運用してみそ

新型のiPadが出ましたネ。iPad AirでもProでもminiでもない、無印iPad。

 

新型のiMacやiPad Proはしばし御預け、今年の秋頃という予想もありますが、私はあと2年は今のiMac 5K(初期型)を使うので、ゆっくりと待ちます。

 

新型のiPadは、普及価格帯のとりたてて秀でた特徴のない平凡なモデル‥‥ですが、そのぶん、「Appleとしては」購入しやすい価格となっています。2KのRetina、1080p30fpsのビデオ、スローモーションは120fps、Touch IDのボタン‥‥と、必要十分な性能です。

 

2台目、3台目のiPadにはぴったりな製品ですネ。

 

 

* * *

 

 

iPad Proで原画を描くとき、私はiPadとFireを設定ビュワーとして使っていますが、設定ビュワーは最低でも2つは必要です。できれば3つあると便利です。内訳は「設定用に2つ、絵コンテ用に1つ」です。

 

全部をiPadで揃えるとお金がかかるので、昔使っていたiPad(iPad 2とか無印のminiとか)を使ったり、Fireの8インチモデルなどを買うと、安く環境を揃えられます。絵コンテを確認する用途だけに限るのなら、Fireの7インチでもなんとかいけます。設定閲覧用だとさすがに最低8インチの画面の大きさは必要でしょうネ。

 

「そんな‥‥いかにも贅沢な‥‥」と言われそうですが、実際、設定を見なければ原画は描けませんし、絵コンテも随時確認する必要があります。

 

せっかく、iPadに切り替えて、机が広く、クリーンに作業ができるようになったのに、設定や絵コンテは相変わらずの紙のまま‥‥では、台無しです。

 

絵コンテ&設定ビュワー、「大量にストックできる自分の資料棚」としても活用できる、iPadとFireは、制作環境の欠かせないアイテムです。指先で全ての操作を完結できるので、邪魔なキーボードを置く必要もありません。

 

 

「でも、iPadを買っても、打ち合わせでは紙のほうが便利だし、大量にストックできると言っても、実際に使うときは検索が面倒」と思う人もいましょう。

 

実は私も、環境を揃えるまではそう思ってました。絵コンテをPDFで読み込んでも、打ち合わせのメモを書き込めないんじゃ意味がないですし、作品のキャラ設定から美設から色見本から全部iPadに詰め込んでも、あまりにもページ数が多いと、見つけ出すのが大変ですよネ。

 

しかし、それは作業の準備を整える習慣を身につけていなかった‥‥からです。紙ではなく、オールデジタルで原画を描くときの準備‥‥です。

 

私のこの1年は、まさに、iPad原画の「実証運用」のような1年でした。事前にどんなに頭で考えても、実際に運用してみないと見えてこないことはたくさんあるものです。

 

私の実感として、以下のような作業前の準備が必要です。

 

  • PDFに直接書き込めるAppのインストール
  • 設定の抜粋とPDF化
  • クラウドの運用と端末間の相互通信

 

まず、打ち合わせ前に、絵コンテや設定をPDF化して、さらにPDFに直接手書きで書き込めるアプリもインストールして使えるようにしておきます。そうしないと、PDFを眺めるだけで、メモを書き込むことができません。なので、何らかの「PDFに書き込むことができるアプリ」を購入します。私は「MetaMoji Note」(1000円くらいだったような)を使っています。

 

打ち合わせが終わったら、自分の担当する箇所に必要な要素だけを抜粋して、作画作業集中用のPDFを作ります。macOSには「プレビュー」というソフトウェアがあって、簡単な操作で、ページの抜粋や削除ができます。自分の担当シーンに出てくるキャラや美術、小物(プロップ)、色見本、参考資料などを、1つのPDFにコンパクトなページ数でまとめます。

 

これをしておかないと、ページ数のあるPDFを延々とスワイプしたりいちいちインデックスを表示してページ移動しなければなりません。必要のないページは削除して、自分の作業に必要がある設定や資料を抜粋することで、格段に作業の煩わしさが減ります。‥‥もちろん、編集するのはコピーしたファイルを使い、オリジナルはとっておきます。

 

紙の作業でも、同じこと=ページの抜粋をしている人は多いかも知れませんネ。分厚い紙の束はなにかと、作業するには扱いにくいですもんネ。

 

そうして出来上がった自分用の設定書類PDFを、各iPadやFireに供給する必要があるのですが、いちいち、ケーブルで繋いでiTunes経由で送ってたら、まどろっこしくてお話になりません。面倒この上ないです。

 

iPadの場合、母艦のMacやiPad間で、自由に簡単な操作で、Air Dropにてファイルを受け渡しすることが可能です。もし、Air Dropだと自分の期待する動作にならない場合(=Procreateで開きたいのに、違うアプリが受け取ってしまう‥‥など)は、クラウドを使います。AmazonのFireにPDFを共有する際も、クラウド経由です。

 

もちろん、WiFiの環境は作業場に作っておきます。iPadやFireは「有線なんて知らん」という仕様なので、WiFiの環境は必須です。

 

 

‥‥とまあ、どんなに機器を揃えても、実際の運用のコツを掴まないと、紙と鉛筆がタブレットに変わっただけの環境止まりです。コンピュータ機器を導入して作業をおこなう醍醐味は、様々な要素がネットワークを通じてリンクしバインドすることですから、描く時だけ「デジタル」ではもったいないです。その昔、クジラを捕鯨して油だけ絞って他の部分は捨てていた西洋人のごとく‥‥です。「デジタル」を使うのなら、骨の髄までコンピュータをしゃぶり尽くしてこそ‥‥です。

 

ぶっちゃけ、今の私は、紙の現場の仕事でなければ、1枚も紙を使わずに作画の仕事ができます。iPad、Mac、サーバ、無線&有線ネットワークのWANとLAN、クラウド‥‥で、すべてカバーできます。

 

運用してみて初めて実感できることは多く、実感したからこそ思いつく新しい作業上のアイデアも出てきます。石橋を叩いたところで、どうにも判断できず、結局渡らず仕舞い‥‥よりも、まずは運用してみて‥‥ですネ。

 

 

 

でもねえ‥‥。iPadに変わっても、作画は大変な仕事‥‥だよね。しみじみ、思います。

 

来る日も来る日も、四六時中、iPadで作画して、疲労が溜まってくると、iPadのボタンすら押す気になれなくなるのは、自分ながら驚きました。「頼もしく見えたiPad ProとApple Pencilが、うんざり見える」と。

 

あと、忙しくて疲れてくると、恒例の「紙のくせ」がひょいと出てきます。新規レイヤーを作らずに、棚に紙を取ろうとして手を伸ばす‥‥とか、相変わらず、朝一番で作業するときに「スターン!」と作画机のライトのスイッチをONにしたり。

 

‥‥簡単には、紙の癖は抜けんですネ。

 


増やし過ぎ問題

ここ10年間のアニメ制作の傾向として、様々な要素について「増やし過ぎ」な問題を抱えていると感じています。もちろん、増やすのには理由があるのですが、その理由のほとんどは「今、足りないから」という場当たり的な判断に基づくものが多いように思います。

 

私が知る、ここ10〜20年で増えた要素は‥‥

 

1話あたりの原画マン

1話あたりの作画監督

線撮などのオフライン素材

セクション(工程)の数

撮影のスタッフ数

 

‥‥あたりです。それぞれ異なる理由がありますが、増えた事実に変わりありません。

 

