4Kへの歩み(2)「紙と高解像度のジレンマ」

2019年現在でもアニメ業界の制作現場は紙と鉛筆が主流です。しかし、フィルムと同様、やがてタブレットへの転換・移行は必至です。‥‥なぜ、そんなふうに「言い切れる」かというと、社会の映像技術・映像フォーマットに紙と鉛筆では対応できなくなるからです。

 

「ここへ来て、急に? 今までずっと紙と鉛筆で描いてきたのに?」

 

‥‥と思うのも無理はないです。特にアニメーターでベテランの人はそう思う方も多いでしょう。あまりにも紙の時代は長かったです。

 

でも、実は過去に何度も、アニメーターに直接的な環境変化が及ばなくても、社会の映像技術進化に合わせて、アニメ業界の映像技術も大きく変化してきました。実際、原画や動画の描き方に「社会の技術変化」の影響が出ているのを、何となくでも感じているアニメーターは多いのではないでしょうか。

 

1980年代と2010年代のアニメの絵柄、特に線画の内容はどのように変わったか。

 

「アニメに高解像度なんて必要ない」‥‥なんて言う人もいますが、それならば、Video CDのフォーマットの汚い画質(0.5K以下)で今でもアニメをご覧になれば良いのです。ちゃっかり、地上アナログ時代のD1(720x486)より格段に高解像度なHDで納品されたアニメ(=たとえ1.5Kからのアップコンであっても)を日頃見ておきながら、「高解像度なんて無用」だなんて無知の無知にもほどがあります。

 

テレビのアニメは、1990年代までは、16ミリフィルム、縦480本程度の低解像度のテレシネ、地上アナログ波、録画するのはVHS、しかも3倍モードなんていう今考えるとあまりにも低すぎる画質で録画して見ていました。

 

 

今は、1.5K前後の中間素材、2K/HDサイズでのフィニッシュ、地上デジタル波、録画するのはBlu-rayの2K/HD、6〜8Mbps録画モードの画質でもVHS3倍モードよるも遥かに綺麗な画質で、深夜のテレビアニメ枠を観たり録画したりしますよネ。

 

全然普遍ではないのです。常に変化しています。アニメ業界の技術も機材も環境も、社会の変化に合わせて、段階的に変化しています。

 

フィルム撮影台、セル用紙、セル絵具はアニメ業界の制作現場から完全消滅したと言っても過言ではありません。アニメーターは変化の実質を知らぬがゆえに実感しにくいだけで、アニメ制作技術は10年前後の周期で常に大きく変動してきたのです。

 

紙と鉛筆は、最後の「変化に取り残された工程」です。未来も永遠に変わらぬ、普遍の工程ではありません。

 

 

 

紙と鉛筆は4K放送、4KHDRテレビ、4Kネット配信に、基本性能として対応できません。なぜかと言うと、

 

「用紙」がA4サイズでは小さいので拡大すると絵が粗くなり、加えて、鉛筆の先端を尖らせるにも限界があるので、やはり絵が粗くなる

 

‥‥という深刻な理由があります。そのあたりは、前回の「4Kへの歩み(1)「iMac 5Kの2014年」」で書きました。

 

「絵描きの人間の精神論」でどうこうなる問題ではないのです。単純に物理的な限界が立ちはだかるのです。

 

「スキャン解像度を上げれば良いんじゃないか?」

 

‥‥と思う人はそれなりに多いでしょう。そう考えてしまう人のほとんどは、実際にスキャン解像度を300〜400dpiに設定してスキャンして二値化してスムージングした結果を検証したことがない人でしょう。つまり、想像、憶測だけで留まり、実践はしていないので「解像度を上げればなんとかなる」と考えがちです。

 

解像度を上げれば、4Kに見合う絵の細かさになる‥‥なんてことはないのです。375dpiでスキャンして描線の入り抜きの部分が多少繊細になっても、元の絵がA4用紙で描かれたものならば、絵の詳細感はほとんどアップしないことを、実際に試してみればお判りになると思います。

 

以下、拡大して判りやすくした図です。線の実寸は、A4用紙のほうは2cmくらいの長さです。A3用紙はその倍の4cmくらいの長さです。

 

A4用紙に描いた細い線の交差を、375dpiでスキャンして二値化&定型処理した拡大図

紙の繊維とカーボンの粒子の限界が、線のアウトラインのデコボコとなって表れる。

 

A3用紙に描いた細い線の交差を、188dpiでスキャンして二値化&定型処理した拡大図

線の太さは同じでも、大きい紙に描くことで相対的に縮小されて、デコボコが少なく抑えられる。

 

私が2014年にiMac 5Kを自宅に導入した後も、紙と鉛筆の限界は「あまりにも大きな障害」でした。大げさな話では全くなく、「運用不能」とさえ思いました。

 

かろうじて「カットアウト目的」ならば、大きな用紙で描いて、相対的に絵を小さくする方法で乗り切れる「可能性」はありました。しかし、何千何万と作画枚数を描く旧来の技術では、紙と鉛筆の高解像度化は「ハナからお話にならない問題外」とジャッジせざる得ませんでした。

 

26cmのレイアウト用紙幅を、4KUHD(3840px)に対応させるには、375dpiが必要だが、絵は決して詳細にはならない。単に鉛筆線の生々しさが増すだけで、しかも鉛筆のニュアンスは二値化でフラットに除去するので、全く意味がない。

52cmのレイアウト用紙幅なら、半分の188dpiで4KUHDに対応できるが、あまりにも用紙が大きすぎる。その巨大なスタンダードサイズの作画を、200〜400円代の動画単価で運用するのは実質不可能。

いずれの場合も、動画だけでなく、彩色のスキャンとゴミ取りなどの整形も格段に手間がかかるようになり、恐ろしくコスト(金と時間と人手)が増大するのは不可避。

 

 

まさに‥‥‥‥

 

進退窮まる

 

‥‥とは、このことです。

 

今までの用紙サイズでは、どんなに高解像度でスキャンしても、4Kに見合う詳細感は向上しない。

 

用紙サイズを2倍にすると、制作運用と作業自体が困難になる。

 

紙に変わる液晶タブレットは、出現していない

 

板状のタブレットは、紙とは異質過ぎて馴染めない人が続出する

 

これは転じて、「究極の選択」を突きつけられたのと同じです。

 

社会の変化、時代の移行、技術の進化に対して、背を向けるか、否か。

 

目的が、「昔、アニメという産業があって、テレビの発達とともに、アニメも花開いたんだよ」と「博物館入り」なら、背を向けて立ち止まっても良いでしょう。博物館に「昔の産業扱い」で陳列されて展示されるのなら、どんなに古めかしくても、現代社会と乖離していても問題はありません。

 

でも、それはアニメ制作の死を意味します。もう未来はないということです。生命活動や代謝が停止して、屍を晒す存在になるということです。

 

 

 

紙でしか線画を描けない現実に対して、行き詰まっていました。iMacの5Kのモニタが目の前にあっても、それをフットワーク軽く活用できないのです。

 

そんな時、まさかのiPad ProとApple Pencilが、2015年の秋に突如発売されました。

 

前回の繰り返しになりますが‥‥

 

なにそれ〜〜〜〜〜!!!!

