媒=労働基準の導入によって実現するのが、ごく一般的な考え方です。

 

しかし、パワーユニット=エンジンの不燃焼構造は変わっていないのに、マフラーの触媒を強化することは、直接的に馬力の低下につながります。馬力の低下=映像のクオリティが低くなった状態で、今後、どうやって「レース」を戦い抜いていくのかは、大きな課題となるでしょう。

 

では、パワーユニットがそもそもロスや不燃焼を発生しにくい新設計に変わったなら、どうでしょうか。排ガス=有害ガスは「根本的に」低く抑えることができます。私の考える2番目の方法は、まさにソレです。

実際の車だと例えばコレです。

 

有毒ガスを大量に排出する構造そのものを設計し直す‥‥という、ごくごく、普通の発想です。

 

新しいアニメーション技術に移行することは、高効率パワーユニット、低公害エンジンに切り替えることを意味します。

 

同じ燃料の量で、より効率的に燃焼し、機械的な負荷=ロスも大幅に軽減し、飛躍的な馬力増大と燃費向上を実現し、一方で排ガスの量も劇的に減る‥‥という、1970年代にはできなかったことを2020年代に実現するのは、決して不可能ではなく、むしろ自然な技術進化の流れだとも思います。

 

4K60p、8K120pという現実的な映像技術の変遷に対して、今までのアニメ制作現場のパワーユニットでもし対応しようとするならば、とんでもない有毒ガスの排出量、それを抑止するためのさらなる触媒の追加と、「もはやレースにならない」状態が予測されます。なので、今までのアニメの現場は、2K24pが最後のレギュレーション‥‥ということになりましょう。

 

しかし、4K60p、8K120pを最初から意識した設計の、新しいアニメ制作現場の新しいパワーユニットならば、映像のハイスペック化の流れ・風潮は、逆に都合が良い状況になります。

 

 

私は、もちろん、マフラーによる排ガス抑制も考えますが、あくまで補助的な役割であり、パワーユニット自体の新設計によって馬力と燃費を向上させ、燃焼の高効率化によって有毒ガスが発生しにくい状況を作って、トータル的な「環境性能」を形成していきたいと考えます。

 

後付けで馬力をブーストするのでもなく、大きなタンクで航続距離を伸ばすのでもなく、フィルターで有毒ガスを漉し取るのでもなく、そもそもパワーユニット自体が大馬力低燃費で、かつ排気ガスもクリーンである状態を作り出せば良いのです。

 

以上は、アニメ制作現場を、エンジンと排気ガスに例えた改善策・解決策です。

 

 

アニメは人が作るわけです。当然のことながら‥‥ネ。

 

ということは、どうしても人間社会とは切っても切り離せない関係にあります。

 

未来、人間社会と共に歩もうとするとき、アニメを作る作業集合体に何が求められているか‥‥は、今まで現場で経験してきた人間なら、もうじゅうぶんに、解り切っているはずです。

 

要は、その解り切ったことに対して、目を背けて昔と同じことを繰り返し続けるのか、直視して新たな思想と技術で切り拓くのか、2つの分岐のどちらを選ぶか?‥‥ということです。

 

その分岐は、まさにアニメ制作に従事する、相応の権限を持つアラウンド40や50の人間の意志にかかっていると思います。

 

 


スケーリング

未来のアニメーション制作は、例えばバイクや車に例えるなら、馬力、燃費、そして排ガス規制の3つを、常に意識する必要があると思っています。

 

そして、50ccの原付から1300ccのリッターオーバーまで、制作のターゲット・許容に応じたスケーリングも必要になりましょう。

 

馬力は映像クオリティ、燃費は制作上の効率、排ガス規制は労働の実質状況、それらを総合して、制作費の実際に合わせてクラス調整するのが排気量・車格‥‥というような感じです。

 

新技術の強みは、今までのアニメ制作の選択肢が250ccクラス固定で16馬力程度だったところに、80ccで14馬力を叩き出したり、そもそも排気量は固定せずに50ccから1リットル(1000cc)オーバーまで、ターゲットに合わせて可変で対応する仕組みです。それによって、今までのアニメ制作では参入できなかったクラスにも、どんどん参加していくことが可能になります。