1話あたりで十数人の作監がクレジットされる作品もあるなど、もはや「作画の監督」ではなく作業内容や発注の仕様(作監=作画の監督料がなんと1カット単価!?!?!)から鑑みて「原画修正」と役職名を変えた方が良いような状況です。普通、現場の単一セクションに監督職の人間が十数人もいる状況なんて、他には考えられないですもんね。十数人の作監が各々「作画の監督責任」を負えるとは到底思えないですが、そうしたことも含め、「増やし過ぎ問題」はアニメ業界のそこかしこにあるのでしょう。

 

 

しかし、根本的な原因を思索すると、現場に課せられた作業量=処理内容のオーバーフローやキャパオーバーが蔓延しているゆえだと感じます。

 

キャラが複雑で描くのに時間がかかれば、人ひとりあたりのこなせる量は減りますし、技術内容が難しくなって旧来のセクションでは処理できない内容が発生すれば、他の処理能力をもったグループに作業を委託することにもなるでしょう。そもそも制作本数が増えれば、全体的にスタッフ数が足りなくもなるでしょうし、仕事を掛け持して首が回らなくなるスタッフも増えるでしょう。

 

そして何よりもマズいのは、やることが増えて、人数が増えて、業界全体、会社全体、グループ全体、そして各スタッフが「儲かり過ぎてウハウハ」なのでは決してなく、むしろ絵に描いたような「レッドオーシャン」状態へと突入して、徐々に単価が下がる傾向が表れている‥‥ということです。

 

もちろん、会社にブランドがあって、増えた中から条件の良い選択することで有利に制作を進めることができる場合もあるでしょうが、大半は「増やし過ぎたことで結果的に苦しんでいる」事例の方が多いんじゃないでしょうか。

 

アニメ業界の知人たちに聞く話は、「最近はとてもお金の面で楽になった」とか「良い仕事が増えて景気が良いねえ」ではなく、「仕事量は増えてるのに稼げなくて、どんどんキツくなる一方だ」なんていう話ばかりです。

 

 

それにもっと深刻なのは、増えた人間の未来です。

 

例えば、撮影工程で手が足りなくて、数年の短いスパンで増やしていって、あれよあれよという間に今は10人20人の大所帯だ‥‥となった時に、その大所帯を構成するスタッフは、未来、全員が撮影監督になるのでしょうか。明らかに人員の構成がおかしくなりますよネ。撮影監督になった後はどうするのでしょうか?

 

技術の層が厚くなければオーダーに応えることが中々難しいアニメ制作の性質を鑑みた場合、60,50,40,30,20代の人間が適度に分散して人員が配置されるのが理想だと思いますが、アニメの制作本数バブルの時に、むやみに人を増やして、特定の年齢層だけが過多になって、その反動で特定の年齢層以下の需要が極端に減る‥‥なんていうことも起こり得ます。

 

加えて現在は、以前よりも「キャラが描ければ良い」という風潮が強いので、年齢層だけでなく技術内容も、かなり偏った編成になる可能性はあります。今のキャラの流行りが下火になって、様々な絵柄に対応しなければならなくなった時に、まさか40代でパースや平面構成を習得するわけにもいきますまい。吸収の効率が落ちたアラウンド40〜50になって初めて基礎的な技術に目覚めるのでは、正直、遅すぎます。

 

業界バブルの時に増やした人材は過多だから減らして‥‥なんて、人を雇った後では、中々都合よくいかんでしょう。

 

何だかベビーブームのような話、バブルとロスジェネみたいな話ですネ。

 

 

さらに深刻なのは、増えて重くて身動きがとれなくなった現場は、技術開発にコストを回せず技術的進化が停滞するようになり、技術的な個性=アドバンテージやブランドを損失し、競争力を削がれていくことです。どんなに仕事が多くても、同じことを繰り替すばかりで、未来の進展や展望が全く見えない‥‥という、極めて辛辣な状態に陥ります。

 

実はこの構造は2008年くらいの頃には既に見えていた事です。ゆえに、危機感を感じた人々は、それぞれ、未来の危機に備えて、着々と準備してきたのです。やりかたは人それぞれですが、風船が膨らみ続けることがないのを悟って、様々に行動してきたのを、私はいくつも垣間見ています。

 

一方、「頑張り続ければ、いつかきっと、報われる日が来る」と根拠のない希望を胸に抱き続けてきた人は、今の状況をなんとするのでしょう。夢を打ち壊すような話ですが、「報われる要素や条件が存在したときに、報われる可能性が高まる」のであって、何でもかんでも一生懸命やってれば、無条件に救われたり報われたりするわけではないのです。

 

「でも、いつか挽回できる日がきっと来る」と思いたい‥‥かも知れませんが、それは過去の数百年の歴史から見て、難しいと言わざる得ません。

 

挽回する日などやってきません。「挽回」という考え方自体が負けています。挽回はなく、新しい技術や勢力が台頭して、塗り変わっていくだけです。もしあったとしても「リバイバル」「リメーク」「メモリアル」という位置付けです。青梅街道や甲州街道を走るのは自動車やバイクであって、馬車が青梅街道を走る日は、何かのイベントでもない限り、2度とこないでしょう。

 

「挽回」ではなく、人や技術の層をどんどん年輪のように「積み重ね」ていくことが重要です。自分の中に「鉄板の技術」を作るのは良い事でしょうが、「鉄板の技術」で停滞してこだわり続けては、生き抜いていけないのです。技術は追加し更新し続けねばなりません。時代性とともに歩む職業は特に‥‥です。

 

 

増やすことも時には必要となりましょう。しかし、「一時的な今」を支えるために、増やしすぎるのは、とても危険。

 

特に人間に至っては、新しい人材が、今を支える人材と合わせて「極めて有効に未来を形成」していくように、人材を採用する側にも高い能力が求められます。

 

人材や機材や場所を増やす時に、あらかじめ、どのようなロードマップを見据えているかが、とても重要です。

 

 

「そんなに、キワキワかなあ‥‥。ほかの職業って、そんなにシビアに人材を採用していないように思うんだけど。 結構、いきあたりばったりで、人手が足りないから増やしてるだけなんじゃん?」と言う人もおりましょう。しかし、アニメ制作という職種は、技術的にかなり特殊でシビア、しかも時代性の影響を運命付けられてもいます。都合の良い時だけ「アニメ制作は高い才能を要求される特殊な職業で」と言い、都合の悪い時は「他の一般的な職業と等しく」と引き合いに出すのは、あまりにも整合性を欠き、ゆえにアニメ業界の「貧困」の原因になっているとも思います。

 

 

アニメを作ってお金を稼ぐ‥‥って、そうとうシビアでキワキワでキツいことだと思います。なのに、足りないから増やす‥‥だなんて誰でも考えつくような運営方針で、肥大化の一途を辿っていたら、そのうちに抱えきれなくなって倒れるのは、‥‥‥必然ですよネ。

 

ここ10年で業界入りした人間は、未だ、「仕事が減る」という体験をしていないと思われますから、「仕事が今のようにずっと有り続ける」という想定でものごとを考えがち‥‥だとすれば、相当、危険です。仕事なんて、増えたり、減ったりです。そして「永遠の流行」というものも存在しません。必ず、今の流行りは衰退し(=過去のものとなり)、仕事の量にも大きな波があります。アニメ業界の難しいところは、世間の不況や好景気と時間軸が一致しないところで、世間が不景気だと騒いでいる時には仕事があるのに、世間の景気が上向いてきた時には業界全体の仕事の量が減るようなこともあります。私が「インサイダー」として知る業界の30年間だけで見ても‥‥です。

