フレーム落ちチェックムービー

前回に「目視で60pを確認するムービー」を紹介しましたが、猛烈に明滅するムービー内容なので、実際のムービーは公開しませんでした。

 

ですが、After EffectsのプロジェクトはZIPで圧縮して貼り付けておきます。After Effectsのプロジェクトなら、自己責任でお願いできそうなので。

 

 

After Effects CC 2018:checkFPS.aep.zip

 

 

内容は至ってシンプルで、「1,2,3」の数字が1フレーム毎にループするだけです。

 

 

数字のアニメーションは全てエクスプレッションで記述されており、動作をレイヤー名と関連付けています。

 

 

 

//ソーステキストのエクスプレッション

var spl=Number(thisLayer.name);
timeToFrames(time, 1.0 / thisComp.frameDuration, true)%spl+1;

 

//位置プロパティのエクスプレッション

var spl=Number(thisLayer.name);
[thisComp.width/(spl+1)*(timeToFrames(time, 1.0 / thisComp.frameDuration, true)%spl+1),value[1]];

 

 

‥‥なので、24fpsや48fpsの動作を確認したい場合は、テキストレイヤーの名前を半角の「2」に書き換えるだけで、数字のアニメーションが「1,2,1,2...」の繰り返しに変更されます。

 

テキストレイヤーの名前を「6」に変えると、「1,2,3,4,5,6,1,2,3,4,5,6,...」の繰り返しも可能ですが、実際に目視でフレーム落ちを確認する場合は、最小の数にしておいた方が良いです。30fpsや60fpsならば「3」24fpsや48fpsならば「2」がよろしいです。

 

こうしたチェック用途のAfter Effectsコンポジションは、できるだけエクスプレッションで組んでキーフレームは使わないでおくと、検証の設定変更に合わせて、いちいちキーフレーム1つ1つを編集&変更せずに済みます。

 

 

ちなみに、After Effectsで開いて「RAMプレビュー」で確認すると、不規則に明滅することがあります。フレーム落ち、もしくは非リアルタイム再生になっていると思われます。‥‥ので、RAMプレビューはこうしたチェック用途には向きません。うまく再生される時と再生されない時がある‥‥のでは困るわけです。

 

ちゃんとProResなりDNxHRなりの常用しているコーデックでレンダリングして、何らかの「フレーム落ちしない」プレーヤーや編集ソフトで再生してチェックするのが良いです。

 

 

 

‥‥とまあ、あまりにも簡便な「再生環境チェック」ですが、現場の現実を垣間見ると、こんな程度のチェックすらせずに「高い金を出して機材を買ったんだから、ちゃんと再生できているだろう」と思い込んでいる現場もあるようです。数百万する機材でも、使い方をミスったり動作が不調なら、あっけなく、ショボい性能に成り下がります。

 

「あれ? なんか、ムービー再生が変だな」と思ったら、即、チェックムービーで調べてみるのは、日常の習慣として有用です。

 

「アニメが好きだから」で業界入りしたアニメ制作スタッフだって、求められる技量はれっきとした「映像技術のプロ」レベルなのですから、このあたりの基礎知識・運用ノウハウはどこの誰でも、もっておきたいもの‥‥ですネ。

 

 

 

 


段階的移行の往く先

私がこのブログで、4Kの話題を取り上げるたびに、現在の現場を「旧来」と呼び表し、バッサリと区切ったような物言いをするのは、「段階的移行はあり得ない」ことを強調・明示するためです。既にもう、何年も前からです。

 

その辺について、快く思わない人もいるんだろうな‥‥と覚悟して書いてます。

 

嫌われたり、疎まれたりするのを恐れていては、新しい何かなんて、できないですもん。今までの予定調和を壊すところから、新しい何かは始まるのですから。

 

「良い人に思われたくて」、耳障りの良い言葉で「心配することはないですよ。今までだって、乗り越えてきたんです。4Kにも段階的に慣れていきますよ。みんな仲良く頑張りましょう。」なんて絶対に書くわけにはいきませんし、軽はずみな楽観論による過ちも犯したくありません。大した実感も考察もなしに、今この時間を当たり障りなく過ごすためだけに、「大丈夫だよ」「なんとかなるよ」と誤魔化すことが、本当に善きことなのか‥‥、疑問に思います。

 

4Kに段階的に移行する‥‥ということは、うやむやのうちに4Kに対応させられ、大した報酬アップもない‥‥ということです。

 

この10年を振り返ってみましょう。

 

段階的に、より一層複雑なキャラを描かされるようになって、髪の毛に6色も使ってセレクトブラーするようになり、「デジタル作画」を従来の作業費で運用し‥‥と、「言われるがまま、段階的に、要求を呑み続けた歴史」だったのではないですかネ。

 

たしかに作業費は、多少は上がりました。しかし、そのお金の上げ幅よりも格段に、作業内容は厳しくなっている‥‥のを、少なくとも作画スタッフの誰もが実感しているでしょう。

 

‥‥で、そんな調子で、2020年代になったら、どうなるでしょうか。

 

「4Kの高詳細画面を『活用』して、『絵師』のイラストや『原作漫画』のディテールそのままに、作画してほしい」と要求されるだけです。相変わらず、作画枚数は数千数万、今とあまり変わらない単価で、今以上に時間のかかる重い作業を続ける状況が、容易に目に浮かびます。

 

「漫画家」「絵師」‥‥すなわち、色々なメディアの「静止画イラスト」を描く人々は、アニメの技術的な内面を(当然ながら)知り得ないし、数千数万作画して動かすことも全く考慮せずにイラストを描くわけです。もちろん「漫画家」「絵師」さんは「そんなの想定外」だと思いますが、「原作のアニメ変換処理工場」と化した現場は、「どこかから」要求されるままに、どんどん複雑な線画と彩色・撮影処理に追い込まれているのが実情です。アニメ現場サイドのアニメーター兼業キャラクターデザイナーが線を減らそうにも、「減らさせてくれない」事例も多いでしょう。

 

そうした「現場が辿る未来」を考慮した時、少なくとも私は、今までの現場が4K時代へ段階的に移行できるとは、口が裂けても言えません。‥‥絶対に言わない。‥‥言いたくもない。仮に、外見からは移行できたように見えても、内部はとんでもないことになると思います。