 

なんというタイミングの良さ。

 

正直、あまりにもタイミングが良過ぎて出来過ぎていて、気味が悪くすら感じたものです。

 

シンクロニシティにもほどがある

 

‥‥と思いました。とはいえ、これで、

 

紙問題が解決できるかも

 

‥‥と思いました。プロ品質の要求に耐えうるiOSのドローソフトが存在すれば、紙から抜け出て、最初から高解像度画像サイズで、Apple Pencilで描けばほとんどの障害を払拭できると感じました。

 

iMac 5Kの4年ローンを抱えたまま、iPad Pro 12.9インチとApple Pencilを注文開始と同時にAppleストアで注文しました。

 

当時の伝票がコレ。

 

 

 

注文開始と同時にローンを申込んだ(手数料無料の24回にした記憶があります)ので、日本でのリアルな発売の日時が確認できます。Apple Pencilは注文殺到だか生産が追いつかずだかで、速攻で注文したのに、すでに5週待ちになっております。‥‥今にして思えば、Apple Pencilだけ即金(代引きなど)で買えば良かったのです。Apple Pencilまで一緒にローンなんて組まずにネ。

 

 

 

こういう「雌雄を決する」場面で躊躇は禁物。

 

Veni, vidi, vici

 

「来た、見た、勝った」と訳されるローマの言葉(日本語訳だとVの韻を踏んでないですが)、わたし的には、iMac 5KもiPad ProもApple Pencilも、

 

来た、見た、買った

 

‥‥です。ダジャレですみませんが、実際、

 

来るべき時にソレが来た、ソレが何かを見てジャッジした、即決でソレを買って導入してすぐに実践を開始した

 

‥‥ということです。未来に勝つために、今買うわけです。お金は使う時に使う、ビジネスとクリエイティブの「ブリッツクリーク」です。

 

まさにその通りで、12月にApple Pencilが届いてから、翌年の2016年の2〜3月くらいには早速iPad Proでプロ仕事を開始しました。1〜2ヶ月もあればApple Pencilには馴染めました。以前の液タブの描きにくさが冗談だったかのように、Apple PencilとiPad Proの組み合わせは「描ける機材」でした。

 

お金。

 

ダラダラズルズルと「後動検」とか「仮本撮」とか「複合組み」とか状況を悪くするためにお金を使う現場もありましょうが、未来を確実に勝ちに行くためのお金の使い方も必要なんですヨ。日本人は先見性にほとほと弱い国民性ではありますが(日和見気質と集団イジメ体質が原因かな?)、全員が全員、弱いわけじゃないでしょう。

 

 

 

では、iPad Pro 12.9インチとApple Pencilで何が劇的に変わったのか。

 

4Kが決して不可能な領域ではなくなったのが、iPad Pro 12.9インチとApple Pencil導入後の流れです。

 

A3用紙の大きな紙で188dpiでスキャンして二値化&定型処理した線と、iPad ProとApple Pencilで描いた生粋の線との違いは、あまりにも明白です。A4用紙の375dpiと比べるとさらに違いが顕著です。

 

大きく拡大しているので両方とも絵の粗さが出ていますが、粗さの質が違うことに注目しましょう。

 

さらには、iPadはこの線を運用可能にするまで10秒とかかりませんが、A4用紙の方は、紙に描いて、375dpiでスキャンして、余計に増えたゴミ取りをして‥‥と、比べ物にならないくらい手間と時間(=金)がかかります。「実を取る」のに、段取りが多すぎるのが紙、ストレートなのがiPadをはじめとしたタブレットです。

 

ちなみに、iPadでは故意に描線のアウトラインをデコボコにして、左図のA4用紙風の線すら、プリセットを変えるだけで描くことができます。ストロークのテクスチャをアニメートできるドローソフトもあるくらいです。‥‥おそるべし、iPadとApple Pencil、そしてiOSのドローソフトの数々。

 

紙に頼らないことで、4K時代のアニメ制作は初めて可能になることを、しっかりと再認識した2015年でした。

 

そのあたりを、次回に書きたいと思います。

 

 


4Kへの歩み(1)「iMac 5Kの2014年」

4KHDRの情報が徐々に公開されています。4Kでアニメを作るというのは、ぶっちゃけ並大抵なことではありません。簡単に作れるのなら、皆で今頃、作りまくっているでしょうしネ。4Kはおろか、2Kのドットバイドットでも危うい、日本のアニメ業界。

 

4KHDRをプロダクションで制作するまでに、どんな過程があったのか。

 

決してお膳立てが揃ってなくても、自主的にでも、4K時代を見据えた取り組みは可能なんですよ‥‥と伝えたくて、何回かに分けて、記事を書こうと思います。

 

私が「4Kを始めよう」と決意したのは、2014年に入った頃でした。当時、私の自宅の機材は、Mac mini / i7 / 16GBメモリで、2Kをやるには充分でしたが、モニタは1920pxのいわゆる2KのHDサイズで、4KのUHDサイズを等倍(ドットバイドット)で映し出す場合は部分的(1/4の面積)にしか表示できない痛烈な制限がありました。

 

Mac mini本体も、4Kをまともに映し出すビデオ性能ではなく、さらにはタブレットは板タブで20年近く馴染めず、当時私が手にできた液タブは2Kに満たない1.6K前後のモデルでした。

 

なので、2014年当時は4Kの線画を紙で描きました。しかしA4サイズはいかにも小さく、4Kドットバイドットでスキャンするには375dpiになり(レイアウトフレームの横幅が26cmとして)、単に鉛筆や紙の粒子や繊維を克明にスキャンするだけで、4Kらしさ=精細感とは言い難い状態でした。

 

そこで、すでに2000年代からカットアウトを研究していたこともあり、カットアウトなら分割作画でもいけそうだと目測をたてました。A4用紙で分割して作画して、スキャン後に合体させる方法を採りました。

 

手順は非常に手間のかかるもので、

 

  1. A4用紙で全体を作画(清書前の状態)
  2. スキャンしてデータ化
  3. Photoshopで分割作画用に大判化と分割処理
  4. A4用紙にPhotoshopから分割したごとにプリントアウト
  5. A4用紙で分割ごとに清書し、A3〜A2相当の原稿サイズを確保
  6. 分割清書したA4用紙をスキャンしてデータ化
  7. Photoshopでごみ取りなどしつつ、分割して読み込んだファイルを合体
  8. カットアウト用の4Kドットバイドットの線画が完成

 

‥‥のような、「うげげ‥‥」と思うような段取りですが、まさかA2用紙を常用して描くわけにもいきません。そもそも私の自宅にA2などイッパツでスキャンするスキャナーなどありません。私の所有するスキャナは普通のA4サイズです。

 

紙本体にしても、A2はもちろん、A3の用紙ですら、ちょっと傾けただけで机からはみ出して絵などまともに描けたものではないです。アニメの線画は、油絵や一点ものの水彩イラストを描くのとは事情が異なります。

 

大きい紙に1枚で描くよりも、A4用紙で分割作画してスキャンすることで、ようやく「4Kにふさわしい」サイズの線画を紙ベースで実現しました。

 

巨大な大判用紙のスキャンの大変さは、解る人は解ると思います。結果物が同じでも、A4分割のほうが取り回しは良いです。

 

とはいえ‥‥

 

これは‥‥相当に手間のかかることだ‥‥。カットアウトならまだしも、従来の何千何万枚単位の作業で、紙を用いることは実質不可能だ‥‥。

 

‥‥と実感したものです。‥‥というか、誰でもそう思いますよネ。A2やA3が標準フレームだったら何千枚なんて無理過ぎますもんネ。

 

加えて、苦労して描き上げた線画を、等倍(ドットバイドット)で全体を見渡せない‥‥という、Mac mini&2Kモニタの厳しい制限がありました。そこはどうにも解決できないフラストレーションとしてくすぶっていました。

 

何度もこのブログで引き合いに出していますが、まさに2014年当時に4K&カットアウト目的のテストで作ったのが、以下の女の子の絵です。クリックすると、別ウィンドウで絵だけ表示されますので、等倍で見ていただくと、鉛筆線のナマの質感がお分かりになると思います。

 

*今見ると、ゴミ消しや線の継ぎ足しが粗いです。鉛筆線のニュアンスは思った通りの感じです。

*2014年当時のMac miniでも出来たんです。2019年の今、1枚絵を描くくらいのテストができない理由はそんなにない‥‥はずです。

 

 

ちなみに、2014年当時は(いや、今でも?)「萌え系」のキャラがアニメの作風を席巻していましたが、なぜ素直に流行に合わせて「萌え系」のキャラを描かないか‥‥というのは、みんながやっているのなら得意な人たちにまかせて、私は別の路線〜トラディショナルな日本画を思わせる作風でやってみようと思ったからです。日本人のティーンの女の子・男の子キャラに、日本画の繊細な表現は相性が良いと考えました。

 