 

そんな中、こと、人材においては、足りないから増やす、余ったから減らす‥‥なんてことが簡単にできるわけじゃないですもんネ。

 

その昔、今は現場から消えたプロデューサーが「生活がかかっているスタッフは使いたくない」と言っていたことを思い出しますが、仕事に生活をかけていない人間なんて、どれだけいる? 普通、みな仕事で生活を維持しているでしょ? まるで無報酬の趣味のように仕事をする人間なんて、ほぼ皆無ですよね。

*そのプロデューサーの言わんとしたい意味はわからなくもないですが(些細な仕事1つ1つに生活の重荷をふっかけられるのが面倒だ)、それはそのプロデューサーが単価で仕事をする人々の痛みを全く考慮できていない証でもあります。「仕事に生活をかけてくる人間はいやだ」というのなら、まず、そのプロデューサー自身が体現してみせるべきでしょうね。生身の人間に作業を発注する際に、まるで自動販売機で缶コーヒーを買うがごとくの振る舞いゆえに、そのプロデューサーはやがて現場からフェードアウトしていきました。ドライな関係を求めるのは、いつも「使い捨て気分満々の人間側」だけです。作品制作は、どうしたって、ウェットでドロドロするものですから、そのドロドロをあえて引き受けてこそ‥‥です。

 

つまり、人材を引き入れる時は、その人間の生活の重さも引き入れるということです。むしろ、その重さを作業グループの技術発展に活用すべきなのです。飛行機のエンジンはとても重いですが、そのぶん、空を飛ぶパワーを発生させるのです。

 

 

実は私、人を増やしたくてウズウズしているのですが、それは決して今の人手が足りないからではなく、「誰も所有していない未開拓の土地に先制して進駐して領土化し、そこに新たな生存権を獲得する」ための兵士や開拓民が必要だからです。とてもキナ臭いのです。周囲の今までの状況や経緯を鑑み、然るべき人材を然るべきタイミングで、2020年代以降の新しい制作技術集団の層を形成していきたいと思っています。「作画何名、撮影何名」といったレッドオーシャン型の人材募集ではなく‥‥です。

 

 

「増やす」という行為に対して、どのような理念をもっているか。

 

それによって、人の幸不幸は長いスパンで左右されていくのだと思っております。

 

 


ランニングコストとしてのパソコン

個人でアニメ制作に関わるフリーランスの場合、MacやWindowsのパソコンは自費での購入となり、そこそこ高額な「買い物」になります。

 

しかし、考えてみれば、仕事でパソコンを使う場合、それは「物」であっても、実は「作業を具現化する溶媒」であって、固定資産ではなく流動資産とみるべきです。あくまでパソコンは一時的に当人の作業を支える、「消耗しない消耗品」なのです。

 

「買い物」と考えてしまうと、アカンのです。電気水道ガス通信を「買い物」とは言わないように、パソコンも「仕事で使うのなら」、「物」ではなく、「仕事のインフラ」を支える「溶媒」と捉えるのがよろしいです。

 

1年で「もとを取れるか」はなんとも言えないので、流動資産というべきかは、専門家の方にお任せしますが、パソコンは3〜5年で必ず買い換える時期がきて第一線を退く、短命のハードウェアです。退いたマシンは、自宅サーバやサブマシンとして第2の活躍場所を与えることにはなりますが、SD、HD、UHD‥‥と確実に進化する映像フォーマットに対応していくには、マシンは一層の性能向上型が必要となります。

 

「デジタル作画」ではなく、パソコンで何らかを作画する状況においても、印刷に耐える解像度でドットバイドットで快適に作画したいのなら、数年前のパソコンのビデオカードでは能力が足りず、やはり買い換えが必要になるでしょう。例えば、4Kの液タブを使うには、4K60pで出力できるビデオ性能が必須です。(30pだと目が辛い)

 

 

 

私の作業環境のうちの1つ、28GBのメモリのiMac 2.5Kでは(なぜ、そんなハンパなメモリ容量なのかは話が長くなるので割愛)、メモリが足りないことが多くなってきています。ふと、FreeManをみれば、「真っ黒」になっており、開いてみるとキャッシュなどで一時的に食われた後に解放された「非使用中」が含まれるものの、メモリの残りは49MBだったります。

 

 

一番左が、FreeManのグラフ。まっくろになることが多くなりました。3〜6Kの素材を頻繁に用いるようになったのも、原因の1つかと思います。

 

28GBの使用状況。固定中と使用中で17GBですから、8GBや16GBのメモリでは足りないことが多いです。他のマシンでは32GBが標準ですが、同じく、メモリは足りないことが多くなりました。

 

28GB、32GBで「メモリが足りない」なんて、10年前には思いもしなかったことでしょうが、映像の進化を想像できれば、至極当然のことだったとも言えます。

 

 

私は今でも、学校を卒業した時に親に買ってもらった机(ビクター製の、天板が傾斜できる中々な逸品)が現役ですが、パソコンはそうはいきません。5年持てば上々です。

 

つまり、50万円かけて「えいや!」と「清水の舞台から飛び降りる」思いで購入したハード一式でも、「50万円の品」ではなく、1年10万円の「機材環境維持費」とみるべきです。

 

要は、1ヶ月1万円の「機材使用費」です。そのほかに「ソフトウェア使用費」も上乗せしなければなりません。

 

コンピュータで仕事をするのなら、コンピュータがいくら、ペンタブがいくら、ソフトがいくら、‥‥という計算ではなく、月割りでいくら‥‥という計算を習慣として身につける必要があります。

 

そして、その月割り額は、コンピュータで仕事する以上、支払い続けることになります。‥‥この辺が、今のアニメ業界の「お金」の事情と、「どうしても折り合いがつかない」部分なのだとは思います。

 

 

 

こうして書いてると、「今のアニメ制作現場の原画動画の料金では、非現実的だな」と暗い気分になってきます。電卓で計算して、試算だけで早々に破綻しますもんネ。

 

シンポジウムで「デジタル作画」を先導(いや、扇動かな?)したところで、一番気になる「お金」=仕事の土台の部分の問題に触れずじまいでは、「どうやってコンピュータでの作画をスタートしたら良いか」はナゾのままです。

 

あくまで私の意見ですが、今の業界の作画料金体系では、デジタル作画を波に乗せることは無理だと思います。高価な運送費の高速ジェット貨物機に、単価の安い商品をいっぱい積み込んでも、利益は得られないと思うからです。

 

ジェット燃料にコストがかかりメンテにもお金がかかる高速ジェット貨物機には、相応に、単価の高い商品をいっぱい積む必要があります。

 

 

 

自社制作の作画がらみを、内部的に単価を高く設定できる作品なら、まだ見込みはあるかもしれませんが、今まで通りのフリーランスの単価料金体系では、パソコンの運用はかなり厳しいと思います。ぶっちゃけ、率直に、私の感触で言うと、です。

 

コストのはるかに安い紙と鉛筆ですら、破綻しかかっているような50年にも及ぼうとするアニメ制作システムです。

 

どこにどうやって、コンピュータを新規導入して、定期的に買い換える余地があるのか。

 

 

 