 

極端に厳しくなった高詳細の作業で、たとえ単価が2倍になったからって、それで生きていける? 4K時代の4K寸法に合わせた作業内容と負担は2倍どころじゃ済まないでしょう。

 

4Kは、地デジ2Kへの移行の時とは、あまりにも内容が違い過ぎます。‥‥その違いに、アニメ現場で作業する当事者たちが気づかないのであれば、容易に「段階的移行」に丸め込まれるでしょう。そして、「昔より作業が辛くなった」と何十年も同じことを言い続けるのです。

 

私もかつて「どんどん作業が辛くなる」と言いながらも、旧来現場で作業していました。ゆえに、状況をいつか断ち切って仕切り直すために、かれこれ10年以上前から、別の道と方法を探し始めたのです。

 

技術が全く別物に入れ替わり、作業慣習の連続性が途絶えるからこそ、完全な仕切り直しも可能になります。

 

技術的にも、作業システム的にも、全て新しくなるからこそ、過去現在の現場の忌まわしい「内容無視の一律単価制度」を廃止できるのです。

 

4K60pHDRを活用する新しいアニメーション技術を推進していますが、今までの現場の技術とは全く別物です。ともすれば「業界離反」のニュアンスがこのブログの文体から匂ってしまうのは、新しいアニメーション技術においては、業界の「原動仕背撮」のインフラはもはや全然役に立たないがゆえ‥‥です。業界に属する個々の人間の才能は新しい技術でいくらでも活用できますが、業界自慢の「超高速作業」のインフラは、全く違う技術やシステムのメカニズムをもつ現場では役に立ちません。

 

新しい技術体系を構築することは困難の連続ですが、「過去からの因縁を物理的に断ち切れる」状態は、それだけで希望となり得ます。

 

 

 

旧来アニメ現場が、4Kに何らかの方法をもって対応するのなら、その際は、「段階的移行」ではなく「完全仕切り直し」の「新規」の取り組みが必要‥‥でしょうが、それは当事者たちが采配して全体を導くしかないです。

 

ある人は「アニメで4Kなんて考えていない。今のままで良い。」と言っていましたが、それは正しい判断かも知れません。

 

現在のアニメ現場視点で言えば、2K24pSDRで作り続ければ、少なくとも、今より劇的に状況が悪化することはないでしょう。

 

一方で、その「劇的には悪化しない状況」が、10年後、20年後に持続するか‥‥も、等しく、判断を要するとは思います。

 

 

 

 


HDRの絵作り

すぐ先の次世代の映像フォーマットは、4Kや60pだけでなく、むしろ一番パッと見で効果がアピールできるのは、HDRだ‥‥と以前書きました。次世代映像は4K60pHDRの三拍子が揃ってこそ、効果を発揮します。

 

‥‥で、アニメのプロダクションサイドであいも変わらずRec.709やsRGBで絵作りしてても技術は先に進めません。ラボにもちこんで、ボケッと「HDR化」されるのを傍観するばかりでは、作品作りのスタート地点で「負けて」います。

 

なので、ラボでの立会いで見聞きした経験を踏まえ、プロダクションサイドでも「HDRを意識した絵作り」を、手探りで開始してみようと思います。

 

最終段階でラボの技術者さんの力は必須となりますが、その前段階=ポスプロの前=プロダクションでも「このようにHDRを活用したい」という絵作りを、それこそプリプロ段階から盛り込もう‥‥というわけです。

 

折角、HDR〜Rec.2020やDCI-P3を表示できる4Kモニタがあるわけですから、旧来色域への互換性ばかり気にして、持ち腐れてても勿体無いです。旧来仕様に準じた作品ではRec.709等に合わせますが、新しく作るテスト映像の数々は、せめてDCIくらいの色域では作りたいです。できれば2020にもチャレンジしてみたい。

 

加えて、もう2〜3年も前から、ProRes4444 XQがあり、各色12bitの階調を格納できるコーデックがあるので、どんどん有効活用していくべきでしょう。もちろん、AvidのDNxHRもね。(DNxHRは既にテストを開始して、興味深い結果が得られております。アニメで使う場合、賛否両論はありましょうが。)

 

今年もいろいろ、やることはいっぱいです。

 

どんどんこなして、どんどん蓄積して、やがて来る水位上昇に備えなければ。

 

 

 


4K、2つ。M.2、2つ。

4Kのモニタを、ミラーリングで2つ繋いで、さらに波形モニタ用に1440pxのモニタを1つ繋ぐと、さすがにマシンの負荷は半端ないですネ。4Kのモニタは、もちろん、2つとも60Hzです。(30Hzじゃ使いもんにならん)

 

色々と負荷を軽くする方法はありますが、やっぱり、まずはディスクの高速化です。

 

M.2の高速なSSD(M.2でも凡速のSSDがあるので注意)を、2つ、RAID0で繋ぐ‥‥というのは、「できたらいいな」ではなく、「そのうち必要になる」レベルになってきました。Macの場合、Thunderbolt2か3のPCIeボックスが必要になります。

 

以前も模式図と合わせて書きましたが、実際にはやったことがないので、M.2=>PCIe変換基盤を介してうまくいくかは不明。

 

 

 

うまくいくかはナゾとしても、現実の作業の要求速度としては、10〜15Gbpsはぶっちゃけ、欲しいです。もちろん、実測で‥‥です。数年前では考えられなかったことですが。

 

ちなみに、外付けの持ち歩き用USB3.0のHDDは、だいたい0.2〜0.5Gbpsくらいすかネ(ポータブルHDDって、かなり遅いんですよネ)。USB3.0の外付け3.5インチ箱でRAID0を組んで(2発RAID)2Gbpsくらい。USB3.0の単発SSDは3.2Gbpsくらい。iMac 5KのFusionドライブやMac ProのSSD(速度からしてM.2接続〜SATAの理論値を突破してるので)で、5〜8Gbpsです。

*いずれもREAD性能です。WRITE性能はアニメ制作作業ではあまり重要視されません。

 