当時話題になっていたベビメタ(あたたたたーた、ずっきゅん、どっきゅんの)の女の子のスナップをWebで見ながら、もちろんそのまま似顔絵にはしませんが、私の好きな上村松園の日本画をイメージしつつ、4Kで可能と思われる詳細な描写を目指しました。簡略しつつ繊細である‥‥という私の好きな古今の日本画に触発されております。習慣的にアニメ絵を描くのではなく、もっと他の表現を試すべきと思いました。

 

日本は特に‥‥かも知れませんが、流行に対して暗黙のナショナリズムみたいなのが蔓延して、最近だと新海誠監督作品風の絵がもてはやされてると聞きます。しかし、新海誠作品のもつ独自の色彩感〜人間の記憶色ともいうべき隅々までの色彩が溢れた瑞々しい作品表現は、新海誠さんの真骨頂であり新海作品本家が作れば良いのです。思うに新海誠作品のあの色彩感・作品表現は、新海誠さんが周囲の色々にめげずに追い求めて、それこそ20年スパンの結晶とも思います。

 

アニメといえど絵画の表現ですから、表現者・絵描きの各人は流行に合わせてうわべだけマネして日和るのではなく、作品独自の表現を追求したい‥‥ですよネ。まあ、仕事は仕事として日々こなすとして、いつか大成させたい表現は秘めていたいものです。様々な美意識があってこそ、作品表現も様々に広がって豊かになると思うのです。日本のアニメの特徴を1種類に統合する必要は感じません。

 

 

 

話を4Kに戻して。

 

2014年当時はMac miniということもあり、上図の絵を一枚、4K仕様で作業するにも手間と時間がかかりました。線画以降はAfter Effectsでペイントし(自分で塗ったので)、レンダリングして絵を出力しました。

 

気負い過ぎて、4Kどころの解像度ではなく、6Kくらいの寸法になってしまったコンポ設定はこちら。

 

*ビットマップベースのカットアウトでは、拡大した時に線が荒れないように、大きめで作ることが多いのですが、ちょっと大きく作り過ぎた感はあります。ベクターベースのカットアウトは、結局はToon Boomと出会う今年(2019年)まで棚上げとなるのでした。

*この記事のためにCC2019で再出力した際のスクリーンショットです。2014年当時はすでにAdobe CCが運用開始されていて、ようやく個人規模でも全てのAdobe製品を最新版で維持することが可能になっていました。

 

 

1枚の出力に、2分くらいかかりました。最新のマシンだと1分くらいにはなるとは思います。

 

前述の通り、レンダリングした絵が等倍でリアルに見渡せないのは、せっかく作ったのになあ‥‥と、少し心が折れました。

 

だ、が、し・か・し。

 

まさに2014年の当時、秋にiMac 5Kが突如発売されました。

 

なにそれ〜〜〜〜〜!!!!

 

なんというタイミングの良さ。

 

もちろん、すぐに飛びつきました。お金はなかったので、4年の分割払いにしました。分割手数料は中々のもんでしたが、「戦時公債」と思って呑みました。

 

届いたiMac 5Kで、はじめて前掲の女の子の絵を表示したら、

 

2Kモニタとは全然違う

 

粒だちが違う

 

何もかもがクリアに繊細に映し出されている

 

‥‥と、完全に新時代の解像度に魅了されました。

 

他の300dpiでスキャンした線画も、iMac 5Kで見ましたが、

 

こんなに鉛筆の線って、繊細で躍動的で、チカラに溢れていたのか

 

‥‥と思いました。私だけでなく、高解像度のドットバイドットの世界を、色んな友人・知人のアニメーターさんに知ってほしいと素直に思いました

 

5KのiMacに見慣れた後ですと、2Kや2.5Kのモニタはみなボケて見えます。良い悪いの価値観ではなく、単純に画素密度の差としかいいようがありません。

 

今まで絵描き、特にスキャンに頼っていた絵描きは、モニタの低密度画面に「騙され続けていた」と思いました。‥‥いえいえ、逆恨みはしません。時代の技術ゆえのことですから。

 

*現行モデルを買うなら、中堅の3.1GHzモデルより上が良いです。一番下の3.0GHzモデルは色々とショボいので(メモリの上限が32GB)、中堅モデル以上の「64GBメモリに将来増設」を見込んで買うのがお得です。メモリはほんとに、足りなくなるから‥‥。すぐに増設しなくても、増設の余地は残しておくのが良いです。

 

 

こういうのを、シンクロニシティと言うんだな

 

‥‥としみじみ思いました。

 

必要な時に、なぜか、必要なものが現れる。

 

2014年の当時だけではないです。今まで私が体験した数々のターニングポイントにおいて、時代はいつも「助けて」くれました。もちろん、時代に「辛く当たられる」こともありますが、良い時期も悪い時期も含めて、時間は大きくうねって流れていくんだと感じます。

 

 

 

そして、今は2019年。

 

4Kで絵を描くこと自体は、大きくハードルが下がりました。学生さんでもiPadで絵を描く時代です。目の前にはiMac 5Kや4Kモニタがあります。6万円くらいで4Kで「HDR受け入れ可能」なモニタも売っています。

*「HDR受け入れ可能」とは、本体では細かくHDRの設定をカスタムできない「信号依存」のモニタ製品です。PQ1000nitsシミュレーションなどができるモニタはまだまだ高くて60万円くらいします。

 

新技術開発のプロジェクトは、ひたすらクチを開けて雛鳥みたいに待っているだけで、進行するものではありません。

 

新しい何かは、自分で、自分たちで、能動的に自発的に動かしていくものです。

 

ですから、4Kも、いくらでも自分の意思で研究は開始できます。2019年の今なら、なおさら。

 

ただ待つばかりで、世間話や噂話をしたところで、プロジェクトは何も始まりません。

 

物事は、動かさなければ動かない。動かせば動く。ただそれだけです。

 

実が伴わないと、話だけが一人歩きして肥大化する傾向はあります。噂や憶測の雑談だけに時間を費やすのではなく、実際に4Kで絵を描いて取り回してみれば、色々と手応えを得られるものです。

 

 

 

4Kなどアニメは不要‥‥というセリフも昔から聞きます。

 

考え方が違います。アニメに対して4Kがどうこう‥‥ではなく、世界の映像技術の標準が4Kやその次の技術へと移り変わっていく社会で、アニメ制作産業がどのように生き残りをかけるのか?‥‥ということです。4Kや8Kの時代に移り変わっても、アニメが魅力を放ち続け、現代性も獲得するには、どうすれば良いかです。アニメ産業自体が歴史博物館入りするのではなく、です。

 

2020年代は1.5Kのまま、2030年代も2040年代も1.5K‥‥でしょうか。

 

解像度が大きくなるということは、絵の内容も変わることだと、アニメ業界はハイビジョン地デジ化の際に学んだはずです。もっと遡れば、16ミリフィルムが消滅した際にも学んでいるはずです。

 

なぜ、その学びを、4KHDR時代に活かせないのでしょうか。

 

なぜ、一部の人々は、毎度毎度同じようなことを延々と学習能力欠如で言い続けるのか。

 

日本人は環境の変化に対して、順応力が高いうえに、さらに発達させる能力が秀でていると思います。しかし、その順応力と発達能力はいつも「後手」で発揮されます。ゆえにレッドオーシャンばかりで泳ぎ続けます。

 

たまには、先手でいきましょうよ。決して出来ないことではないはずです。

 

4Kの絵を描いてみるのは、すぐにでも出来ます。2014年に出来たことが、機材が進化した現在にできないわけがないです。

 

やるかやらないかは、当人次第です。

 

 

 

2014年の翌年、2015年には、いよいよiPad Proが新発売されます。まさに、シンクロニシティそのものです。

 

苦労してきた紙のデータ化において、2015年のiPad Proの登場によって終止符を打つ時が来ました。スキャナーを使うのは、年に数回程度‥‥という日常へと変わったのが、2015年の秋でした。

 

というのを、次回に書きます。

 

 

 

 

 