私の知る限り、コンピュータを自分の仕事の道具として使う人々は、すでに「作画」「撮影」という狭義で作業を捉えていません。コンピュータで自分ができる仕事はどんどん引き受ける‥‥という、皆、作業セクションのセクショナリズムを自ら取り払った人たちです。

 

一方、「作画だけをやります」という人でコンピュータを「メインで使う人」は‥‥思い当たらないなぁ‥‥。つまみ食いしている人は多いとは思いますが‥‥。

 

 

 

色々な作業を受注して、ようやく経済的に成立できるかもしれない、道具としてのパソコン。

 

それに加えて、パソコンを仕事のメインウェポンとして導入することは、「サムライが刀と剣術を捨て、チョンマゲを切り落とし、近代的な武器でCQC/CQBの技術を得る」という、ある種、技術上の移り変わりの「極論」にも到達する話題でもあるのです。

 

まあ‥‥ですから、ゆえに、江戸から明治の時と同じように、かなりの抵抗感、違和感が現場にも潜在するのでしょう。

 

 

 

お金、人、キモチ‥‥の色々が、パソコンのまわりを取り囲んでぐるぐると数匹の虎のように歩き回っているのが、今の状況。ぐるぐる回って回り続けて、溶けてバターになるのは、いつごろのことかな。

 

 


CC

Adobe Creative Cloudは、導入するには価格が高い‥‥と言う人は、こと、アニメ業界においては、多いように感じます。「CCって、安上がりだよね〜、数年間の運用のスパンで考えれば」と言っている人と会ったことがないです。‥‥ちなみに、私は、After Effects、Photoshop、Premiere、Audition、DreamWeaver、Illustratorの6つを最新版に保つことを考えれば、以前より遥かに安上がりだと思っていますけどネ。

 

私が割安と感じるのは、「5つ前後のAdobeソフトウェア」を「最新版に保つ」という目的があるからです。

 

なぜ私が複数のソフトウェアを最新版に保つ目的があるのか‥‥というと、アニメ制作の現場にいながら、標準のアニメ制作とは違う技術を用いて、標準外の作業をし、積極的に新しい映像フォーマットを活用しようと思うからです。例えば、4Kでアニメを作る‥‥なんて、現場やシンポジウムなどでは全く触れない「イタい話題」かも知れませんが、2017年現在の私らのグループではどんどん経験値を蓄積し、様々な未来の可能性を模索しています。ゆえに、最新の映像フォーマットを存分に活用できる最新のソフトウェアとマシンが必須なのです。

 

しかし、これは、コンピュータで映像制作をする全員に当てはまることではありません。むしろ、私らの考えは少数派に属します。

 

多くの人は、今の仕事を、どれだけ効率的に快適に、運用コストを抑えつつ、こなしていくか‥‥が、主目的となるでしょう。

 

となると、AdobeのCCのプランは、どれも「使えねーな」ということになるのです。

 

PhotoshopとLightroomだけが使えるフォトプランこそ980円ですが、他のソフトを単体で使うと2180円、全部入りだと4980円で、絵に描いたような「帯に短し襷に長し」です。After EffectsとPhotoshopを使いたいのなら、2180x2=4360円で「購入者生殺し」みたいな価格設定です‥‥よネ。

 

もっと柔軟なプランと価格が必要なんじゃないですかね。

 

例えば、どれか2つを、自由な組み合わせで、1980円とか、2380円とか。

 

Photoshop限定(つまり、Adobeにとって、Photoshopが今でも稼ぎ柱なんでしょうネ)の「フォトプラン」とかじゃなくて、「PhotoshopとIllustrator」「PhotoshopとAfter Effects」「After EffectsとIllustrator」「After EffectsとPremiere」など、自由な組み合わせで、全部入りの半額未満に抑えて、はじめてユーザーのココロは動くんじゃないかと思うのですヨ。

 

あまりにも安価なのでクリスタを引き合いには出したくないですが、クリスタは1ヶ月500円ですもんネ。

 

「Adobeのソフト全部なんて自分には全く必要なし。2つあれば事足りる。しかし、2つチョイスすると、4360円。コンプリートプランの4980円と大差無い。‥‥ああ、なんだか無理だな。昔のバージョンのままでいいや。」

 

‥‥という判断に落ち着いている人は、かなり多いんじゃ無いでしょうか。人だけでなく、グループも、会社も。

*会社向けには「法人プラン」があり、さらに、やや割高です。

 

もちろん、ソフトウェアの開発・販売側の事情もあるでしょう。しかし、少なくとも私の知る多くの人は、CCのプランと値段の「融通の利かなさ」ゆえに、CC導入を最初から候補外にしています。

 

 

なんで、企業や会社って、こうなんでしょうネ。人のキモチがわからないシステムを作るんでしょうかネ。

 

アニメの会社も同じで、今その瞬間の制作事情を維持するために、スタッフを安く買い叩くことばかりに邁進し、そのあとで、スタッフが離れていくことまで先読みできてない‥‥ことは、そこら中で聞く話です。

 

AdobeのCCって、その料金体系ゆえに、潜在的な顧客を膨大に失い続けているようにも思います。Photoshopにおいては、誰もが使っているソフトなわけですが、CCを導入できないがゆえに、かなり古いバージョンのままで落ち着いている人はかなり多いです。「ですから、Photoshopはフォトプランで980円で‥‥」とAdobe側は言うのかもしれませんが、じゃあなぜ、After EffectsやIllustratorは単体980円で提供してくれないのでしょうか。なぜ、Photoshopだけ980円?

 

私はマーケティングの専門家ではないですが、現場の横の繋がりなどで、色々なキモチや意見を耳にします。たとえマーケティングに通じている人でも、クリエーターたちのキモチを全く知らずに汲むことができないのなら、「この料金設定が欲しかったんだ。これだったら、お金をなんとか工面する。」とユーザが思える妥当な金額設定などできんでしょ。

 

 

私らの技術グループは、「コンピュータで飯を喰っているんだから、ソフトウェアにコストがかかるのは当たり前」という意識がデフォルトです。そのかわり、どんどん新しい技術で自分らの居場所を切り開いていくんだ!‥‥という気概もあります。そういう意識の人間やグループにとって、CCのコンプリートプランは必需品です。

 

しかし一方で、「今までの技術を継承し、安定した作品作りを実現するんだ」という意識のグループのほうが、アニメ業界的には圧倒的に多いはず。

 

その圧倒的に多い勢力に対し、AdobeのCCの料金体系は、あまりにもマッチしません。アニメの撮影やペイントや作画の現場にInDesignやInCopyやAuditionなんて全くいらんでしょ? マルチ業務を標榜する私らのグループも、アニメの映像作りにおいてはInDesignやInCopyなんて全く使わないですもん。

*マルチに業務を引き受けていると、音声編集のAuditionは結構重宝しますけどネ。

 

2つだけあれば良い ‥‥という部署や人はかなり多いと思いますが、そういうニーズに適応する「中間的な料金プラン」がないのは、私の考えるところ、「料金体系の致命傷」とも思えますけどネ。

 

 

Adobeが良きソフトウェアを販売し続けるために、Adobeにはたっぷり儲けて欲しいのですヨ。20年来のユーザとして、出来損ないのバージョンアップを頻発するような会社には、なって欲しく無いです。

 

いったん掴んだものは離さない!‥‥とばかりに、頑なに両手を握りしめて、結局、新しいものを掴むことができないのなら、一旦、つかんだものを脇に置いて手放してでも、改めて、両手を自由にして、古いもの新しいもの両方を掴みなおしたほうが「将来的にお得」なような気が‥‥‥、私の勝手な考えではありますが、そう思うのです。