 

「映像制作レース」は時代によって、そのレギュレーションが大きく変わります。当然、そのレギュレーションに合わせて、そしてレースの排気量クラスによって、投入するバイクの設計・性能・運転技術は変わっていきます。

 

しかし、旧来のアニメ制作は、250cc固定、そして70年代に設計されたエンジンとボディで、50ccから1000ccまで様々なレースに参入し、250ccクラスのレースならまだしも、50ccでははみ出して、1000ccでは少なすぎて‥‥という状況を繰り返していました。その不適応が、どんなかたちとなって表れたか‥‥は、もうここでは語りませんが、まあ、どう考えても、良いやりかたとは思えませんよネ。

 

 

 

つまり、ターゲットに合わせて、「勝つための計画」に合わせて、スケーリングを変えていく発想が、当然の前提として、これから先の未来には不可欠です。

 

社会の技術進化を「否定ではなく活用して」、巧妙に「レースでの有利な展開」に盛り込んでいくこと‥‥とも言えます。

 

旧車への愛着はありましょうが、「ヴィンテージクラス」のレースでもなければ、旧車はただ単に性能の低いレース車に過ぎません。旧車にまたがるライダーのテクニックでカバーするにも限界はアリアリです。

 

2010年代、2020年代以降には、それ相応のデザインというものがありましょう。

 

 

一度規格を決めたら、その後ず〜っと同じ規格で戦い続けるのではなく、未来の「レース」では、スケーリングを意識して、「最適な戦いかた」で戦っていくことが求められるでしょう。‥‥でなければ、「ヴィンテージ限定クラス」以外では、勝つことはどんどん難しくなります。

 

アニメ業界だけがアニメを作れる業界‥‥というわけではなくなり、業界単位ではなく、会社単位で制作が成立していくことも今後は事例として増えていくでしょう。

 

ディスカバリーチャンネルのタイトルみたいですが、要は「勝つためのデザイン」を追求していけばよい‥‥のです。

 

そのためには、プロダクションの動的スケーリングという基本的な構造は、必要不可欠だと思っています。

 

 

 


フェイズ

私は、新しいアニメーション制作技術、そして実際の制作運用の進行度を、「フェイズ」として捉えて、計画進行をイメージしています。

 

フェイズ1は基礎技術とテスト、フェイズ2は基礎技術の拡充と試験的導入及び小規模制作で、これからはいよいよフェイズ3の段階に入ります。フェイズ3はどんな段階かは、ここでは書けませんが、要するにフェイズ1、2‥‥の次の段階です。

 

欧米に引き離された感はありますが、巻き返しは十分可能です。欧米にはない、日本の強みを活かして、競合の死角から攻めようと思っております。

 

国内の状況に至っては、私自身、このブログで度々、自分の考えをまとめて書いてきて、じゅうぶん、自分の中での「整理整頓」は終了した感慨があります。これからはもう、自分に与えられた時間を、未来のプロジェクトにできるだけ多くつぎ込んで、フェイズをどんどん進めていく所存です。

 

もはや、今までのアニメ制作のありかたと未来のありかたを、比較して検証したり思索することも少なくなっていくでしょう。

 

 

 

思えば、1996〜2000年の頃もそんな感じでした。旧来のセル用紙とフィルム撮影台と、新しい「デジタルアニメーション」が混在していたあの頃。

 

私は、フィルムカメラを愛好していましたし、小さい頃からアニメ雑誌などで知っていて馴染んできたセル画(小学生の頃、タミヤプラ板と水性カラーでセル画もどきを描いてみたことがあります)にも愛着を感じていましたが、もうそこへは戻らなくても、十分、自分はやっていける‥‥と決心を固めたものです。

 

アニメ業界はどのように歩んでいくのか‥‥も、アウトサイダーへと変わっていく私にとっては、もう考えなくていい事かなと思います。

 