HDR

4KHDRの制作に集中するようになって、改めて、HDR PQ1000のパワーにたじろいでおります。今までの100nitsのsRGB/Rec.709とは桁違いの色域の広さと輝度のレンジ、加えてPQカーブというピーキーな特性を前にして、いわゆる「パワーを制御するアクセルワーク」1つ1つを見直す毎日です。

 

*Rec709とPQ1000を切り替えながら作業します。PQ1000の白は目が焼かれるほどに眩しいので、色を見る時以外は、709にプリセットを変えます。

 

 

映像の解像度にSDとHDがあるように、SDRにはHDRがあって、HDRはその「H」が示すように従来のSDRよりも「High」なダイナミックレンジ「DR」を有します。その差は、3倍から10倍で、私ら作業グループが取り組んでいるのは従来の10倍の1000nits(千ニッツ)のアニメーション映像です。

 

現在、アニメ業界で作るアニメの99%以上は、SDRです。HDRを絵作りのゼロ時点から導入するには、何よりもまず、HDRの作業モニタが必要ですが、そのモニタをアニメ制作現場のほとんど全てが設置してないので、そもそも作れる状況にないのです。

 

むしろ、会議室の4Kテレビのほうが、HDRで500nitsだったりします。

 

今、アニメ業界では「デジタル作画」でモヤモヤ騒ぎ始めていますが、HDRには全く言って良いほど無関心です。しかし、世間で言えば、アニメ業界のデジタル作画なんて「業界の内部事情」に過ぎず、4KとHDRのほうが広く一般に注目されています。

 

現在、アニメ作品で「HDR」として出回る作品は、「後付けのHDR」です。レンジの広いフィルム作品ならまだHDRの特性も活きますが、フィルムよりもレンジが狭いsRGB・Rec.709でデータを作ってしまったSDRのアニメを、グレーディングでHDRっぽい映像演出を加味して成立させている状態に甘んじています。

 

 

 

生粋のHDRで作るアニメ。

 

後付けではない、正真正銘のHDRネイティブなアニメ。

 

私らが取り組んでいるのは、まさにソレです。

 

今までの色の扱いとは全く異なる、P3-DCIで1000nitsでPQカーブの「色の世界」で映像を表現して完成させることが求められます。必要な要件は以下の通りです。

 

  • 各色10bit以上、できれば12bitで、300〜1000nitsのHDRモニタ
  • 各色10bit以上、できれば12bitのムービーファイル形式
  • 各色16bitのPSDかTIFFの連番
  • ビデオ信号を正確に扱うソフトウェアとビデオ出力
  • 適切なモニタ色校正(PQカーブを正確に映し出すための定期的なモニタ調整)

 

さらっと書いていますが、このハードルは相当に高く厳しいです。アニメ業界では、モニタは今でも8bitで100nitsのものが多いでしょうし、今でも使われるQuickTimeのロスレス圧縮(アニメーション圧縮)はそもそも8bitですし、いまどき連番ファイルを使うなんて嫌がる人も多いでしょうし、ソフトウェアごとの色の変化を測定して検証することなんてしないでしょうし、こうした多くのことを理解する作業スタッフもメンテナンススタッフも今はまだ現場には皆無に等しいでしょう。

 

作画の現場で紙と鉛筆をタブレットとコンピュータに移行するのと全く同じレベルで、美術や仕上げや撮影の「色関連」作業もHDR時代には大変動を余儀なくされます。

 

例えば、作業モニタにおいては、現在の私ら作業グループでは、デュアル作業モニタの片方をEIZOのCG-318および319にして、HDR映像制作作業を進めていますが、このモニタの導入には相当苦労しました。普通のアニメ制作現場ではあり得ないスペックとお値段ですからね‥‥。

 

 

正直、人数分の導入には相当お金がかかります。しかし、5〜10万円の廉価なHDRモニタは、細かい調整が手動でできない上に、外部から映像と一緒に送信されるメタ情報(「この映像信号はHDR10です、Dolby Visionです」という情報など)がないと特定のHDR機能が使えないものが多いのです。いくら安くても、役に立たないものを買うのは意味がないですよネ。‥‥実は、現時点で4KHDRを作ろうと思ったら、EIZO CG-319Xが妥当な選択肢なのです。

*「マスモニ」をどうするかは、また別の話です。マスモニクラスはSONYEIZOも‥‥‥高いよお‥‥。

 

作業スタッフと同じ重要度で、システムメンテナンス・エンジニアのスタッフの存在も重要です。現場の作業スタッフだけでどうこうなる技術内容ではありません。システムスタッフも映像を作っていく仲間として、共に技術知識をHDR時代へと更新していく必要があります。作業スタッフがシステムを理解する重要性と等しく、システムスタッフが作品表現技術を理解するのも重要なのです。

 

 

 

おそらく、HDR時代の機材基準・環境基準を前に、アニメ制作会社の多くは困難な状況と直面するでしょう。HDRの仕事を請け負いたくても、機材環境とそれを扱うスタッフが存在しない状況は、容易に想像できます。

 

それによって、淘汰が発生することも考えられます。時代の流れに対応できない会社は、会社を畳む‥‥という状況。

 

でも私は、それでも良いと思っています。なぜなら、「古くて安い機材でもアニメで商売できる」という性根の集団を掃討できれば、業界にはびこる「安普請根性」を正して、「技術に対する相応の対価」の意識が高まる可能性があるからです。

 

「安普請根性」が現場や業界に蔓延しているうちは、皆が一蓮托生、安普請に巻き込まれることになります。

 

そうした意味で、映像の中身もさることながら、現場の意識が強制的にでも改善されないと成り立たない=安普請では対応できないHDR映像制作は、未来の現場の試金石とも思えてきます。

 

我々アニメ制作に関わる人間は、アニメを作る人でもありますが、それ以上に映像を作るプロでもあります。その意識は今後、アニメーターに特に必要になりましょう。線画だけの世界に没頭しているからこそ、全体の安普請構造を客観視できず、高度な技術を持つわりに騙されやすい体質に陥るんだと思います。アニメーターが安い単価で仕事をする一方で、アニメーター自身ができるだけ安く機材(ソフトやハード)を買い叩こうとしたり無料で使い続けようとする姿をみると、根こそぎのトータルリコール・仕切り直しが必要なんだと痛感します。

 

世界規模の映像技術の中での、自分たちの工程、技術、経験と知識の「存在意義」を考えていきましょう。「アニメ村」の視点に終始せず、自分の作業部屋を通過して、世界の映像技術フィールドを見据えるように意識しましょう。

 

 

 

HDRは困難も多いですが、希望も多いです。

 

それに、そもそも、HDRは絵作りが楽しいです。今までのヌルい「SDR100nits村」から抜け出して、格段に広い視野をHDR1000nitsはアニメに与えてくれます。アニメーション映像表現の海の向こうに新大陸が現れた‥‥と言っても言い過ぎではないです。

 

HDRなんて何のことやらサッパリ‥‥という人でも、時代が進むうちに馴染んで普通に受け入れることでしょう。その時に、私らは「生粋HDRの美しいアニメ」を既に作れる体制を築いておきたいです。

 

絵としての美しさを発揮できるのは、過去機材性能の妥協の産物であるSDRではなく、HDRです。

 

映像表現主導で考えれば、HDRを拒否する理由なんて、どこにも見当たりません。

 

 

 


Webの復活

最近、「マイホームページ」は全然流行らなくなって久しいですネ。まあ、そりゃ、blogの方が簡単、twitterはもっと簡単、しかも伝播する速度も桁違いに速い‥‥となれば、「ホームページ」‥‥いわゆる自己運営のWebサービスが不人気なのも当然といえば当然。Webを作るのは最低限の知識(ディレクトリの構造とか)が必要ですが、blogやtwitterはスマホが使える程度のレベルで知識は不要。Webサーバーを(レンタルといえども)立ち上げるほどの「ある程度勉強しないと覚えられない知識」は不要ですもんネ。

 

私もこうしてblogだけになって久しいですが、blogにもtwitterにも不可能なことがあると日頃から痛感しています。それは体系だったコンテンツです。

 