なので、新時代の要求スペック=10〜15Gbpsがどれだけ過酷か、お判りかと思います。

 

 

また、ビデオコーデックも色々と試す必要があるでしょうネ。ProRes4444だけでなく、ProRes4444XQや、ラッシュ用途としてH.265も試してみる必要があります。

 

とにかく、ファイルの転送量を軽くして、ディスクの転送速度を速くして‥‥と、「ファイル=軽い、マシン=速い」のW効果を狙うしかないです。

 

 

 

しかしどうなるのかな。アニメ制作の未来は。

 

2K踏み留まり派と、4K開拓派の、2派に分かれるのかな。

 

それとも、アニメ業界は2Kで打ち止めなのかな。

 

でもまあ、新しい技術は、もはやアニメ業界の枠には収まりきらないのは明白ですし、作業テリトリーもお金(雇用など)も、全くの仕切り直しですから、アニメ業界云々はもう気にする必要はないのかな‥‥とも思っております。

 

 


映画館の存在

最近、ブルーレイ上映をおこなう映画館も出てきて、映画館の存在理由って何だろう‥‥と思いふけることがあります。もちろん、「大画面、大音響」は映画館ならではですが、映像そのものはRec.709だし50Mbps程度だしで、ご家庭感丸出しのスペックです。

 

しかも、最近の劇場アニメは、ちゃんと端正に作っているものはどんどん減って、テレビシリーズ感丸出しのものも多いです。加えて、1.5Kのレタスの二値トレスは、何を弁明しようが、物理的な要因により、線画のクオリティはどうしても低くなります。1.5Kを2Kにしても、どんぐりの背比べでしかありません。

*私は、超絶に綺麗な動画の線が、レタス二値線で見るも無残に凡庸になったのを、まさに撮影素材ファイルとカット袋の生の動画で、何度も見比べて確認してきました。しかし、それは仕上げさんの責任ではなく、あくまで「二値」というメカニズムの宿命、二値処理の原理ゆえです。私の知る彩色のスタッフさんたちは、二値という技術品質的ハンデの中でも、最良の結果が得られるよう、最善の作業をしてくれる人ばかりであることは、付け加えておきます。

 

映画館は、あらゆる面で、映像作品の上映環境としてスペシャルであってほしい‥‥と思いますが、現実的には難しいです。そもそも、もとになる映像作品のスペックが、特に日本のアニメは停滞して足踏み状態にありますもんネ。

 

じゃあ、映画館で上映するアニメのスペックは、どのようなものが未来にふさわしいか。ちょっと私なりに考えてみました。

 

  • 4K以上のビデオ解像度
  • 4K以上のビデオ解像度にふさわしい絵柄の密度・詳細度
  • 48fps以上のフレームレート
  • 500〜1000nitsくらいのHDR
  • 非圧縮と同レベルの画質を保つビデオコーデック
  • 上下左右前後の立体音響

 

いくつかはご家庭の4KHDRテレビでも実現可能な内容ですが、映画館でなければ無理だろう‥‥という内容も相応に含まれています。無論、劇場作品の予算でなければ到底制作不可能な内容でもあります。

 

仮に、「お金はいくらでも集めてくる。だから、上記スペックで映像を制作してほしい」‥‥と言われて、制作できる会社ってある? 

 

‥‥‥‥ないよね。残念ながら。

 

金をどんなに用意してもらっても、今のアニメ制作会社では無理です。「アップコン」では「作れた」とは言わないですしネ。タイムシートが24コマ縛りなのが、まず最初から「無理」な理由ですし。

 

 

私は上記スペックを実現する技術をどんどん進めてはいますが、残念ながら「長尺」はまだ無理です。技術構築や実戦経験が足りないです。

 

だからといって、テレビのブルーレイで観れる内容を、アマチュアの上映会みたいに、映画館で流す‥‥というのは、やっぱり寂しいものがあります。

 

狭い国土、資源の乏しい大地。ゆえに、日本は「技術立国」を目指したのではありませんか? そして、過去に成し遂げた時期もあったのではないですか?

 

その技術立国日本が、ブレーレイ上映会だなんて、私はとても悲しく感じます。映画館どうこうよりも、映画館で流すに値するスペシャルな映像を作れないアニメ業界の現実に、落胆すると同時に、沸々と闘志も湧いてくる想いです。

 

ブレーレイ程度の映像を作って、「ウチは商売できてる」と思う制作集団は、まあ、そのまま未来もいけば良いと思います。新技術勢力と競合しないので諍いを未然に防げますし、実際には新技術なしではHD24pが「できる範囲の全て」でしょうし。

 

新技術を今後の主力と定める私は、テレビならテレビ、ネットならネット、そして、映画館なら映画館と、それぞれの特性に合わせて、最適な完成像を作り出したいですし、今、技術が足りないのなら、未来に向かって確実に、技術を高めていけば良いです。

*現在の「デジタルアニメーション」(昔はそう呼ばれていました)の隆盛も、最初はほんの数社が「短尺」で技術と経験を積み上げ、やがて「長尺」も作れるようになった経緯を、まさに実地でリアルに関わっていました。今から20年前のこと‥‥ですネ。なので、「どうすれば良いか」また「どうするとマズいか」はよくわかります。

 

映像・音像でしか作れない作品を、その時代の最高の映像スペックで表現したいと思うのです。

 

 

 

言葉ですべて言い表せるなら、音はいらない

 

言葉ですべて言い表せるなら、絵はいらない

 

映像作品を作る意義は、

 

言葉では言い表せないものを、絵と音、映像と音像で、表現する

 

‥‥ことだと思います。それ以外に何か意義があるのだろうか。特に、作り手の心情として‥‥は。

 

 

 

2020年代の映画館、テレビ、ネット、それぞれのスペックを満遍なくドライブしきる映像作品を作っていきたいです。

 

拡大出力とかアップコンとか、作り手側の侘しい事情で、絵を決めてしまうのではなく‥‥です。打算的で限定的な制作に甘んじ続けるのではなく‥‥です。

 

ゆえに、限界見え見えの旧来のアニメ制作技術ではない、新しいアニメーション技術体系を2018年の今年もどんどん先に進めていこうと思います。

 