 

 

 

 


藪蛇

前回書いた、コンポジットエフェクトの呼称をタイムシート上ではどのように呼び表すか‥‥の話題は、実のところ、私がタイムシートを書くときにいつも迷うことでもありました。

 

実際、「ブラー」と書くのさえ、躊躇われるのです。

 

もうそろそろ、「ブラー」=「ぼかし」くらいは使っても良いだろうと思うので、私は「ブラー」とだけは書きますが、「何々ブラー」と書くのは、意識的に避けています。

 

別に、どんなエフェクトを使おうが、カットの内容に合っていれば、事は済むのです。何を使うかは、担当する撮影さんにお任せすれば良い‥‥のです。

 

 

それに‥‥、妙にAfter EffectsやPhotoshopの「エフェクト」「フィルタ」名を持ち出すと、「呼称の厳密さ」が要求されるようになります。これが一番、キツい‥‥んじゃないですかネ。だから私は、After Effectsを毎日使っていて「勝手知ったる」ソフトウェアでも、原画を描くときはあえてタイムシートには汎用的な呼称を用いるのです。

 

例えば「ガウスブラー」は、After Effects CC 2017での正式名称は「ブラー(ガウス)」です。まあ、「ブラー(ガウス)」を「ガウスブラー」に読み換えるくらいのことは出来ましょうが、「動くときにブラーがかかる」ブラーを「モーションブラー」とか書いちゃうと、After Effectsでは全く別の機能を指してしまいます。実際、私はついつい癖で「ブラー(方向)」を「モーションブラー」とか「移動ブラー」とか言ってしまって、「そのエフェクトはどこにあるんですか?」と質問されたことがあります。

 

ですから、アニメ制作の「制作運用上の公文書」とも言えるタイムシートで、うろ覚えなソフトウェア機能の呼称を書くのは、混乱の元ですし、書いた本人にとっても「やぶへび」なのです。下手にAfter Effectsのエフェクト名なんて、言わなきゃいいのに、書かなきゃいいのに、‥‥ということです。

 

それに、After Effects前提でコンポジット作業を語るのも、如何なものかと思います。ソフトウェアの縛りなんて、できるだけ無くして、用語はフラットに扱うべきと、私は考えます。どんなソフトウェアでも通用する汎用的な用語を、意識的に取り扱うべきだと、私は思うんですけどネ。

 

 

ちょっと話は逸れますけど‥‥

 

最近のAfter Effectsって、どんどんボロくなってますよネ。特にCC 2017は私の居る現場では「大不評」です。キャッシュの取り扱いがもうズタボロですし、(主観ではありますが)不必要な機能を増やして逆に使いにくくしているし、不安定さがどんどん増しているし‥‥で、After Effectsの未来にかなり不安を感じてます。

 

なんかさあ‥‥Creative Cloudで定額で使用料を徴収できるようになって、Adobeって「あー、もうこれで、次のバージョンを買ってもらえるか、気にしなくてよくなった」とばかりに、「大幅に手抜き」してないですかネ。‥‥開発面で。

 

ベータ版みたいな不完全な状態で、大した検証もせずに、メジャーバージョンアップして、下図のザマです。After Effects CC 14.1.0.057の「フッテージの整理」「フッテージの統合」のダイアログです。

 

 

何これ。 ‥‥‥‥ベータテスター向けのアルファ? ベータ? でも正式バージョンですよネ?

 

「削除 されたフッテージあるいはフォルダーアイテムは、2 でした。」‥‥の間違いなのはAfter Effectsを長く使ってれば受け流せはしますが、これって「スープに蝿が浮かんでいる料理を客に出す」ようなもんですよネ。

 

どんなに美味な料理でも、蝿が混ざっているのを気づかずに何度も客に出す店って、‥‥ちょっとヤバいじゃないですか。

 

知り合いや身内の作った料理ならば、髪の毛や小蝿など「平気平気」と、よけちゃいますけど、「客商売」は話は別‥‥です。

 

最近のAfter Effectsはぶっちゃけ、一事が万事、こんな瑣末な障害の繰り返しです。

 

 

2Kで2値化で24コマでSDRで作るんだったら、After EffectsはCS6のまま凍結‥‥というのは、賢い選択なのかも知れませんよネ。どんなに機能が増えても、バグや障害だらけの最近のAfter Effectsを使うよりは、運用上のリスクを抑えられますもん。

 

私が日頃、アニメ業界のCS5〜6でのバージョン停止に関して色々言っているのは、バージョンを上げたくてもできない「運用上の経済理由」にアニメ現場の深刻な問題を感じるからで、こと、After Effectsに目を向ければ、「何か、別の道を考えなければ」とすら感じます。

 

 

 

話を戻して。

 

‥‥というわけなので、変にAfter Effectsに合わせて制作システム上の用語を決めちゃうと、後で「そんな安易なこと、しなければよかった」なんて話にもなりかねません。After Effectsは永遠のソフトではないのですから。

 

タイムシートで扱う用語は、特定のソフトウェアに依存すべきではなく、むしろ、ダサダサなくらいに汎用的であるべき‥‥と、少なくとも私は思う次第です。

 


用語

前々回、タイムシートの記述に対して、「妙な具体的なフィルタの指示は無意味」と書きましたが、では、どのような指示が良いのか、思いつくままに書いてみました。

 

タイムシートはフィルム時代の産物で、「該当なし」も多いのですが、とりあえず。

 

ガウスブラー

滑らかブラー

=「ボケ」「ぼかし」

 

カメラレンズブラー

ボックスブラー

=「ピンぼけ」「アウトフォーカス」

*豆知識)「ピンぼけ」は意図せずしてピントがボケてしまった状態、「アウトフォーカス」は映像表現として意図的にピントをぼかした(外した)状態をいいます。‥‥でも、アニメだと実質、アウトフォーカスもピンぼけも同義です。

*予備知識)アニメでよく使われる「背景ピンぼけ大、Aセルピンぼけ中、Bセルピンぼけ小、Cセルにピント、Dセルピンぼけ大」‥‥のような指示は、原理的には「被写界深度の浅い状態」であって、決してピンぼけではなく意図的なフォーカス表現です。とはいえ、この場合も、タイムシート上の指示では慣用的に「ピンぼけ」で構わないでしょう。

 

ラジアルブラー

放射ブラー

シャイン

ラジアルファストブラー

=「ラジアルフィルター」「放射状のぼかし」

 

移動ブラー

方向ブラー

モーションブラー

=該当なし‥‥なので、「動きに合わせてブラー」とかでしょうかね

*余談)その昔「ゴーモーション」という実写の技術があり、ミニチュア撮影でもモーションブラーの表現を実現していました。現在はCGに取って代わられているようです。ゴーモーションについては、Wikipediaを参考

 

コーナーピン

メッシュワープ

ベジェワープ

パペットツール

ゆがみツール

=該当なし‥‥なので、「変形」「ディストーション」あたりでしょうか。

 

エコー

ブレンド

後幕&先幕シンクロ

=「OL(カット内OL)」「ストロボ」のほか、該当なしの効果もあります。

 

特殊な効果〜レインボーフィルタ、スマートブラー、スターグローなど

=あらかじめ作品の中で用語を決めて指定(他作品に通用する互換性はなし)

 

 

 