ツイートのまとめは単なるまとめ。纏めて読めるだけで、決して体系を成しているとは言えません。ブログの記事にカテゴリーのタグ付けしても、単にタグが付いているだけで、やはり体系とは言えません。

 

自分の意図した通りに体系を組み立てたコンテンツを作るには、やはりWebサービスによるハイパーテキストが適しています。もちろん、ブログやツイッターのような軽快性は持ち得ませんが、その逆、つまり重厚で読み応えのある技術指南書・解説書はWebが今でも適していると感じます。ブログは記事を書けば、前の記事はどんどん過去に追いやられるし、ツイッターは文字化した小鳥のさえずりのごとく、揮発してどこかへ消えます。

 

技術を体系立てて解説するには、このブログでは不可能。ツイッターではもっと不可能。

 

なので、またWebの復活を目論んでいます。同時に電子書籍にも著そうとも考えています。

 

 

何度もこのブログで書いてきたことですが、もはや機材的なハンデは、少なくとも 4K 24p SDRであれば、プロもアマも全く同質です。アニメ会社だろうが、60万もする300nits PQ対応のモニタはポンポン買えるわけではないですし、アマチュアや個人活動でも4Kサイズのキャンバスで綺麗に整った絵を描くことは可能です。つまり、機材的なハンデや長所は同じです。

 

意外と知られていないかも知れませんが、アニメ会社は高い機材を思うように買えません。安い機材で実は凌いでいるのです。Adobe製品がCS6で止まっている理由は、「機材が更新できない」「バージョンアップの費用を捻出できない」「プラグインの更新の問題」など、結局「金の問題」です。金があれば、すべての会社が皆CCにしてますって。

 

会議室にショボい「何かのオマケでくっついてきた小型PCスピーカー」が置いてあったら、それがまさにその会社の「姿を表している」と思って良いでしょう。会議室って、会社の性質がモロに表れますよネ。一見小綺麗でも、設置している機材で舞台裏は透けてみえますしネ。

 

なので、アマチュアとプロの差は、個人の技術力と経験値の差です。機材の差ではないです。個人の方が会社より、新しく充実した環境であるケースもあるでしょう。

 

ですから、プロが自宅に今どきの環境を最低限でも揃えれば、もはや劇場クラスと同等の画質のアニメーション映像も作れるのです。‥‥いや、いまだに2Kで足踏みしているのがアニメ会社の現状ですから、4Kをいち早く個人で実現して、プロ集団たるアニメ制作会社の映像品質を凌駕する内容を、個人の著作物として具現化することも短尺なら可能です。

 

もちろん、1人で何千枚も描いて塗って‥‥なんてできないですよネ。だから「新しいアニメーション技術」が必要なのです。昔取った杵柄はそのまま取って置いて構いませんが、新しい杵と柄も手に入れれば良いのです。

 

‥‥で、そのあたりの「プロ同等の自主アニメを作るための手順と技術」を、Webと電子書籍でまとめようと考えています。

 

 

‥‥‥‥‥もうさ。

 

「大集団ありきじゃないと実現できない」技術書なんていらんだろ???

 

また「同じ穴」にハマるつもりか。

 

もうその穴にハマるのは、懲り懲りなんじゃないの?

 

「アニメはマスゲームじゃないと作れない」なんて時代を引き摺って、思考もどっぷり古いままに浸かりきって、膨大な手間と時間と阿鼻叫喚でアニメ制作を埋め尽くす時代には、明確にピリオドを打つべきと、少なくとも私個人は考えます。

 

こんなんじゃ生きていけない。‥‥なんて思うのなら、理想と目標を掲げて、それに向かって立ち上がらないとさ。

 

理想をもたずして、「だって自分じゃ無理だから」「どうせ変わらないから」と愚痴ばかりに終始する人も、まあ、人生それぞれでしょう。愚痴の掃き溜めにツイッターを利用するのも、個人の自由です。

 

アニメの制作構造に皆が強い限界を感じているのに、その構造から全くもって抜け出せない‥‥って、自分ながら情けない、不甲斐ない、口惜しい‥‥と思いませんか。

 

私は情けない、悔しいと思いましたので、違う方法、脱出の方法を模索し続けて、現在に繋がっています。

 

 

 

この秋に出ると噂されていたMac miniは結局発表されませんでしたが、新型Mac miniにしろ新型Mac Proにしろ、新しい「4K時代合わせ」のマシンが出現し始めた時が、ちょうど良いタイミングです。特に4K対応可能なMac miniは廉価なので(新型は多少高くなると噂されていますが)、個人規模にはうってつけとなるでしょう。

 

新型のMac mini、普及価格の4K HDRモニタ、iPad Pro、Apple Pencil、ProcreateとClip Studio EX、無償版のDaVinci、キーボードとマウス、SSDの増設外付記憶装置、そしてAfter Effectsがあれば、他は何もなくても、自分の技術次第でテレビや劇場のアニメに匹敵する品質が作れるようになります。ぶっちゃけ、切り詰めればPhotoshopすら省けるので(=つまりAfter Effects単品のCC契約でOK)、環境構築費と維持費はバカ高くもなりません。

 

そのあたりの初歩、初期段階を、体系化してまとめて、新しいムーブメントを「作り手側主導」で実現するきっかけをつくりたいと思っています。

 

そのためには、ツイッターやブログじゃダメです。Webがふさわしい。

 

 

 

まさかをWebを「温故知新」と呼ぼうとは、2000年の頃には思いもしませんでしたが、考えてみれば、あと1年ちょいで2020年ですもんネ。

 

ひとまわりしても良い時期かもネ。

 

 

 

 


今年後半に向けて

自然現象のエフェクトは、スケールが大きくなればなるほど、手間がかかるようになります。特に水の類いは、スケールによってフォルムやディテールや振る舞いが大きく変わってきます。

 

まずイメージボード、ショットボードを描いて、エフェクトアニメーションのプランを立てて‥‥のような丁寧な段取りを踏まないと、津波級のエフェクトはまず無理です。もちろん、コンポジットのプランは必須です。作画だけ頑張ってなんとかなる話ではないです。

 

数日で作るにはやはり無理があり、日数=技術やお金を含めたコストがそのまま絵に出てしまう辛辣なジャンルです。特に作業時間の大小は深刻で、作業時間=絵の出来‥‥になりやすいです。やれることはわかっていても、やる時間がなければ、やれないのです。即物的に「具の量」「おかずの量」が変わります。紙と鉛筆で動かそうが、iPadとMacで動かそうが、細かいディテールと動きは、物理的な時間が必要です。

 

まあ、現在のテレビ枠・2K枠ではやりきれなかったことは、4Kの取り組みで雪辱を果たす‥‥という目標にしましょう。

 

 

ちなみに、HEVCの4Kは、ビットレートの大小で細かいディテールが大きく変化する(=溶ける、溶けない)のを、テストで確認しています。現在のインフラの状況を顧みず、画質だけで言えば、4K60pで200Mbps欲しいです。‥‥まあ、今は無理ですネ。時代が来るのを待ちます。でも、200Mbpsあれば、かなりオリジナルの画質に近くなるので、HEVCって凄いですよネ。オリジナルはProResで3000Mbpsですもん。

 

思うに、未来の現場は、ただ単に、絵を描いていれば良い、色を塗っていれば良い‥‥という認識では、技術基盤が大きく進化する未来においては、机上の空論、絵に描いた餅になってしまいます。

 

4K8Kの詳細度・細密画とはどういう特性・ルックなのか、60pになるとどのように絵の動きが変わるのか、転送速度の制限によって絵がどのように劣化していくのか、色々と新しい知識が2020年代中頃から必要になりましょう。特にPQカーブは曲者です。モニタ自体の取り扱いが、今までとは大きく変わってきます。

 

でも、何より4Kの絵が描けること。そこからスタートしなければなりません。2Kのままで良いのなら、2Kのアップコンですべて片付ければ良いのですから。

 

絵描きが4Kの旨味をたっぷりと味わうことで、4K8Kの門は開かれ、先へと進むことができます。それはキャラもメカもエフェクトも同じです。

 