 

 

 

がらりと話は逸れますが、1967年生まれの私が今の歳になって、何かしみじみと感じ入るのは、ビートルズ〜マッカートニーの「The Long & Winding Road」〜「長く曲がりくねった道」という曲です。

 

映像の作品を作って生きていく‥‥というのは、ほんとに、「長く曲がりくねった道」ですネ。

 

本家ポールだけでなく、ジョージ・マイケルの歌声も、透き通っていて素敵ですヨ。

 

リアルな恋人を歌ったラブソングではないのは、まあ、歌詞全体を読めば明らかです。歌詞の中の「You」「Your」は「君」というよりは「あなた」。つまり、「創作しようとする何か」、もしくは「創作しようとする自分を惹きつけ続ける何か」と読めば良いです。特に、何かを本当に、真剣に作ろうとしている人間には、です。

 

でもまあ、今は感傷に浸る時期ではないので、ザクザクと進めて行きますヨ。

 


共有の悪

ライターの人から以前聞いた話ですが、とある世界有数の自動車メーカーの研究施設に取材にいくと、写真撮影が制限されるのはもちろん、施設内を見て歩くだけでも所員が先回りして置いてある物品に布を被せてから人を通したり、たとえ撮影可の物品でも撮影する角度が決められていたり‥‥と、厳しく情報管理されているようです。

 

私らの開発するアニメーションの新技術ももちろん、同等に情報管理や技術の取り扱いは厳しいです。「共有」とか「カット合わせ」なんて名目でプロジェクトが流出することはあり得ません。

 

本気で真剣に、お金も時間も使って開発していれば、当然のことですよネ。

 

 

一方、ここ10年のアニメ業界の歴史を見ていると、「共有と言う名のディスカウント」によって自滅寸前になっていると、率直に感じます。同じソフトを使っているから、簡単に「共有」できると思っている人は、それこそ沢山います。

 

「タダで手に入れた技術は、簡単に又貸しして、タダでばら撒かれる」のを、沢山見てきました。

 

「タダで手に入れた技術」は、「誰かによってタダで作られた」と思っているんでしょうネ。だから簡単に、誰かから好意で受け取った(もしくは無断で複製した)技術を「タダ」でばら撒くのです。

 

技術開発にどれだけお金と時間と苦しみと情熱が込められているのか、タダで「共有してもらえる」と思っている人々はまるで解らないし、解ろうともしません。

 

タダのものは、全てタダ。‥‥開発の苦しさを知らない人は、そう思って疑いません。

 

 

もし、これから未来にアニメ業界が「正常になりたい」のなら、技術情報の管理もしっかりとおこなうべきです。

 

技術に「タダ」なんてあり得ないんだ‥‥とハッキリ認識すべきです。

 

みんなで技術をタダで共有すれば、みんなが幸せになれる‥‥なんていうのは、とんでもない幻想、大ウソです。皆で同じ技術レベルになったら、技術における競争原理も作用しないし、安売り合戦の繰り返しです。同じ技術なら、どれだけ安く売れるかで勝負だ!‥‥なんてことになりますし、実際に今のアニメ業界はそうなっていますよネ。

 

 

標準規格を業界で定めて、標準仕様に必要な技術はオープンソースにしょう‥‥というのは良いことだと思います。

 

マズいのは、標準技術と特殊な固有技術の差もわきまえず、「欲しいと言えば何でも手に入る」と思い込むバカさ加減です。各技術者・技術グループ個々の特殊技術まで、「共有して」といえば何でも共有してもらえると考える甘さは、いったいどこから来るんでしょうネ。

 

受発注の基本は、発注に対する完成物の納品です。どこの世界に、完成物と一緒に全設計書類を手渡すマヌケなお人好しがいるんだよ。高精度な部品を製造する工場が、部品を納品するだけでなく、高レベルなノウハウや技術書まで納品する? ‥‥当然、しないでしょ。

 

‥‥でも、アニメ業界はそういうこと、平気でやろうとするよネ。誰が率先しているのか知らないけど、バカだよネ。その辺は昔っから。‥‥そして、自分たちは安売り合戦に巻き込まれてお金がないんです‥‥って、自作自演の愉快犯じゃないですか。

 

 

それにさ‥‥、技術を「共有」したがるのは、往々にして「技術的弱者」です。自費を投じて長い時間をかけて技術を確立した人間からすれば、大して技術開発に時間も金も割かずに他者の技術共有を欲する「技術的弱者」は随分と虫が良いように思えます。

 

まさにガチで研究中の技術に「布を被せて隠す」のなんて当たり前です。それを都合の良い「ブラックボックス」なんていう言葉で揶揄する前に、まずは自分たちで研究開発に精一杯の努力と情熱と可能な限りのコストを注ぎ込むべきです。新技術に関しては私はもう10年以上も自費でずっとやってますし、私に限らず、技術開発を自分ごととして捉えている人は、少なからず自分に対して投資して、自分の時間を割いて研究開発しています。プロだろうがアマだろうが、自分の技術開発の結果物で勝負すれば良いだけです。

 

仮に技術を他からデータコピーしたところで、自分たちの「技術開発力」が育って向上するわけではないのです。他者からかすめ取って、ハリボテの技術力を騙っているだけに過ぎません。

 

むしろ、他の人間たちが作ったスゴい映像を見て、自分たちなりに模倣して同等の品質を獲得するようになれば、それがまさに自分たちの技術力になります。やがて、模倣から発展してオリジナルの技術を開発する機運が生まれるでしょうし、自主開発を可能とする手応えを手に入れられるでしょう。「共有」なんていう安直な手段に頼らなければ‥‥です。

 

なぜ、日本のアニメーターの技術力が秀でているのか。それは徹底的な模倣から自分の技術体系をスタートし、やがて独自技術の発展形を実現したからです。模倣する段階で多くのことを学べるからです。

 

他から技術を「まるごとデータ共有」して「複製流用」しているうちは、人も集団も育ちません。おねだりの手練手管に磨きがかかるだけです。そりゃあ、どうやっているのか数値まで含めて盗用すれば「複製」は楽でしょうが、それで自分の将来は大丈夫?