アニメ業界の横の繋がりがなければ、致命的に制作不可能‥‥という性質ではなく、独自の制作技術の基盤で成り立っていくのが、新しいアニメーション技術です。もちろん、作品の根本をイメージして指揮をする人、絵を描く人、彩る人、世界観美術を作る人、作品の空間を作る人、状況を管理する人は、依然として必要です。しかしそれは、決して、原画でも動画でも彩色でも撮影でも無いのです。新しい技術の新しい枠組みです。

 

 

 

新技術が現段階まで到達するのに、それなりに多くの時間(10年以上)をかけてきた感慨はありますが、決して期間短縮できることでは無かったとも思います。新技術をスタートした時は、グラファイトのPowerMacG4でしたから、機材の進化速度に足を引っ張られながらも、技術基盤と機材の発展が足並みを揃えてきた歳月でした。

 

振り返ると、わたし的にはやはり、2014年11月に5KのiMac、翌2015年11月にiPad Proが発売されたのが、大きかったです。それらが発売される以前は、高詳細を得るためのA4の分割作画=B3〜A3相当の巨大な紙作画による運用はかなり大変だと感じていましたし、そもそもいつも見ているモニタが4Kじゃないのは、あからさまな機材的な限界でした。

 

しかし、今は5KのiMacやiPad Proに加えて、冬にはiMac Pro、H.265‥‥と、技術運用面の追い風がさらに吹いてきます。

 

 

思えば、アニメーターだった私が、Quadra650で「コンピュータ」でのキャリアをスタートしたのは、もう20年前以上昔の話。

 

随分遠くに来たものです。新しい技術においては、4K60pは標準であり、D1でWSSWW‥‥とかやってた昔が懐かしいです。

 

 

 

まあ、昔話は昔話として、今は今‥‥です。

 

気を緩めることなく、次のフェイズへGOです。

 

 

 

 


修正する

ここのところ、何回かに渡ってイジくりまわしている「トラディショナルスタイル」の絵ですが、元絵がぬぼーと漠然と描いたコレなので、上からかぶせて描いて「トラディショナルスタイル」のキャラに変えた後も、どうも目が大きい傾向を引きずっているような気がしておりました。

 

 

 

 

‥‥なので、「よく見ないとわからないレベル」ですが、目を若干小さくしました。

 

 

この顔立ちなら、このくらいの目の大きさでも十分なように思います。

 

リアル風(あくまで「風」)の顔立ちは、全体のバランスで可愛さとか綺麗さを醸し出すので、目の大きさに頼らなくても良い‥‥というか、目を大きくしたままだとバランス取りが難しくなる傾向があります。実はその辺が一番描いてて難しく、1作品に関わる作画延べ人数の極めて多い現在のアニメ制作事情と「水が合わない」点です。

 

パーツで顔を似せるのではなく、バランスで顔を似せるのが「面倒」なのは、アニメーターなら誰でも知っています‥‥よネ。

 

‥‥で、こうした顔立ちの修正は、After Effectsなどのコンピュータ上の操作でも可能なわけですが、そのあたりの技術はこのブログでは意識的に避けてきた話題でもあります。

 

アニメ業界の現場は、本来のフローの約束事(=責任の所在)を徐々に崩して安易な方向に流れ続けて現在の状況があり、ちょっとした動画の崩れ(1日で動仕を海外で処理すれば、崩れるのは当然ですが)を仕上げさんで直すようなことも、テレビシリーズでは常態化しています。もちろん、仕上げさんが動画の崩れを修正するのは「戻す時間がなさ過ぎる悪化したスケジュール」ゆえで、本来ならば管轄外のそんな修正作業まで引き受けたくないのが本意でしょう。

 

線や塗りの微調整ならまだしも、顔立ちの修正に及ぶと、それはまさに「顔立ちに責任を負う」ことを意味します。つまり、作画監督の守備範囲に及ぶということです。

(とはいえ、既に、フルショット、ロングショットの酷い崩れの顔は、作画に戻せずに直す事例は多いですけどね‥‥)

 

安易に最終段のセクションで顔立ちまで本格的に修正し始めたら、それこそ「システム崩壊」に繋がります。責任の所在なきアニメ制作といっても過言ではないでしょう。

 