‥‥で、仕事の依頼が来るのを待ってたら、まあ、何も始まらないですよネ。私らだって、何のオーダーもなく、自己開発で2013年に4Kの取り組みをスタートしたから、今に繋がっています。新しい技術に関して言えば、もう10年以上前から「自腹」で取り組んでいます。

 

新しい技術においては、まあ、鶏が先‥‥ですよネ。「新しい技術の卵」を産むのは、今を生きる鶏しかできないもんネ。

 

 

 

今年もあと半年か。‥‥半年しかないのか。

 

やることは山ほどあるわ。

 

 

 


テイスト、ニュアンス。

新しいアニメーション技術においては、必ずしも昔の「線画+ベタ塗り」という作業方式を継承しなくても制作が可能なので、色々な絵のテイスト・ニュアンスが実現できます。

 

私は子供の頃から、いわさきちひろさんの絵に惹かれ続けているので、自然な成り行きで新技術の開発においても「淡彩風」のアニメーション技術をテストしています。以下は数年前に紙で線画を描いてスキャンして(まだiPad Proが発売されてない頃でした)、直にAfter Effectsだけでペイントしてみた「淡彩スタイルのテスト」です。キャラのペイントだけでなく、滲みで表現した背景もゼロからAfter Effectsで作っています。

 

*私だってこーゆー絵も描くんですよ。メカや爆発だけじゃなくてネ。ただまあ、依頼がないだけで。

 

こうした絵本のような絵柄も、新しい技術では4K60pそしてHDRで制作可能です。ちゃんとこのテイストのまま、必要とあらば1秒間60枚(60p)でも120枚(120p)でも動かせます。しかも、極めて少人数で、です。Z軸の動き(振り向き)とかも、もちろん、イケます。

*実のところ、少人数で完結できるからこそ、色々なアニメーション映像スタイルを実践できるのです。延べ作業人数を何十人、何百人と必要とする現在のアニメ制作技術では、ニュアンスの微妙なデザインやスタイルは不可能です。

 

2018年を目前にした今は、上図をテストしていた頃より、「4Kでの絵の作り方」がわかってきたと言いますか、線の扱いや、詳細感の表現も進化しています。より、生っぽい、「描き絵テイスト」を「デジタル」で表現できます。

 

‥‥でもまあ、萌えキャラの勢いが続く現在では、こうした素朴な絵柄、おめめの小さいキャラなど、需要がないだろうな‥‥と思いますし、私も他に積み上げていかねばならない技術が山積みなので、しばらく「淡彩スタイル」は放置しておりました。

 

しかし、久々に「いわさきちひろ美術館」のWebをみたところ、なんと来年2018年はいわさきちひろさんの生誕100年じゃないですか。

 

 

うおー。

 

俄然、火が点きました。

 

 

とはいえ、来年になっても、どうせ、こうした絵柄を動かして見たいなんてオーダーなど、来ようはずもないでしょう。

 

しかし、待ってたって、どうにもなるもんでもないです。私の中で重要な要素となるいわさきちひろさんの100年記念となれば、たとえ自主制作でも、たとえ1分でも、「淡彩風の今どきではない絵柄」で作ってみようかな‥‥とムラムラしております。

 

 

簡単でないのは、承知しております。

 

止め絵として描かれた絵は、当然のことながら、止まった状態で完成されています。動かした途端に雰囲気が壊れてしまいます。

 

ゆえに、動かした時に、ちゃんと「最初からそうだったように」感じられるスタイルの絵であることが必要です。とってつけたような動きじゃダメです。

 

それに、いくら「いわさきちひろさんLOVE」でも、まさか、無断で絵を模写して動かすわけにはいきません。

 

ちゃんと、「憧れ」を「自分のスタイル」へと昇華しなければ、自分の作品の作風とは呼べません。自主制作のオリジナルになるのですから、他人の絵を使うわけにはいかないでしょう。

 

でもまあ、実は、どうやって淡彩をスタイル化すれば良いかは、もうアイデアはあるので、ツールを使って具現化するだけです。今はiMac 5KもiPad Proもあるので、道具に不足はないです。

 

After Effectsは、使い方のアイデア1つで、いくらでも「淡彩風」の表現は可能です。髪の毛1本、指1本ごとに動かすことも可能です。

 

安い省略法ばかり考えずに、After Effectsを真摯に正面から画具として扱えば、これほど、絵を動かすのに万能なツールは他にありません。撮影だけのソフトじゃないのです。

 

 

ちなみに、私は東京のちひろ美術館にも安曇野の美術館にも、両方行ったことがあります。東京に至っては、年間会員になってフリーパスで足繁く通っていた頃もありました。

 

コンピュータのモニタしか見ない毎日を続けると、どんどん視野が狭くなり、感動も薄れ、予定調和の仕事ばかりで打算的な自分になっていきます。

 

たまには、自分のルーツを肉眼で見つめることも必要になりましょう。長い人生だもの。

 

 

とは言うものの、いわさきちひろさんの描く子供たちの絵を真似たところで、今の私には邪心が多くて、描いた自分で「うそっぽい」と引いてしまいます。

 

なので、今の自分が描くに値する題材とテイストで、淡彩風にもチャレンジしてみようと考え中です。

 

 


近くて遠い

導入予定のEIZOの4Kモニタ「CG318-4K」のデモ機で、現在進行中のプロジェクトや過去の4K制作アニメを表示する機会があったのですが、アニメこそ、実は4Kに一番近い(か、2番目)制作技術であると再確認しました。

 

線画のキレ、意図通りの発色、その気になればとことん高詳細に作り込める絵作り。

 

4K8Kはまさに「描いた絵のためにある」のではないかと錯覚するほど、CG318-4Kはあくまで精緻に、作った絵をそのまま表示してくれます。描線の細部まで克明に表示されるさまは、苦労した甲斐があろうというものです。

 

2K制作のままなら今までの2〜2.5Kモニタで十分ですけど、4K以降の映像世界をどんどん開拓していこうと思うのなら、今のところ、CG318-4Kしか選択肢がないのが現状です。他のモニタも色々と探してみたのですが、生粋の4Kを制作するのなら、2017年11月現在は少なくとも、CG318-4Kしか適材が見当たらないんですよね‥‥。

 

でもまあ、4Kモニタにしても4Kテレビにしても、映像データそのもの、絵作りそのものは、何よりも重要です。過去のフィルム作品にしても、2Kスキャンではなく、4Kに応じた再スキャンは必要でしょう。

 

4Kネイティブのアニメ映像は、EIZOのリファレンスモニタ(300万のやつ)でも映し出したことがありますし、レグザの普及機でも映したことがありますが、どれも4Kの高詳細と60pの滑らかなモーションの元データでこそ、ハードウェアの威力を発揮できます。

 

Macと4Kモニタを接続するケーブルによっては、4K24pでしか映らないこともありますが、もはや60pでなく24pであるだけで、「ひと昔前」の映像のように見えるので、すぐに接続異常が解ります。人間の視覚というのは総合的に形成されるらしく、動きが24pに落ちるだけで、絵全体の解像感も低くなったように見えるのです。絵がいきなり「もさっ」とするので、接続のヘルツ数を確認するまでもなく、視認だけで判別できます。

 

今後、映像のプロスタッフだけでなく、一般の人も、徐々に24p/30pと60pの差を「体で覚えて」いくことと思います。現在、家庭のテレビが2Kでも、10年後には普通に4Kでしょうから、応じて、人々のテレビを見る感覚も4K60pに慣らされていくことでしょう。

 

 

 

新しい技術ベースでアニメを作れば、格段に4K60pが現実的になります。iPad Proで4K以上で描けば、いきなり、ドットバイドットで4Kが実現できます。AfterEffectsで動かせば、フレームレートは自由自在で、60pは身近な存在となります。

 

一方、3DCGの関係者の方々からは、今でも2Kフルサイズ(2Kのドットバイドット)がキツイ‥‥なんて話を聞きます。3DCG制作は、そもそもマシンのスペック要求からしてハードです。2DCGの比ではありません。加えて、映像作品として3DCGを用いる場合、より一層の細かい仕込みと作り込みが必要になるようです。ゆえに、3DCGを4K60pでドットバイドットなんて、相当困難だと思われます。