 

解らないことだらけで困難の連続でも、模写・模倣を繰り返して、自分なりの技法を次第に確立した方が、未来何十年にも及ぶ映像制作人生の心強い糧となるでしょう。

 

 

技術開発の困難にメゲずしぶとく喰らいついているうちに、技術的弱者はいつしか技術的強者へと変わっていくのです。最初から強者だった人間なんて、いませんもん。

 

ものすごく明快でフェアじゃないですか。性別も年齢も国籍も容姿も傷跡も関係なく、技術だけが支配するフィールドって。

 

 

少なくとも私は、誰かに作業を依頼した時に、その人に「何から何までよこせ」なんて言いません。もし、その人の技術が必要ならば、その人との関係を良好に保ち、その人に仕事を入れ続ければ良いのです。「あなたの技術は素晴らしい。この次もよろしくお願いします」と。

 

依頼する側は、個々の技術力による産物で作品を高品質に作り上げ、受注する側は、自分の技術力に相応なギャラが支払われて商売が成り立ち‥‥と、「技術の対価」という関係性は、ベテランでも中堅でも若手でも変わりません

 

相手が20代の若手でも、その若手なりの特性が、どのように当人の技術体系として発展していくかが、技術集団の「性能」の一翼を担います。技術集団は、コンピュータのプリセットではなく、人間たちによって形成されるのです。「おまえのかわりなんて、いくらでもいる」なんていう人間は、そもそも存在しないのが技術集団なのです。

 

人間がひとり居なくなるということは、総合技術体系のいち部分が大きく欠落することを意味します。ゆえに、年齢やキャリアに限らず、技術者の技術領域と特性を保護することで、ひいては映像制作組織全体の利潤・発展にも繋がると確信します。

 

 

一方、ディスカウントしたくてウズウズしている人は、1回だけ高レベル技術者に仕事を依頼して、完成物だけでなく中間物まで提出させて、その次からは手下の安くコキ扱える人間たちに技術をコピーさせて劣化運用させて、はい、技術の大安売りのいっちょあがり‥‥とご満悦なわけです。そして出てくる言葉は、「現場の低コスト化に貢献した」‥‥です。

 

そういう安易な共有感覚に基づく、因習化したディスカウント感覚は、アニメ業界を技術低評価=低額作業費へと邁進させる元凶になっていると思いますし、どんなに技術を高めてもこの業界では報われないんだ‥‥という絶望感にも繋がっているとも思います。

 

 

 

アニメ業界は、色々な部分で綻びが生じています。でも、自分自身まで、自分たちの技術集団まで、綻びを共にする必要はありません。業界の破綻構造まで共有する必要はないです。

 

まずは自分たちの集団から、技術の取り扱いの是非を実践していくのが肝要です。

 

大風呂敷を広げて挫折するのではなく、身の回りから地道に固めていけば良いのです。

 

 

 


謹賀新年

2018年が明けました。

 

今年もよろしくおねがいします。

 

本年も変わらず、アニメを中心とした映像制作に関わりますが、アニメの制作事情は、インターネットが定着して久しい昨今においては作業の実情が情報として広く伝播し、批判の的になることも多く、私としては、何年も前から取り組んでいる新しいアニメの作り方に今年も変わらず取り組んでいく所存です。

 

アニメ業界の未来について、それこそ私が小学生・中学生だった40年前から、アニメージュでは「どうなる・どうする」みたいな記事が載っていました。年末か新年のアニメ雑誌記事に、スタッフ座談会の記事が載っていたことを思い出します。

 

2018年現在は、SNSで情報が一般に出回るようになったゆえに頻繁に見聞きするようになっただけで、根本は変わんないすネ。つまり、商業アニメ、特にテレビアニメの、そもそもの制作構造に無理があったとも思えます。何千枚も描いて塗って、テレビの制作費予算枠に収める‥‥という根本のカタチ自体が、金のかかるアメリカンアニメーション方式を継承した日本のアニメ制作では既に制作設計時点で破綻していたのかも知れません。

 

そろそろ潮時かなと思っています。

 

従来のアニメ制作技術に関しては潔く開発終了し、昔ながらのニーズに対しては「メンテナンスモード」で保持、開発の主力は新技術体系に移行すべきと(少なくとも私は)考えます。

 

とはいえ、「デジタル作画」は新技術ではないです。道具をペンタブに持ち替えただけのバージョンアップにしか過ぎません。

 

最近のアニメ制作で「デジタルへ移行」とか言っている人々のほとんどは、「デジタル作画」、いわゆるペンタブ作画で次世代に対応しようとしているのでしょうが、ハッキリ申しまして、そんなんでは次世代には対応できません。4K時代に対しペンタブ作画で何千何万と描くのですか? 60p時代に対し、24コマの3コマ打ちシートでどうやって対応するのですか? アップコンで視聴者を誤魔化そうとしても、新時代の新しいアニメ品質が台頭してきた時に、酷い落差で、その前時代的な旧品質が明らかになってしまいます。

 

4K60pHDRのスペックなんて、ちょっとネットで調べれば、画面寸法もフレームレートも色域も簡単に情報を得られるのに、アニメ業界スタッフの多くは「その辺の難しいことは苦手」と自嘲して、故意に「未来の映像技術を知ろうとしない」フシがあります。

 

多くのアニメ業界関係者は、どうしても「プロペラが回っていないと空を飛べない」と無意識に考えてしまうようです。なので、ジェット機なんて想像できないのかも知れません。

 

*誰もが認めるレシプロ機の傑作、P-51。決してプロペラ機がダメなわけではなく、時代の進化に追随できなくなっただけの事‥‥ですが、それがすなわち、技術の世代交代なのです。ジェット時代になって、P-51(大戦後はF-51と改称)は第一線の戦闘機から外され、戦闘爆撃機や地上攻撃機など支援用途へと役割を変えていきました。

 

加えて、未来の技術スペックやロードマップを知ってしまうと、自分たちの作っているアニメ技術の行く先が不安になるから‥‥だとも思います。

 

 

今、正しいとされていることが、未来に正しいとは限らない。

 