要は、「使用するエフェクト固有名や機能名」ではなく、「それによって得られる映像の状態」を記述すれば良いのです。

 

 

変に気を回して「CC Radial Fast Blur」なんて書かずとも、欲しい絵の状態=「放射状にブラー」と書けば、コンポジターは絵の雰囲気に最適なエフェクトの選択肢「Radial Blur」「ブラー(放射状)」「Trapcode Shine」などから適宜選択して、映像効果を付与してくれます。

 

中途半端な知識で中途半端に指示するのは、ぶっちゃけ、一番みっともなくブザマです。

 

だったら、「こういう絵にしたい」とイメージが伝わるシンプルな指示で良いのです。

 

 

「シンプルな指示では伝わりきらない、微妙なニュアンスを撮影さんに…」というのであれば、もう、そう思う本人が撮影をするほかありません。絵コンテと原画の関係性は、そのまま、タイムシートと撮影の関係性に通ずるものがあります。

 

もしくは、「つー、かー」で「いい感じが伝わる」撮影監督さんやビジュアルエフェクト担当者、グレーダーを「スタッフとして身内に取り込む」しかないです。

 

実写の撮影監督は、映画監督の女房とも共犯者とも言うじゃないですか。アニメでも同じです。

 

 

絵の細かいディテールやタイミングの1コマまで自分の思う通りに原画を描いてもらうには、絵コンテだけ書いていてもダメでしょう? 自分で原画を描くか、作監を兼任するしかないですよネ。

 

それと同じく、何から何まで自分の思う通りに撮影してほしいのなら、自分で撮影を兼任するしかないのです。タイムシートの指示だけで自分の思う通りに撮影をコントロールできるわけがないのです。自主制作ではなく、アニメ業界の商業アニメ作品は、あくまで「共同作業の成果物」なのです。

 

 

とは言っても、たしかに、タイムシートの性能が、現代の作品制作技術のニーズからどんどん旧式化して、古めかしいものになっているのは否めません。

 

何度も書いていることですが、Z軸の操作をT.B.とT.U.でしか表現できないのは、After Effectsなどの現用ソフトウェアの性能から鑑みて、著しく「タイムシートの規約そのものが旧態化」しています。Z軸だけでなく、様々な要素においても、です。

 

ただねえ‥‥、じゃあ、どこで「仕切り直し」をするか‥‥というと、アニメ業界の一番「苦手」な部分じゃん?

 

現在、仕上げと撮影が完全に「デジタル化」して久しいのだって、決して、業界が一致団結して「仕切り直した結果ではない」ですからネ。2000年初頭に「デジタルアニメーション化」に成功した一部の制作会社をみて、尻馬に乗るようにしてあっちもこっちも追随して、今の状態があるだけですもん。

 

結局は、生き馬の目を抜く勢いの制作集団が、どんどん新機軸を展開していって、流れを変えていくだけです。

 

これから先、10年20年30年後に、タイムシートがどんなことになっているのか。‥‥私としては、旧来のタイムシートは「メンテナンスモード」で運用し「保守」状態で維持できればベターで(=劣化を防ぐ)、本命はどんな映像フォーマットでも対応できる新しい指示シートです。

 

まずは、2025年までの成り行きを、新しい取り組みもおこないながら、見ていくのが良いでしょうネ。

 

 


タイムシートの指示

私は作画もやってコンポジットもやるので、自ずとタイムシートの書き方には慎重になります。

 

タイムシートの指示上で「いき違い」がないように‥‥と、こと細かくタイムシートに指示を入れるのは、実は「逆にNG」なことも多いものです。

 

妙に気合を入れて、タイムシートに必要以上の細かさで記入するのは、かえって逆効果です。

 

「いき違い」を軽減したいのなら、むしろ「できるだけ質素で単純明快」がよろしいです。

 

 

撮影スタッフ・コンポジターの技量を「標準レベル」と想定して、いわば「信頼して」必要最小限で記入するのが原則です。

 

タイムシートを必要以上に細かく記入しても、決して撮影上がりの品質は上がりません。タイムシートで挽回できる性質ではないことを認識しておくべき‥‥ですネ。

 

私は撮影監督もやってましたから、タイムシートの記述を「どのようなAfter Effectsの実際の操作にするか」をジャッジする役割でもあったので、いくつかの代表的な具体例を挙げることができます。

 

 

厳選して列記しますと、まず‥‥

 

After EffectsやPhotoshopの実際のフィルタ名で指示を書くのは、実質、意味が無い

 

‥‥です。「ガウスブラー」とか「カメラレンズブラー」とか「メッシュワープ」とか書いても、無意味です。なぜかというと、実際に用いるフィルタはその時々で最適なフィルタが選ばれるので、例えば「ガウスブラー」と指定してあっても、実際は「Fast Blur」で処理することも多いです。

 

じゃあ、どう書けば良いかというと、「ボケ」、「ブラー」(=ぼかしの意)とか一般的な用語で書けば良いだけです。あくまで「大づかみ」な表現でOKなのです。ピントを外したボケにしたいのなら「ピンボケ」で十分です。

 

ガッチリした線で描いてほしいから‥‥と言って、絵コンテやレイアウトバックに「三菱鉛筆UNIの4Bで作画」とか記入してあったら、「そんなのは、作業する側が、作業する環境で最適なものを選ぶから、いちいち鉛筆の銘柄まで指定するな」と思うでしょ? ‥‥それと同じです。

 

私はボックスブラーを状況に応じて適宜使うことがありますが、これはカメラレンズブラーの代用品で、四枚絞りバネに似たニュアンスが出せるからです。滑らかにぼかしたいのなら、ガウスブラーなんて使わなくても滑らかブラー(Fast Blur)で十分なことが多いです。「ガウスブラー」と指示を記入した原画マンか演出さんに「なぜガウスブラー? 滑らかブラーではダメな理由を教えて」と聞いてまともな返事が返ってくるとは思えないですしネ。

 

フィルタの指示は「あくまで汎用的な表記」を心がけて、コンポジット作業時に実際に何を使ってオーダーを実現するかは、撮影スタッフ、コンポジターに任せれば良いのです。

 

結果、仮に映像の仕上がりが悪いとしても、「ガウスブラー」や「ベジェワープ」なんてタイムシートに書いたところでコンポジットの質なんて上がりません。細か過ぎるタイムシートの記入など、結局は「悪あがき」なのです。もし撮影・コンポジットのクオリティに不足を感じるのなら、きっぱりと「別のスタッフ」に撒き直すことを検討すればよいです。

 

 

セル(レイヤー)の透明度は「気持ち」

 

タイムシートを書く方も、受け取って読む方も、「素材の透明度の数値はキモチの表現」と心得ましょう。「Cセル50%」と書いてあったら、「半分くらい透ける雰囲気が欲しい」というように解釈します。

 

間違っても、After Effectsのレイヤーの不透明度をタイムシート通りに50%にするようなことを、指定してもいけませんし、実際に操作するのもマズいです。

 

「なぜ?」と思うかも知れませんが、明確な理屈があります。

 

現在はまず、撮出しがおこなわれていませんから、背景とセルを合わせてみて、イメージする透明度にするためには、何%が正解か?‥‥がほとんど先読みできません。ましてや、原画マンに至っては、線画の段階しか関与していないのですから、「まともなパーセント指定ができるはずがない」のです。

 