 

同じ手描きベースのアニメとは言え、旧来の現場の維持、旧来のスキームを継承しよう‥‥だなんて話になると、全く逆となって、4K60pに対して一番遠くなります。旧来の技術ベース=A4〜B4程度の用紙と低いスキャン解像度、二値化で太くなりがちな描線、8fpsベースで動くモーション‥‥と、現アニメ業界の現場と4K60pは、まさに水と油、どんなに一生懸命馴染ませようとしても、「分子レベル」で決して結合できません。

 

 

 

アニメは、新技術を用いれば、4K60pなどの未来の映像技術とどんどん距離が近くなっていきますが、旧来技術ですと離れて遠ざかる一方です。同じアニメであっても、全く状況が異なります。真逆と言っても良いです。

 

アニメ制作はその結果物が「絵」なので、モニタにアニメの絵を映し出してみれば、制作技術や制作現場の状況が「絵を介して」映し出されます。

 

‥‥と同時に、自分たちが進むであろうアニメ制作の未来も映し出されます。

 

 

 

平成は2019年で終了‥‥だとか。

 

平成時代にアニメは随分と進化しましたよね。その平成があと二年で終わり、団塊ジュニアのピーク世代(1973年生まれ前後)はアラウンド50になります。

 

平成が終わった後の、新時代のアニメ作りは如何なるものか。

 

あと10年くらいで引退しようと思っている人は、新時代など意識せずとも「今までのやりかたで逃げ切る」ことを考えれば良いのでしょうが、この先、20年、30年、40年とアニメを作っていこうと思う人は、今までのやりかたがどれだけ未来に有効なのかを、目を背けず直視して見据えなければならないでしょう。今までのやりかたが通用しない未来も、しっかりと想定しておくことが寛容です。

 

4Kモニタに自分らの作った映像を映し出して、何も感動することがないのなら、未来の有様もそうである‥‥のでしょう。「4Kテレビに映しても、何も変わらねーじゃん」とがっかりするのなら、がっかりする未来、失望する未来が待ち受けているということです。

 

私は、自分たちで作った4Kネイティブの映像を4Kモニタで映し出すたびに嬉しくなります。例え今は小さなプロジェクトでも、出来栄えに歓喜して、未来に対する自信と確信が1歩ずつ深まるような、新時代のアニメ制作を進めていきたいと思います。

 

 


最近の10万円以下の4Kテレビ

最近の4Kテレビで、以前に制作した4K60pのアニメ映像をMacProから出力して見たんですけど、ちゃんとご家庭のテレビでも4K60pの威力は十分伝わることが確認できました。

 

アップコンではない、正真正銘の4K60pの映像はやっぱり密度もキレも違います。そしてその高品質の映像を、各家庭の10万円以下の4Kテレビで普通に再生できることを、素直に嬉しく思いました。

 

自分で描いたiPad Proの筆致が全部克明に見えます。ちょうど、女優さんの肌の毛穴すら見えてしまうように。

 

私が考えている「描線」は、様々な表情があって然るべき‥‥なので、線のニュアンスの細部まで見える40インチ以上の4Kテレビは、理想がそのままカタチになったようなものです。

 

以前だったら、溶けてしまった極小のディテールも、その気になれば数を数えられるほどに、精緻に映し出します。

 

色彩のニュアンスも良いです。妙に暗部がもさっと潰れることがありません。どんな角度から見ても、色が崩れることもないです。

 

これが実売9万円のテレビなのか‥‥。

 

 

時代はどんどん近づいてきます。望んでいた姿となって。

 

 

思うに、今、4K60pHDR映像制作に一番有利なのは、「2Dアニメーション」と「実写(3DCGの絡まない)」ですね。

 

2Dアニメーションと言っても、現在のアニメ業界のアニメではないです。あくまで、新しい技術で作るアニメです。現在のマシンパワーを持ってすれば、4K60pの作業は重いは重いですが、不可能なことではなく、十分「射程圏内」です。

 

一方、3DCGは、4K60pなんてとても無理‥‥という話を関係者からよく聞きます。恐らく、表現上の技術的な問題よりも、4K対応の精度の問題、そしてマシンパワーの問題が深刻なのだと思います。

 

アニメ業界現状のアニメは、制作技術と制作費の都合上、2K24pが事実上の限界なので、同じアニメと言えど、実は一番、4K60pなどの未来の映像技術に遠い存在です。どんなに「デジタル制作」に切り替えても、映像技術が致命的な遅れを喫しては、未来で相当な苦戦を強いられるでしょう。まさか、2Kアップコンの4Kを「4Kアニメ」として売るわけにはいくまい。まあ、その辺は、「デジタル制作」をやりたい人たちが解決していくしかない問題ですから、私はノータッチ。

 

 

4Kテレビで4K60pのアニメがブロードキャストされるようになれば、それはまさしく「ガラテア」を、お茶の間(ていう言い方も古いですけど)や個人のモニター上に具現化できることになります。

 

60pフルモーションのあまりにも生々しい動き‥‥なのに、それはあくまで作り手の美意識の産物である‥‥という、「描き絵が60pで動く魅力」が、10万円のテレビを通して伝達することができるようになるなんて、「絵に命をふき込みたい人間」からすれば、奇跡の技術進化です。

 

素直に、映像技術&機器メーカーの開発者の人たちに感謝せねば。

 

‥‥まあ、作り手たる私らとしては、浮き足立たずに、地道に線1本、1レイヤー、1フレームにて、具現化していくだけです。

 

 

‥‥で、これだけ書いといて、ナニですが、今回話題に取り上げた9万円のテレビは、東芝の43インチ(だったと思う)の4Kレグザだ‥‥ということ以外は、型番を聞いてなかったです。なんだか、中途半端な紹介ですんまそん。

 

 


プラス要素、付加価値、エコシステム

ごく普通に考えて、同じクオリティの製品なら、昔と同じ値段で買いたいですよネ。自分の身になって考えればわかることです。

 

例えば、ここ10年ほどのアニメ業界は、A4〜B4を150dpi前後で、1秒24コマ2〜3コマ打ちの動き、つまり内部的に1.5〜2Kの8〜12fpsで映像を作っています。

*撮影時には24fpsに丸められます。

 

納品時には2K24pになりますが、その2K24pの作品・商品の価格がいきなり数倍に跳ね上がったら、その商品の受け取られかたや競争力って、どうなるでしょうか。買い手側は、数倍の価格になった価値をどこに見出せば良いのでしょうか。

 

もし2K24pのままで、以前より高い価値を買う側に訴えかけるには、何かしらの付加価値が必要不可欠です。

 

それは制作する会社のブランドイメージであったり、2K24pでもフルモーション&高詳細でとても丁寧に作られていたりとか、とにかく、何かしらの付加価値が必要です。

 

そうでなければ、「なぜ、価格がこんなに高くなったんだ?」と怪訝に思うでしょう。

 

「いや。制作現場の苦境を救うために、今までの異常な価格は訂正したい。」と言ったところで、業界を救うために、業界外の人々が無批判・無条件にお金を多く支払うことなんて、普通に考えて、あり得るわけがないです。品質は以前と変わらないのに、無謀な価格引き上げをおこなおうものなら、単に「顧客」離れを引き起こすだけです。

 

ちゃんと、作品・商品に、「これなら、数倍のお金を支払っても然るべき」と思わせるプラス要素がなければ、お金なんて簡単に増額されるわけがないのです。お金を出す側が、どんなに資金力をもっていても、旧来と同じクオリティのプロダクトに、無条件にお金を増やして支払うわけがありません。

 

要するに、1.5K8fpsの2K24pアップコンの技術価格相場は、もう完全にフィックスしてしまった‥‥と考えておいた方が良いでしょう。1.5Kなり2Kなりで、2コマ3コマ作画を続ける限り、技術の相場が大きく向上することはないのです。

 