なので「その技術に関する話題を避けてきた」わけで、技術の具体的なことは今後も書くつもりはありません。

 

ただ、作画にコンピュータが浸透して、日本画のような繊細な顔のバランス取りが必要な絵柄に関しては、どの段階で「キャラの顔立ちの責任職が介在するか」は、今までのシステムとは大きく異なってくるでしょう。いままでの「線画だけで先が見通せる」ような絵柄の性質とは大きくかけ離れるので、作画の監督職も、今までと同じやりかたでは通用しなくなってきます。‥‥今までと違う、アニメの絵柄を目指すならば‥‥です。

 

今までのフローでは立ち往かなくなることも多い、可能性が大きく広がる、未来のアニメーション技術と制作。

 

絵柄の開発と同等以上に、ワークフローなど制作システムの新開発も重要になってきます。

 

こなすべき問題は山積み‥‥ですネ。

 

 


4Kの線質

4Kテレビも随分と手頃な価格に落ち着いてきた2017年。HDMIを経由して、4Kムービーの映写も可能になり、4Kを自主的にテストするための機材的な敷居が徐々に低くなっています。

 

以前のブログで書いた際に用いた「トラディショナルスタイル」の絵柄は、手描きで動画を描くのではなく、コンピュータで動画を動かす(=解りにくい表現ですが)技術前提のデザインで、極端に今のアニメ絵から逸脱した内容でした。絵柄の源流は、アニメというよりは日本画に近く、制作工程こそトレス・ペイントではありますが、「執念の線画作業」が必要になる非常にユニークなスタイルです。

 

実は、描いた私も、「トラディショナルスタイル」は技術的に(描くのが大変で)キツいので、もう少しライトな表現で4Kを活かせる路線を模索中です。動かすことに関して言えば、もちろん「動かすことを前提にデザインされた」絵柄なので可能ですが(=描いている時点からリグの計画をする)、「動かす元の絵を描くこと自体」が、「似せにくい」「線が繊細で神経がすり減る」「モーション時のアンチエイリアスのボケを抑制するために5〜6Kの解像度が必要(=そのかわり、8Kにも対応できそうな予感ですが‥‥)」と大変なことだらけです。

 

i7の4コア6コアの4GHzで動作し、32GBのメモリを積み、SSDの記憶装置を持つマシンですら、ヘナチョコな体感速度となり、「重さ爆発」な制作作業となります。まあ、2000年前後のプアな環境で劇場を作っていた頃を思い出せば、耐えられないことではないですが、動作が重くて「大変」なのは正直なところです。

*‥‥でも、6KでもiPad Proでの作業時は全然重さを感じないんですよネ。コンピュータの処理速度・体感速度って、単にハードのスペックでは語れない部分が多いですよネ。

 

でもまあ、いろいろな可能性を探るのが、「こういう時期=状況の移行期」のポイントです。技術でお金を稼いで飯を喰っていきたいのなら、誰でも選択するであろう安易な妥協をせずに、未開拓分野の経験値とノウハウをむしろ積極的にどんどん蓄積していく必要があります。実現困難で未知なものごとは誰でも避けたがるので、逆に返して言えば「皆が無理せず落ち着ける場所は、皆が殺到し、レッドオーシャン状態に陥る」のです。

 

最初に苦労してブルーオーシャンで商売するか、最初は楽に受け流して後で煉獄の苦しみを味わうレッドオーシャンで商売するか‥‥は、自分の意思と行動で決めれば良いことです。

 

 

生産効率の高い絵柄の探求はこれからの模索の「お楽しみ」にとっておいて、まずは今年初めに何気なく描いた「トラディショナルスタイル」の絵を、以前のコンポジションに組み込んで、4Kの高詳細な線質のルックを試してみました。

 

最初に、iPad Proが来る前に鉛筆で描いてコンポジットしたフィックス絵です。以前にもここで載せました。寸法は3840ではなく、4096の4Kです。このブログの横幅に表示サイズを合わせていますが、クリックして別ウィンドウで画像を等倍サイズで表示し直せば、お使いの環境が4K〜5Kならば詳細感をリアルに見ていただけます。

 

 