色彩の知識になりますが、真っ黒の背景に、真っ白なセルを乗せた場合、不透明度が10%でもかなり明るく見えます。逆に、真っ黒の背景に、暗いセルを乗せると、50%でもわずかに見える程度です。

 

つまり、背景の色と、セルの色の、それぞれの素材の明るさ暗さや色彩によって、レイヤーの不透明度など「いくらでもルックが変わってくる」のです。

 

だったら、「20%くらい〜うすく見えるくらいに」とか、「ほとんど後ろが透けない程度で〜90%くらい?」と書いておいた方が、コンポジターにイメージが伝わります。

 

妙に具体的な数値を書くより、「%くらい」とイメージを伝えるだけにとどめ、実際のコンポジットの質はコンポジターの解釈の能力に預けて、映像の仕上がりの「実」をとるべきでしょう。

 

 

カメラワークのイーズは許容を広く

 

カメラワークの加速減速など「フェアリング」とも呼ばれる操作を、自分のイメージ通りに、今のタイムシート標準の記述法で書くことは困難です。そもそもイーズのカーブの記述法が制定されていません。

 

なので、カメラワークは「ストライクゾーン」を広めにとっておいて、大まかなA-B-Cなどのフレーム指定と「加速減速」の添え書きで「よし」とするか、目盛りで指定するかの2択で、「手打ち」にしておきます。

 

A-Bのフレーム指定でも、イーズ次第でいくらでもカメラワークの雰囲気を操作できますが、それを現在のタイムシートに指定することは無理なので、作画しか関われないのであればなおさら、大まかな指定によるイーズでカットが成立するように設計しておくのが肝要です。

 

‥‥実は、このあたり、結構「根深い」問題を孕んでいるので、別の機会に採り上げたいと思います。

 

 

まだ色々とありますが、ひとまずこの辺で。

 

 

絵コンテで原画作業のこと細かい指示ができないのと同様、撮影に対してタイムシートで指定する際も、過剰な記入は単なる情報のオーバーフローに過ぎません。

 

「必要なことだけを書いておけば」良いのです。

 

「でもそれだと、思った通りに上がってこないんだよ」とやきもきしても、それはタイムシートの記述ではなく、当該のスタッフの技量です。絵コンテにどんなに丁寧にト書きを書いても、絵コンテを素晴らしく綺麗に清書しても、実際は担当する原画マンの技量によるじゃないですか。それと同じです。

 

あまりにも色々なことが書き込んであるタイムシートは、それだけで「ああ、つまりは頭の中で映像の設計の折り合いがついてないので、思いつくままに書いてるんだな」と悟られてしまうのです。タイムシートにやたらめったら書き込めば、映像がゴージャスになると思うのは、残念ながら「NO」です。

 

まあ、ごくごく稀なカットで、どうしてもシートが複雑で書き込みも多くなることはあります。しかし、一般的には、タイムシートはシンプルで明快なのが一番です。

 

 

BOOKがどのセルの上にくるか‥‥とか、T光が含まれるのは何セルなのか‥‥とか、そういう基本的なことを書かずして、「ガウスブラー」とか書くのって、それだけで担当原画マンの経験の浅さ(もしくは手抜き)をタイムシートから読み取られてしまうのです。

 

必要なことは最低限踏まえて全部書いてある。撮影技術上の伸びしろや采配は撮影担当者に任せてくれている。‥‥私の考えるタイムシートの「スタンダードとしての理想」はそんな感じです。

 

 

 

要は、タイムシートに頼って運用している以上は、タイムシートの限界の中で工夫して作るべき‥‥なのでしょうネ。

 

アニメーターが、どうしても複雑な撮影・コンポジットを経て、完成させたい映像イメージがあるというのなら‥‥‥‥、それはもう、自分でコンポジットまで担当するしかないのです。

 

なぜかって、タイムシートに「そこまでの許容はない」からです。

 

タイムシートに書けないことを映像で表現したいのなら、本人がコンポジットするしかありません。

 

もしその「現状の限界」に「限界を感じる」のなら、タイムシートを捨てて、タイムシートに代わる新しいシステムを作るのが肝要です。私は半々で、タイムシートをベースとした仕事と、タイムシートの存在しない仕事をやっていますから、決して無理なことではないと実感します。

 

 

 

ただ、タイムシートは、長年の運用に耐えてきただけあり、さすがによく出来ております。コストの増大を抑制する効果すら盛り込まれていますしネ。

 

タイムシートをどのようにして使うか。

 

原画を「デジタル」で描くようになっても、タイムシートはまだまだ当分は、カットごとの「設計のキモ」になりそうですネ。

 

 


新型はすぐ使う

買い時が微妙なのは、新型が出る周期が解っていて、それが3月なのか6月なのか10月なのか‥‥という時期です。iMacの新型の発売は、3月ではなく、もう少し先‥‥な感じの空気が漂い始めましたが、さて、如何に。

 

機材の絶好の買い時は、新型が発売されて直ぐ‥‥か、「新型の2型」にマイナーチェンジして直ぐ‥‥です。新型は、刷新された性能や機能が、そのまま直に仕事に活かせますし、新型の2型(新型が出て次のマイナーチェンジモデル)は、製品「1型」の不具合がフィードバックされていると同時にコストの簡略化に走る前なので「質が良い」ことが多々あります。

 

 

iMac 5Kも、iPad Pro 12.9インチも、発表されて発売開始に直ぐに買いましたが、早く買ったぶんだけ、十分「もと」はとりました。化粧直しした程度の新型ならば、慌てて買う必要はないですが、「これなら仕事に使える」と解っている新機軸を盛り込んだ新型は、「とっとと買ってしまって、とっととソレで金を稼ぐ」のがよろしいのです。

 

iPadとApple Pencilは、買って半年くらいは手探り状態でしたが、今ではもう「うんざり」するほどのiPad作画の日々で、来る日も来る日も、iPadとApple Pencilで絵を描いております。

 

「iPadでほんとに仕事ができるかなぁ」なんて迷い続けて未だに買ってなければ、右も左も前も後ろもiPadでこなす仕事だらけの現在の状況なんて、決してありえなかったです。iOSは縛りが強い‥‥とは言いますが、「仕事となれば」いくらでも抜け道や迂回路は見つかるものです。

 

ソフトがどうだ、ハードがどうだ、‥‥なんて石橋を叩いて叩いて叩きこわすほどに慎重に構えてても、年月はただ過ぎるだけですもんネ。
 

 

 

 


雑感

作業の手間を効率化するために、急場でAfter Effectsのスクリプトを作りました。特定のエフェクトのプロパティのキーフレーム群をイーズインアウトに変更しエクスプレッションでループ化する‥‥というものです。山ほどプロパティとキーフレームを設定しなければならない場合、手作業でいちいちキーフレームを操作していると、時間も手間もじくじくと消費します。After Effectsのスクリプトフォルダに自作のスクリプトを入れておいて、簡単に実行できるようにすると、積もり積もって結構な作業力の節約になります。

 

山ほどのキーフレームの操作‥‥なんて、今までのアニメの撮影では珍しいですが、コンピュータで描いた絵を動かすとなると、100〜200のプロパティそれぞれに、5、10、20のキーフレームがある状態では、あっという間に500〜2000個のキーフレーム数になります。膨大なキーフレームの操作に対し、手作業の作業形態を放置したままだと、能率が一定以上で頭打ちになります。「できるのに諦める」「可能を不可能にする」状況に甘んじてしまうのです。

 

スクリプト1つで、ぐんと能率が上がることも珍しくはありません。

 