 

旧来制作現場については、このへんで。

 

これからは新しい技術関連について、文字数を割きたく思います。

 

 

私はアニメーションの技術屋なので、明確に「アニメの技術=お金=ビジネス」という切っても切り離せない相関関係を常に意識しています。

 

「技術の価格」を意識せずして、ビジネスは成り立ちません。

 

「自分はこんな絵が描ける」というのも技術ではありますが、ここで書きたいのは個人ごとの能力ではなく、制作集団の有する技術の全体像です。

 

計画進行を着々と進めている新しいアニメーション技術においては、いよいよ、4K60fpsが標準仕様となりました。よほどのことがない限り、2K24fpsでは制作しません。4K60p、もしくは4K48pが標準です。

 

なぜかというと、どうせ苦労して作るのなら、2Kや24pでマスターを作るのは「もったいないこと、この上ない」からです。UHDの品質が実現できる技術を有するのに、わざわざ2Kで24pの寝ぼけた解像感にして、何の得があるの?‥‥という話です。

 

多くの枚数=数千数万の絵を描くために、絵をできるだけ簡略化したり、動かす枚数を制限するのは、もはや過去のことです。絵を簡略化して動きを節約したら、4K60pは隙間だらけで持て余しがハンパないです。

 

4K60pは、新しい絵作り、映像作りにこそ、活きてきます。

 

「旧来では非常識とさえ言われるほどの細密な絵」「滑らかな60pフルモーション」「4Kの情報量を活かした密度感のある作品空間表現」「今まで実現不可能と思われていた作風の絵を整然と動かす」「アップコンではなく、正真正銘4K60pの精緻な映像」などの、新しいプラス要素を何層にも用意しています。

 

今までのアニメ技術の作風を模倣・継承しても、付加価値やプラス要素はほとんどアピールできません。今までできなかったことを実現するから、「品質の違い=価格の違い」を感じ取ってもらえるのです。

 

 

絵を動かしてアニメーション映像として完成させるには、とにもかくにも、技術を有した人間たちが必要です。そこは全く誤魔化さずに主張すべき基本原理です。

 

ですから、技術を持った人間たちの働き方が、制作技術の価格算出の出発点となります。私は1分あたりのコストに対し、数十万から数百万までのスケーリングを考えていますが、それは旧来の人海戦術スタイルではなく少人数工房スタイルで、ワークグループネットワークありきで算出されます。

 

お金のことはあまりここでは書けませんが、新しい技術に関わる人間たちには、然るべき新しい生活基盤が必要です。過去のアニメ業界の因習はシャットアウトしなければなりません。「20時間、作業貫徹すれば何とか間に合う」なんていう生活ありきで、どうして、新時代の基盤が形成できましょうか。

 

要は「エコシステム」、新しい「生態系」です。

 

旧来アニメ現場の労働の軸上に、決して新しいエコシステムは作られるべきではないと、強く決心しています。

 

新しいアニメーション技術は、新しいエコシステムで育まれるのです。

 

4K60pのアニメーション技術がある日ポコっと生まれ出て成長するわけではなく、「制作の生態系」を新たに形作ることによって、結果物として付加価値・プラス要素の豊富な完成物を作り出すことができるのです。

 

ただ、言葉をもう少し慎重に選ぶとすると、4K60pや8K120pなどの高品質映像技術をネイティブに活用する新しいアニメーション技術は、「付加」「プラス」なんていう後付け的なニュアンスの要素ではありません。決して大袈裟な表現ではなく、本質的に、「アニメーション産業革命」と呼ぶにふさわしいものだと、私は確信しています。

 

新しい価値基準を、新しい技術で形作っていく。

 

‥‥まあ、我ながら、技術屋風情の私が発想しそうなことではありますが、そこはかとない強い確信があるのは、正直なキモチなのです。

 

 


パワーユニットと排ガス規制

前回、実際の労働状況を「排ガス規制」に当てはめて例えましたが、もう少し丁寧に言いますと、「制作現場」というパワーユニットのフリクションロスや燃焼不全の負の産物が「排ガス」であり、その「排ガス=有毒ガス」に対する社会的な抑制として「排ガス規制」がある‥‥というような例えです。

 

アニメ制作上の「排ガス規制」をクリアするには、私はおおまかに2つの方法があると思っています。

 

まずは、発生したガスをフィルタによって除去して外に撒き散らさないこと。‥‥つまり、マフラーの触媒であり、要は「労働基準」です。

 

アニメ業界は今まで、「大気汚染を防ぐ排ガス規制」=「人間社会における労働基準」に対して、あまりにも甘い基準で走り続けた感があります。この事実は誰しも認識していることでしょう。

 

よって、マフラー部分、つまりガスを排出する部分に、強力なフィルターを配置して、クリーンな排気を「結果的に」作り出すことが求められている状況です。世間の「ブラック批判」に対する対応は、マフラーの触媒=労働基準の導入によって実現するのが、ごく一般的な考え方です。

 

しかし、パワーユニット=エンジンの不燃焼構造は変わっていないのに、マフラーの触媒を強化することは、直接的に馬力の低下につながります。馬力の低下=映像のクオリティが低くなった状態で、今後、どうやって「レース」を戦い抜いていくのかは、大きな課題となるでしょう。

 

では、パワーユニットがそもそもロスや不燃焼を発生しにくい新設計に変わったなら、どうでしょうか。排ガス=有害ガスは「根本的に」低く抑えることができます。私の考える2番目の方法は、まさにソレです。

実際の車だと例えばコレです。

 

有毒ガスを大量に排出する構造そのものを設計し直す‥‥という、ごくごく、普通の発想です。

 

新しいアニメーション技術に移行することは、高効率パワーユニット、低公害エンジンに切り替えることを意味します。

 

同じ燃料の量で、より効率的に燃焼し、機械的な負荷=ロスも大幅に軽減し、飛躍的な馬力増大と燃費向上を実現し、一方で排ガスの量も劇的に減る‥‥という、1970年代にはできなかったことを2020年代に実現するのは、決して不可能ではなく、むしろ自然な技術進化の流れだとも思います。

 

4K60p、8K120pという現実的な映像技術の変遷に対して、今までのアニメ制作現場のパワーユニットでもし対応しようとするならば、とんでもない有毒ガスの排出量、それを抑止するためのさらなる触媒の追加と、「もはやレースにならない」状態が予測されます。なので、今までのアニメの現場は、2K24pが最後のレギュレーション‥‥ということになりましょう。

 

しかし、4K60p、8K120pを最初から意識した設計の、新しいアニメ制作現場の新しいパワーユニットならば、映像のハイスペック化の流れ・風潮は、逆に都合が良い状況になります。

 

 

私は、もちろん、マフラーによる排ガス抑制も考えますが、あくまで補助的な役割であり、パワーユニット自体の新設計によって馬力と燃費を向上させ、燃焼の高効率化によって有毒ガスが発生しにくい状況を作って、トータル的な「環境性能」を形成していきたいと考えます。

 

後付けで馬力をブーストするのでもなく、大きなタンクで航続距離を伸ばすのでもなく、フィルターで有毒ガスを漉し取るのでもなく、そもそもパワーユニット自体が大馬力低燃費で、かつ排気ガスもクリーンである状態を作り出せば良いのです。

 

以上は、アニメ制作現場を、エンジンと排気ガスに例えた改善策・解決策です。

 

 

アニメは人が作るわけです。当然のことながら‥‥ネ。

 

ということは、どうしても人間社会とは切っても切り離せない関係にあります。

 

未来、人間社会と共に歩もうとするとき、アニメを作る作業集合体に何が求められているか‥‥は、今まで現場で経験してきた人間なら、もうじゅうぶんに、解り切っているはずです。

 

要は、その解り切ったことに対して、目を背けて昔と同じことを繰り返し続けるのか、直視して新たな思想と技術で切り拓くのか、2つの分岐のどちらを選ぶか?‥‥ということです。

 

その分岐は、まさにアニメ制作に従事する、相応の権限を持つアラウンド40や50の人間の意志にかかっていると思います。

 

 



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