この女の子の舞台セットを流用し、キャラを今年初めにiPad Proで描いたキャラに差し替えて、情景の完成画像として出力して、線質の「具合」を見ます。

 

 

寄りサイズのほうは、照明効果を変化させつつ、軟調フィルタがやや強めです。

 

4Kで繊細に線を仕上げると、線が溶けて太らずに、「本来の軟調効果」が威力が発揮されます。

 

この現象は、実は2Kでも表れます。昔に存在した「アニモ」というアニメーション制作統合環境では階調トレスがベースだったのですが、線自体に濃淡の強弱があるので、軟調効果(フォギーやソフトン、ディフュージョンのシミュレーション)のかかりかたが「上品」でした。二値化したレタス線だと、どんなに細くてもブワッと滲んだ汚いニュアンスになってしまい、移行期に苦労したのを思い出します。

*おそらく、レタス線のにじみが汚い理由は、トレス線の濃度が完全なベタで、画具に例えると「インクが濃いので、滲み出しが多い」のが原因と考えています。水性の画具を使ったことがある人なら想像しやすいと思いますが、もともとインクの量が多いので、水でぼかした際に溶け出す量も多い‥‥というのと似たようなことでしょう。

 

「トラディショナルスタイル」は原画が5〜6Kで線も細く、階調トレスなので、かなり強い軟調効果をかけても絵が溶けにくい特性を持ちます。

 

以下、かなり強めの軟調効果をかけた状態です。空気感のニュアンス表現目的では過多な軟調表現ですが、テスト目的であえて濃い目に処理しています。それでも、線が太らずに細さが維持され、軟調感だけ追加されているのが見てとれます。

 

*湿気の多そうな過多な軟調効果でも、些細な描線の性質の差が、効果を強くかけた際に大きな差となって表れます。

 

レタスの二値化線に対して上のような大量の軟調効果をかけると、トレス線が鈍く肥大してNGになります。二値化トレスにおいて、大量の軟調効果が必要な場合は「ソフトン」系ではなく「フォギー系」の「明るさだけに反応する軟調効果」を適用して難を逃れます。

 

4K対応の階調トレスは、あえて造語を作るのなら、「スフマートダイナミックレンジ」が広い‥‥とでも言いましょうか。

 

難点は、4Kのモニタで観ることが前提の描線なので、2Kにダウンコンバートすると、線が画像補完で鈍って、やや「腰が抜けた線」になることです。

 

でもまあ、この問題は、社会の主流の移行とともに徐々に「状況の方が変化」していくものなので、さほど深刻なことではなく、「時間が解決してくれる」問題です。

 

 

とは言え、4Kが「線の繊細さ」だけを「売りもの」にするのはもったいないことで、真逆の方向性の、荒々しく筆致がほとばしる描線を緻密にディスプレイに映し出す手段としても有効でしょう。

 

iMac 5Kを買った時に、初めて「ドットバイドット」で鉛筆のラフ画のスキャン画像をみたのですが、かなり良い感じのニュアンスでした。‥‥だからねえ、鉛筆も「鉛筆の描線の真骨頂」を活かす作風の作品なら、実はまだ活躍の機会があるようにも思うのですが、‥‥‥みんな二値化しちゃうから、鉛筆の黒鉛のほとばしりなんて、全部消え失せちゃうんですよネ。

 

 

描線1つとっても、4Kのポテンシャルを導き出すには、様々なノウハウが必要になります。

 

ノウハウはネットを掘っても溜まるものではなく、簡単には蓄積されていきません。‥‥が、実際に扱ってみれば、扱った分だけ蓄積されるものでもあります。

 

旧来のアニメ制作技法を、単にコンピュータに移し替えるだけの取り組みは、なんの新しさも広がりもなく、旧来の限界すら継承することになるやも知れません。

 

4Kは2Kではない。60pは30pや24pではない。HDRはSDRではない。‥‥恐ろしく簡単な新旧の違いに目を伏せ、昔のままを踏襲することだけに終始する未来は、なんとも味気なく絶望的なことよ。

 

新しい広いキャンバスには、新しい大きなビジョンを描きたいじゃないですか。

 

 



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