 

キーフレームの操作に直接関わるスクリプトを作ってて思ったのは、旧来のタイムシートで標準化されている指定や記述は、かなりの部分をスクリプトで自動化できる‥‥ということです。‥‥あれ? これって、ブログで昔にも似たようなことを書いたような気がするな。

 

パーティクルやテクスチャハリコミは、そもそもタイムシートでは正式にはサポートしていない標準から外れた、最近のエスカレートした撮影要求(=そもそも撮影の仕事ではなく、作画管轄の技術です)なので、自動化は無理です。しかし、通常のタイムシート標準仕様であれば、「タイムシートを真の意味でデジタルデータ化できれば」かなりの自動化は可能です。

 

セルのタイミング(コマ打ち)、BGやBOOKやセルの重ね順、PANやZOOMなどのカメラワーク、カメラワークの加速減速(イーズ)、透過光の処理、ディフュージョンなどの定型の光学フィルタ(のシミュレーション)は、タイムシートの記述法をデジタルデータで規約して定義できれば、タイムシートを記述する行為が撮出しとタイミング撮を兼ねることも可能になります。

 

まあ、撮出しは「現物を見て、フレーミングを再考する」工程でもあるので、現物を見ないままで完全な「撮出し」なんてできませんが、「レイアウト通り・シート通りに素材が上がって入れば」という仮定の上で、セルワークとカメラワークをタイムシートでかなりガッチリとコントロールすることは可能でしょう。あくまで、真の意味で、タイムシートがデジタルデータ化できたなら‥‥です。

 

しかし、この15年くらいで、すっかりと撮出しは「なかったもの」になり、言うなれば「後撮出し」、つまり、「ラッシュチェックで初めて素材が組み合わさったのを見て、リテーク出しというかたちで撮出しをする」手順に業界全体が染まった感があります。ここ10年くらいの間に業界入りした人の多くは、撮出しの意味すら解らない人も多いでしょうし、実質「ムダ撮」で本撮を撮り切って、リテーク出しからが本番だ‥‥なんていう現場も多いでしょうしネ。

 

‥‥なので、作業を完了することに必死すぎて、先回りしてルーチンワークの自動化だの管理の自動記録だのなんて、タイムシートのデータ化、ひいては作業の自動化がどれほどの人の心を動かすのかは、何とも先が読めません。

 

エフェクトの必要ない、ほんわかした作風のアニメなら、タイムシートのデジタルデータ運用規約が出来上がってしまえば、一人で撮影することも可能でしょう。人間が関与するのは、ルーチンワークでは対応できないカットのみに絞って、通常の芝居のシーンなどは自動化でかなりのところまで完了できます。‥‥「デジタルタイムシート」のソリューションが「記入ソフト」のレベルを凌駕し、素材の管理や撮影コントロールの領域まで発達すれば‥‥ですけどネ。

 

いや〜、でも、それは現実的には無理っぽいですね、今までの現場の動向から考えても。「誰が開発するんだ?」のところでスタート直後で躓きますもんネ。

 

各方面の「識者」「経験豊富な技術者」を招集したところで、無様なほどにコケていくプロジェクトは、それはもう、いくらでも‥‥ありましたよネ。

 

 

 

「デジタル作画」を推進しても、作業に関わる様々な事柄の制定とデジタルデータ上の規約が揃っていなければ、ネットワークとデータに囲まれていても、「デジタルの孤島」で活動する作業グループになってしまいます。

 

自分たちの新しい「デジタルベース」の現場における、様々なインフラや規格や体系は、自分たちで形作っていくしか、実質的な道は開けません。規模の拡大を目指すのなら、現場作りに相応の手応えを得た後で、徐々に周囲を取り込んでいく‥‥というのが、現実的な道筋でしょう。

 

私自身、残りの半生を旧来技術のお世話に消費するよりも、まだまだ幼い新技術の育成に力を注ぎたいので、旧来制作システムは適当に付き合いつつも、本命は新しい制作システムと技術体系です。

 

タイムシートをはじめとした、様々な要素の「新定義」は、新しい作画技術やコンポジット技術と同時に推し進めていくべき、重要な課題です。

 

 


果てしない水汲み

アニメを未来に渡って作り続けるには、どうしたら良いんだろう。

 

若手アニメーター、月給10万円未満が50%超 「死に体で支えている」苛酷な生活実態とは(調査結果)」を読むと、今の作り方の限界を感じます。おそらく、誰もが。

 

こうした話題を前にした時、多くの人は制作費のことを持ち出しますが、私が考えるに、今の作り方を維持しつつ、原画・動画だけでアニメーターが歳相応に正常に生活できるようになるためには、現在の作業単価の4〜5倍は必要で、さらに単一単価制度は廃止しないと、問題は大きく改善できないでしょう。

 

でも、それをできる会社、ぶっちゃけ、ないですよネ。

 

「大変な作業を請け負えば、相応の報酬が得られる」というあたりまえ過ぎることを、まずは現場で成立させないと、お金はいつのまにかどこかへと消えていくだけです。

 

作画だけじゃなくて、撮影でも同じで、派手で大変なドンパチのカットが盛りだくさんなシーンを、他の日常芝居のシーンと同じ「秒単価」でぬけぬけと伝票を切ってきた時は‥‥‥‥‥

 

 

でもね、もういいんだよね、そういうのは。

 

過去の幻影です。

 

 

現場の技術自体、現場の制作構造自体、現場のお金の感覚自体、現代とあまりにもズレすぎているのです。

 

どうやったら、よくなる? ‥‥なんて、「今の住処」に居続けたまま、話し合うだけ無駄。

 

どうせすぐに、内輪で「あなたのほうが1畳多いのはズルい。」「あなたのほうが日当たりが良くて不公平だ」なんていう骨肉の争いが始まるだけだもん。彩色単価からお金をカットして動画単価に補填すべきだ‥‥なんていう人がいるくらいだからね。

 

そんな人々が集う狭い住処で、現在の基準だと建蔽率でひっかかるから、柱だけは残して、全面改築だ!‥‥なんていう取り組みが、果たしてどれだけ有効か。

 

 

数キロ離れた川に、バケツを両手にもたせて、水を汲みにいかせといて、「大した量を運べない奴だな」なんて、あまりにも酷い話です。でも、アニメ業界の制作技術って、延々と現在でも、そういうことをやってるんですよ。

 

バケツによる水汲みは大変だから、水の単価を上げよう!‥‥って、アホすぎると思いません?

 

なぜ水路を作って、電気でポンプを動かそうとしないんだろう? 電気は電球を灯すだけにしか使えないと思っているのだろうか?

 

バケツの水汲みをしていた人は、水を扱う様々な新技術の技術者として再出発すれば良いのです。

 

でもね‥‥、「水路を作るのって、大変じゃん」‥‥というのが、業界の総意なんだよね。

 

 

まあ、だから、私はもう、既存の現場にどうこうと提案するのはやめたのです。今までの現場の流儀が気に入っている人々に、余計なお節介なんて、すべきではないと達観しました。

 

だってさ‥‥。今の場所に、新しい住処を作るのって、実質的に無理じゃん? 今いる人々を一旦でもどかさないと、新しい建物なんて建てられないですもんネ。

 

 

 

必要なのは、古い考え方に固執する人がいない、今の現場とは違う場所に、新たな設計に基づく、新たな住処を建築することです。少なくとも、私はそう思います。

 



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