「正しい」の定義は色々あるでしょうから、「正しいか否か」を持ち出したいわけじゃありません。現在「普通」とか「主流」とか言われているものは、未来で等しく「普通」で「主流」とは限らない‥‥と思うのです。

 

作画の低賃金に喧々囂々する以前に、何千何万と描いて動かす技術基盤そのものをまず疑いたいと思います。「アニメを作るには、このやり方が正しい」なんて思い込んで盲信したくないわけです。

 

それにアニメ業界は、いわゆるアニメ制作者集合体であって、国家行政機関でも大財閥でもありません。集合体の構成要素個々に目を向ければ、例え会社規模でもあっけなく倒れる存在にしか過ぎません。また一方で、「今までアニメは安く作り過ぎたので、これからはテレビ1話8千万円で受注します」なんてやったら、アニメを作ろうとする機運は激減するでしょう。

 

アニメ制作に関わる個人も会社も、今までの「正しい」「普通」「主流」は「メンテナンスモード」に入った過去のものとして、新しい業態・ビジネスモデル・制作技術体系を模索するのが、アニメ制作を生業として生き残る唯一の道だと確信します。

 

まあ、今はね‥‥、新しい技術体系や制作システムは、広く一般に理解されなくても全然構わないと思ってます。逆に、旧来の脳で考える人々が困惑したり懐疑的に思ってくれた方が良いくらいです。古い人たちの怪訝な態度は、新しさのバロメータになります。‥‥簡単に理解されちゃったら、それは新しくもなんともない‥‥ということですもんネ。

 

 

さあ、今年もジェット機をどんどん飛ばしていこう。しばらくは、プロペラ機と一緒に。

 


/はPerじゃないの?

タイムシートのタイムシート枚数記述欄に、「/」しか表示されていない場合、「/」は「分数」「Per」の略記で、例えば、全3枚の1枚目は「1/3」と書くのが正しいと同業の先人から私は教えられましたし、国際的・世間一般の表記でも「1/3」と書くのが正しいと思っています。‥‥しかしどうやら、アニメ業界の中には、「総枚数/現在の枚数」と書くのが正しいと思っている流派もあるようで、「まあ、アニメ業界って、一事が万事、こうだよな」としみじみ思いました。

 

同じように「/」の使い方で、スライド指定で「K/0.5ミリ」なんていう表記もアニメ業界では見かけました。今でもあるのかな? 昔はよく見たけど。

 

3分の1を、日本語の読み順に合わせて「3/1」と書く奴は居まい。時速50キロを「h/50km」と書く奴は居まい。

 

しかし、なぜだか、アニメ業界は「パー=Per」の使い方・表記が逆になる傾向が昔からありますよネ。

 

もちろん、世間一般、世界的な標準は、いまさら言うほどのことではなく「分子/分母」です。fpsは「Frames Per Second」、Mbpsは「megabits per second」、MB/sは「megabytes per second」で、皆、分母が「per」「/」の後にきます。国際的な表記の基本です。

 

 

この他にもアニメ業界の表記はナゾが多くて、「ブラック」を「Blackの頭文字」をとって「BL」「BL.」と略字で書くのはわかるのですが、結構頻繁に「B.L」と書かれているのを見かけます。「B」と「L」の中間にある「.」は何を意味するんだろう‥‥と昔から疑問です。何か2つの単語の組み合わせ、「Black ほにゃらら」‥‥の略なんでしょうか。それとも、「B.L」はBlackとは無縁の、何か別の単語の略字なのでしょうか。「B.L」の謎は今でも未解決のままです。

 

 

でも、もうやだな。アニメ業界のこういう曖昧なところ。

 

3分の1、3枚目中の1枚目を、「1/3」ではなく、「3/1」なんて書くことを、上の人間が指導しているような現場。

 

例えば、学生時代に数学とか工業で「スラッシュ」を分数の表記として、ごく一般的な使い方をしてきた新人が、現場の「分母/分子」の表記を見て‥‥

 

新人「そもそも、この表記方法、おかしくないスか?」

 

ベテラン「そんなことはない。アニメ業界ではこれが正しい」

 

新人「しかし、分母がスラッシュ=perの前に来るのって‥‥」

 

ベテラン「この斜め線は分数のパーではない。ただの区切り記号だ」

 

新人「だったら、なにもわざわざ混乱を招くスラッシュなど使わないほうが‥‥」

 

ベテラン「何だ、お前? 経験豊富でベテランである俺に、ど新人のお前ごときが刃向かうのか?」

 

‥‥とまあ、最後は「俺に(私に)盾突くのか?」で「完」です。理性もへったくれも知識もありません。世界標準の表記(数式)ルールにベテランも新人もないでしょ。

 

「経験者としての面子の都合」もあって、ベテランは今さら訂正できず、新人も釈然としないまま慣習に飲み込まれ、みっともない「分母/分子」の表記が延々と繰り返される‥‥のでしょう。「/」に限らず、よくある情景ですネ。ダメな現場の典型。

 

 

何よりもさあ‥‥‥、タイムシートの原稿を作成する人間がさ、「/」なんかで省略せず「   枚目/全 枚」のようにちゃんと文字を表記すれば済むことじゃん。小さいフォントで薄文字にすれば枠内も窮屈にならないって。‥‥そうすれば、書き間違わないでしょ。

 

タイムシート原稿を作る際に、ちょっとした気遣い、危険予測が効いていないと、いかようにもで誤記される伝票が出来上がります。

 

 

 

アニメ業界の馴れ合いの暗黙のルールなんて、糞(失敬)食らえです。昔からアニメ業界には、標準化・Standardizationという言葉がゴッソリ欠落しているのです。

 

そうした現場の標準化をさ、現場の先輩後輩の口頭の伝承だけで済まそう‥‥っていうのが、「部活ノリ」のまんまだよネ。いつまで学生気分の運用スタイルを続けるつもりか。日々の気分は学生、日々の作業は地獄‥‥って?

 

 

ちなみに、私はそういうのはイヤなので、新しい制作技術においては、かなり前から「用語辞書」をデータベースに記録しています。10年以上前に開発した「atDB」でも、開発の骨格は「アニメの技術をどのように言葉として記述し規定するか」でした。なので「animation technical DataBase」の略=atDBと名付けたのです。

 

新しい技術においては、タイムシート(と昔呼ばれていたもの)は全てネットワークのドキュメントに記述されるので、そもそも入力ミスがあると警告、またはエラーが出るので、入力ミスを未然に防げます。

 

約束事や規定は、今の時代ならネットワークのドキュメント(としてのフロントエンドにて)で共有できますから、新しい現場は、瑣末な雑事の自動化とともに、各種規定や規約の確認がネットワークで可能なように情報のインフラを整備すべきです。‥‥というか、常識だよな、コンピュータを使ってるんだから。

 

 

 

しかし、旧来のアニメ現場は、共同作業なのに約束事が明確に規定されてもいないし、確実な情報を確認するすべもなく、よくまあそれで何十年間も作り続けたと、過去を省みて、逆に恐れ入ってしまいます。

 

でも、それは異常だわな。‥‥そして、その異常な状態を正すことは難しいでしょう。従来の曖昧な運用方法ゆえに、小さなロスが積もり積もって、効率の頭打ちに直面しているんだとも言えます。

 

今の現場は、どんなに「デジタル作画だ」と言っても、紙ベースのタイムシート(か、そのスキャン)だったりしますから、何らかのアプリで記述チェックを自動処理することもできません。そして、いくつもの「流派」が存在して、ややこしく絡み合った今の現場の状況は、途中で手を加えたからと言って、良き方向に修正できるとは思えません。様々な人々の思惑が介在しすぎるから。

 

今の現場の状況は、どんどん行き着くところまでいって、破綻して全て失って、しがらみも慣習も捨てて、ゼロから作り直すしかないのかな‥‥と前々から思っていますし、実際、私だけでなく同じように考える人もそれなりに多いです。でもまあ、それは今の現場の人々が執り行っていけば良いことです。

 

 

しかしなあ‥‥「分母/分子」の表記は、昔からアニメ業界にある「闇」のほんの一部で、2017年現在でもずっと続いているんですネ。アニメ業界の未来全体も、まさにその通り‥‥でしょう。

 

アニメ業界なんかをことさらに意識しなくても、これから先はアニメ映像作品は様々な技法・技術で作れるんですから、自分たちの未来の選択を、会社や個人ともども、丁寧に慎重に考えていったほうが良い‥‥と私は強く思います。

 

このままではマズイ、この方法ではヤバい‥‥と思ったら、それは旧来アニメ業界の現場ではなく、新しい自分たちの現場で実践しましょう。そうすれば、横槍も干渉もやっかみも皆無です。旧来アニメ業界では難しい、新しいアイデアや改善策をどんどん実行できます。

 

 


地球をコロコロ

私は自宅だけでなく作業場にも「地球儀」を置いています。理由は単純で、「立体的に世界を把握できる」からです。

 

 

 

Google Mapは重宝します。しかし、立体的には把握できません。

 

まあ、上図のような30cmのものでなくても、13cm、20cmのミニサイズで十分、日本を囲む世界の様子が立体の距離感でわかります。

 

日本人がよく見る平面地図は、日本列島が中心位置ですが、様々な経済の流れ、国家間の紛争、政治のさやあてなど、地球儀を回しながら「地政学」的に世界を眺めれば、色々なことが直感的に解ってきます。

 

 

‥‥というのは70年代の歌謡曲ですが、実際に地球は丸いことを、地球儀はドデンと鎮座して見る側に訴えかけます。

 

私は世界各国の都市の灯りが光る、素敵な地球儀を自宅においていたのですが、部屋の模様替えで置く場所がなくなり、今は倉庫の中です。代わりに、13cmの串刺し型の地球儀に入れ替えました。13cmでも、机に置くと、存在感タップリですヨ。

 

 

私のこのブログのアドレスは、独自ドメイン「ezura.asia」ですが、自分の国がアジアの中に存在することをしっかりと自覚し、とかく「欧米かぶれ」になりがちな経緯を断ち切って、「アジア」を打ち出していきたいがゆえに、「.com」ではなく、「.jp」でもなく、「.asia」にしました。

 

以前、ツイッターのアニメ業界関連のアンケートで、「待遇に恵まれた仕事が海外(たとえばヨーロッパ)でできるならば、日本を出て海外に行くか?」‥‥のような質問を見かけたことがありますが、私は設問そのものではなく、「海外(たとえばヨーロッパ)」と書かれた文面に、釈然としない思いを強く抱きました。

 

設問者が期待する回答に票が集まることを無自覚的でも自覚的にでも意識して、「アジアを外した」のかな‥‥と私は感じ取りました。「海外(アジアやヨーロッパ)」と書いたら、票の数は確実に落ちたでしょうしネ。「海外=おしゃれなヨーロッパ」の方がウケは良いよネ。

 

それに‥‥、戦中ではなく、現代のアニメ業界人でも、アジアに対する負い目は少なからずあるように思います。

 

‥‥そりゃあ、日本のアニメ業界はアジアに相当キツい仕事を投げまくっていますもんねえ‥‥。

 

 

でもさ、日本がアジアの中に位置する状況は変えられないのよ。

 

地球儀を見れば一目瞭然の通りに。‥‥地殻変動で大陸が大きく変わる何億年先まで待つ?

 

アジアに位置する日本ならば、アジアを否定するのではなく、真正面からアジアを肯定しないと。

 

私は台湾にも中国にも韓国にも仕事を通じた知人・友人がいますが、皆、とても誠実で一生懸命な人ばかりでした。海を越えて、アニメのために日本にやってくる人たちですもん。関東在住の人間がアニメの仕事をやるのとは状況が違う‥‥のでしょう。

 

 

ネットワークがどんなに発達しようと、地球の形までは変えられないです。

 

ネットワークは強力な武器ですが、その武器の強さに甘えて、傲慢になっては「事」を為損じます。

 

 

わたし的には、「.asia」よりも広い、「.earth」「.gaia」アカウントでも良いくらいです。

 

‥‥て、「.earth」ってあったんだね。今、検索して気づきました。昔、独自ドメインを取得した時にはなかったような‥‥。調べて見たら、2015年からの新規のドメインみたいです。

 

 

とまあ、地球儀をコロコロ回して世界を眺めていると、色々なイメージや感慨が湧いてきます。

 

しかし、いくら地球儀とは言え、以下のようなのはインテリアの装飾になり過ぎて、NG‥‥ですかネ。‥‥可愛いですけど。

 


今後のタブレットとHDR

iPadもFireも、どんどん進化していくのが楽しくてしょうがない私ではありますが、まだまだ進化を期待する部分もあります。

 

その中でも一番、今後に期待したいのは、「色域」です。

 

つまり、ハイ・ダイナミック・レンジ=HDRです。

 

HDRはおおまかに分けて2種類あって、ここで言うHDRとは、10年くらい前からデジカメで話題のHDRではなくて、映像技術における記録レンジの大幅な拡張を意味するHDRのほうです。

 

*三角形で示された色域が広いほうが、HDRの1つ、Rec.2020です。緑の色域が飛び抜けて拡大されているのがわかります。

 

 

現在、DVDやBD、ネットの映像の大半は、SDR=スタンダード・ダイナミック・レンジで、単位で表すと100nitです。しかしHDRは、300〜1000nitで、規格上は10000nitとその差は歴然です。

 

根本的なこと‥‥ですが、現在標準のRec.709やsRGBは、人間の目はおろか、フィルム時代の色域に遠く及びません。日常で見慣れている色域なので、「いつのまにか騙されて」いますが、テレビやネットの映像や画像は、肉眼に比べて著しく鈍い色彩です。

 

正直、私も数年前までは、「映像におけるHDR」と聞いてもピンとこなかったのですが、「HDRの使い方」を見たり聞いたり、自分でも意識するようになって、ようやく、HDRの有用性を理解できるようになりました。

*デジカメのHDRについては、ソニーのコンデジでHDR機能の有無で買ったり、PhotoshopのほかにHDR専用の複数のソフトを買ったりしてました。‥‥なので、映像の分野でHDRと聞いて、少々混乱したことを思い出します。

 

SD=DVDやVHSの時と同じく、SDRでも「今の色の見え方でいいじゃん」と思う人は、2017年現在はまだ大半だろうと思います。しかし、それは見る対象が「テレビやパソコンモニタ」で「テレビ放送やネット」の映像を見ているだけだからです。

 

今、映像はHDサイズが当たり前で、「SDサイズは小さくて絵がボケてる」と皆が思うでしょう。同じように、HDRの視聴環境が整ってくれば、「よくまあ、あんな狭いレンジの薄暗い映像を何十年も見てきたよなぁ」と、SDRを古めかしく感じる時代がやがて到来します。

 

要は、「テレビだから」「肉眼ではなく、映像だから」と手加減していた色域に、ようやく「改善のメス」「のびしろ」が与えられるわけです。

 

実際、4Kのメインモニタ、最新のiPad Pro、そしてRec.2020やDCI-P3の色域を日頃から見ていると、Rec.709やsRGBは「過去の色」です。

 

HDRだと四六時中キンキンに眩しい映像になる‥‥と誤解されやすいのですが、そうではなくて、今まで全く再現できていなかった緑の発色とか、どんなに明るい部分でも濁ったグレーだったりとか、「削られていた部分が削られなくなって、現物に近くなる」のです。

 

1000nitあるからって、映像をケバケバしい絵にする必要はないです。あくまで今までの絵作りの感覚で、旧来のビデオ機材の制限がなくなるだけです。そして、旧来の制限がなくなったことで、新しい絵作りも生まれるでしょう。

 

 

で、今後のタブレットは、HDRの色域をカバーするモニタへと進化していって欲しいです。カジュアルに毎日見るものだからこそ、高品質な絵が必要なのです。

 

そうなると、俄然注目されるのは、有機ELのパネルでしょう。作業場のメインモニタは液晶の4KHDRですが、色々な場所で有機ELの4Kテレビとかマスモニを見ると、「こういうパネルがどんどんモニタやタブレットに実装される未来が早く来ないかなぁ‥‥」と思います。

 

 

 

4KHDR60pが標準化して身近になってくると、外に出かけてiPhoneで気楽に撮影した映像が、自宅のテレビやiPadやFireで綺麗に映し出されるようになるので、「世界を歩き回るが楽しく」なります。もちろん、その時のテレビやタブレットは4K60pHDRに対応していることが前提です。

 

そして、今、私らが開発を進めている4K60pHDRのアニメーション技術も、そうした未来で威力を発揮することを前提としています。ぼんやりとボケて、白濁した薄い膜に包まれているような、現在の4K24(30)pSDRではない、新しい品質基準のアニメが、未来のHDR対応のiPadやFireやテレビで手軽に再生されるようになるでしょう。

 

「未来の映像の楽しみ」に向けて、全てのハードやソフトが徐々にリプレースされていく現在。

 

アマゾンもAppleもNetFlixも、最近、4KHDRの映像配信を宣伝文句として売り出してきています。となると、当然、Appleもアマゾンも、4Kはともかく(7〜10インチに4K解像度が有効かは検証の余地あり)、HDRに対応したタブレット端末をやがて用意する流れになると思います。部品コストの問題が製品開発のリアルな課題であったとしても、部品供給の状況は一年毎にどんどん状況は変わっていきます。

 

 

 

画面解像度、リフレッシュレート、その次は、いよいよカラーレンジです。

 

ディスプレイの宣伝文句もさ‥‥、「明るさ何%向上!」ではなく、「色域の豊かさをアピール」するようなものに変わっていく必要があるでしょう。そんな売り文句じゃ、イメージが伝わらないって‥‥。

 

今や、明るさを気にするユーザって、ほとんどいないような気もします。少なくとも、私の身の回りでは。‥‥むしろ「眩しい!」と言っている人の方が多いように実感します。

 

タブレットは今や、十分、綺麗な画質を有していますが、新世代の映像フィールドは、すぐそこまで迫っています。そのフィールドの恩恵を享受できる、新世代のタブレットの登場を、日々の技術開発の傍、期待しながら見守っていこうと思います。

 

 



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